王冠をかぶろうとする者、その重さに耐えろ〜相続者たち〜
第14話

放送室の鍵を壊しドアをぶち破ったタン。

タン「チャウンサン、外に出ろ」

我慢できずに椅子を持ち上げてヨンドを殴ろうとするタンをウンサンはしがみついて止める。

ウンサン「やめて!!」

タンにしがみついて必死で止めるウンサンを悲しい目で見つめるヨンド。

放送室の外に出るウンサン。

タン「何に手を出してるんだ。狂った奴め。どこまで行くんだ?俺がどれだけ我慢しなくちゃいけないんだ。チャウンサンは巻き込むなと言っただろう!」

ヨンド「お前がチャウンサンを手放したらチャウンサンを巻き込まないさ。俺が警告しただろ、チャウンサンを守るなと。何で人の言うことを聞かないで無茶するんだ」

タン「うんざりだ。だからお前は最後まで行くってことか?」

ヨンド「行かないと、ここまで来たんだから。俺はお前一人に勝とうとして、母さんとの最後の食事もできなかった。だからお前を見るたびに俺はお前を殺したくなるのにお前がこの戦いをどうやって終わらせるんだ」

タン「もうごちゃごちゃ言うな。一体俺がどれだけ多くの機会をあげないといけないんだ?」

ヨンド「大人のフリをするな。吐きそうだから」

タン「俺はお前が俺を傷つけた時も、俺の母さんを侮辱した時も、お前の母さんが出て行く時も最善を尽くした」

ヨンド「お前の最善はいつも俺をイライラさせてることがまだ分からないんだな」

タン「お前は昔も今も誰か1人を不幸にしてやろうとお前まで不幸にさせてるんだ、最善を尽くして。どうしてこんな風に変わらないんだ、バカ野郎が」

ヨンド「お前はお前だけ変わったから良いか?もっと大きい戦いだ?バカなことを言うな。婚約を蹴った?お前は結局父親の所に行って跪くんだろ?そのまま今行って跪けよ。じゃなかったら今回もチャウンサンを跪かせるか?お前がしてるのは、もっと大きな戦いなんかじゃなく、無謀な戦いだ」

タン「お前はそんな無謀な戦いでもしてみたことはあるのか?跪く時は跪くだろう。だけどまた起き上がってみたら、倒れない日も来るだろ。お前はそのままそこにいろよ、チェヨンド。俺はもうそこには居ない」

ラヘルが放送室の廊下にくる。

立ち去るタン、泣くウンサンを連れていく。

ラヘル「こんなことするなら私に口封じをどうしてしようとしたの?死んでも口先だけの話はしないというのに、何で急に気持ちが変わったの?」

ヨンド「変わってない」

ラヘル「じゃあ全校生徒に聞こえる様な放送を何でしたのよ」

ヨンド「ほんのちょっとだけ、誰かに(ウンサンに)会いたくて・・・」

ヨンド「だからといって、俺がお前と喧嘩する訳にはいかないだろ。そんなお前は?」

ラヘル「私が何よ」

ヨンド「お前も分かってるだろ。キムタンがお前に対する罪がないことは。お前が知ってるとおり、キムタンはたった一度もお前に希望を与えたことはない。政略結婚のルールを破ったのはお前だろ。政略だから執着してすがったりするのは反則だろ。だけどそうだといってお前がキムタンを許すことができるか?お前がキムタンよりも悪かったということを認められるかということだ。俺もそうなんだ。そのまま意地をはるんだよ」

ベンチに座るタンとウンサン。

タン「喧嘩したのはすまなかったけど俺は悪くない。怪我してないか?」

ウンサン「うん。一体あんたたちは何で毎日喧嘩するのよ」

タン「お前のせいだろ。俺たち今三角関係なのを知らないのか?」

ウンサン「違うわ。私のせいだけじゃないじゃない」

タン「騙されないか・・・。俺はまだ後悔してる途中で、ヨンドは自分自身を憎んでいる途中だ」

ウンサン「恋愛はあんたとヨンド2人がしてるみたいね」

タン「こんな密談はまたとないだろうな」

ウンサン「制服着たのね」

タン「これはお前が洗ったのか?」(ヨンドにカレーをつけられた)

ウンサン「じゃあ誰が洗うの?」

タン「生地がたくさん傷んでるけど?まさか手洗いしたのか?」

ウンサン「もう!脱いでよ」

タン「今?」

ウンサン「?」

タン「ここで?どこまで?全部?」

ウンサン「もう!」

タン「スパッと全部?」

ウンサン「キャー!」(慌てて目を隠す)



