シンイ〜信義〜 |
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第17話〜失われた二つの命〜 『今、あの人と歩いた道を一人でたどってる。そうこれも覚えてる。あの日のことは何もかも。ここなら100年後見つけてくれるはず。そんな奇跡が起こる保証はないけれど祈る思いで気持ちを残すわ。もう何百回考えたかしら。あの日皇宮へ引き返すべきだった。戻っていれば王妃様は助かり王様もお心を見失わずに済んだ。そして全てを背負いすさんでいくあの人を見ずに済んだ。もう一度あの日に戻れたら、あの人を抱きしめあの人の笑顔を取り戻せたら。ほんの1日時間を巻き戻せたら・・・私のように逃げないでウンス。それがあなたの最後の日になったとしても』 ********************************************************************************** 手紙を読んで半ば放心状態の所へ刺客3人を片付けたヨンが戻ってくる。 ヨン「医仙、どうしました?何かあったのか?誰かきたとか?」 ウンス「いいえ・・・」 ヨン「顔色が悪い。具合でも?」 ウンス「ただ黙って・・・抱きしめて」 ウンスの肩を抱いて座るヨン。 ヨン「どうしたのです?」 後ろを振り返るウンス。 この手紙があった場所を。 ヨン「言って下さい」 ウンス「あのね」 ヨン「はい」 ウンス「もしも王様と王妃様の身に何か起こったら・・・」 ヨン「どういうことです?」 ウンス「あなたがいない間に何かあっても平気?」 ヨン「誰に何を聞いた?」 ウンス「あなたを守りたい」 二人はもと来た道を戻っている。 ヨン「急になんですか?」 ウンス「帰るのよ。王様たちのところに」 ウンスの腕を掴んで止めるヨン。 ヨン「医員なのに覚えが悪すぎます。天門を目指し逃亡中の身ですよ。皇宮へ戻ればあなたの身が危険なのです」 ウンス「歩きながら話そう」 ヨン「ちゃんと説明してくれ。話して」 ウンスはさっき見つけたフィルムケースをヨンに差し出す。 ヨン「この中にあるのも天の手帳ですか?何て?」 ウンス「今戻れば王妃様を救えるって」 ヨン「これはどこで?」 ウンス「岩の下にあった。信じられない?」 ヨン「あなたを信じます。さあ」 ウンス「皇宮へ?」 ヨン「まず近くの村で情報を集めましょう。賞金稼ぎも巻かなくてはなりませぬ。それからです」 急に咳込むウンスに川の水を手ですくって飲ませてあげるヨン。 ヨン「発熱じゃ?」 ウンスはヨンのおでこに手を当て、自分のおでこを触ってみる。 そして首を横にふる。 皇宮ではいなくなった王妃の捜索に大騒ぎ。 王妃が心配でいてもたってもいられない王は自ら探しにいくと言いだすが護衛達全員に止められる。 そしてつぶやくように言葉を絞り出す。 王「隊長から連絡は?」 副隊長「ありませぬ」 王「これはきっと天罰だ。余はチェヨンの思いに何一つ応えてやらなかった。医仙が危ない時助けて欲しいと申す折、こんな思いをしていたのか。心の苦しみを・・・身をもって知った」 そこへ尚宮が王妃の寝所で見つけた書簡を持ってくる。 書簡にはタンサガンの刻印が押されている。 王の命令でタンサガンの部屋を捜索に来た近衛隊。 そして王命だと告げタンサガンを皇宮へ連れていく。 村で聞き込みをしているヨンを待つウンス。 手紙を思い出す。 『私のように逃げないでウンス。それがあなたの最後の日になったとしても』 『最後の日』の意味はまだウンスには解っていない。 ヨン「戦になりそうだという情報しか。急ぎましょう」 ウンスが動かない。 ヨン「何です?」 