王冠をかぶろうとする者、その重さに耐えろ〜相続者たち〜
第19話

タンの誕生パーティー。

笑いながら手を上げ挨拶するキム会長。

ジスク「会長の前に居並ぶ人がまだこんなに多いから健康でいなければなりませんよ」

会長「それで何をする?二人の息子がわたしに対して並ばないのに」

ジスク「タンの母が家を出たと?あの人はまだ会長と恋愛をしている最中のようですわ」

会長「だから問題なのだよ。財産むしり取るつもりで従順ならどんなにいいか?」

『兄さん、お久しぶりです』

『お元気ですか?』

『こんばんわ大叔父さん。タンの記事でぶり返して倒れるかと思い皆が心配してました』

親族がおもねった挨拶をしてくる。

会長「わたしの健康のことを心配してくれるのに、異常があるということがあろうか」

ジスク「元気でしたか」

義弟に挨拶するジスク。

義弟「お姉さん、タンの話はニュースで見て知りました。すごく驚きました。この間、兄さんのせいで気疲れが多かったでしょう」

ジスク「気疲れだなんて。心で産んだ息子が二人になりただ頼もしいわ」

行きなさいと言い親族を下がらせるキム会長。

続いてヤン会長がタギョンを連れてやってくる。

ウォンの見合い相手だ。

友人たち。

ミョンス「テヘ、テヘ」

自撮りするミョンス。

ヒョシン「何してんだ?」

ミョンス「自撮りだよ」

次のワンショットの際にのけぞるヒョシン。

するとミョンスはキム会長と目があってしまう。

ミョンス「大変だ。オレ今、タンの父さんにテヘをしたようだ。目が合ったよ、たった今」

バツが悪い。

ボナ「Oh My God! オッパ?」

駆け出すボナ。

ボナ兄「ボナ!」

ミョンス「Oh My God! オッパだって?・・・これはあれだろ?アニキが好きなやつ」

ヒョシンにシャンパンを渡すミョンス。

そのシャンパンをウェイトレスに返すヒョシン。

ヒョシン「ああ、痴情」

チャニョンの表情が曇り攻撃的になる。

ボナ「来て来て」

腕を組みチャニョンのところにそのオッパを連れてくるボナ。

ボナ「挨拶して、こちらは・・・」

チャニョンを紹介しようとするボナ。

チャニョン「イボナ、オレはおまえがこんなことするならか細い足をどうするって言った?」

ボナ「持って行って、元々あなたのものよ」

チャニョン「おまえ今よその男と腕を組んでそれを言うか?今すぐ離せ!」

ボナ兄「妹に対して、そう大声を出したら困るんだが」

チャニョン「誰がそっちの妹・・・」

笑顔のオッパ。

ボナ「あ〜、わたしの本当のお兄さんよ。アメリカで学校に通ってる。あなたもう大きく出たわね」

チャニョン「お話はよく聞きました」

深々と頭を下げるチャニョン。

ミョンスとヒョシンもそういうことかと、状況を楽しんでいる。

ボナ兄「おまえがチャニョンなんだな。会えてうれしいぞユンチャニョン。挨拶も終わったことだし妹のか細い足の話をまたしようか?」

皆笑いをこらえその場を離れる。

恐縮するチャニョン。

チャニョンの勘違いが墓穴を掘った珍しい一面。

タギョン。

ウォンがやってくる。

見合い相手のタギョンを見つける。

タギョン「今日はキムウォンさんが遅れましたね」

ウォン「今日は彼氏は来ないみたいですね」

タギョン「彼氏は貧しくてこんなところには来きません。だから今日は金持ちの父と来たのよ」

タギョン「キムウォンさんは恋人は居ますか?」

ウォン「ええ」

タギョン「ハッ、それでわたしたちがお似合いなのね。父が結婚しろと」

ウォン「似合わないですよ、わたしたち」

タギョン「まあ、関係ありません」

呆れるウォン。

タギョン「今日の主人公はまだのようですね。二人は本当の兄弟ではないんですって?」

タンとウンサンの入場。

タンがホテルの玄関に到着する。

記者が囲み言を拾おうとする。

そして『誰だ?』とウンサンにも気づく。

タン「震えてる?」

ウンサン「少し」

タン「いまおまえがオレのそばに居てくれて光栄だ、チャウンサン」

フラッシュが瞬く中手をつないで会場に入って行く二人。

皆、一様に驚いている。

やって来たことをキム会長に告げる二人。

ウンサン「お元気でしたか」

キム会長は二人の手をまじまじと見る。

しっかりと繋がれた手。

タン「こんなに素晴らしい誕生パーティーを開いてくれてありがとうございます」

まだ二人の手を見ているキム会長に。

ジスク「記者たちが見るわ」

叔父と外叔父たちに挨拶するタン。

『ところで、誰?』と叔父の一人。

タン「わたしの彼女です」