ボナ「先輩!放送室のドアノブが壊れてしまっています」

そこで廊下で鉢合わせするチャニョンとボナ。

ボナ「ちょっとユンチャニョン、どうして連絡しないの?」

無視して通り過ぎるチャニョン。

ボナ「ユンチャニョン、本気でそう出るわけ?何で私にそんなことできるのよ。ユンチャニョン!」

それでも無視で通すチャニョン。

急に怪我したフリをするボナ。

ボナ「ああ足が折れそうー。血が沢山出てるよぉー。痛いー。あー痛いよぉー、血が出てるよぉー」

そんなボナの姿にほくそ笑むチャニョン。

ロッカーにいるウンサンにイェソルがやってくる。

イェソル「お願いがあるの。明日ドラマのオーディションがあるんだけど、台本をミョンスの作業室において来たの。もうそこに行けないと思うからあんたにちょっと持ってきて貰ったらダメかな?」

ウンサン「そうするよ。だけどあんた大丈夫なの?」

イェソル「あんたも笑ってるんでしょ。心の中ではそう思ってるんでしょ」

ウンサン「はぁ。この学校の子達は誰が心の中でどう考えているかを当てずっぽうで言うのかしら。みんな間違ったと謝る方法も良く知らないみたいね。見つけたら電話するわ」

イェソル「あんたは私の番号知ってるの?」

ウンサン「うん、知ってるよ」

イェソル「悪かったわ」

ウンサン「電話するわ」

ミョンスのアジトに来たウンサンと鉢合わせするヨンド。

気まずいヨンドが行こうとする。

ウンサン「チェヨンド。 これ」

バンドエイドを渡そうとするが受け取らず出て行くヨンド。

イェソルの台本をカバンに入れている途中にボナがやってくる。

ボナ「あんたはここにどうして来たの?」

ウンサン「人にちょっと頼まれて」

ボナ「そうなの?」

ウンサン「何を探してるの?」

ボナ「台本。確かにここにあったのに・・・」

ウンサン「それなら私が持ってるよ。あんたが持ってってくれる?」

ボナ「あ、いいの。かならず持って行ってあげてよ。あの子明日オーディションだからないとダメなの」

ウンサン「ふぅ。優しいんだから」

外に出るとヨンドがウンサンを待っていた。

ヨンド「くれよ。バンドエイド」

ウンサンからバンドエイドを無言で受け取りバイクで行くヨンド。

ウンサンとチャニョン。

ウンサン「ボナはイェソルの台本を取りに来ただけだわ」

チャニョン「さすがボナのことだ。わざとやっていることだって死ぬほどに可愛いんだ」

ウンサン「は〜それは良かったわね」

キッチンではウンサン母が次の家政婦のためにと引き継ぎのことを書いている。

キッチンにやってきたのはギエ。

ギエ「おばさん何しているの?それって引継ぎを書いているの?」

(ウンサン母はしゃべれない)「んん」

ギエ「どうしてまたそんなに急いで・・・。無線ランじゃあるまいし・・・。あんたが一番なんだから誰もまだ後釜を決めていないのよ!」

ウンサン母「・・・」

そこに、ラヘルが来たとの連絡。

同時にウンサンがアルバイトに出かけると知る。

慌てたギエ。

ギエ「ラヘルが来たから見つからないように出かけずに部屋に戻っていなさい。アルバイト学生だと分かったら、タンとの関係も本当に終わりになるわ」

ウンサン「もともとアルバイトには行きたくなかったからちょっと良かったわ」と・・・。

ラヘルとギエ。

ラヘル「こんにちは、お母様」

ギエ「ア〜 いらっしゃい。会長は外出だしタンも今はいないわよ」

ラヘル「私は今日はお母様に会いに来たんです。もっと気楽に声をかけてください。もっと早く分かっていたんだったら挨拶に来るんだった・・・」

ラヘル「花はお好きですか?」

ラヘル「きっとタンにとっては難しい決断だったと思います。お母様も大変お考えになったでしょうに」

ギエ「そう思ってくれているの?でもあなたのお母さんの落胆も大きいでしょうね?」

ラヘル「ちょっとたじろいでいました。だってウンサンのお母さんだと思い込んでいまし たから」

ギエ「そうだわね。きっと驚いたでしょうね」

ラヘル「それなんですけど、どうしてウンサンの母親の振りしてPTA会合に行ったのでしょうか?」

ギエ「あ〜、あれはウンサンのお母さんにちょっと問題があったから代わりに行ったのよ」

ラヘル「ウンサンの家族のことはよくご存知なのですか?」

ギエ「あ〜、そうね、だいたいよく・・・」

