シンイ〜信義〜 |
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第18話〜逃げない、負けない〜 トギに連れられてチョニシに来ると薬員達が全員血を流して殺されているのを見 る。 警戒しながらウンスの部屋にきた近衛隊達は荒らされた部屋の中でチャン侍医の遺体を見つける。 その時自分の部屋に駆けつけたウンス。 部屋に入ろうとするが隊員達に止められる。 トルベ「刺客の姿はなくこれが・・・」 トルベが持っていたのは作りかけの解毒薬の3つのうちの1つ。 トルベ「チャン侍医が隠し持っていました」 ウンス「どういうこと?チャン侍医は?」 ウンスの解毒薬を守るためにチャン侍医が亡くなったと知るウンス。 トルベ「兵舎に戻ります。また奇襲があるやもしれませぬ」 ウンス「どいて、私が助ける!」 トルベ「相手は内功の使い手。我々ではかないませぬ」 泣き崩れるウンス。 チャン侍医が命と引き換えにしてまでも守ってくれた作りかけの解毒薬を手にしながらチャン侍医の言葉を思い出しているウンス。 その頃プオングンに会いに来たヨン達近衛隊。 ヨン「トックングン様はこちらだと伺いましたが」 チョル「そなたもいた」 ヨン「トックングンはどちらに?」 チョル「私なりに調べたのだ。チョイルシンやあの日天穴にいた近衛隊をな。皆口を揃えて言った。お前が天門をくぐり天界の医員を連れてきたと。王もその場で見ていたと」 ヨン「(テマンに)待機中の隊員に屋敷を調べさせろ。(チョルに)王から権限を賜った」 チョル「いつの間に皆で口裏を合わせたのだ?お前の筋書きか?いいや、あの妖魔が悪知恵を使い嘘八百・・・」 ヨン「聞き捨てなりませぬ。トックングンに王妃誘拐の容疑がかかっております」 副隊長「馬車が裏門から出ました!今追っています」 ヨン「逃がすな。行先は征東行省だ」 副隊長「はい」 ヨン「幇助したとなればプオングン様も地位が危うい。よくお考えを」 チョル「女に会わせろ。どこだ?決して殺さぬ。ただ・・・聞きたいのだ」 ヨン「今度は何をなさる気で?今までの仕打ちを思えば会わせられませぬ」 皇宮には重臣達が一同に会し王の言動について言い合いをしている。 元との戦に難色を示す重臣達に『タンサガンが来ているのだからまずは話してみるべきだ』と全員をなだめるジェヒョン。 皇宮へ帰ってきたヨンは王に会う。 ヨン「王様。会議では?」 王「騒がしいゆえ逃げた」 ヨン「トックングンを捕らえました。ご尋問は?」 王「今日か・・・」 かすかに首を横にふるヨンを見る王。 王「今日は重臣らの相手がある。明朝一番に」 ヨン「準備を整えます」 立ち去ろうとするヨンの背中に語りかける王。 王「チャン侍医が襲われた。医仙を探す者達にやられたようだ」 ヨン「怪我を?」 王「残念だが亡くなった。医仙が心配でならぬ。この地で唯一の友だったと聞く」 飛んでくるトルベ。 トルベ「隊長!チャン侍医が・・・」 ヨン「聞いた」 トルベ「スリバンも標的に。数名が負傷しました」 ヨン「プオングンか?」 トルベ「舎弟達に動きが。目的は医仙。スリバンには尋問された者もおります」 急いで部屋に戻るヨン。 部屋に入るとウンスは薬剤を切っている。 半ば放心状態で。 ウンス「遅かったのね。部屋の中が薬くさい?チョニシに行けないからここでやってるの。ごめんなさい」 薬で汚れた手をじっとみるヨン。 ウンス「今日チャン侍医が・・・」 ヨン「聞きました」 ウンス「私の師匠が・・・」 黙ってウンスの手を拭いてあげるヨン。 ウンス「話が出来る友人でもあったのに。私のせいでこんなことになって」 作りかけの解毒薬を見せるウンス。 ウンス「見て、私の解毒薬。チャン侍医が命がけで守ってくれた。1つだけ反応が出たの。