王冠をかぶろうとする者、その重さに耐えろ〜相続者たち〜
第18話

タン「お前にやるよ・・・」

ヨンド「おまえ、なんて言った?このやろう!」

タンの胸ぐらをつかむヨンド。

続けて

ヨンド「死にたいか?おまえが壊れる資格あるのか?」

タン「資格はない・・・やってられないよ、ヨンドヤ・・・」

数年ぶりに仲の良かった頃のように『ヨンドヤ』と名前を呼ぶタン。

口から血を流し、はばかりもせず涙を流しながら歩道に倒れ込むタン。

それを聞きヨンドはタンを投げ捨てる。

弟。

ウォン「報告を受けられたでしょうがユン室長を帝国建設副社長で発令を出しました」

会長「バカな人事だ。ようやっとその程度の器だったんだな。天下の名馬・赤兎馬 (せきとば)も、呂布(りょふ)がいなければ、口の利けない獣であるだけだ」

ウォン「赤兎馬が呂布を乗せていたのは事実ですが、関羽ともっと長く、より多くの戦場を飛び回ったでしょう」(※三国志の引用です)

会長「もう行け」

ウォン「父さんに会いに来たのではありません」

そこにタンが帰ってくる。

ギエ「なんてこと!この子またどうしたの?また喧嘩した?また?どうしようとこうなの?ホントに」

顔の傷がひどくなっている。

会長「愚か者め。一体いつまでこうしてるんだ?一日二日なら可愛いが」

ウォンも驚きを隠せない。

タンの部屋へ行くウォン。

ウォン「起きろ、病院へ行く」

部屋には血のついた包帯が散らばっている。

タン「出ろ」

ウォン「おまえはオレと取引中だ。いうことをなんでもするという言葉、オレがするすべての行動にケチを付けないという意味で・・・立てよ」

タン「出ろ、出ろって!!!」

ウォン「一体いつまでこうするんだ?おまえがこうしてこの家で変わることは何も無いぞ。おまえが一番良く知っていて・・・」

タン「兄さん、おれ、アメリカにいつ行くんだ?オレは本当に死にそうだ。オレをただ送ってよ。助けて。オレをどうか生かしてくれ・・・」

泣くタン。

ホテルに戻るウォン。

ヨンドと出くわす。

ウォン「チェヨンド止まれ。タンがおまえと争ったのか?」

ヨンド「タンがぼくに一方的になぐられたのでしょう。殴ったのは殴ったので告訴したいならしてください」

ウォン「おれの弟をどうして殴ったんだ?」

ヨンド「はっ、申し訳ございません。兄さんがいる子は殴ってはいけないのにタンに兄さんがいることをうっかり忘れていました。タンがあまりにも欠点を出さなくて」

ウォン「タンには兄だけいないんじゃなくて友人もいないようだな。お前も薬を塗れ。傷になるぞ」

SNS。

期末試験のために英語の勉強をするボナとチャニョン。

ボナが英文を朗読するがチャニョンの訳の答えがおかしい。

チャニョン「何かが間違ってる」

ボナ「あなたが間違ってるんでしょあなたが!期末考査が鼻先(目の前)なのにしきりにわたしの写真だけ眺め入ってどうするのよ?いや実写が隣にいるのに、どうしてしきりに2Dを・・・」

チャニョンのスマホを奪うボナ。

ボナ「は〜?あなた今までチャウンサンのSNSを見てたの?わたしを隣において?」

チャニョン「ウンサンのSNSに手がかりになることがあるかなって」

ボナ「Oh My God!この子おかしいんじゃないの?『帝国グループ滅べ!』『あなた、どこに いる?』『わたし、水のんでるんだけど』どうして自分が聞いて自分が答えてるの?」

チャニョン「それはウンサンじゃないようで・・・」

(チャニョンはそれがタンとの会話であることを知っている)

ボナ「どういうことよ?この子のアカウントなのに・・・『キムタンはほんとにかっこいい』チャウンサンが書かなくてこんなこと誰が書くのよ?その下も。『どこにいる、チャウンサン?』自分が自分をどうして探すの?」