ラヘル「タンがウンサンのことを好きだと分かって心が痛みます」

ギエ「“好き”ってどういうことなの?タンはウンサンの家族のことを知っているから優しくしているだけだと思っているわ。誤解しないでね」

ラヘル「そうですよね。私の母がどう思っているのか分かりませんが私は婚約を破棄する気持ちはありませんからね、お母様」

ギエ「そうなの?ありがとう。ラヘル。タンのことを思ってくれて私もとても幸せだわ」

ラヘル「はい」

そのやり取りを壁の向こうでじっと聞いていたウンサン母。

ラヘルは干してある制服に気がつく。

ラヘル「お母様、ラヘルですがちょっとお聞きしたいのですがなぜウンサンはタンの家に住んでいるんですか?」

ラヘルが出た後に出かけるウンサン。

制服が無くなっていることに気づく。

母親の心がこもった制服が無残にもごみ箱の中に・・・。

ウンサンの制服のポケットから名札を取り出してラヘルは残酷なことをする。

朝8時20分。

何も知らずジュースを2個持ったタンはウンサンに電話するが返事がない。

その頃ウンサンはロッカーの前。

ウンサン「私の制服はどこにあるの?」

ラヘル「制服がないの?」

ウンサン「どこにあるのかと聞いているわ」

ラヘル「話をしている間にも焼却されるわよ」

ウンサンはゴミ置き場に駆けつける。

ウンサン「母さんが買ってくれた制服なのに・・・」

ラヘルが追ってくる。

ラヘル「心が痛むかしら?引き裂かれた気分がする?」

ウンサン「・・・」

ラヘル「私がタンの家でその制服を見つけたときの気分は分かる?」

ウンサン「私のこんな姿を見て嬉しいの?私がゴミ箱の中をあさっているのを見て嬉しいの?」

ラヘル「何言っているの?あんたは私のことが分からないの?」

ウンサン「・・・」

ラヘル「これは単に始まりだわ。気が変になりそうだわ。家政婦の娘が成金と名乗って転校して来たのよ!恐れを知らない娘が私のフィアンセと付き合っているのよ!」

ウンサン「・・・」

ラヘル「気分が良いわけはないわ!」

ウンサン「・・・」

ラヘル「あんたが私だったらどう思うの?」

ウンサン「私がここでゴミ箱をあさっているのをなぜ見に来たの?私があんたの気分を良くできるとでも思っているの?!」

ラヘル「そうね。ここを片付けておいてよね。あんたの母親のことを見ていれば何をすれば良いのか分かるでしょう?!」

バシッ!

ウンサンはラヘルを平手打ちする。

ラヘル「あんた!何をするつもりなの!?」

ラヘルが叩き返そうとするが!

ウンサン「!」

ラヘル「この手は何なの?!放しなさいよ!」

ウンサン「あんたが言っていることは分かるわよ。でもね!私の母さんを侮辱しないで!あんたをこんなに育ててきたあんたの母親は凄いわよね!」

ラヘル「私がおとなしくしている間にいい加減に私の目の前から消えて!転校しなさいよ」

ウンサン「私のことを指図するあんたっていったい誰なの?」

ラヘル「あんたが成金じゃないってことを暴露する前に、ここから出て行けと言っているのよ」

ウンサン「みんなに言いなさいよ。私は怖くはないわよ。覚悟していないとでも思っているの?!」

ラヘル「あんたの秘密を暴くのは私だけだとでも思っているの?キム・タンが庶子(私生児)だってことも暴くわ!」

ウンサン「・・・」

ラヘル「チェヨンドがなぜ隠してくれているって知っているの?彼は最初からその気はなかったわ。でも私はそうじゃないわ」

ウンサン「あんたはどうしてキム・タンを私のことで巻き込むの?!」

ラヘル「あんたを転校させるためだわ。彼が自分のものにならない限り2人とも追い詰めてやるわ!」

ウンサン「考えておくわ・・・」

そこにタンが現れる。

タン「何を考えておくと言うんだ?」

タンはウンサンにここを外してくれるように頼む。

ラヘル「怒らないで。私もあなたたちの本気にすごく傷つけられたんだから」

タン「お前は黙れ!どうやってチャ・ウンサンがウチにいる事を知ったんだ?」

ラヘル「昨日あなたの家に行ったからよ。お母様に会いに」

タン「どのお母様?お前があの日虫けらでも見るようにしたあのお母様?俺はお前との友情は守りたかった。でもダメだな。友達を一人失うことにすればいい。女は殴れないが心ではとっくに殴ったから」

