王冠をかぶろうとする者、その重さに耐えろ〜相続者たち〜 |
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第2話 タン「俺んち来る?」 ウンサン「ここよりあなたの方が安全なの?」 タン「俺が安全かは解らないけど、ここよりうちの方が安全だ。どうする?行くか?」 タンの家に着いてみると、そこは広大な敷地にそそりたつ大豪邸。 タン「下りて来い」 その広さに圧倒されたウンサンは開いた口がふさがらなくなる。 単身留学中のタンはここで一人暮らしをしていた。 ウンサン「家族の方は?一人暮らしなの?ここで?」 タン「一人暮らしだとダメなのか?」 ウンサン「あんた何?ひょっとして麻薬密売人とか?お仕事は何?やくざみたいなもの?」 タン「麻薬を売ってるのは確定なんだな」 ウンサン「警察とは知り合いみたいだったし、粉を見たとたん吸入しようとする友達もいるし」 ウンサンにゆっくり詰め寄るタン。 ウンサンもそれに合わせて後ずさり。 タン「そうだな。でも俺が売ってるものが薬だけだと思うか?お前のパスポートを持って行ったのは本物の警官かな?腎臓はまだ二つあるよな?」 ウンサン「警告するけどこれ以上近づいたら・・・」 壁までウンサンを追い詰めたタンは壁に手をついてニヤっと笑い『お前の部屋だ』とドアを開ける。 タン「(ウンサンの耳元で)必要なものがあれば声かけて」 ウンサン「(独り言で)なんて余韻を残すのよ」 ふいに今日は機内食しか食べていないことに気付くウンサン。 悪いと思いながらもこっそり暗いキッチンに行く。 2階の書斎で明日の準備をしていたタンは物音に気付き下を見る。 そしてその一部始終を見ている。 こっそり冷蔵庫を開けてみたウンサン。 缶ジュース1本と賞味期限の切れている缶詰だけを取り出し食べようとしていると、いきなり電気がつき驚く。 タン「何してんだ?真っ暗だけど?」 ウンサン「許可もなくごめんなさい。期限が切れたものだけだからこれで勘弁して」 紙幣を1枚差し出す。 ウンサンが食べようとしていた缶詰を見たタン。 タン「どんな生活してればこんなものを食べるんだ?」 行こうとするウンサンに。 タン「なんで逃げるんだ?片付けないのか?」 ウンサン「あぁ・・・ゴミの分別法は?」 タン「知らないやったことない。名前は?人はお前をなんと呼ぶんだ?」 ウンサン「さっきは言いそびれたけど泊めてくれてありがとう」 タン「ずいぶん長い名前だな。感謝はいらない。好意じゃなくて補償だ。ミスカル(ぶちまけた粉のこと)だよ。お姉さんにあげるつもりだったんだろ?」 タンは自分の部屋でエッセイを書いている。 『他の女のバッグ、他の女の家、他の女の夫、一生人のものを奪おうとする可哀そうな人。その人が・・・』 タンは二人分のサンドイッチを作りウンサンのいる部屋に持っていくが、ドアの手前で躊躇する。 ちょうどその時、母を安心させようとウンサンは母に電話を入れていた。 ウンサン「母さん?私の電話が遅くて心配したでしょ?ごめんね、アメリカは初めてだから右も左もわからなくて。英語ばっかりだしね。姉ちゃんは・・・背が伸びて顔がちょっと焼けたの。カリフォルニアの日差しで。麦飯石チムジルバンみたいなお天気なの。今は姉ちゃんの家でね、芝生のある家知ってる?塀はなくて芝刈り機が置いてあるそんな家。姉ちゃんの家なの。だから心配しないで、よく食べてよく寝て。解るよね?じゃ切るね。また電話する」 電話を切ったウンサンは借りた部屋の片隅で静かに泣き出す。 まさか母に本当のことを言うわけにもいかずに必死でごまかすウンサンの様子をドアの隙間から覗き込むタン。 いたたまれない気持ちで。 サンドイッチ片手に勝手に部屋に入ってきたタンに向かって、ウンサンが怒る。 ウンサン「ノックくらいしなさいよ!あなたの家だけど・・・」 タン(開けたドアをトントン) 『順番が逆でしょ?』と怒りつつも黙って差し出されたサンドイッチにお礼を言うウンサン。 タン「礼には及ばない。腎臓にいいものだ。しかしお前嘘が上手だな」 ウンサン「盗み聞きしてたの?」 タン「この家で女の声がするのが不思議でさ。(置いてある紙幣を指して)なんだあれは?」 