ウンサンに叔父たちを紹介するタン。

ウンサン「はじめまして、チャ・ウンサンです」

『や〜、このお嬢さんのせいで婚約を蹴ったのか?』と、いとこ。

記者たちもキム会長に言を求める。

会長「撮るだけ撮ったようだから、もうやめよう」

記者を締め出すキム会長。

脅迫と許し。

会長「お前、正気か?これだけの記者たちの前で?どうしてカメラの前にその格好(手をつないで)で現れたんだ?」

タン「世界中にウンサンを自慢したかったんです。世間、評判、父さんの怒号。もう怖くありません」

会長「何でそうなんだ?お前たちの心の何がそうさせるんだ?もっと大きな世界をやるというのに、お前の前に持ってきてやるというのに」

タン「どんな世界をくれるのか知ってます。けれど父さん。父さんがくれる世界は彼女より欲しくはありません。だからわたしたち二人を許してください。父さん」

会長「ハッ!」

呆れるキム会長。

続けて、

会長「そうだな。そんなに好きで死にそうなのなら会ってみろ。どこででも」

タン「本心ですか?」

会長「これが許可だとは考えるな。わたしはおまえがこの選択を後悔をすると信じている。(ウンサンに)おまえもわたしの息子を揺さぶったことを後悔する日があるだろうと信じている。おまえの母さん、ここの3409号にいるのだろう?絶対にわたしがお前に負けたと考えるな。わたしはお前を見逃してやってるのだ」

ウンサン「わたしたち、許しを得たの?脅迫を受けたの?」

タン「いつでも脅迫に変えることができる許可?きつい言葉は理解してくれ。父さんの最後のプライドだから」

頷く。

ウンサン「それならわたしたち・・・」

タン「ああ、俺達は敷居(壁)を一つ越えたんだ」

ウンサン「誕生日おめでとう、キムタン」

抱きあう二人。

本当の誕生パーティー。

タン「これから本当の誕生パーティーをしに行こう。34階に。母さん、家を出たんだ」

ウンサン「奥様が?」

タン「家を出ても閉じ込められているんだ。息子の誕生日にも来れなくて。オレ達が行こう」

笑顔で頷くウンサン。

ギエの部屋のチャイムが鳴る。

ギエがドアを開けるとろうそくに火をつけたケーキを持つタンが立っていた。

ギエ「息子〜」

喜ぶギエ。

ウンサン「お元気でしたか?」

ギエ「あら、ウンサンなの?あなたソウルにいたの?あなたとあなたの母さんはなんで去っておいて連絡の一つもないの?ところであなたの服・・・もしかしてあなたこの子を連れてパーティーに行ったの?」

タン「母さん、オレの誕生祝いだから。ろうそくが燃え尽きるよ・・・入ろう」

ギエ「誕生日おめでとう息子。母さんの息子に生まれてくれて本当にありがとう」

タン「オレもだよ。オレろうそく消すよ」

一気に吹き消すタン。

ギエ「あら、この子ったら!お願いして消さないと。お誕生日の歌も歌って」

タン「お願いはもうしたよ。何かは秘密だ・・・ちょっとじっとしてて」

ネックレスを取り出してギエにつけようとするタン。

ギエ「この子今何してるの?」

と小声でウンサンに問うギエ。

ウンサン「なにかすごく輝いて美しいものを取り出しました」

それは鍵の形をしたネックレスだった。

タン「産んでくれてありがとう。母さんがキムタンの母として暮らしたことが幸せでありますように」

ギエ「それなら母さんはすごく幸せだわ。今も幸せよ。ありがとう息子・・・ところであなたたちそのパーティーからどうやって生きて戻ってきたの?」

タン「父さんが許して(会って)くれたんだ」

ギエ「許すだなんて、負けただけね。わたしもあなたの父さんに負けないわ」

タン「父さんは母さんも許してくれてるようだよ。母さんがここにいることを父さんは知ってる」

ギエ「なんですって?・・・(ウンサンに)あなたの母さんはどこにいるの?あなたは今どこにいるの?」

再会。

トンヘへ行くウンサンとギエ。

道まで出て待っているウンサンの母。

ギエ「おばさん!」

車を降りてウンサンの母に抱きつくギエ。

ギエ「どうしてなの?どうしてわたしに一言もなく行くのよ!悪い人!いくらわたしがちょっといじわるしたからってそれはないでしょ?憎い情というのもあるのに」

ウンサン母「憎くないです。わたしが手紙を書いて置いてきたじゃないですか」

(手話を)言葉にするウンサン。

ギエ「わかってるわ、たったの3行。わたしがたったの3行にどんなに泣いたか!悔しくて死にそうだわ。は〜、どうしてこんなに顔が半分になったのよ?(げっそりしたのよ)。なんだかんだ言ってもわたしの傍がいいでしょ?おばさん」