それだけ言って去っていくタン。

学校の屋上。

タン「お前は何のつもりなんだ?俺が笑って見ていられると思うのか?俺はお前の何なんだ?俺に頼れないのか?そんな価値もないのか?!」

ウンサン「あなたは自分の事でも精一杯だから・・・」

タン「ラヘルが来たんなら連絡すべきじゃないのか?!」

ウンサン「あんたはこの件では違うわ」

タン「そうだ!生まれたときから違うんだ!」

ウンサン「・・・」

タン「生まれて今まで全ての瞬間が精一杯だった!隠された母、俺を憎む兄、父の妻の毒舌、このすべてを作った父、秘密を知ってしまった友達の怒り、見知らぬ地に一人で捨てられた3年!今の状況は絶対にお前のせいじゃないと言う事だ!」

ウンサン「・・・」

タン「俺が置かれている状況はお前が原因じゃない」

ウンサン「あなたのせいでもないわ。あなたのせいじゃないのキムタン・・・」

タン「逃げようか?俺と一緒にアメリカへ行くか?」

ウンサン「いいね。私はまたお母さんを捨てあなたも奥様をあの大きい家に一人にして・・・行こうか?私たち」

そんなことできるはずがないって解ってる。

だけどこんなことでも言わなきゃやっていられない10代の二人。

のぞんで今の状況に生まれてきたわけじゃないのに・・・。

理事長室に呼ばれたタンとヨンド。

ジスク「あんたたちはケンカだけでは気がすまないの?学校の器物まで損壊しておいて。許可なく放送もしたわよね!」

タン「すみませんでした」

ジスク「もうそんな言葉は聞き飽きたわ。学校の規則に沿って30分の奉仕活動を命じます。そして反省文を書きなさい」

ジスクはそう言ってヨンドには父親を呼ぶように命じる。

タンがそれを許すように言うが、

ジスク「あなたは兄さんを呼んできなさい!」

タン「・・・」

新任のヒョンジュ。

ヒョンジュ「放送室で2人は争ったらしいわね。他の先生たちは知らない振りをしているけど新任の私はこの件を処理します!」

二人「・・・」

ヒョンジュ「反省文を100枚書きなさい。完成するまで何度でも呼び出します」

タン「彼だけにしてくれませんか?すべての原因は彼です」

ヒョンジュ「彼がそんな態度だったらいつまでも警告を続けます」

ヒョンジュ「2人は責任を擦り付け合うの?それでは代わりに自分の責任ではなくて相手の悪いところを書きなさい」

二人「・・・」

タンとヨンドは中学生の頃の過去をそれぞれ思い出している。

ヨンド母「タンや、ヨンドを見なかった?叔母さんは今急ぎなのよ」

タン「最近はヨンドとは一緒じゃありません」

ヨンド母「そうなの・・・どうしようかしら?私は今、携帯を持っていないのよ」

タン「・・・」

ヨンド母「電話してくれる?」

タン「ヨンドは僕の電話には出ないんです。ところで何があったのですか?」

ヨンド母「あ〜これね・・・(彼女のバッグを見て)。叔母さんには今時間がないのよ」

タン「・・・」

ヨンド母「あなたがヨンドを探してくれないかしら?そこのレストランで待っているから。お願いね!」

一方こちらは放送室。

ボナ「私はチャニョンのことで悩んでいるわ」

ヒョシン「放送2分40秒前だぞ」

ボナ「前回は私の言うことを聞かなかったわ」

ボナ「(ウンサンに向かって)やあ、あんたはチャニョンの友達でしょうに。私のことは聞いていないの?」

ボナ「だからチャニョンは男らしくていい人だと言うことなのよ」

ボナ「(ウンサンに向かって)あんたは本当にチャニョンと私に別れて欲しいの?」

ヒョシン「もう私語は慎め!放送まで2分と10秒だ」

そう言いつつもヒョシンは放送を流している。

それを知らないボナは。

ボナ「先輩!私にはチャニョンは空気と同じで傍にいてくれないと息が詰まります!」

放送室から飛び出すボナ。

そこへ放送を聞いていたチャニョン。

チャニョン「やあイ・ボナ!どこに行くんだ?!話がある!」

ボナ「言わなくてもいいわ!聞きたくないわ!どうせあんたは私と別れると言い出すんでしょう!」

チャニョン「そうじゃないから待ってくれ」

ヒョシン「俺はあんな2人の姿が見たくて放送を流したわけじゃないんだがな・・・」

ウンサン「そうですよね・・・」

そこにヒョンジュ。

ウンサン「新しい先生ですよ。美しい方です・・・」

ヒョシン「ちょっと外してくれ」

ヒョンジュは家庭教師ではなくてもっといい職を求めて高校教師になったと告げる。

ヒョンジュ「祝ってくれないの?」

ヒョシン「・・・いいや、俺の初恋の人がずっと遠のいたようです」

ヒョンジュ「・・・」

ミョンスのアジト。

ヨンド「酒はないのか?」

ミョンス「まったく困ったもんだ。初恋が上手くいっていないのか?」

ヨンド「チャウンサンのことか?」

ミョンス「キムタンが初恋じゃないとすればそうだろうな」

ヨンド「・・・」

チャ・ウンサンがどれほどいいのか?との問いにどれくらいなのかを測る方法があるのか?とヨンド。

ミョンスは『タイタニック』のエンディングを引き合いに出してタンも自分もいない時に もしもウンサンとヨンドだけが海に放り出された場合はどうするか?などと聞いてみる。