削除。

その頃、ウンサンは自分のSNSを見ていた。

タン『どこにいる?チャウンサン。会いたい』

タンの書き込みを見る。

他の写真も見る。

全て自分の後ろ姿だ。

タン『おまえがいたところにいつでもオレもいたんだ。だから少し待っていて。すぐに行くよ。おまえがどこにいようと振り返って見ればオレが必ず立ってるよ』

ウンサンはSNSを操作する。

『本当に削除されますか?』とのメッセージが表示される。

そして少し躊躇した後に涙を流しながら左側の『削除』を選択する。

そして、すべての写真を削除してしまう。

ウンサンのSNSを見ていたタンは画像にアクセス出来なくなったことに更に打ちのめされる。

タンとヒョシン。

とあるカフェ。

ヒョシン「美味しいのを特別に選んだ。飲めよ。手段と方法を選ばず飲ませられる前に」

ジュースを差し出すヒョシン。

タン「ウンサンもいつもこれを買ってくれたのに」

ヒョシン「ウンサンが買ってくれた?財閥の息子だというやつが・・・もらって飲んだのか?」

タン「返す機会があるだろうと思って」

ヒョシン「(タンの顔を指して)喧嘩で疾風怒濤の時期を表現するのはすごくクリシェ(陳腐)じゃないか?きれいな顔がまるで台無しだ」

タン「面倒だからちょっとやめて、行って勉強でもしなよ。再試するなら期末試験をしっかり受けなきゃならないって」

ヒョシン「予め言っただろ。病院のメシはまずいって。幼い奴が体を壊してはだめだ」

タン「死ぬ考えはないから小言もやめて」

ヒョシン「本当に耐えられないなら捕まえてくるか。変わることはなくても事故を起こせばはるかに息を吸うのは楽なんだが」

トンへにやってきているヨンド。

ウンサンの母とすれ違う。

ヨンド「こんにちは、お母さん」

当惑するウンサンの母はタンの家の門の前であったことを思い出す。

コートの隙間から見える制服で帝国高校の生徒だと分かる。

ヨンド「ウンサンに会いに来たのに、家にいないようです」

一度は帰れという素振りをした母だったがヨンドを家に招き入れ食事をごちそうする。

食べてというジェスチャーをする母。

ヨンド「いただきます。お母さんも一緒に・・・」

ウンサン母「ウンサンはソウルに行ったのよ。学校に書類を提出するものがあるって」

メモに書く母。

食事を食べ始めるヨンド。

仕草でおかずを勧める母。

ヨンド「ありがとうございます・・・。すごく美味しいです」

少し涙目のヨンド。

ウンサン母「(筆談で)同じクラスの友達?ウンサンと親しいの?」

ヨンド「ぼくが好きなんです。ウンサンを・・・」

複雑な表情の母。

キム会長の呼び出し。

ウンサンは学校ではなくキム会長に呼ばれていた。

会長「海岸散策路がとても美しいところに引っ越したのだな。そこでまたタンに会って」

ウンサン「わざわざそうしたのではなく」

すでに涙目のウンサン。

会長「わたしはこうだからお前を地球の反対側に送ろうとしたのだ。わたしとの約束を破って逃げた時にはよくわかっただろうと、わたしはお前を信じてそのままにした。だけれどわたしの前でタンに会ったという話をどうしてこうも図々しくするのだ?」

ウンサン「タンは・・・」

会長「どこで恐れもなくその名前を口にするのだ?」

それでも続けるウンサン。

ウンサン「優しく、正直で、温かい子です。それでわたしが本当にすごく好きなんです」

会長「どうしてこうも分をわきまえない?」

ウンサン「わたしがタンを好きなのは誤りではないからです」

会長「わたしのお金を受けて、わたしの恩をこうむって、わたしの息子を好きなのは誤りだ」

ウンサン「(借金を)返していただいたお金は必ずまたお返しします。その代わり気ままに下さったのでわたしもわたしの能力の限りわたしの暮らし向きのほどに怠けずに返します」

会長「すべて返したらまた会おうとでもするのか?幼いものがどうしてこうも恐れがない?」

ウンサン「タンを・・・好きだからです。わたしは今も変わりなくタンが好きです。会長がどんなに恐れを抱かせてもどんなに怖くても、あの子が嫌いだという嘘はつけません。けれど会うなとおっしゃるから会いません。だからわたしをもう呼ばないでください」