ウンサン「借りた電話代」 タン「まったくふんだんに金使うんだな。サンドイッチ残すなよ。腎臓に・・・」 ウンサン「もうやめてよ!」 金を受け取ろうとしないタンに、ウンサンは家賃の代わりだと言ってお守りとして新居に飾るつもりだったドリームキャッチャー(ピンクの吊るす飾り。後に物語の至る所に登場する)を渡す。 ウンサン「アメリカに部屋が出来たら飾ろうと思って持ってきたけどあげる。その穴を通して綺麗な夢だけが入ってくるんだって」 タン「捨てるんじゃなくて?綺麗な女は来ないのか?」 ウンサン「もういい。返して」 タン「休めよ。それも残さずに。腎臓に・・・」 ウンサン「やめてってば!!」 口ではバカにしながらも、内心喜んで受け取るタン。 そして窓辺にそっと飾る。 ニヤっと笑いながら。 受け取ったサンドイッチを眺めてウンサンまた独り言。 『腎臓腎臓って、変なもの入ってないよね?』 サンドイッチ片手にテラスに出たタンは、ふとガラス越しに部屋の中で慌ただしく動くウンサンを見る。 ウンサンはドアの前に椅子を積み上げてバリケードを作っていた。 タン『(独り言)ったく!せっかく食べさせてやったのに・・・』 しばらく眺めていると、見られているとは知らないウンサンが服を脱ぎ始める。 思わずむせるタン。 急いで自分の部屋に逃げる。 翌朝ウンサンは目覚めると、テラスの向こうに広がる広大な景色に目を見張る。 庭には水面がキラキラと光る巨大なプライベートプール、その向こうには真っ青な海。 昨夜は暗くて気づかなかったが、そこには今まで見たこともない世界があった。 テラスに出て潮風にあたるウンサン。 長い髪をなびかせて微笑みそこに立つウンサンの姿を、上の階からそっと見つめるタン。 雷に打たれたように開いた口がふさがらなくなる。 恋に落ちた瞬間だった。 タンが学校に向かう準備をして下りてくるとウンサンが目に入る。 ウンサン「見せて貰ったけどいい家なのね」 タン「そう?」 ウンサン「どこへいくの?」 タン「学校」 ウンサン「薬のディーラーじゃなくて留学生だったんだ。ドラマや映画に出てくるようなそんな学校なの?」 タン「そんな学校ってどんな学校だ?ホグワーツ魔法学校とか?」 思わず笑うウンサン。 タン「また笑った。もとはよく笑うということか」 ウンサン「あ、いや、気になってたんだ。留学生はどんな学校に通うのかなって。ちょっと待って、支度してくるから」 タン「どこか行くのか?」 ウンサン「あなたが出て行くなら私も出ていかなきゃ。顔だけ洗って・・・」 立ち去ろうとするウンサンの手を掴み、タンはとっさに言い訳を並べ引き留める。 タン「いろよ、じゃ。学校から帰るまでいていいよ。特に行くところもないだろ?」 ウンサン「姉ちゃんの職場(カフェ)・・・」 タン「そこはまだオープン前だ。開くのは午後からだ」 ウンサン「あぁ、じゃ・・・」 タン「バスもない。この辺はバスに乗りそうな人は暮らさない」 ウンサン「でも・・・」 タン「ここに居づらいなら学校に来るか?知りたいんだろ?留学生はどんな学校に通うのか」 道中の車の中。 日差しに目を細めているウンサンに黙ってサングラスを差し出すタン。 ウンサン「大丈夫よ」 タン「人種が変わりたくなければ使え。ファッションじゃなくて生活必需品なんだ、ここでは」 素直にサングラスを受け取るウンサン。 ウンサン「外に手を出すけど恥ずかしいなら言ってね」 タン「1分だけだぞ?」 手を伸ばして風を感じてるウンサンを見て思わず笑うタン。 タンの講義が終わるまで庭のベンチで待ちながら、しばし回想にふけるウンサン。 窓からベンチに座るウンサンが見えるタンは、気になって講義どころではない。 講義が終わりウンサンが座っていたはずのベンチに戻ると、ウンサンがいない。 必死で探し回るタン。 ウンサンが眺めていたのは、そのハイスクールに通う韓国人留学生たち。 タン「そこで何をじーっと見てんだ?」 ウンサン「ちょっとね、親に恵まれた子達。韓国人留学生同士でパーティするんだって」 掲示板に貼られたポスターを見て言う。 タン「行ったってつまんねぇよ」 ウンサン「そう?じゃ私は行くね。学校に連れてきてくれてありがとう。荷物はちょっとだけ預かってね。