ウンサンを助けることだけしか彼女を振り向かせる道は残っていないというヨンド。

ミョンスは『それが悲劇の結末』だと。

タンの家の入り口。

タン「寒いから中に入って」

ウンサン「あなたの家まで私を送ってくれるのね」

タン「そうだな」

ウンサン「本当に家に帰らないの?一緒に入ろうよ。奥様はこのところ遅くまで起きているわ」

タン「俺が帰ったら眠れなくなるさ」

ウンサン「でも・・・」

タン「まだ帰るタイミングじゃない。帰るときは兄貴と一緒だ。まずは一緒に学校に出向くことが最初だ」

ウンサン「じゃあ私たちは第2段階には移れないわけね」

タン「こんな時にそんな・・・」

ホテルのロビー。

タン「お〜兄さん。こんな遅くまで。もう寝ていると思った・・・」

ウォン「何でここにいる?鍵は持っていないのか?」

タン「あるけど、考え事をしていたんだ」

ウォン「・・・」

タン「俺たち2人は変だな。家があるのになぜこうしているんだろ?」

ウォン「家を出たからじゃないか」

タン「兄さんは、なぜ俺のことが嫌いなの?」

ウォン「好きになる理由はあるのか?母親が違うんだぞ」

タン「そうだな、俺が上手くやるさ」

ウォン「変なことはするな。気分悪い」

タン「ちっ!」

翌日学校のロッカー。

ボナ「良かったら来て。大学の試験と同じ日だけど」

ヨンド「何だ?果たし状なのか?」

ボナ「イ・ボナとユン・チャニョンの仲直りのパーティよ」

ヨンド「ユン・チャニョンが果たしてくるのか?」

ボナ「やあ!」

ヨンド「お前だから言うけど、男ってのはこんなパーティは嫌いなんだ。皆に向かって“俺たちは馬鹿だ”って言うみたいだぞ」

ボナ「来なくていいわ!」

イェソルにも招待状を渡すボナ。

ボナ「あんたも私たちがケンカした原因だからね!」

イェソル「・・・」

ボナ「ごめんね」

イェソル「私こそ本当に悪かったわ」

ボナ「私こそよ・・・」

イェソル「いいえ、私こそよ・・・」

そんな会話の2人の傍をタンが通り過ぎる。

イェソルとボナが会話している。

そしてボナの手からさっと招待状を抜き取り通り過ぎるタン。

放送室でタンとヒョシン。

タン「体調はどう?」

ヒョシン「ボナのパーティに行くのか?」

タン「国立大学の試験だというのになんでボナのパーティのことなんか気にするんだ?試験に受からないと留年にさせられて俺と同じ学年になるぞ。いいのか?」

ヒョシン「まったく。どうして俺達の放送室のドアを壊したんだ?」

タン「些細なことは気にするなよ。試験だろうに!」

そして試験会場。

ヒョシン母「気を楽にしてね」

ヒョシン「寒いから早く帰って・・・」

ヒョシン母「お寺に行ってお祈りするわ」

ヒョシン「そんなことする必要はないさ。行ってくるから」

周囲は「イ・ヒョシン!」とファンの女の子たち。

ホテルのウォンの部屋。

『行くところがない』とタンはメイドに言いつつ、兄のデスクの上の書類をふと見る。

それはグループの株式・株主、そして人事のことなどが列挙されている資料のようだった。

それを見てユン室長に電話するタン。

でも『後で電話かけ直す』と切られてしまう。

ユン・ジェホは掲示を見ていた。

『人事発令』(会長とタンに近い人たちは海外担当に命じられている)