ウンス「一人で天門へ行くから戻ってと言っても無駄よね?」 ヨン「ありえません」 ウンス「じゃあ一緒に戻らない?時間はあるから戻っても・・・」 ヨン「これじゃ堂々巡りです」 いよいよ怒り出すウンス。 ウンス「どうすれば戻るの?怒って言えばいいの?」 ヨン「日が暮れます。さあ」 ウンス「この石頭!私って厄介者?」 ヨン「何だと?」 ウンス「『お送りします』『必ずお帰しします』そればっかり!早く追い返したい?」 ヨン「いいか・・・」 ウンス「だいたい何?剣に迷いが生じたなんて聞かされてみなさいよ。何よ?私のせい?私のせいで武士をやめ王のそばも離れるの?私が喜ぶと思う?それで守ってるつもり?命だけじゃなく私の心も守ってよ!」 ヨン「私は・・・」 ウンス「自分の運命を恨むわ。やっと出会えたのに。私のせいで投獄されて武士までやめて。武士しか出来ない人なのに」 ヨン「じゃあ・・・」 ウンス「戻ろう?」 ヨンの目つきが変わる。 ヨン「動くな」 次の瞬間ヨンは後ろに剣をふりあげる。 斬られたのはまだ歳若い男の子。 斬られた腕を痛がってうずくまっている。 ヨン「ここから動くな」 ウンスにそれだけ言って刺客を探しに行くヨン。 斬られた男の子に歩み寄るウンス。 ウンス「子供を傷つけるなんて。いくつ?まだ10代よね?あの人が殺さなかったんだからどうやら危険な人じゃなさそうね。手当てするから袖を」 ウンスの目の届かない所まで来たヨン。 ヨン「出てきてもいいぞ。大人しく帰れ。相手をする気分じゃない」 向かってきた刺客に肩を斬られるヨン。 ヨン「命が惜しくないのか?」 それでも向かってくる刺客。 ヨン「かなり人を斬ったろ?嫌気はささないか?斬って、また斬って」 刺客の首に剣を突きつけて言うヨン。 ヨン「医仙も言っていた。流血は望まぬと。だめか?」 留めをささずにそのまま刺客を逃がす。 今までの賞金稼ぎと違いタンサガンが放った刺客だとヨンは気づいていたのだ。 ヨンを待つウンス。 ヨンが戻ってくるなり急いでヨンの身体を見回す。 そして肩の血を見て毒づく。 ウンス「また怪我?」 ヨン「私が皇宮に戻るまで怒ったままですか?」 ウンス「心配が怒りに変わったの」 ヨン「解りました」 ウンス「戻る?」 ヨン「戻って両陛下の無事を確かめます。お見通しですよ」 ウンス「何よ?」 ヨン「一人では行かせません」 ウンス「なら一緒に戻ろう」 ヨン「元の使臣は元へ連行せずあなたの公開処刑をする気です」 『それがあなたの最後の日になったとしても』 手紙の意味に気付いたウンス。 ウンス「そうなのね」 ヨン「それでも戻ると?」 ウンス「上等よ」 ヨン「指一本触れさせません」 ウンス「解ってる。肩見せて」 皇宮。 タンサガンを前に怒り心頭の王。 王「見よ」 王妃の寝所にあった書簡を机に叩きつける。 王「弁明せよ」 タンサガン「私の印章ですが筆跡が違います」 王「タンサガンの名で王妃に新書が渡された。『お母上の件で内密の話がある』王妃をそそのかし密かに呼びだした。どこへ連れ去った?王妃はどこだ?」 タンサガン「王様、王妃様は元の高貴な姫君。連れ去るなど」 王「今すぐ王妃を出せ!居所を言わんか?縄をかけよ。捕らえ拷問してでも吐かせよ。早くせぬか!」 必死で王をなだめるドチ。 王妃への書簡はトックングンが書いたものだと気づいていたタンサガン。 つまりトックングンが仕組んだことだった。 その頃王妃は狭い部屋に閉じ込められたまま寝台に横になっている。 めまいでフラフラになりながらやっとの思いでそこにあった水を飲む。 その水に薬が混ぜてあるとも知らずに。 見つからない王妃にもはや半分諦めの色を見せる王。 