笑い泣きした顔で頷くウンサンの母。

ギエ「それで家はどこなの?寒いわ」

腕を組み家へ向かう二人。

ギエ「おばさん正直、わたしに会いたかった?会いたくなかった?」

笑顔で頷くウンサンの母。

ギエ「ウソね。それならどうしてメールの一つもしてくれないの?」

ウンサン、タンに報告の電話。

ウンサン「あ、わたし。今着いたの。二人は泣いて抱き合って大変だったわ。わたしの彼氏(あなた)はどこなの?」

タン「(彼氏と言う言葉に)へ!ヨンドに会いに来たんだ。話があって」

ウンサン「そうなんだ」

タン「明日迎えに行く。お前とお前のお母さんとウチの母さんと。ウン、明日会おう」

電話を切るタン。

ヨンドとの和解。

ヨンドの部屋。

ヨンド「あ〜、なんでこんなに焦らすんだ?」

タン「オレの母さんの話」

ヨンド「やめろ・・・オレたち、すまないとかありがとうとかそういうのはやめようぜ、互いに」

タン「ありがとう、すまなかった」

ヨンド「お前がそうするとオレが困るじゃないか」

タン「お前のことじゃない。俺の気持ちを言っただけだ。じゃな」

ヨンド「おい」

タン「見送りはいい」

ヨンド「オレの母さんは・・・お前のせいで逃したんじゃない。先に行っちゃっただけだ。けれどオレはその憎しみをかぶせるためにおまえが必要だった・・・ただそれだけだ」

タン「わかってる。行くぞ」

出入り禁止。

ミョンスの作業室でタンとウンサンのツーショット写真を見るヨンド。

誕生パーティーのものだ。

そのことに気付き必死で隠そうとするミョンス。

ミョンス「いつ来たんだ?飯は?」

ヨンド「もう全部見たんだけど」

ミョンス「見たんだな・・・おい、オレがあの時なんて言った?初恋は叶わないって言ったろ?言わなかったか?強制終了される前にオレの話を聞けばよかったじゃないか」

ヨンド「強制終了じゃないぞ」

ミョンス「お〜、笑わすな」

ヨンド「どこが笑える?」

ミョンス「オレが初恋を失敗したお前のために用意した」

ポスターを見せるミョンス。

ポスター『キム・タン、チャ・ウンサン、犬、出入り禁止、主人敬白』

と書いてある。

ミョンス「ドアの前につけておくよ」

ヨンド「犬は抜けよ。犬になんの罪が」

ミョンス「そうだろ、やはりチャウンサン、あの子は抜かなくちゃな。おい、だけどお前の初恋なのに」

ヨンド「殺すぞ!」

※ヨンドが言ったケ(ハングル文字)は犬のことで、ミョンスが勘違いしてケに横棒を一本付け足したケは『その子』と言う意味。犬に罪はないとヨンドは言ったのに、ウンサンを強調したミョンスに怒ったとも取れる。

急に柔道の練習に励むヨンド。

練習相手「突然なぜこんなに熱心なんだ?」

ヨンド「反則使わずに父さんに必ず勝たなければならないので」

練習相手「お前の実力では到底望めないだろう」

ヨンド「もっと頑張ります」

浜辺の刺身屋で。

ウンサン母「(筆談で)だからといって家を出てどうするんですか?技術もなくて、年齢も若くはなくて、世間が恐ろしいということも知らずに、ふ〜」

ギエ「おばさん、ここ感嘆符が2つよ!気分悪いわ〜・・・コップもさっきから空なのに注いでもくれないなんて、ひどいわ!」

(筆談なので感嘆符について怒っている)

ギエ「わたしもまあ、人生がこうなることはわかってた・・・他の女の家、他の女のかばん、他の女の夫・・・それを欲しがった罰・・・一人の男の妻にも・・・一人の息子の母にも・・・なることができなかったわ、わたし」

涙を浮かべてしんみりと話すギエ。

かなり酔っている。

ギエ「わたしちょっとトイレへ」

席を外したかと思うと浜辺で号泣しているギエ。

黙って隣に座るウンサンの母。

他の男と。

ウンサンがカフェに入る。

タン「おまえ、どうしてわかったんだ?オレはたった今電話をしようとしてたところなのに」

ウンサン「いつ来たの?わたしあなたに会いに来たんじゃないんだけど」

タン「それならどうして来たんだ?」

ウンサン「ある男性に会いに」

タン「くそ、誰だ?!こんな夜中にどんな奴に・・・」

そこに入ってきたのはウォンだった。

肩をすくめるウンサン。

3人は同じテーブルでウンサンの引っ越し先の相談をしている。

タン「おい、そんなのがどこにあるんだ?どうしてそこに引っ越す?」

ウンサン親子が帝国グループ本家に住み込みを始める前のアパートに戻ると話している。

ウンサン「メイドルーム以前に戻るのがわたしにとって始めであって日常だから」

ウォン「いいからアパートに入ったらどうだ?おまえが受けた傷と壊れた日常が、金で治癒するということはないだろうけど補償だと思って」

以前タンとウォンの間で取引した時に用意したマンションだ。

ウンサン「引っ越しの問題は母さんと十分に議論して、元々住んでいた街に行くって結論を出しました。ただ、応援してくださったことだけでも心強くありがたいです」

ウォン「応援したことはないんだが。誤りを正すというだけで」

タン「単にちょっとアパートに入って住むというのはダメなのか?オレがお前をそこに隠そうと、兄さんとどんな取引をしたかわかったら・・・いいわ!とにかく入れよ」

ウンサン「わたしがどうしてそこに入るのよ。あなたといつどうなるか解らないのに。わたしたちが別れたらその時整理する問題が複雑になるのよ」

タン「何?」

ウンサン「わたしは本当にあなたなしでは死にそうだから付き合ってるけど先のこと(未来)なんて解らないじゃない。だってそうでしょ?」

タン「オレもお前なしでは生きられないんだぜ?それがオレ達の先のこと(未来)なんだよ、ば〜か!」

ウォン「ちょっと、お前たち・・・」

タン「兄さんは黙ってろ。オレに任せて。(ウンサンに)おまえマジなのか?」

ウンサン「千年万年幸せだという保証がどこにあるの?わたしがあなたを振ることだって出来るのよ」

タン「うるさい!おまえダメだ。ついてこい!兄さん先に帰って!」

ウォンを置き去りにして席を立つ二人。

そんな二人の痴話喧嘩を笑って見てるウォン。

そしてそれに気づき急いで真顔に戻るウォン・・・。

ウンサンの母への挨拶。

ウンサンの母の前で正座するウンサンとタン。

タン「今までご心配をお掛けして本当に申し訳ありませんでした。お許し下さい。今後はこのようなことが絶対に無いように致します。父に許しを得ました。それでお母さんにも許しを得てウンサンと正式に付き合いたいです。わたしたちをお許し下さい。お母さん」