後で取りに行くから」 タン「姉さんのところに行くのか?」 ウンサン「行ってみないと。母さんのお金を取り戻さなきゃ。酔っ払いの酒代にするわけにいかないわ。じゃ、グッバイ。アメリカだもん」 歩きだすウンサン。 タン「おい、どっちに行けばいいのか解ってんのか?」 ウンサン『あっち』と指をさしてバイバイと手を振る。 タン「解ってねーじゃねーか」 ウンサンを捕まえて反対方向に向かうタン。 ウンサン「あなたは学校があるでしょう?」 タン「午後は嫌いな数学だからお前を言い訳にスキップする。一緒にいくよ」 ウンサン「私は数学好きだけどな」 タン「正気か?」 大喧嘩したカフェに行ってみると、もう姉はいなかった。 タンの通訳で話を聞くと、妹に韓国に帰るよう伝言を残し消えた聞かされる。 諦めて店を出ると、そこに偶然姉と同棲してた男が。 同棲男「(英語)ヘイ!お前あのクソ女の妹じゃないか!」 ウンサン「(英語)姉はどこにいるの?」 同棲男「(英語)俺が聞きたい!クソ女をどこに隠したんだ?俺の金を全部持って逃げたんだ」 ウンサンに手を出そうとした同棲男の手を掴んで後ろでねじ上げるタン。 ウンサン「(同棲男に)姉ちゃんもこんな風に殴ったの?(タンに)通訳してよ」 タン「(通訳しなくても)殴ったに決まってるって」 そういって同棲男の膝を蹴り上げて首を掴むタン。 そこへ、姉の同棲男の仲間が二人やってくる。 ウンサン「つるんでる人達よ!」 タン「俺が3.2.1と言ったら・・・」 言い終らないうちに、ウンサンはタンの手を掴んで走り出す。 タンは『3.2.1と言ったら俺の後ろに隠れろ』と言いたかっただけなのだがウンサンの早とちり。 タン「なんで逃げてんだ?俺達」 ウンサン「だってあなたが3つ数えたら・・・」 タン「3つ数えてあいつの手を離すから俺の後ろに隠れろと言おうとしたのに」 ウンサン「は?」 タン「あいつらはついてこない」 ウンサン「ついてきてるよ!」 タン「俺には解ってる。あいつらもう足に力入ってねーよ」 巨漢二人は息を切らしながらやっとの思いで走っている。 男たち「殺してやる!」 タンは必死で追いかけてくる男二人に韓国語で叫ぶ。 タン「(男らに)捕まえてから言ってよ!気持ちは解るけど俺が老けて死ぬ方が早いぜ!」 ウンサン「韓国語で言っても通じないんじゃない?」 タン「どうせ何言ったって今のあいつらには聞こえやしない。お前に言ってんだ。怯えないでってな」 そこへ、タンの婚約者ユ・ラヘルからタンの携帯に電話が入るが出ない。 タンは止まって携帯を見てる。 追いかけてくる男を見ながらウンサン。 ウンサン「ねぇ、こんな場合じゃ・・・」 タン「こんな場合じゃないのは昨日からだ」 ウンサン「私はただ・・・」 タンはラヘルのことを言ったつもりだったが、自分のせいだと勘違いしたウンサンに必死でごまかす。 タン「薬の注文電話だ。オーガニック薬がないかって。行こう、そろそろマジで走らないと」 逃げた先で。 売店でコーヒーを二つ買ってきたウンサンは、一つをタンに渡す。 ウンサン「私のおごりよ」 タン「なんでこんなに遅いんだ?コーヒーの発明でもしてたのか?」 ウンサン「注文電話、楽にうけさせてあげようかなって。オーガニック薬は全部売ったの?」 コーヒーに感嘆するウンサン。 ウンサン「 美味い!」 タン「オーバーだな」 ウンサン「許してね。だってアメリカまで来たんだからアメリカーノくらい飲まないと、あまりに悪い記憶しかないんだもの」 タン「ほんとに悪い記憶しかないのか?」 ウンサン「ま、よく考えてみたら・・・そういえばアメリカにはどれだけいるの?」 タン「なんで途中でやめるんだよ?」 目の前で、携帯で写メを撮る観光客を見るウンサン。 なんとか自分のことを言って欲しいタン。 ウンサン「(独り言)なんで思いつかなかったんだろ・・・」 タン「そうじゃなくて!知り合いか?」 ウンサン「ううん。知らない人」 これを見てひらめくウンサン。 ウンサン「携帯貸して!家に帰る方法を思いついたの」 タン「家って、韓国?」 ウンサン「ありがとう」 タンから携帯を借りウンサンは幼馴染のユン・チャニョンにSNSでSOSのメッセージを入れる。 有り金を全て姉に取られたので帰りの飛行機代が足りないウンサン。 