涙を流すウンサン。

当惑する様子のキム会長。

ウンサンの後ろに。

会長と会った帰り道。

ドリームキャッチャーの店の前に立つウンサン。

お店は貸し店舗になっている。

店の様子をしばらく眺めるウンサン。

タンが小道を歩いている。

そして、ウンサンが目に入る。

ウンサンが振り向くと、目の前にタンがいた。

互いに歩みを進め近づく二人。

けれど一言も言葉をかわさずにすれ違う。

しばらく歩き、思い返したタンはウンサンを探しに戻る。

そしてバスステーションまで行き急いでバスに乗り込んだタンは、通路を挟んだウンサンの隣に無言で座りトンヘまで行く。

そしてウンサンの後ろを歩く。

いつもそうだったように。

家に着いたウンサンはしゃがみ込み涙する。

けれど一瞬そうしたかと思うとタンを探しに外に出る。

見当たらないタン。

あたりを走って探すウンサン。

タンが見つからず落胆して帰路を歩くウンサン。

すると道の途中にタンがいた。

タン「どうして探した?」

ウンサン「話しかけないで」

近づこうとするタン。

ウンサン「来ないで」

踵を返すウンサンに近寄り後ろから抱きしめるタン。

ウンサン「やめて」

涙を流すウンサン。

タン「チャウンサン、オレもお前を(このまま)置いていけない・・・どうしたらいい?」

タンの腕を振りほどき無言で去るウンサン。

侮辱。

ギエ「あなた今、なんておっしゃったの?」

会長「その血はどこに行くのだと言った。恐れもなく、案内デスク女子職員が最上階の会長室の敷居を越えてきた熱い血はどこに行くのかと」

ギエ「どうしてそんなこと言うの?」

会長「どうしてできない?母も息子も贅沢でおこがましい。他人は想像もできない人生を生きていて何をこうもたった一つも諦められないのかというのだ」

ギエ「来いといったじゃないですか。来てもいいって。あなたが言ったんじゃない。会長室はもっとも上の階だとあなたが言ったんじゃない」

会長「だからわたしは今このザマなんだ。安く輝くものに惹かれ家風がとても滑稽になった」

ギエ「会長!」

会長「タンに対してしっかりと諭す。なにを選べばいいかわからない時はもっとも高いものを選ぶのだと。安物ほどキラキラしてるから父の二の舞いになるなと」

ギエ「卑怯よあなたは。あなたにとってわたしは何なの?」

会長「今まで話したではないか。なにをまた聞く」

破顔して泣くギエ。

部屋に戻りその後泣きながら装飾品を外す。

母からの『ヨンドヤ』。

結婚式用の衣装をキャンセルしに来たラヘル。

もちろん母の分もキャンセルする。

そこにヨンドもやって来て同じくキャンセルする。

もちろん父の分もだ。

一旦確認してくると店員。

ヨンド「結婚も壊れて婚約も壊れて、おれはセクシーな妹を失ったな。残念ながら」

ラヘル「心配しないで。あなたが残念がらないようにセクシーさは失わないわ」

ヨンド「ホントに妹一人は気に入ってたのに」

ラヘル「今日のようなうれしい日には一緒にご飯でも食べましょ。セクシーな寿司の店を知ってるわ」

ヨンド「そそのかすなよ小娘が。もう妹でもないのにオレがなにをすると思って?」

笑みを浮かべ呆れるラヘル。

ヨンド「行くところがある。今度食おうぜ」

ラヘル「どこに行くのよ?」

ヨンドはトッポッキの店に一人座っていた。

ふと、とても大切な落書きを見たような気がして少しづつ目線を壁に向ける。

『元気でいる?ヨンド(ヨンドヤ)』

母が最後の日に書いたものだった。

ベッドの中にウォンとヒョンジュ。

ウォン「まだ願いはないのか?」

ヒョンジュ「あったら聞いてくれるの?」

ウォン「言えよ、聞いてやる」

ヒョンジュ「聞けないようだけど」

ウォン「もしかして結婚か?」

ヒョンジュ「そんなつまらないこと?」

ウォン「結婚がつまらない?」