兄のウォンが練っていたのは人事のことだった。

会長とタンの側近たちは国内の重要ポストから外されてしまっている。

社長(ウォン)の人事告示。

ユン室長「人事発令の告示を見て来ました。戦争を始めたようですね」

ウォン「そこにユン室長の名前はなかったでしょうか?」

ユン室長「・・・」

ウォン「決めてください。リストの最後に名前を載せて欲しいですか?」

ウォンは自分が決めた会社人事の件とジェホの顔色を見ている。

一方、キム会長。

会長「どうした?突然人事異動なのか?みんな外されたのか?ウォンがやったのか?!」

ギエの兄「ええ、ウォンが刀を研いでいます。私はまたフィリピンのポストです」

会長「電話で何と言っても仕方ない。発令があった以上は赴任するしかないだろう!切るぞ!」


タンを呼び出すためにウンサンの携帯を使うギエ。

タン「到着したぞ。どこにいる?」

ウンサン「右側だわ」

タン母「人質を使わないとやってこないわね!」

タン「(ウンサンに)お前は人質のバイトまでするのか?」

ウンサン「・・・」

タン母「携帯を持っているなら自分の携帯に出なさいよ!なぜ出ないの?!」

タン「俺の声を聞いたら母さんがまた泣き出すからさ。手ぶらで来たのか?」

タン母「は〜この服を着なさい!どんどん寒くなるからね!」

タン「たったこれだけなのか?服だけじゃなくて現金が欲しいんだ」

タン母「ふざけてるわね!あんたはまだ苦労が足りないわね!」

タン「帰らないぞ。俺は公式に追い出されたんだからな」

タン母「ラヘルが家に来たのよ!あんたたちのことがばれているわよ」

ウンサン、タン「・・・」

タン母「その場は繕ったけど二人はこれからどうするの?本当に・・・」

タン「俺達は幸せになるつもりだけど?」

ウンサン「やあ!」

タン母「どうやって幸せになるつもりなの?ラヘルは婚約を破棄するつもりがない様だわよ。彼女の気持ちが変わらないうちに謝りなさい」

ウンサン「・・・」

タン母「あんたたちは付き合いを止めなさい」

タン「母さん、この手の話は封筒に現金を包んでからにしてくれ。手ぶらで何を言い出すんだ?」

(手切れ金を持って来てくれという意味)