それをチャニョンに借りようとしたのだ。 ウンサン「返事が来たら私に見せてくれる?」 タン「なんだ?誰?彼氏?」 ウンサン「男友達」 タン「電話したらいいじゃないか。いつ読むか解らないし」 ウンサン「最近番号変えたばかりだから覚えてないの。どこか行くと言ってたから行ったかもね」 タン「どこにいるかも解らない奴に助けを求めるのか?」 ウンサン「私の心の中にいるの、いい?あんたに奴呼ばわりされていい子じゃないの」 タン「なんでそこまで信頼してんだ?」 ウンサン「友達として尊敬してるの」 タン「別に英雄でもハングルを作ったわけでもないだろ?友達で尊敬なんか・・・連絡がこなかったら?」 ウンサン「(タンの携帯を見つめて)来る!」 ちょっぴり嫉妬のタンはさっさと一人で歩きだす。 ウンサン「どこ行くの?」 タクシーで帰宅する車中で。 ウンサン「返事、きてない?」 タン「(むっとしながら)来てません。本当に親友か?」 ウンサン「私の人生の半分を一緒に過ごしたの」 タン「付き合ってるのか?」 ウンサン「違います」 タン「付き合ったのか?」 ウンサン「あんたにはただの友達はあり得ないの?人助けだと思ってしょっちゅうチェックして返事がきたら教えてね。私には希望はこの子しかいないの・・・お願い」 やっぱりむっとするタン。 走って逃げたのでウンサンに家の鍵を預け車を取りにきたタン。 車の中でタンは、さっきウンサンが幼馴染に助けを求めるためにログインしたSNSを見つけ、そこで初めて『チャ・ウンサン』の名を知る。 ウンサンのSNS『信じがたいだろうけど私は今アメリカにいて問題が起きたの。あなたの助けが必要なの。これを読んだら返事して』 タン、チッと舌打ち。 SNS『月200万の事務職、私も好きですが(韓国ではやってる文句)』 タン「(独り言)どういう意味だ?」 SNS『フレディとジェイソンが仲直りして欲しいな』 SNS『あぁ、バイト行きたくない。こんなにしっとりと春雨が降る日にはテキサスチェーンソーを観ないと』 タン「(独り言)変わった好みだな」 SNS『私、またバイト。ジェシカ・アルバも泣くアルバイト』 タン「(独り言)なんで毎日バイトなんだ?」 SNS『迷惑客1位』 チャニョンの写真を見てタン思わず。 タン「(独り言)おお、お前か」 SNS『(チャニョンのコメント)迷惑客がこんなにイケメンなのか?』 タン「(独り言)正気か?」 SNS『(ウンサンのコメント)うせろ』 タン「(独り言)だよな!」 SNS『(チャニョンのコメント)今日もご苦労様。頑張ってチャウンサン。もう、うせるね』 タン「(独り言)だよな。やっぱりただの友達のはずないよな」 今までウンサンが書き連ねてきたコメントの数々をスクロールしていると一つ気になるメッセージが。 SNS『お母さんがしんどいのが嫌。帝国グループなんて潰れればいいんだわ!!』 タンは帝国グループの次男。 なぜだ?と不思議に思っている所にパスポートを持った警官がやってくる。 警官「誤解があったようだ」 タン「いつものことだろ」 警官からウンサンのパスポートを受け取り、車を発進させる。 タンが自分の車を取りに行っている間タンの家で待っていると、そこにタンの婚約者ラヘルが現れる。 ラヘルもまた、婚約記念日のためにアメリカに来ていた。 空港まで迎えに来てくれと頼んだのに連絡すらくれないタンを怪しんで、ラヘルはタンの家まで押しかけてきた。 だがそこには肝心なタンはおらず、見も知らぬウンサンが。 頭にきたラヘルは、自分がタンの婚約者だと名乗った上で罵倒をあびせウンサンを追い出す。 ウンサンは他に行き場所もなく、ただフラっと歩き出す。 その頃ウンサンは飛行機チケットを買いにやってくる。 係員「LAからインチョンまで税込で1040です」 ウンサン「ちょっと待って」 急いで手持ちの紙幣を数える。 ウンサン「(独り言)全然足りない・・・」 ウンサン「でもとりあえず予約だけお願いします」 係員「パスポートお願いします」 パスポートがないことに気付く。 ウンサン「(独り言)あ、パスポート!」 タンは急いで帰宅したが、既にウンサンはおらず代わりにラヘルが。 タン「行った?どこへ?荷物まとめて?」 