まだ経過を見ないと何とも言えないけど・・・」 ウンスの手から解毒薬を取り丁寧に蓋をし、ウンスの鎧を脱がせてあげる。 ウンス「これを守って亡くなった。隠すように持ってたらしいの。だからチャン侍医は・・・私を狙う人達に。私のせいよ。私さえいなければ。私が殺したんだわ。私が殺したの!」 黙ってウンスを寝台に寝かせる。 ヨン「少し眠って」 自分は椅子に座って向こうを向いて涙をこらえているウンスを見る。 ヨン「16歳の時初めて人を殺めました。倭寇でした。周りは褒めてくれました。度胸があり斬り口も鮮やかだ。いい一太刀だと。嬉しくて胸が躍り誇らしくも思った。でもその晩は一睡も出来ませんでした。寒くて身が震え凍える程。寒い季節でもないのに。6月21日でした。確か・・・」 ウンス「日にちを覚えてるの?」 ヨン「日にちも、殺した相手の顔も覚えています」 ウンス「次も?」 ヨン「いいえ。その次からはこうなりました。一人斬り、また一人、また一人と・・・ゆえに解るのです。自分が殺したなどと言わないで下さい。いいですか?」 ウンス「解ったわ」 ヨン「では、休んで下さい」 翌朝。 一つしかない寝台をウンスに譲ったヨンは身支度を整えている。 目を覚ましたウンスはそれをそっと見ている。 作りかけの解毒薬の蓋を開け覗き込んでいるヨン。 ウンスの心の声『私はここにいるわ。3つ数えるうちにこっちを向いて』 自分の刀を抜いて刃を眺めているヨン。 ウンスの心の声『1、2、3』 寝たふりをするウンス。 ウンスを見るヨン。 刀を鞘にしまう音。 ウンスがふと見ると、目の前にヨンの顔が。 ヨン「寝坊したら朝飯抜きですよ。では」 出て行くヨンに。 ウンスの心の声『1、2、3』 振り向いてウンスを見る。 笑いあう二人。 尋問のためトックングンが捕まっている牢へ迎えに来たヨン。 隊員にトックングンを調べさせ解毒薬を探させるも持っていないことが解る。 連れていこうとしたその時、タンサガンが牢へやってくる。 元の職に属すトックングンが罪を犯したのなら高麗ではなく元の征東行省で裁かれるべきだと言われ連れていかれてしまう。 トックングンを元に引き渡せばトックングンを擁立し必ず王を討つはず。 全指揮権を貰えるなら征東行省を自分が討つと王に直訴するも王は何としても法で裁かなければ高麗が勝ったことにならないとこだわり続ける。 征東行省ではプオングンとトックングンが指揮を執り王を討つ相談をしており、皇宮では王が指揮を執り征東行省をどうするかの検討をしている。 重臣達の意思を一つにまとめようと必死になっている王にヨンは更にたたみ掛ける。 ヨン「トックングンは征東行省に討ちいる餌ゆえ。指一本触れるなと?」 王「確かに申した。余とて心穏やかではない」 ヨン「餌だけですか?釣竿はどこですか?」 王「王命を出すには大義名分がいる」 ヨン「早くお作り下さい。名分を」 王「ではそなたに命じようか?名分など構わず捕らえよ。まだ許せぬゆえ手足を切り落とせとな。そなたは危険も顧みず従おう。帰郷した折のこと覚えておるか?敵襲にあった日の夜余に申したな。何があってもそなたから離れるなと。必ず守るからと。その言葉通りそなたは余の代わりに戦った。いつまで、余は背中に隠れておればよい?」 ヨン「つまり余計な手出しは無用ということですか?」 王「余は何としても無血でプオングンを倒したい。そうしてこそ北の領土を取り戻せる。余を見守ってくれ」 ヨン「御意」 王「侍医を殺めたのはプオングンの配下の者だ」 ヨン「聞きました」 王「捕らえよ。殺さず生かしたままで」 ヨン「承知しました」 歩き出そうとしたヨンはいつも持っている刀を落としてしまう。 王妃の診察をしているウンスは『次はいつお子を授かりますか?』と尋ねられるが言い淀んでいると尚宮が呼びにくる。 渡されたのはタンサガンからウンスあての書簡。 