そしてこんなことをするのは本当はトックングンしかいないことを知っていたと。 そして王妃の命と引き換えに何を要求されるかも。 トックングンをここへ呼べと涙ながらに命ずる王。 プオングンの屋敷でもウンスの居所が掴めず苦悩していた。 村の入り口で賞金稼ぎが見かけて以来消息がつかめぬと。 天門へ向かっているはずがなぜ遠ざかっているのかと怒るチョル。 皇宮へ戻ることにしたヨンとウンスはスリバンの家にやってくる。 二人が戻ってきたことに叔母達が驚いている。 叔母「ちょっと!二人とも正気かい?なんで戻ってくるんだい?寄りによって都が大変な時に」 ウンス「何か王様と王妃様に・・・?」 叔母「知らずに戻ったのかい?」 ヨン「何があった?」 叔母「王妃がさらわれたのさ。出先で目が離れた隙に」 手紙に書いてあった通りになったと、お互いを見合うヨンとウンス。 叔母「それで戻ったのかと」 スリバンの一人が報告にくる。 「この夜半に王がトックングンを呼んだ」 なんとなく合点がいくヨン。 皇宮。 王に呼ばれたトックングンがやってくる。 内密の話があるからと全員を部屋から追い出す王。 何とか王妃を返してくれと懇願するも『自分は知らぬ』と通されてしまう。 それでも王はあれ程必死に守ろうとしてきた国を譲るから妻を返してくれと涙ながらに懇願するも不敵な笑みを返されるだけ。 王の心は壊れる寸前にある。 スリバンの家に入ってきたのは尚宮とムガクシ数人。 ヨンを外に引っ張って連れて行く尚宮。 尚宮「なぜ戻った?」 ヨン「医仙が言い張るから」 尚宮「死ぬつもりか?」 ヨン「皇宮が危ないと昨日から言いだした」 尚宮「天のお告げか」 ヨン「王様は?」 尚宮「自分で伺え」 ヨン「今更参れぬ」 尚宮「要するにトックングンは長けておるのだ。人の気持ちを操ることに」 ウンス「私も同感です」 話を聞いていたウンスも出てくる。 ウンス「王妃様をさらったのはトックングンなんですね?」 尚宮「皆腹ではそう思っていても証拠がなく。間違って王妃様に何かあってはと」 ウンス「いい方法があります。映画でよく見るやり方なの」 また何か突拍子もないことを言いだすと思ったヨンは間髪入れずに横やりを入れる。 ヨン「昨日王妃に随行した者の名簿を。女官もいれて」 ウンス「王妃様の居所を突きとめるのね?私がトックングンに会うわ」 ヨン「なりません」 ウンス「また?」 ヨン「相手はトックングンですよ?」 ウンス「あいつが解るの。副専攻は心理学よ?」 ヨン「解るだと?」 この二人の言い争いが始まると留まることを知らないことは尚宮もよく知っている。 尚宮「王妃様が!」 黙る二人。 尚宮「ご懐妊なさいました」 驚くヨンとウンス。 ウンス「だめよ・・・」 尚宮「何がだめですか?」 ウンス「だって早すぎる」 今度はその言葉に驚く尚宮とヨン。 ウンス「王に会ってきて。王妃の代わりにそばにいてあげて。私何とかやってみる。信じてくれる?」 ウンスの性分が解るヨンは大きなため息をつく。 王に会いにきたヨン。 戻ったのではなく会いに。 ヨン「暇を取った者が心配のあまり戻りました。お聞かせ下さい。お呼びになったトックングンは何と申しましたか?」 沈んでいる王は返事をしない。 ヨン「王様?」 王「なぜ戻った?送り出してやったのに。こんな惨めな姿もそなたに見せずに済んだ」 ヨン「王様、私を見て下さい」 王「もはや王妃は・・・助かるまい。手立てが尽きた。この手であの者を殺すこともかなわぬ。なす術もなく惚けておる。この間にも余の王妃は・・・」 ヨンが机を投げ飛ばす。 その机に置いてあった王妃との思い出のスカーフを急いで拾おうとする王。 