ヒョンジュ「(自分のせいで)見合いさせたの悪かったわ」

ウォン「どうして一つも聞かないんだ?名前は何?何歳?キレイなの?とか」

ヒョンジュ「まあそんなことはわたしも別に大したことでは・・・」

ウォン「わかってるよ」

ヒョンジュ「どこの家の娘なのか気になるわ」

ウォン「オレがタンのようにしたらオレたちこうはならないのかな?」

ヒョンジュ「タンがどのようにしてる?」

ウォン「荒れ狂っては誰にでもみんなに当たり散らして壊れて崩れてむちゃくちゃなんだ」

ヒョンジュ「あなたはそうできないわ」

ウォン「どうして?」

ヒョンジュ「あなたは世界で最も高いところを夢見るけど、タンはウンサンが自分の世界になるのを夢見るから・・・妨害しないわ。手を振ってあげる。あなたは登って行くわ」

ウォン「登って行く最中だ。少しだけ我慢してくれ」

ウォンの助言。

本屋でバイト中のウンサン。

『その時、人々の間をすり抜け、繋ぎ合う手と手。逃さないよう力を入れてくれた、その骨と筋肉と血管が、わたしの知る愛のほとんど全てよ。それ以外に、またどんな愛があるだろう?ただ、その手を、放すことができなかったという事実のほか・・・』

ウンサンは本の一節を窓に貼る。

まるで自分とタンのことのようだ。

その時、店に一人の客が。

ウンサン「いらっしゃいま・・・」

入ってきたのはウォンだった。

カフェに場を移す。

ウォン「タンが行き来したようだが会ったか?オレにはお前に会いに行ったって。会ったのならわかるだろうがタンは最近めちゃくちゃだ。それはもしかしてお前のせいだと考えが及ばないか?オレはお前の責任もあるとみるんだがどう思う?ここにこうしていて学校には通わないのか?タンは?会いたくないか?我慢してるのか?忘れたのか?答えてくれればオレも準備した言葉を言えるんだ」

ウンサン「会いません。会わないです。忘れればいいじゃないですか。忘れる最中なんです。おっしゃりたいことは何ですか?わたしは仕事中なので時間がないんです」

涙目のウンサン。

ウォン「いつ戻るんだ?元々いた場所に」

ウンサン「えっ?」

ウォン「おまえがここにいることは父の誤りでオレとタンはそれをよくわかってる。だからおまえは望むことを要求してもいいということだ。オレは当然のことをしに来たのだから。どうする?決定するのが難しい時は遠くを見ずにただ明日だけを見ろ。明日すぐにしたいことを考えれば答えが変わるから・・・。タンの隣に戻る言い訳が必要なら、期末試験はどうだろう?勇気が出ない時には、小さな言い訳に活路(期待)を見出すのも方法なんだぞ」

ワインセラーにいるタンに会いに来たウォン。

ウォン「おまえはオレがしろといったことを全てすると言ったな」

タン「ああ、アメリカに行くよ。いつ出国すればいいんだ?」

ウォン「オレがおまえに望むものの一番はおまえが期末試験をしっかり受けるということだ。学校に行け。今回もビリ・・・ハァ〜」

そこまで言いかけてため息をつくウォン。

ウォン「あの女の子が書いたようだ。あのワインはオレのだと話をしたんだが、あの間に置いたのを見るとおまえに伝えてほしいという意味だろう。数日前に発見して、やるまいかと思った。あえてオレが?どうして?と。けれどこれがおまえが生きる理由になるなら生きてみろと。生かしてくれるかと」

タンは手紙を受け取り読み始める。

『キム・タンへ。季節が二度変わって、わたしたちが出会ったひと夏は果てしなく遠い。そこは昼はとても暑く、夜はとても寒くて、わたしはあなたが好きだった。互いに盲目だったわたしたちを、とても熱くとても冷たかったわたしたちの温度を、わたしは忘れられるだろうか? こうして逃げ出してごめんね。家で待ってるって、嘘をついてごめんね。わたしの不幸中の幸いのキム・タン。わたしはもう本当に、昨日の夜見た夢のように消えるわ。その夢で会えてうれしかった』