開けてみて驚くウンス。 その手紙を持ってタンサガンに会いに来る。 手紙にはハングル文字で『ウンス』と書かれていたのだ。 スリバンの一人がチョヌムジャとファスインをとある場所に連れてくる。 油をまいた家に二人を閉じ込める。 ヨン「チョニシを襲撃し侍医と薬員を殺害したな」 ファスイン「だったら何?」 ヨン「縄をかけ引っ立てる」 二人が立っている周りに油の入ったつぼを投げ火を使えないようにする。 ヨン「火を放てば丸焼きだ。火遊びはやめとけ」 ファスイン「ずいぶん卑怯ね。あなたらしくない。サシの勝負は?」 ヨン「お前らは例外だ」 チョヌムジャが笛を吹こうとした瞬間に矢で邪魔をする。 ヨン「観念して縄につけ」 刀を突きつけるヨンだがその刀を持つ手が震えてしまう。 後を部下に任せ離れた場所に座るヨンは震える右手を気にしている。 タンサガンと会っているウンス。 タンサガン「この文字が読めるのですね?」 ウンス「あなたも読めるの?」 タンサガン「文字が読めるからこそこうして来られた。処刑せんとする私のもとまで」 ウンス「文字を知ってたら妖魔として公開処刑になる。そう?」 タンサガン「では答えにならぬでしょう?」 ウンス「当然よ」 タンサガン「こうしましょう。ここでのお話は席を立ったら忘れるのです」 ウンス「いいわ」 タンサガン「この文字は何とありますか?」 ウンス「読めないの?」 タンサガン「まねて書いたまで」 ウンス「どこで見たの?」 タンサガン「高祖父が残した日記です。片隅に記されていました」 ウンスはタンサガンから死ぬべき人を助けたことはあるかと問われるが死ぬべき人などこの世にはいないと言い返す。 そして最後に『殺したいなら好きにすれば?必死で生き抜いてみせるから』と言い残して後にする。 その夜、頼んであったウンスの薬をスリバンの家に取りに来ているヨン。 叔母「あらゆる解毒薬を集めたけど飛虫のだけないよ」 ヨン「じゃあ発症や痛みを抑える薬はあるか?」 叔母「これが痛みを抑える薬だけど・・・」 言い終わる前に奪うヨン。 ヨン「他には?」 叔母「飛虫にきくかどうか・・・」 ヨン「あの方を一人にしてる。もう戻らないと」 叔母が持ってた薬を全部受け取って急いで帰る。 ウンス「ここに集合!1列に並んで」 ヨンが帰ってくるとどこからか声がする。 近衛隊達の笑い声も。 ウンス「これはホッケ茶よ。兵舎の周辺のケンポ梨から作ったの。天界では疲労回復のために飲むの。試しに作ってみたわ。私が教えた通りに煎じてね。交代で戻った隊員達に飲ませてあげて。茶葉はたっぷりあるから」 トクマン「お任せください!」 また怖い顔で来るヨン。 ウンス「お疲れ様です、隊長。ホッケ茶で疲れをとって下さい」 怖い顔で黙って手を出すとテマンが器をヨンの手に乗せる。 ヨンが飲んでる間、反応やいかにと隊員達が息をのむ。 そしてウンスを見てふっと笑う。 ほっと胸をなでおろす隊員達。 ヨンの部屋で一人解毒薬を作っているウンス。 タンサガンの言葉を思い出す。 『何も助けず何も殺さず世の中に触れることなく生きられますか?』 部屋に戻ってきたヨンが椅子を二つ並べて寝ようとするのをウンスが止める。 ウンス「ベッドで腰を伸ばして寝て。主治医からの命令よ。もう!言うとおりにしてよ」 ヨン「新人のくせに」 ウンス「お願い」 仕方なく寝台に座るヨン。 ウンスが椅子を二つ並べて寝る準備をしている。 ヨン「解毒薬の研究は進んでますか?」 ウンス「滅菌された道具がないから抽出できなくて。顕微鏡でもあればいいんだけど。一番の問題は時間かな。適切な温度と環境が整わないからひたすら待つしかなくて」 ウンスが結っていた髪をほどいたのでくしを取ってあげようとしたヨンは、くしを落としてしまう。 もう一度拾おうとしてまた落とす。 