うつむきリアクションをしないウンサンの母。

そこに、別室にいたギエが入ってくる。

ギエ「あ〜、じれったい!どうして何も言わないの?おばさん今、うちの息子を反対してるの?雰囲気がそうなんだけど!」

ウンサン母「(手話で)悪いけどわたしは二人を許可することはできません。お宅とこれ以上関わりたくないんです。うちの娘は今までとても辛かったんです」

ウンサン「母さん」

(手話なのでウンサンにしか理解できない)

ギエ「アナタの母さん反対してるの?今・・・うちの息子はかっこいいでしょ?背が高くやさしいでしょ?ウンサンのことなら命をかけるでしょ!?うちの息子のどこが嫌なの!?」

ウンサン母「(手話で)うちのウンサンはキレイで優しくて勉強もできるわ」

タン「(ウンサンに)何とおっしゃってる?」

ウンサン「だから、その・・・」

ウンサン母「(手話で)おまえこれから門限は9時だよ。遅れてみろ!また今日のように手を取りあってきたらおまえはすごく母さんに殴られて死ぬと思え」

ウンサン「(通訳で)家には必ず帰って、手ぐらいは握ってもいいとおっしゃってるわ」

全く反対の意味を伝えるウンサン。

ウンサンを殴ろうとする母。

すかさずタンがかばって殴られる。

ウンサン「(耳打ちで)アナタが得意なやつ、やって」

タンをけしかける。

わざとらしく痛がり倒れるタン。

ギエ「おばさん今、うちの息子を殴ったの?」

ウンサン「タン大丈夫?すごく痛いでしょ?」

(この時初めてウンサンがタンを『タナ』と呼ぶ)