翌朝、制服を着て髪をいつものように結ぶウンサン。

そして家を出る。

タンの座る学校のベンチ。

誰かが隣に座る。

ウンサンだ。

ウンサンを目の前にしながら信じられない様子のタン。

ウンサン「おはようキムタン。勉強、たくさんした?わたしはたくさんできなくて心配だわ」

タン「本当に・・・おまえか?」

ウンサン「前に会った時に聞きたかったんだけど顔、それは何よ?一体何があったのよ、バカ」

タン「おまえが去っただろ」

ウンサン「もう来てるじゃない。わたしもう逃げないって。一旦は期末試験を受けてそうしてからどんな言い訳でもしてみるわ。だからここにいるわ。あなたのそばに」

夢中でウンサンを抱きしめるタン。

チャニョンとボナとの再開。

男子生徒「チャウンサン、学校に来たって」

女子生徒「何よ、辞めたんじゃなかったの?」

男子生徒「そうだよな」

その会話をヨンドが聞く。

そして廊下でヨンドはウンサンと出くわす。

ウンサン「チェヨンド」

無視して去っていくヨンド。

放送室。

ボナ「ちょっと、チャウンサン!」

チャニョンと二人して立ち上がる。

ウンサン「わたしがいないからってイチャイチャと?もしかしてキスしようとしてたのにわたしがまさに空気を読まず入ってきたの?」

チャニョン「おい、おまえ一体この間」

ボナ「ちょっと、あんた狂ってんの!あなたのせいで放送部は完全にメチャクチャなのよ。どうすんのよ!チッ、こっちに来なさいあんた!」

ウンサンにハグをするボナ。

いつもの言動不一致だ。

笑みを浮かべるウンサン。

チャニョン「どういうことだよ、この間どこにいたんだ?電話番号もさくっと変えて、こいつ!」

ウンサン「あなた達、わたしにかなり会いたかったのね」

ボナ「笑わせるわね。あなたが出てこないなら、新しいプロデューサーをまた選ばなければいけないのに、ここの生徒たちが放送部のようなことしようとしてる(したい)の知ってるの?だから二度とどこにも行かないでよ、分かった?」

ウンサン「連絡できなくてごめん。おじさんにも連絡入れないといけないのにあまり正気じゃなかったわね」

チャニョン「もう大丈夫なのか?すべて整理してきたのか?」

ウンサン「大丈夫じゃないし整理することも多いけどただ来てみたの。あなた達にもすごく会いたかったし」

チャニョン「どうだろうと行くなら行くと来るなら来るってあらかじめ言えよ。新しい番号打って」

スマホを渡そうとするチャニョン。

ボナ「ダメ!わたしに先に教えて!」

手を広げて阻むボナ。

ボナ「わたしが保存して、チャニョンに教えるのよ」

ウンサン「そうね」

ボナ「わたしに対して良くしてよね。そうでないと教えないわよ!」

チャニョンに言うボナ。

チャニョン「は〜い」

ウンサンも笑っている。

ヨンドの初恋の結末。

期末試験が終わる。

放送室にいたウンサンのところにヨンドがやってくる。

ヨンド「歩いていくか引かれていくか?」

ウンサン「何事なの?」

ヨンド「サラ金の気持ちを理解してる最中だ。借りがあるならわかってちょい返してくれればどんなにかいいな。必ずこうして追いかけて強制性を伴ってこそ話を聞くんだろ。行こうぜ、ククス食べに」

ククスを食べる二人。

ヨンド「食べないのか?」

ウンサン「食べる」

ヨンド「学校、どうして来たんだ」

ウンサン「試験を受けに」

ヨンド「違うだろ」

ウンサン「戻ってきたくて」

ヨンド「どうしても行かなければってことだな?その道に」

ウンサン「行ってみたくなったの」

箸を置くヨンド。

ヨンド「進撃の会長様と戦って傷ついてしんどいならそのまま座り込んでいろ。そうならばオレが『ざまあみろ』『ああなると思った』って皮肉でも言うだろ」

ウンサン「そうするわ」

ヨンド「ごちそうさま。じゃあな、もう会わないでよそう。オレは今お前を振ったんだ」

ウンサン「あなたとわたしは友達もダメってこと?」

ヨンド「前に話しただろ。オレはそんなのはしない。おまえは最初からオレにとって女であって今も女だ。今後はすれ違う時にも挨拶は止めよう。『元気か?』なんて聞かないようにしよう。それにその後も時間がたったら、『あの時はそうだったかな』って覚えてはいない振りして微笑むこともしないでおこう・・・これはおまえがおごれ。よく食った」