そのヨンの表情に気付いたウンス。 ウンス「その顔・・・何かあるのね?」 ヨンの手を取るウンス。 ウンス「引っ張ってみて。ちゃんと力を入れて」 引っ張り合いをするも特に異常は見られない。 ウンス「異常はなさそうね。前にもあった?」 ヨン「寝不足のせいです。もう寝ましょう」 ウンスをどかして寝台に横になるヨン。 そして行こうとしたウンスの手を捕まえて引っ張る。 隣に寝ろという意味だ。 ウンスはふっと笑って隣に横になる。 ヨンは目を閉じたまま手を差し出す。 手を繋いで眠る二人。 翌日。 王に知らせがくる。 トックングンの尋問を征東行省で行うから王に出向いて欲しいという内容だった。 だがこれはチョルとトックングンがたくらんだ罠。 王の護衛として近衛隊12名だけで征東行省に向かう準備をしているヨン。 ヨン「我々は王を護衛するため兵舎に残せるのは新人のみ。それも最低限です。ここを空けるのは不安ですが・・・」 ヨンに鎧を着せてあげるウンス。 ウンス「私は少ししたら王妃のところへ行ってあとはここでじっとしてる。手はどう?動かしてみて。少しでも違和感があったら主治医に教えてね。返事は?」 ヨン「新人とは思えぬ生意気な口ぶりだ」 ウンスがヨンの背中にもたれかかる。 ウンス「支度できました、隊長」 『無事に戻ってきて』そんな願いを込めたウンス。 見つめ合って微笑みあう。 王を先頭に征東行省に出掛けてゆく。 その後、ヨンの部屋に刺客が忍び込む。 テマンが気づき残った近衛隊を呼び応戦する中、ウンスが持っていた作りかけの解毒薬がダメになってしまう。 刺客の狙いはウンスの手術道具だった。 それを持ち去る刺客。 刺客に襲われたことを知り飛んでくる尚宮。 チャン侍医が命がけで守ってくれた大事な解毒薬がダメになったことで言葉もなく座りこんで今にも泣きそうなウンス。 尚宮「何があった?」 テマン「それが笠をかぶった男が現れ・・・もう消えました」 尚宮「お前の話は要領を得ないね。医仙、何があったのです?」 ヨンの部屋に来たウンスと尚宮とテマン。 尚宮「解毒薬は・・・」 ウンス「最後の一つだったの」 テマン「道具がありません」 ウンス「命を狙ったんじゃなくて盗みが目的だったのね。ならそう言ってよ」 尚宮「皇宮から尾行したのでしょう。初めから盗みが目的だったようです」 そこに落ちていた赤い月のバンダナを手に取る尚宮。 それを見るウンス。 ウンス「それってあの人の剣に巻いてた・・・許嫁だった人の?」 尚宮「どうでしょう?」 ウンス「ずっと聞きたかったんです。これだけは必ず」 尚宮「何でしょう?」 ウンス「あの人が結婚を約束してた人。彼女を失ってとても苦しみましたよね?」 尚宮「ええ」 ウンス「どれくらいですか?どのくらい長く?」 尚宮「どうしてですか?」 ウンス「そこに落ちてるのが私の解毒薬です。培養をやり直すには時間がかかります。天門が開く日までに薬は出来ない。でも覚悟してもう一度培養に懸けるしかないわ。でも成功する保証はない。培養に失敗すれば死ぬしかないんです。もし私が死んだらあの人はどうなるの?」 尚宮「ここに留まると?」 ウンス「私、変ですか?どうかしてますよね。でもこのまま帰ってしまったらあの人どうかなってしまいそうで。あの人のことばかり考えて『どうしてるかな?本当に大丈夫かな?元気だろうか?』って」 尚宮「直接お話を。口下手な子ですからうまく伝えられるかどうか。でも聞けば医仙には答えましょう」 征東行省に到着した王達。 王「今度こそ覚悟がいるぞ」 ヨン「心得ております」 王「医仙には話したのか?」 ヨン「無事帰るつもりですので特には」 尋問の席についた王。 王「王妃かどわかしの罪で死罪か国を去るか決めよ」 トックングン「王様、ここは尋問の場。