タン母「あんたは父さんがどれくらいあんたのことを調べていたのか分かっているの?あんたは連れ戻されたいの?!」

タン「だからなんだ。時間がないんだ」

さあ行こうとタンはウンサンの手を取って無理矢理出て行く。

タン母「どこに行くつもりなの?」

タン「どこにでも」

タン母「バカ息子!もう家に帰って来ないでもいいわよ!」

クリスマスのイルミネーションの街角。

タン「傷ついたか?」

ウンサン「いいえ、興味深いわ。お母さんが“別れなさい”って」

タン「怖くないのか?なのに興味深い?いずれにせよ俺達は一緒に歩いている」

すっかり2人のことを認めているギエにもうウンサンは安堵。

タンとウンサンの仲はギエもウンサン母も公認。

4人は同盟関係になっている。

タン「それで?このまま歩くのか?」

ウンサン「どこかに行くあてはあるの?」

タン「手を繋ぎたいって意味だ、馬鹿!」

ウンサン「・・・(ちょっと笑う)」

タン「なぜ笑う?お前はこの100キロメートルの中にいる女の子の中で世界一幸せな女のはずなんだが?」

ウンサン「なぜ?」

タン「だってお前と手を繋いでいるのがかっこいいオレだからだ」

ウンサン「そうなの?じゃあそれを見せて!」

そういって手を差し出すウンサン。

タン「当たり前だ」

だがウンサンの手を無視して肩を抱くタン。

ウンサン「ちょ・・・手を握るだけだと言ったのに・・・」

タン「そんなことを信じるのか?」

ウンサン「・・・」

タン「お前また母さんの人質になってみろよ」

ウンサン「そうじゃないわ。あんたのお母さんの方が私の人質だわ。私だってあんたに会いたかったわ」

タン「マジか?どこに行こうか?何か美味しいものを食べようか?」

ウンサン「貧乏なくせに?」

タン「お金がないのは今だけさ。口答えをすると俺がどうするか覚えていないのか?!」

ウンサン「何ができるというのよ!人がたくさんのこんな大通りの真ん中で。アルバイトに行くわ。また電話するわ!」

タン「それはないだろうが」

ウンサン「電話するね」

タンは行こうとするウンサンを上着で包み込んで後ろから抱きしめる。

ウンサン「わ〜、何するのよ!」

タン「アルバイトには行かせない!放送室でお前がこうやって止めただろう?」

ウンサン「それとこれとは違うでしょうが」

タン「お前今まで何度こんな風に止めたんだ?他の奴を止めるのもこんな風に止めたのか?」

ウンサン「あ〜また“嫉妬だらけの夫”を演じたいの?まったく!」

タン「次はこんなふうに俺のことを止めてくれるか?」

そう言ってタンはウンサンのことを正面から抱きかかえる。

ウンサン「やあ!」

タン「お前を抱いているんじゃない。次はこういう風に俺を止めてくれとお手本を見せているんだ」

ウンサン「あんたの頭はどうかしているんじゃないの?!あれ?!ここに・・・」

タン「騙されないぞ」

ウンサン「これよ!お金が入っているわ!お金よ!」

タン母が持ってきた上着のポケットになんとお金が。

タン母がこっそり忍ばせておいたのだろう。

タン「お!5万ウォンだ!」

金に驚いて手を離したタンに。

ウンサン「あんた!あんたはたったの5万ウォンで私のことを突き放したの?」

タン「やあ、お前な!人生というものは愛の罠にかかってお金のために泣くことになるんだぞ」

そこへ室長から電話。

タン「やあ、電話だ。電話!ちょっと待って」

その電話で急いで行ってしまうタンにウンサンはまた何かあったのか?と心配になる。

タン「兄さんのところで見た借名株は俺の誕生日プレゼントだというんですか?」

室長「会長は今怒っていられる為ストップしているが結局は進行されるはずだ。もし君の事がおおやけになったら君を立て直すためにも大株主にするだろう。そしたら持ち分が社長とほぼ同じになるだろう。社長は今日宣戦布告した。会長の側の人を人事異動したんだ。君が見たそのリストの人も全部君の後ろに立っている人たちも全部」

タン「俺の意思とは関係なく俺はリングに立たされましたね?」

室長「君は帝国グループの次男だ。生まれつき多くのものを持っている分あきらめなければならない事がある。たとえば自分の意志みたいなものとか」

タン「分かってます。なぜ俺をリングに乗せたのかも分かります。リングに乗せないと俺がまた夢を見ますから・・・。兄さんがお父さんとの戦いで勝ったら次は俺と戦うことになりますか?」