ラヘル「ねぇキムタン。私達半年ぶりなのよ。なのにそれが挨拶なの?私がどこから転がってきたかもわからない女がどこへ行ったのかまで・・・」 タン「(感情のこもらない声で)綺麗になったな」 ラヘル「知ってる」 タン「あの子は?追い出したのか?」 ラヘル「私の許嫁の特権でしょ?」 タン「言ったのか?婚約してると?」 ラヘル「当然でしょ?これは私が言う前にあんたが言うべきだったの」 タン「じゃあ追い出さないべきだった。せめてお前の紹介は俺がしただろうから」 やる気をなくしてソファに座り目を閉じるタン。 ラヘル「私が(アメリカに)来るの知らなかったの?」 タン「知っていた」 ラヘル「じゃあなんで空港まで迎えにこなかったの?」 タン「暑いから」 ラヘル「暑いなら韓国に帰ってよ。もうすぐ秋なんだから」 タン「遠いから」 ラヘル「明後日が婚約一周年だって知ってる?」 タン「おう」 ラヘル「『おう』で終わり?それならなんで私と婚約したの?」 タン「後でお前と結婚しないためにはその方が都合がよかったからさ」 その時、玄関のチャイムが。 パスポートがないことに気付いたウンサンがタンの家に戻ってきたのだ。 パスポートを持って行った警官の名刺を貰おうと思ったのだ。 タンが帰ってることに気付いたウンサンは、慌てて引き返そうとする。 タン「どこへ行くんだ!行くなら行くと言わないといけないだろうが!」 ウンサン「帰ったんだ・・・名刺を貰おうと思ったの。警察の名刺」 ラヘルも出てくる。 タン「なんで?」 ラヘル「家の掃除をしてゴミ箱に捨てたけど?」 ウンサン「どこのゴミ箱?」 ラヘル「大門の外」 タン「いい。探す必要ない」 そういってウンサンの腕を掴むタン。 ウンサン「なんで必要ないのよ?それがないとパスポートは取り戻せないよ!」 タンの手を振り払って大門に向かって走り出すウンサン。 タン「捨てた?」 ラヘル「見てもいないわ。捨てるわけないでしょ」 タン「お前にはこれがうっとうしい状況なのは解るが、あの子がパスポートを取られたのは俺のせいで、韓国にも帰れない状態なんだ」 ラヘル「それが私と何の関係があるわけ?」 タン「お前とは関係ない。でも俺とは関係あるから口出すな!」 タンはラヘルに冷たく言い放つと、慌てて走り出したウンサンを追う。 一人残されたラヘル。 バッグを掴んで行こうとすると、そこにあったタンの携帯が鳴る。 覗き見るとチャニョンのコメントが。 『アメリカ?アメリカのどこだ?僕もアメリカだ。どういうことだいったい?今すぐ行くからとにかくこれ読んだら電話して。僕の番号だ。すぐ電話して』 その頃、必死でゴミ箱を探すウンサン。 タン「そこにはないよ」 ウンサン「ない。どんなに探してもない」 タン「泣いてるのか?」 ウンサン「泣かないようにしてるけど状況が・・・もう起承転結すごいわね」 タン「なに?」 ウンサン「贅沢したいとアメリカまで来たのに結局またゴミ箱の隣なの。なんで人生に反転がないの、反転が」 タン「ごめん。立て」 ウンサン「どうしてあんたが謝るのよ」 泣きながら必死に探すウンサンにタンは警官から預かったパスポートを渡す。 ウンサン「返ってきたの?いつ?」 タン「さっき」 その時、この間の追手がまた現れる。 しかも3人に増えてる! 『今度の奴らは本物だ!』と思ったタンは慌ててウンサンの手を掴んで走り出す。 たまたま通りかかった映画館に二人は逃げ込み身をひそめる。 追手が諦めていなくなるまで、映画を見てるフリしてしばし待とうと。 タン「せっかく入ったんだ、映画見ろよ。俺は休む」 映画に集中しようと思ってもウンサンには英語が解らない。 タンは隣で寝てしまった。 ウンサン「(独り言)いったいなんて言ってるのかしら」 寝てると思い込んでいたタンがポツリと通訳し出した。 ウンサン「寝てたんじゃなかったの?」 無視してタンは通訳を繰り返す。 黙って聞いているウンサン。 タン「でも、昨日ある女に出会ったんだって。名前はチャ・ウンサン」 ウンサン「なんで私の名前知ってるの?」 タン「それでチャウンサンに聞きたいことがあるんだって」 一呼吸置いてウンサンを見つめるタン。 タン「もしかして・・・俺は君が好きなのか?」 第3話へ |