放心気味に去っていくヨンド。

後ろ姿を見送るウンサン。

外泊。

ボナ『さっさと素早く。来ないの?どうしてこないの?いつ来るのよ?』

ストレッチをしながらウンサンにメールするボナ。

しばらくボナの家に泊めてもらうことになっていた。

ウンサン『わたし今日外泊。他の家で寝ることになったの。明日会いましょ』

返信するウンサン。

それを見たボナ「(独り言)まあ・・・」

ウンサンはタンと一緒にミョンスの作業室にいた。

ウンサンをじっと見つめるタン。

タン「誰と会ってたんだ?」

ウンサン「わたしと友達をしないという友達」

タン「イ・ボナにオレたちが一緒にいることを話したのか?」

ウンサン「似たようなことは話したわ」

タン「どうして今日はすごく従順なんだ?」

ウンサン「あなたが行くかと・・・寝るところがないの。今はそんな言い訳よ。あなたも言い訳を一つしてよ。わたしと一緒にいる(ための)小さな言い訳」

タン「好きだよ」

ウンサン「それが小さな言い訳なの?」

タン「会いたかった」

ウンサン「もっと小さな言い訳・・・」

タン「死にたいくらいだった・・・笑えなかった。元気に生きることも出来なかった。世界で最も不幸になろうと思った。誰も愛してはいけないと思った。運命なんて嘲笑ってやろうと思った。そう思った・・・だから二度とオレを捨てるな、チャウンサン。わかったか?」

無言で頷くウンサン。

そしてタンの手をしっかりと握る。

未成年者。

登校中。

タン「おまえどうして一晩中勉強することができるんだよ?」

ウンサン「試験期間にほかのことをするのは変じゃない」

タン「おまえそれは偏見だぞ。お前こそ今回何位になるか見てやるぞ、オレが」

ウンサン「じゃあ私は目を閉じていろとでも?」

タン「まばたきはするな」

ウンサン「ところでミョンスに悪いわね。いつも宿代を払わずに無断宿泊して」

タン「オレが近頃、オレ自身に対してホントに怒ってるのはオレが未成年者ということなんだ」

ウンサン「どういう意味?」

タン「いろいろと意味がある」

ウンサン「未成年者がどうして嫌なの?」

タン「未成年者の本心は思春期の駄々ゴネに見えるから」

ウンサン「方法はないわ。さっさと大きくなりましょう」

タン「2つ目の理由は聞かないのか?」

ウンサン「ええ」

タンの電話が鳴る。

ウンサン「電話でも受けて」

電話を受けるタン。

タン「あ〜、母さん」

ギエ「あなた昨日どこで寝たの?母さんを心配させようと?」

タン「ミョンスのところで寝たんだ。母さん早く起きたんだね」

ギエ「で何時に(戻って)来るの?母さんもしかして家にいないこともあるかも・・・ただ話してるだけよ・・・ええそうね。試験しっかり受けて。切るわね」

荷造りしていることはタンに言わない。

幼いころに撮ったタンの写真を撫でるギエ。

空を見て。

会長「なに?何をしようと?」

ギエ「別れようってわたしたち、別れましょあなた」

会長「酒を飲んだのか?昼間っから」

ギエ「理事長の心を痛めさせた罪でわたしの青春もそうバラ色(花畑)ではありませんでした。これからはわたし空を見て生きるわ。終わりましょうわたしたち」

会長「わたしが言った言葉、心にあざができることもある。そう理解しろ。といっておまえがタンを放り出して何?別れる?終わらせる?」

ギエ「タンの未来を考えれば、帝国グループの屋根の下へ残したいわ。けれどタンが嫌ならわたしはタンの望み通りしてあげるわ」

会長「誰の勝手に!?一体おまえがどんな権利で?」

ギエ「わかってるわ、わたし。そんな権利がないということは。だから別れようって。整理する戸籍もなく積み重ねた財産もなく私一人出れば終わるのわたしたち・・・元気でね、会長。始まりはどうであれわたしはあなたを愛してたのよ」

荷物をまとめて出ようとしているギエ。

キム会長とチョン秘書もいる。

ギエ「わたしたち、一緒に撮った写真一枚もないのね。それを今日知ったわ、わたし。タンにはわたしが話をちゃんとするわ。タンは理解してくれるわ」

会長「何を理解する?当事者のわたしも理解ができないのに・・・チョン秘書!」

秘書「空港までお連れいたします」

ギエ「空港?わたしがどうして空港に行くの?わたしが望むことはこの家の門から出ることなんだって!」

会長「入るときは勝手に入れても出るときは話が違うだろ。アメリカに行っていろ。行っておまえの気分が晴れるまで、アメリカの空も見てショッピングも思う存分しろ」

ギエ「英語もできないのに何がアメリカよ!別れることも勝手にできないの?わたしは?」

会長「タンに対して連絡することはない。空港に行け。自分の体を支えられない奴いたずらに更にかき回さずにまっすぐ空港へ行け。母の道理をしろという話だ。チョン秘書、案内してやれ」