芝居を打つウンサン。

タン「あ〜、あ〜、許してくだされば大丈夫なようなんですが」

ギエ「許されないなら告訴しなさい、告訴しなさい!」

タンをもう一発殴るウンサンの母。

更に痛いふりをするタン。

ウンサンの母は靴下の毛玉を取り始める。

ウンサン「母さん、ありがとう」

笑みを浮かべるウンサン。

最後の一撃が許しだったようだ。

すかさず起き上がるタン。

タン「ありがとうございます、お母さん」

イベント。

もとの家に引っ越しトラックと共にやってくるウンサン。

すると、家からタンが出てくる。

ウンサン「どうしてそこから出てくるの?」

タン「どうして?オレは童話の本から出てくると思ったか?来てみろ、すぐ!」

ウンサンの目を手で塞いでいるタン。

タン「直進しろって、直進。直進がそんなに難しいか?」

ウンサン「あなたは人生真っ暗になったことがないからね」

タン「ただオレを信じて歩けって」

ウンサン「あ〜、ほんとにただ普通に入ってはいけないの?」

タン「やたら口答えするんだな。口答えすればオレが何をするか知ってるだろ?」

ウンサン「元々わたしの家だから知ってるけど、私の家にはイベントにぴったりな適切なスペースなんてないわよ」

PCのキーを押し映像を再生するタン。

すると壁に今までのウンサンの映像が流れ始める。

ウンサン「えっ」

タン「気に入った?」

後ろからウンサンを抱きしめるタン。

ウンサン「あんなのいつ探したの?」

タン「あれを手に入れたおかげでかろうじて息ができた」

CCTVの映像を見て言うタン。

ウンサン「こうして見てみるとわたし、案外映像映りが良いようね」

タン「最後まで感動したとは言わないんだな、おまえ」

ウンサン「わたしの好みはロマンスじゃなくてホラーだから。あるいはこんなの?」

タンの頬にキスをするウンサン。

そして『スリラー』という。

タン「そうだな。スリラーなら家で楽しめよ。(ニヤっと笑って耳元で)でも今はロマンスしようぜ」

ウンサン「やめて!」

タン「何をやめるんだ。家が二歩半しか無いんだから逃げ場はないぞ」

ウンサンを追い回すタン。

ウンサン「母さんがすぐに到着するわよ」

タン「大丈夫、ドアの鍵を締めればいいし」

鍵を締めるタン。

ウンサン「しないでよ!ちょっと何をするのよ!」

逃げ惑うウンサン。

学校の食堂。

イェソル「ちょっと、ぶつかったのなら謝りなさいよ!」

ラヘルに言うイェソル。

女子1「なんて家庭教育なのかしら。そういえば、母親も破談、娘も破談、まあ、家庭がないから家庭教育もないのね」

女子2「何を睨むのよ。もう聞いたわよ。ヨンドの父とアナタの母の結婚が壊れたって」

女子1「キムタンの婚約者だから我慢してただけで、本当にアナタが怖くて我慢してきたんじゃないんだからね」

スプーンを叩きつける音。

ヨンド「チェヨンドの妹では足りないか?オレが最近いい子すぎたよな」

女子たちを散らす。

ヨンド「生徒たちが見てるぞ。立てよ。出よう」

場所を移して。

ヨンド「仲が良いように見せようぜちょっとだけ。そうすれば中途半端なやつは動かないだろ」

ラヘルの肩を抱くヨンド。

ラヘル「またよくないことをする考えはないの?髪もちょっと上げて」

ヨンド「オレは今が好きだけど?」

ラヘル「変よ、考えなおして。生徒はアナタの前で以前ほどビビってないわ」

ヨンド「けれどまだシスターを救うだけの薬効はあるぞ」

ラヘル「わたしがどうしてまだアナタのシスターなの?」

ヨンド「オレがお前の兄をするからだろ。時々期待しろ」

ラヘル「アナタ最近ヒマに見えるわよ。チャウンサンとは終わったの?」

ヨンド「終わってないって言っておこうか。相手の同意も意見も必要なくてオレだけ終わりなら終わりなんだが」

ラヘル「アナタの父さんの会社、変わりないの?」

ヨンド「まだな」

ラヘル「わたしがあなたを慰める必要がなければいいわね・・・わたしたち互いを慰めるために一学期を過ごしたようね。授業に行くわ」

ウンサンと出くわすヨンド。

ヨンドは目も合わさず去っていく。

試験結果の発表。

ウンサンにボナが近づく。

ボナ「あなた今からわたしのもとに来ないで。遠くに去りなさい」

ウンサン「どうして?」

ボナ「成績表が出たじゃない。わたしのチャニョンがアナタが消えて気苦労して、ユラヘルに負けたらわたしフックするわよ!」

呆れ笑いするウンサン。

成績表の前ではタンがコートで用紙を隠していた。

タン「おい、行けよ!消えろって」

そして用紙を破って逃走する。

ウンサン「ちょっとキムタン!あなたまたビリだったの?そこに止まりなさい!いつまでもわたしの後ろにいるんじゃなかったの?!」

その言葉を聞いて立ち止まるタン。

タン「オレの前にいけよ、それなら」

ウンサン「お〜、自分で言ったことは守るのね」

スキップしながら近づき、タンの手からくしゃくしゃになった成績表を強奪して走り去るウンサン。

タン「おまえ恥ずかしくも色仕掛けを使って、卑怯だぞ!」

その後ウンサンを捕まえるタン。

タン「どこに隠したんだ?優しく言っているうちに紙を出せよ」

ウンサン「そばに来ないで。ウチの母さんがアナタとは手もつなぐなと言ったの」

タン「今、お母さんはいらっしゃらないじゃないか」

ウンサン「死にたいの?どうして成績表を引き裂いたのよ?」

タン「まだ自分の成績と正面から向き合う心の準備ができてないの、オレは」

ウンサン「どうせすぐバレるんだから隠しても無駄でしょ?」

タン「トラウマがあるんだって。出せよ!すぐ」

ウンサン「やっぱり100位なのね?何か飲む?」

自販機の前で財布を取り出すウンサン。

そこにメールが入りスマホを見ようとする。

タンはさっと財布を奪い取る。

ウンサン「ちょっと今、何したのよ。わたしの財布返し・・・」

ウンサンの手を掴むタン。

タン「ほれみろ。また力で勝とうとする」

ウンサン「いったいなんでこの騒ぎなのよ?返してよ!」

タン「互いの信頼のために出さないほうがいいと判断した。俺達長く付き合いたいだろ?」

ウンサン「なんて子なの、キムタン」

タン「メッセージが来たじゃないか、確認しろよ。待ってるだろ」