疑わしき者の事実関係を1つ1つ審理し・・・」 王「余は許すと申しているのです。水に流す代わりに国を去り王族の地位を放棄せよ。二度と王位を狙わぬと誓わば同胞同士血で血を洗う争いは避けられる」 トックングン「プオングン、あれを」 タンサガンから渡された『トックングンを王に封じる』と書かれた勅書。 チョル「本日を持ち高麗の王位はトックングン様が継承致します。元皇帝のご意志に背くは反逆者、すなわち高麗の反逆者です」 王「トックングン」 トックングン「何です?甥殿」 王「流血を望むのですか?憂いはないのですか?」 トックングン「流血が不本意なら抵抗なさいますな」 王「宮中に控えている重臣達に問うがよい。余と叔父上どちらを王に選ぶか。しばし時間を」 チョル「重臣だの民草だの面倒はご免こうむります。こうしましょう。先王が王位を手放さず新王に歯向かったため致し方なく斬り捨てたと」 王「話は終わっておりませぬ!」 ヨン「話など通じませぬ。帰りましょう」 王「いや、帰るわけにはいかぬ」 ヨン「こちらへ」 重臣達の満場一致ですぐに発てるよう待機しているアンジェたち禁軍。 ジェ「戦いの火ぶたが切られた」 部下「我らの出動は?」 ジェ「指示があるまで待機だ」 部下「いつまで?」 ジェ「とにかく待つのだ!」 皇宮では重臣達があれよこれよと言いあいをしている。 ドチが今王の置かれている緊迫した状況を説明するもどうしても意見のまとまらない重臣達。 王を助けるのか、王を見捨てるのか。 見かねた王妃がやってくる。 チョルの私兵達から逃れ別の部屋へ避難している王達に襲いかかってくるチョルの私兵達。 次から次へときりがない。 皇宮へ戻りましょうと言うヨンに、絶対帰らないと言い張る王。 必ずや重臣達の指示で禁軍が助けにくるはずだと。 意見のまとまらない重臣達に業を煮やす王妃。 老いぼれ共早く決断しろとイライラして待つアンジェ達禁軍。 帰らないと言い張る王に肝を冷やすヨン。 王を副隊長たちに任せヨンは一人チョルの私兵たちを斬っている。 その場にいた私兵を全員斬り倒すと、またヨンの手が震えだす。 助太刀に入るトルベ。 ヨンが剣を取り落とすのを見てしまう。 王の隠れる部屋に戻ったヨン。 ヨン「現在禁軍900名が待機しております」 王「承知だ」 ヨン「ご命令一つで直ちに占拠できます」 王「解っておる」 ヨン「王様の作戦通りなら重臣らが玉璽で出兵を命じるはず。重臣らは王様を見捨てぬとお考えでしょう。しかし重臣らは今頃トックングンと王様を秤にかけております」 王「だからこそ決断を委ねたのだ。重臣らに迷いあらば何も成し遂げられぬ」 ヨン「戦闘が長引けば耐えきれませぬ」 ヨンはこっそり震える右手を握りしめる。 王「民を戦に駆り出すか否か。重臣の同意がいる」 ヨン「重臣を信じるのですか?」 王「今は余も民の一人だ」 ヨン「承知しました」 その頃ウンスは荒らされたヨンの部屋をテマンと残った近衛隊とで一緒に片付けている。 ヨンが脱いだまま置いていった服を持ち上げると前にあげたアスピリンのビンが落ちる。 しおれた黄色い菊の花が未だに入っている。 ウンス「今回の任務はすごく危険なのよね?」 テマン「大丈夫です。隊長がいますし」 近衛隊「相手は車輪戦法だそうです。こちらは少数。いくら隊長でも限界はあるし」 ウンス「つまり・・・多くの血が流れる」 テマン「心配ないです、隊長が・・・」 新人の近衛隊員に叩かれるテマン。 そして沈むウンス。 テマン「どうしました?」 ウンス「ここで生きるってこういうことなのね。あの人はこうやって生きてきたんだって、思ったの」 牢に入れられていたチョヌムジャとファスインを逃しにきたのは薬師。 二人は牢から逃げる。 次から次に襲い来るチョルの私兵達をひたすら斬り続けてるヨン。 全身に返り血を浴び私兵達と睨みあう。 第19話へ |