ギエ「会長!会長!!ちょっと!キム・ナムユン!!!」

車に荷物を載せられているのを待つギエ。

そこに運よくタクシーが通り、飛び乗って逃げる。

ギエ「早く、早く!」

焦るギエ。

ヨンドの助け。

学校の前に着いてタンに電話をかけるギエ。

そこにヨンドが車で通りかかりギエに気づく。

ヨンド「こんにちは」

ギエ「ヨンドじゃない?」

ヨンド「はい」

ヨンド「ここでどうして・・・?遅くなりましたがあの時はすみませ・・・」

ギエ「ヨンド(ヨンドヤ)。ウチのタン見なかった?おばさんちょっと急いでて、あなたタンを探してみてくれない?タンが電話を受けないの」

ヨンド「どこかに行かれるのですか?」

ギエ「今、時間がないの。理事長が居ておばさんは学校に入って行けないの。タンをちょっと・・・」

ヨンドは何かを感じ、タン母の言葉を最後まで聞かずに叫ぶ。


ヨンド「一旦ぼくの車に乗ってください!必ずここにいてください、必ず!!」


そう言って、ヨンドはギエを自分の車に乗せ無我夢中で走り出す。

母がいなくなった時と全く同じシチュエーションだったのだ。

ヨンドとタンの立場が逆転していた。

タンを見つけたヨンド。

ヨンド「タン!今学校の前に母さんがいる。おまえの母さん。急いでいけ、早く!!」

タンの肩を叩く。

タンも何かを感じ走りだす。

ヨンドもタンに続く。

ギエ「タン!」

呼ぶギエ。

タン「母さん!」

タンもヨンドの車に乗り込む。

タン「ありがとう、チェヨンド!」

そして走り去る。

会釈して見送るヨンド。

数秒後にチョン秘書がやってくるがすでにギエは逃げた後だった。

『うちのヨンド見なかった?ウチのヨンドどこにいるか見なかった?ヨンド見なかった?ちょっと探してみてくれないかな?』と母が探していただろう当時の光景を思い浮かべる ヨンド。

トッポッキの店に行き、母がした書き込みの前で一人たたずむ。

そして『元気でいる?ヨンド(ヨンドヤ)』と書いてある下に『いいや』と書き込む。

そして『うまく生きてけないようだよ』と、心の中でつぶやく。

ギエの言動。

電話をして自分の車を呼ぶタン。

ギエ「誰が来るの?」

タン「オレの車。ところで母さんは父さんとほんとに別れたの?」

ギエ「ええ。わたしたちが別れてもあなたは変わることはなにもないわ。あなたはずっとわたしの息子で父さんの息子」

タン「ほんとにそれだけか?けれどどうして追われてる?さっきのガードマン達は何なの?」

ギエ「あなたの父さんが阻んだんでしょ。けれど母さんもうあなたの父さんを愛してないわ。あなたの父さんもそのようで。それで別れるのよ」

タン「ウソを付くなよ。生きて別れるならまたどうしてガードマンたちに追われる?収納バッグ一つなく体だけで逃げて出てきたのかって。出て行くという人をガードマンを仕向けて止めるのかって!いったいお父さんが母さんに何をしたんだ?」

ギエ「そんなんじゃないわ」

車がやってくる。

タン「母さん一旦乗って。どこかへちょっと行っていて。行って連絡して・・・母さんもしかして行き場所がないのに気ままに出てきたの?」

ギエ「まさか事がこんなになるなんて思わなかったし・・・」

タン「一旦ヨンドのところのホテルへ行けよ。電話する」

ギエ「どこに行くのよ〜!」

父の元へ。

タン「母さんに会いました。わたしが申し上げたでしょう。母さんは父さんの女だから父さんが責任をとれって。けれど父さんは母さんを捨てましたね」

会長「捨てるとは誰が捨てる。しばらく風にでも吹かれてこいというのだ。それの何がそんなに悔しい・・・」

タン「それが捨てたということなんだよ父さん。これから母さんはわたしが責任を取ります」

会長「駄々ゴネも適当でこそ受け入れてやるのだ。おまえがどんな方法で、おまえの母さんの責任を取る?」

タン「父さんと別れるという方法です・・・この家から出ていきます。わたしはこれからは母さんを家族としてだけ生きていきます。父さんの許しは必要ありません。生きていてわたしを幸せにするものは全て父さんが許さないものでした。けれど命を授けてくださってありがとうございました」