チャニョン『キムタンのせいで知る権利を奪われた帝国高校の生徒たちのために率先してみた』

とのメッセージとともに成績表が送られてきたのだ。

ウンサン「チャニョンが成績表をアップしたのよ。ちょっと待ちなさいよ!」

タン「ユンチャニョン、くそ!」

ウンサン「一緒に見ようよ」

けっこうくだらない書き込みばかりがある。

ボナは最初に書いたわよとチャニョンにメッセージを送っている。

ウンサン「何よ?みんな、ククク(笑)なの?ミョンスがアナタの王座(100位)を奪ったのね?」

画面をスクロールさせるウンサン。

タン「下げるな、下げるな!」

ウンサン「お、キムタン、あなた、50位よ!」

タン「何?オレが?」

ウンサン「どういうこと?」

タン「(得意げに)俺の人生にもついに中間がきたぜ!実はオレは今まで頑張らなかっただけなんだ」

晴れやかな顔のタン。

ウンサン「お、チェヨンド、27位よ!」

タン「97位だろうが」

ウンサン「27位だってば!チェヨンドかっこいいわね。今回は本気でやったみたい」

タン「おい、期末テストだけが試験なのか?オレが次に何位になると思ってる?その上で27位なんかをかっこいいと?100位から50位になって次は何位になると?」

ウンサン「チャニョンがいる限り難しいと思うけど?こうしてみるとチャニョンもすごくかっこいいわ」

タン「かっこいいなら行って付き合えよ」

ウンサンをどつくタン。

笑顔のウンサン。

去ろうとしたのにいきなり振り返るタン。

タン「おまえは何位なんだよ?」

逃げるウンサン。

タン「そこに止まれよ、おまえは何位なんだよ!殺すぞ!」

初勝利。

ヨンドとトンウクの柔道対決。

ヨンドはトンウクに初めて勝利する。

ヨンド父「初めてわたしに勝ったな。望みは何だ?言ってみろ」

ヨンド「母さんです。母さんがどこにいるのか教えて下さい」

トンウク「残念なことだがそれは聞いてやれないな。わたしもおまえの母さんの所在を知らないんだ」

ヨンド「それは良かったです・・・」

また一人でトッポッキを食べに行くヨンド。

おばさん「学生さんがチェヨンドなのね」

制服の名札を見た食堂のおばさん。

ヨンド「はい、わたしをご存知ですか?」

おばさん「顔は何度か見たから解るけど名前はわからなかったわ」

振り返り何かを取る。

おばさん「これ持って行って。ヨンド君が来たら渡してと言われて預かってたの」

名刺を渡すおばさん。

ヨンド「誰がですか?」

おばさん「なんというか綺麗なおばさんだけど。受け取ってちょっと経つけど、わたしがうっかりしてて。だれなの?」

ヨンド母『元気でいる?ヨンド』と母の声。

『いいや』とヨンドの声。

タンの計画。

ボナの前に現れたタン。

ボナ「なによあなた。今、チャニョンがいないタイミングでわたしに接近したの?」

タン「チャウンサンがいないタイミングで接近したんだが。おまえチャウンサンの好みについてちょっとわかるか?」

ボナ「わたしがあの子の友人でもないのにどうして分かるのよ?なに?プレゼントするの?まあ、あの子に足りないものは多いからね。トゥシューズもいつも私に借りに来るし、携帯ケースも割れてるし、わたしのみみずくクッションも可愛いって言ってたし、財布もなくしてて無いし、なんだか変態が財布を盗んで行ったって言っていたわよ」

すごくよく知っているボナ。

タン「その変態はオレなんだけど?」

ボナ「そう、あなたの話をしたのよ」

タン「財布を買ってあげたくてわざとそうしたんだよ」

ボナ「(半分呆れて)まあ、すごい!」

ヒョシンの策略。

ヒョシン「ひとまず、今週に外部協力要請が2件ある。一件はセリュン高で放送祭をするための装備と女子アナウンサーの要請だがどうする?」

ボナ「セリュン高なのにどうして聞いてくるんですか?当然貸してあげるでしょ」

ウンサン「どうして当然貸してあげるの?」

ボナ「セリュン高の放送部の生徒はイケメンだらけなのよ」

ウンサン「ふっ、あなた彼氏がいるじゃない」

ボナ「ちょっと、わたしに彼氏がいるからってその子がかっこよくてはダメなの?」

ヒョシン「それじゃあ、女子アナウンサー(ボナ)はセリュン高とミーティングして決めて。ウンサンはいっしょに行くか?」

ウンサン「わたし、バイトがあって」

ボナ「もうバイト始めたの?それならあなたのバイト先で会えばいいわね。行きましょ」

ウンサン「そうね」

もう早速歩き出してる二人。

ウンサン「ところで、本当にかっこいいの?」

ボナ「そうだって。あなたわたしの目が高いの知ってるでしょ!」

ヒョシン「(二人に)気をつけて行ってこいよ〜」

ヒョシン「(独り言)タンはどこにいるんだ〜、チャニョンは近くにいるはずなんだがフフフ」

電話をかけ始める。

痴情マニアだ。

ボナ「(ウンサンに)新しく入ったプロデューサーよ。挨拶して。こちらセリュン高のPDとアナウンサー」

それぞれを紹介するボナ。

ウンサン「アンニョ〜ン」

手を挙げるウンサン。

セリュン高のアナウンサーも手を挙げる。

男子生徒「君の学校の生徒はみんなかわいいんだな」

ウンサン「ボナとわたしが特に可愛い方よ!」

男子生徒「君、性格もいいね。彼氏はいるの?」

そこに、

タン「ヨボー!」

※『ヨボ』とは夫婦間でお互いを呼び合う時の呼称。

タン登場。

チャニョンも一緒だ。

真顔になる4人。

タン「(セリュン高二人に)こいつ結婚してるんだぞ。空気読めないのか?とっとと行け」

男子生徒「僕達、放送祭の話を始めてもないんだけど」

男子生徒2「おい、今日はやめて行こう。また連絡するよ」

チャニョン「そんなことは考えるな!」

凄むチャニョン。

追い出されるセリュン高校の2人。

4人で座っている。

タン「(ウンサンに)お前、髪に何つけてんだ?」

慌てて髪のリボンを取るウンサン。

タン「イボナ、おまえはいったい真っ昼間に人の彼女を連れて何やってるんだ?」

ボナ「(タンに)チッ、あきれるわ」

チャニョン「(タンに)どこに不満をぶつけてんだ?おまえチャウンサンがなんだと思ってるんだ?申師任堂にでもなると思ってんのか?こいつは男が欲しいんだ」

※申師任堂(シンサイムダン)5万ウォンのモデルにもなっている良妻賢母の代名詞。チャニョンはお金にも掛けているのか?