室長「そうだろう・・・」

結局兄と・・・タンは苦しかった。

ボナのパーティには招待されなかったラヘル。

だがそれを利用しウンサンをはめようと画策する。

ヨンドに『私今ウンサンのバイト先にいるわ。何が起こるか楽しみでしょ?』とメールし慌てて出ていくヨンドを追いかけウンサンのバイト先を確かめるラヘル。

血相かえて飛び出したヨンド。

ラヘル「ここか。ウンサンのバイト先」

ヨンド「お前・・・ひょっとして俺をつけてきたのか?ふざけるんじゃないぞ」

ラヘル「女も殴るの?」

ヨンド「チャウンサンのためなら最低になる事も怖くないんだ、俺は。」

ラヘル「怖がってよ。あなたの感情は彼女には毒のようだから。どうしたらチャウンサンという一言でここまで駆けつけるの?」

ラヘルの作戦に、まんまと嵌ってしまったヨンド。

ボナとチャニョンのパーティー会場。

そこへ招待されてないラヘルがやってくる。

ボナ「なんで来たの?」

ラヘル「コーヒーは私が出すわ」

ボナ「ほんと?」

ラヘルの言葉を不審に思うチャニョン。

ヨンドはあのままウンサンのバイト先で心配でまっていた。

ウンサン「なんでここに?寒いでしょ」

ヨンド「俺がしくじった・・・ラヘルがお前がここで働いてるの知った。あいつまた来たら電話しろ」

ウンサン「私、守ってくれる黒騎士は沢山いるよ」

それを聞いたヨンドは前にも同じ事言われたのを思い出す。

ヨンド「あの時からだ・・・お前が好きになったの。黒騎士がいても心配だから電話しろ」

そういって帰っていく。

バイトに入ったウンサンは配達をするよう言われる。

今日の仕事はそれだけだと言われ住所を受け取ったウンサンはチャニョンに確かめそれが今日のパーティ会場だと知る。

『ラヘルだ・・・』そう思うウンサン・・だけど解った上でそこへ行く決意をする。

ウンサンはタンへメールを入れる。

ウンサン『どこ?ひょっとしてチャニョンのパーティーに行った?』

タン『今行くとこ。なぜ?』

ウンサン『私がそこにいても驚かないでね』

そのメールに慌てるタン。

タン『バイトは?なんで行くんだ?』

しかしタンのメールに返事はこない。

ヨンドとすれ違うタン。

ボナとチャニョンの二人の復活パーティーが始まる。

そこへ配達にくるウンサン。

「ケータリングサービスです」

女子生徒「なによチャウンサン?バイト?お金設ける為に?」

ウンサン「えぇ。ユン・チャニョン、イ・ボナ二人ともおめでとう」

驚くボナとチャニョン。

チャニョン「どうなってるんだ?ユ・ラヘルの仕業か?」

ウンサン「えぇ」

ミョンス「成金!なんでお前バイトなんか?ヨンドみたいに家業か?」

ウンサン「私・・・実は・・実は・・・」

そこへ入ってくるタン。

タン「来い」

ウンサン「今仕事中・・・」

ラヘル「私が注文したの!ここにあるの全部私のコーヒー」

それをひっくり返しぶちまけるタン。

タン「これで(お前の仕事は)終わっただろ?出てこい」

ウンサン「ユ・ラヘル、ごめんもう一度持ってくるね」

そう言いながらタンに引っ張って連れていかれるウンサン。

ボナ「このために来たのあんた?」

ラヘル「ええ楽しみなさい。また来るそうじゃない?」

ボナ「パーティーをめちゃくちゃにして!生きて帰らせない!」

ラヘルにつかみかかろうとするが皆にとめられるボナ。

ミョンス、ヨンドに電話。

ミョンス「ヨンドどこだ?早く来い!パーティ滅茶苦茶なんだけど・・・すっげー面白い!」

タンとウンサン。

タン「お前は何で人をイライラさせるんだ?解ってて何で来るんだよ?」

ウンサン「私の仕事よ。何でだめなの?チェヨンドは良くて私は恥ずかしいの?何で?私はコーヒーチェーン店の娘じゃないから?」

タン「そう言う意味じゃないだろうが!お前がこんな扱いを受けるのが嫌なんだよ俺は!」

ウンサン「私が本当に恥ずかしかったのは学校で成金と呼ばれた時何も言えなかった自分だったよ。自分が貧乏な事より嘘つく自分が恥ずかしかったんだよ」

タン「それは分かるけどもうちょっと楽にできないのか?」

ウンサン「みんなに言う為に来たの。私が成金じゃないって、今まで騙してた事」

タン「正気か?」

ウンサン「秘密に戦々恐々としながら一日も楽に眠ったことがないの。今日は無事だろうか?明日はばれるだろうか、ばれたらどうなるか・・・。でもあなたもそうだったじゃない。あなたは生まれた時からつい数日前まで隠してたけどそれでもあなたは明かしたじゃない?」

タン「俺はしたけどお前はしないとだめなのか?したらわかるんだするな。ぶちまけたからって幸せになるわけでもない!何でこんなに意地っ張りなんだ!」

ウンサン「あなたに習ったの。傷つくと解るけどそれでも直進!行ってくる」

ウンサンを見送るタンのところへやってくるラヘル。

彼女を侮辱し続けるラヘルに。

タン「話しかけるな!できればこれからも」

見たこともないタンの冷たい目にラヘルは黙ってしまう。

新しいコーヒーを用意し再び戻ってくるウンサン。

近づくタンに。

ウンサン「止めないで。あなたが止めても・・・」

だがタンはウンサンの心を尊重しようと決めていた。

タン「俺がお前を成金にして苦しませたごめん・・・。出来なかったら諦めて俺に抱きつけ・・・」

頷くウンサン。

そばで見守ること、それが自分の仕事だ!そう思ったタン。

ウンサンの告白を聞いた生徒達。

ミョンス「なんだって?もう一度言ってみろ」

ウンサン「私がバイトする理由はお金を稼ぐためでありお金を稼ぐ理由が家が貧乏だからと言った」

ほくそ笑むラヘル。

この時ヨンド到着。

ウンサン「今まで騙しててごめんなさい。私成金じゃないの。社会配慮者典型で転校してきたの」

ざわつく生徒たち。

止めようとするチャニョン、それを制止するタン。

ミョンス「いままで成金のふりしてたのか?成金」

女子生徒「そのくせキムタンに手を出したの?」

男子生徒「キムタン、お前も騙されてたのか?」

タン「あぁ騙された」

『騙された』というタンの言葉を不思議に思うラヘル。

そういってウンサンに近づいていくタン。

タン「あまりにも強がるから大丈夫だと思ったのに震えてる・・・」

そして。

タン「パーティーに音楽もないのかミョンス?」

タンの一言にミョンスはDJを始める。

タン「こいつ退勤時間だ。コーヒーはセルフサービスだ」

タイミングよく音楽を流すミョンス。

ウンサン「やった」

タン「初めまして、社会配慮のチャウンサン。俺は庶子キムタンだ」

それを聞き帰っていくヨンド。

タン「さぁパーティーしよう」

そう言い、ウンサンのエプロンをはずし、髪もほどき・・・。

パーティに出席した女の子がつけるお花のブレスを手首につけてあげるタン。

皆の前で、ウンサンのおでこにキスを。

それを見て微笑むボナ、チャニョン、ミョンス・・・。

呆れて見る生徒たち。

それでも構わず二人はそのまま・・・。

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