一礼して出て行くタン。

言葉のないキム会長。

キム会長の謀略。

ジスク「こうしてショーまでしたのにウォン、タン、10年一緒に過ごした同居女、全く姿も見えずあなたのそばにぽつんと私一人ね」

会長「そういうことだな」

ジスク「どうなさるのですか?」

会長「何をどうと?来るようにせねば。今日来ないなら明日来るようにして、明日来なければ明後日こさせねば。タンの誕生日おまえがちょっと取り仕切って。ウォンの時のように準備しろ」

ジスク「タンが庶子だということは世間がすべて知っているのにウォンのようにしてやるのですか?」

会長「世間が全て知っているから同様にしなければな。大騒ぎして準備しろ」

ウォンの元へ行くタン。

ウォン「座れ」

ウォン「父さんが入院したことを聞いただろう?」

タン「入院したって?どうして?」

ウォン「知らないならいい。行く必要のない状況だから行くな。行こうということも言わずに。これも取引に含まれるぞ」

タン「オレのせいかと思って」

ウォン「お前のせいじゃない。お前の母さん家を出たって?」

ウォン「清潭洞(チョンダムドン)のヴィラを開けておくとお伝えしろ。お前の母さんの選択はオレのせいでもある」

タン「兄さん、おれは兄さんが好きだった。母さんが入ってくるまで父さんお母さんの間で頼れるのは兄さん一人だった。むやみに頼って悪かった。その間兄さんに対してした悪い言葉も悪い行動も悪かった」

ウォン「謝るな。心地悪い。父さんが準備することはどうするんだ?お前の誕生日に一日中会社が騒々しいぞ」

タン「それはどういうこと?」

ウォン「知らないところを見るとお前のしつけ用という感じだな。父さんおまえの誕生日だと、秘書室に命じて記者や各界の名士を皆呼び付けたぞ」

タン「あれほど言ったのに・・・」

ウォン「今日の夕食はホテルゼウスだ。選択しなければな。おまえが行かなければ父さんは笑いものになるだろう。おまえが行けば・・・」

タン「行かなければ。行くよ兄さん。兄さんも来て」

ウォン「もう行け、忙しい・・・誕生日おめでとう・・・」

振り返り兄を見つめ笑みを浮かべるタン。

招待状を見るヒョシン。

イェソル「イボナ、たった今皆が言うのには今日・・・」

ボナ「キムタンの誕生パーティー?」

イェソル「何よ、知ってたの?」

ボナ「わたしは帝国グループ秘書室から直通で電話が来たんだけど」

イェソル「チッ」

チャニョン「先輩は行かれますか?」

ヒョシン「受験が終わった高3が他に何をすることがあるというんだ?他人のパーティーに行って大騒ぎしなきゃな」

ボナ「あ〜、ホントに馬鹿騒ぎはダメよ。敏感なの知ってるでしょ?またそのパーティーでユラヘルとキスするなんて」

イェソル「先輩、まさかあの子と付き合ってるの?」

ボナ「あ〜、わたしは反対よホントに。またユラヘルにわたしの人を奪われる訳にはいかないのよ!」

チャニョン「何か手痛い経験があったようだな?」

ボナ「チャ・・・チャウンサン、パーティーに行くのかな?電話してみなきゃ・・ ・」

はぐらかすボナ。

チャニョン「おまえキムタンのパーティーに行ってみろ、か細い足をへし折るぞ」

ヒョシン「こいつ、ユンチャニョンなのか?」

ボナ「ええ、かっこいいでしょ!」

チャニョンに抱きつくボナ。

パーティーに臨む二人。

ウンサンの家に人が来る。

お迎えに上がりましたというガードマン二人に少々不安げに『いったい何ですか?』と問うウンサン。

腕組みをして待つタンの前にドレスアップしたウンサンが来る。

タン「すごく綺麗だな」

ウンサン「わかればいいのよ」

タン「おまえが出してくれたタクシー代、これで返したぞ」

ウンサン「わたしはまだあなたから買った5分間の代償も返してないのに」

タン「今日払ってよ。オレたちは今日すごく勇気が必要だ。できるだろ?」

黙って頷くウンサン。

タン「行こう!」

手を差し出すタン。

タンの手を握るウンサン。

車でホテルゼウスに行き降車する二人。

記者が取り囲みフラッシュが瞬く。

タン「震えてる?」

ウンサン「少し」

タン「少し大変かもしれない・・・それでも直進!」

第19話へ