ウンサン「ユンチャニョン、あんた話を作らないでよ!」

ボナ「チャウンサン、あんたなんでチャニョンに向かって大声出すの!」

タン「イボナ、おまえが何で大声出すんだ?」

ボナ「(タンに)何で私に言うの?わたしはあなたの彼女じゃないわ」

チャニョン「(ボナに)とにかく、他の男を見るのは止めろ」

タン「(ウンサンに)そうだよ」

ウンサン「(タンに)まったく、心の狭い男だわね」

ボナ「呆れるよね、キムタン」

チャニョン「(タンに)顔だけ立派で何すんだよ?外見?ピッタリ3ヶ月で飽きるって」

ウンサン「(タンに)男はやっぱり頭が良くないとね」

笑顔でタンに釘を刺すウンサン。

タン「とにかく!嫉妬に狂った男子高校生二人ということで会議のまとめとしよう」

※チャニョンもタンも同罪のはずなのに、結局タンだけ責められる結末に。

タンの趣向。

カフェからの帰り。

ウンサン「何ですって?」

タン「オレの好みなんだよ。オレは互いに拘束して執着するのが好きなんだって。おれは他の奴らがお前をちょっと見るだけでもみんな殺したくなるんだ。やつらがお前のことを考えるだけでも腹立つんだよ」

ウンサン「なんで腹立つのよ」

タン「お前は男を知らなすぎなんだ。男はみんな同じなんだぞ。おれだけが違う」

ウンサン「あんただけが例外なの?信用力についても?」

タン「オレはお前を純粋に好きなんだ。一生好きなんだ」

ウンサン「純粋?」

タン「おい、オレの心は白いぞ」

ウンサン「それをどうやって証明するのよ?取り出して見せてくれるの?」

タン「もういい。とにかくお前にはガッカリした、チャウンサン」

踵を返すタン。

ウンサン「やあキムタン!ホントに帰っちゃうの?わたしの財布はいつ返してくれるのよ?」

タン「今」

懐から出した袋を投げるタン。

ウンサン「これは何?」

タン「財布。今までみたく状況のせいじゃなく、オレたち二人のことで喧嘩したから嬉しくて死にそうなんだ。こんな喧嘩なら毎日しようぜ。じゃな!」

笑顔で手を振るタン。

いつも二人を阻む壁のせいでぶつかってきた二人。

そしてこんな痴話喧嘩が出来ることに初めての幸せを見出す18歳の二人。

新しい財布をゲットしたウンサン。

箱を開けてみるとピンクの可愛い財布が。

そして中にはタンの顔写真がセットしてあった。

ウンサン「(独り言)あ〜、ちゃっかり!」

ユン・ジョホなしに。

ユン副社長が思い出のカフェを訪れる。

すると、そこにはエストもいた。

帰ろうとしていたエストだったが、再び席につく。

エスト「副社長になったって?」

ユン副社長「お前はチェ代表との結婚を破棄したって?」

エスト「ホテルゼウス、検察調査が入ったから」

ユン副社長「懸命だな。20年前も今も。ラヘルは大丈夫か?」

エスト「破談になったこと?ラヘル泣いてたわ。泣かない子なのに・・・タンをすごく好きだったみたい。けれど愛する方法を知らないのよ。そんなことは教えなかったのわたしが。わたしもなんなのか知らなきゃね・・・ラヘルを見るとふと、わたしはどうしてこのように生きてるのって思うの」

ユン副社長「どう生きてるんだ?」

エスト「お金を沢山稼ごうと生きて、金持ちとして生きて、ユンジョホなしに生きて・・・」

自分の足で。

ギエ「ワインを減らしなさいってうるさい息子が今日はどうしたの?」

タン「これからは母さんにワインより楽しいことができるから祝い酒だよ」

ギエ「さりげなく、一杯やろうって?」

タン「お酒は父親から学ぶものじゃないか。おれにはもう、母さんが父親だ」

ワインに口を付けず笑顔を失くして座るギエ。

タン「引っ越しはいつしようか?兄さんは母さんがいいときに入って来いって」

ギエ「引っ越ししないわ母さん。母さんはもういいお家なんてものは欲しくないの。あちこち旅をするの。ボディーガードを従えてデパート、ホテル、デパート、ホテル、そんな旅行じゃなくて自分の足で歩いて世界中の空を見て歩くの。とりあえず明日はカンナムの真ん中を歩いてみるつもりよ」

タン「オレと一緒に行こう。オレが手を握ってあげるからさ」

ギエ「そうね。明日一日は母さんの手を握って。あなたは父さんの元へ行きなさい。父さんは一人でいるじゃない」

タン「帰らない。母さんがこれからは父さんだから」

ギエ「そう言わないで」

昏倒。

広い家に一人残されたキム会長。

頭痛がする。

昔のウォンとタンの幻影を見る。

幼きタンが近寄ってきたので抱こうとするも、ウォンの視線を感じ抱きしめられない。

再び頭痛が襲い倒れるキム会長。

病院へ。

キム会長が入院した病院へ行くキム家の人々。

医師「くも膜下出血だ。手術は今はできない」

ウォン「今できないって?だったらあのように昏睡状態のままなのですか?」

医師「昏睡状態だから手術は厳しいんだ。原因となった血管の場所もかなり良くない。脳浮腫のせいで今は手も出せなくて。意識が戻ってから手術をするしか」

タン「目覚めなければ?」

医師「目覚めることを祈ろう」

キム会長の手をずっと握っているギエ。

ジスクの企み(乗っ取り)。

理事長室にとどまっているジスク。

弟「どうしたんですか?動きましょう」

ジスク「大げさに騒がないで。考え中だから」

弟「20年考えていたんだろ?どんな考えをするんだ?目覚める前に我々が先に打たなければ。パク弁護士を呼んで会長の議決権委任から提案して」

ジスク「軽率に動いては10ウォン一枚引き出せず告訴に裁判に醜態を晒すこともあるの」

弟「これよりいい機会があると思う?ウォンは今正気じゃない。この機に片付けなければ。次の機会はないよ姉さん。キム社長にしても我々の計画気づいたか? 姉さん今までこの家であらゆる恥をかかされながら戸籍を守った理由はなんなんだ?今日を待ってたんじゃないか!姉さんがその家で佗びしかった歳月、もう補償を受けないと」

ジスク「受けないとね。 きっちり補償受けようとしてるのよ・・・あなたは病院の状況を調べて。わたしは他に連絡するところがあるから」

ユン副社長の助言。

ユン副社長「今の状況でこんな話は申し訳ありませんが・・・」

ウォン「しましょう、こんな話。父さんが息子の人生まで握って揺さぶりながら守ろうとしていた会社なんだから」

ユン副社長「会長が今の状況を継続すれば会長の議決権が、全て理事長に委任されます」

ウォン「父さんの議決権を委任されて父さんの解任権で株主総会開くでしょう。法的配偶者という座はそのような座ですから。株主総会開くのは防げないのですか?」

タン「まさかそれで病院に来ないのか?」

ウォン「おまえは父さんを見守ってくれ。オレは会社に戻って夜に来る」

頷くタン。

ユン副社長「一旦、会議を招集します」

ギエの退出。

タン「母さん、父さんが目覚めれば電話するよ。ホテルに行って」

ギエ「わたしの心配はしないで。父さんが目覚めて母さんを探したらどうするの」

タン「母さんを心配してるんじゃない、会社を心配してるんだ。理事長の雰囲気がちょっと尋常では無いようなんだ。ここで母さんと合わないようにしたほうがいい。兄さんとオレと父さんが不利になることもある」

ギエ「は〜、そうは考えなかったわ。電話して。母さんわかるわ。大丈夫。父さんをどうかお願いね」

退室するギエ。

大きなため息をつくタン。

ジスク「わたしはウォンとタンを信じてないんです。わたしの夫が生涯をかけて築き上げた帝国をあの子達がちゃんと守ることができるのか疑っているんです」

義弟1「わたしも同じ考えです。お姉さんならわかりませんが」

義弟2「こんな取引、いい人ぶる必要はありませんよお姉さん。素直に正確にお話ください」

ジスク「それならそうしましょう。最初から会長はその座にいたわけではないわね。会長もここにいる叔父様方や義弟たちの間で毒々しい戦いで成し遂げた勝利でしょう。けれど永遠の勝利があるでしょうか?戦争は勝つことの出来る人がまた始めればいいんです。御存知の通りわたしには世話をしている息子も付いている家族もありません。永遠に失ったと思っていた機会、わたしがまた差し上げられるようですわ」

親族「その言葉はつまり・・・」

ジスク「並んでください。わたしに。ウォンとタンが分けて持てば死ぬ前にこんな機会二度とありませんから」

税務調査。

母の名刺を見つめるヨンド。

眉を掻いたあと皿洗いに行く。

スタッフたちが税務調査の件でざわつく。

ヨンドは父のオフィスへと急いで向かう。

PCや書類が回収されている。

ヨンド「あんたたち何やってんだ!」

調査官「こうしてはいけません」

調査官に取り押さえられそうになるヨンド。

調査官を引き離して

ヨンド「父さん、どうして?なんでだよ?」

父「チェヨンド、出ろ!」

ヨンド「こいつら、どうしてこうしてるんだよ、父さん!」

父「行けと!!!出ろ、いますぐ」

調査官に連れて行かれるヨンド。

目線はずっと父のほうを向いていた。

トンウクもまたずっと息子を見ていた。

宣戦布告。

病室のタン。

一瞬躊躇したが父の手を握る。

そこにジスクがやってくる。

ジスク「あなたの母さんはどこに行ったの?家族以外出入り制限しているからそれでいないの?」

タン「父さんの家族のお母さんはずいぶん遅かったですね」

ジスク「処理すべきことがかなり多いわ。会長、目覚める見込みが無いので」

タン「目覚めますよ」

ジスク「わたし来ましたよ。いいわね。あなたを見守る息子たちも居て。この日のために耐えて待ってよくやったようねわたしは。あなたがこうして横になってるのでタンの法的代理人はわたしになったわ。それが戸籍でしょ」

タン「父さんがくれた株式に手を出さないでください。わたしの株式の法的代理人、兄さんに変えます」

ジスク「そう、そのようにして。あなたとあなたの母さん、無一文で退く程度に腹いせするのも悪くはないわ。ギブ&テイク覚えてるでしょう?どうせ学ぶのならひどく学ぶのもいいわね。奪って奪われて踏んで踏まれる欲望の世界に来たことを歓迎するわ、息子」

ウォンがやってくる。

ウォン「お忙しいでしょうに、いらっしゃったんですね」

ジスク「会長の顔を見たから行かないとね。会長に伝える言葉はタンに伝えたし。今見ると、あなた達すごく似てるわ」

言い去るジスク。

ウォン「どんなことを聞いたとしても気にするな。おまえはまだそんな歳じゃない。今日は俺がいるから行って少し寝てこい。明日下校して荷物をまとめてまた来い」

タン「ああ」

父を一瞥して退出するタン。

ホテルの部屋に戻ろうとしたタンだったが、思い直して屋上へと行く。

真っ暗な街を眺めるタン。

ふと左側を見るとヨンドが居た。

互いに沈んだ表情だ。

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