ヨン「お立ち下さい。王様は跪いてはなりませぬ。王様、トックングンと会い何を話したのですか?奴の腹を探ります。トックングンとどんな話をなさったのです?」 王「あの者は全て否認した」 ヨン「取引などは?」 王「いや、取引すらせず不敵な笑みを。余が王位を差し出し我が国まで差し出してあの者にすがった。哀願したのだ。聞いたか?余は国を差し出したのだ」 王の目には涙が光っている。 ヨン「医仙によるとあの者の狙いは王様のお心を壊すことだとか。王様のお心は壊れておしまいですか?ならば諦めます」 王「どうすればいい?」 ヨン「ご命令を」 王「王妃を・・・救いだせ」 ヨン「御意」 王「隊長・・・よくぞ戻った」 ヨン「戻ったのではなく頼まれて参じました」 一礼して出て行くヨン。 一方、トックングンに会いにきたウンス。 トックングン「明日処刑されるのだぞ?」 ウンス「聞いたわ。座れば?」 トックングン「口の聞き方は変わらぬな」 ウンス「私は天人だもん。王族も物乞いも同じなの。万民平等の民主主義よ」 トックングン「解毒薬が目的か?」 ウンス「チェヨンさんに仕掛けた罠を見破ったでしょ?」 トックングン「あれか」 ウンス「今度は王妃の居所を突き止めた」 笑うトックングンに岩場で見つけた手紙を読んで見せるウンス。 わざとこの時代にはないはずのフィルムケースを見せながら。 ウンス「読むわね。天界語で」 トックングン「未だに未練がある。いい夫婦になれたのに」 ウンス「前回はチェヨンさん。今回はあなたのことよ」 トックングン「私か?」 ウンス「『聡明な者が禁じ手を使った』」 トックングン「聡明か」 ウンス「『かどわかした王妃はお子を身ごもっていた』」 トックングン「お子?」 ウンス「『王妃が囚われた場所は次の通り・・・』」 トックングン「天からの書簡か?」 ウンス「これはフィルム用のプラスチックの入れ物でね」 トックングン「続きはどうした?」 ウンス「解毒薬が先よ」 トックングン「そんな話を信じると思うか?」 ウンス「ならいいわ。皇宮へ戻って王妃の居所を教えるから」 トックングン「そなた処刑されるぞ?」 ウンス「王妃を救う者を殺したりする?困るのはあなた。王妃をさらう時顔を見られてない?解毒薬は?正直に言ったら?この毒の解毒薬はないって。違う?手帳の続きの話も怪しいわ。あるなら見せて。ハッタリ屋?王族ってだけね」 トックングン「黙って聞いておればつけあがって」 ウンス「その言いぐさ。死ぬ覚悟で戻った私を刺激しないでね」 トックングン「そばにいるなら薬を」 手を差し出すウンス。 トックングン「返事が先だ」 ウンス「うーん・・・」 トックングン「どうだ?」 ウンス「お断り」 トックングン「じき熱が出よう。それでは手遅れになるぞ?」 ウンス「上等よ!」 言い捨てて出ていくウンス。 門の外でイライラしながら待っていたヨン。 ウンスの肩を掴んで心配そうに見るヨンにピースをして見せる。 王妃の捜索に出ていた兵達が一斉に撤収したと報告を受けるトックングン。 王妃の始末を頼むと使いに告げる。 それを隠れて聞いていたスリバンの一人。 使いの者の後をつける。 翌日、皇宮ではトダン会議が開かれている。 タンサガンが最後の返事を聞きにきているのだ。 そこにチョルも入ってきて席につく。 王はタンサガンの条件だった二つのうち一つ、元の玉璽をタンサガンに返す。 条件を飲まないと決めたのだ。 そして二つ目。 王はウンスを会議に連れてくる。 その頃王妃は衰弱しきって横になっている。 入ってきたのはトックングンの使い。 王妃に最後の薬を飲ませようとしたその時、ヨンが入り王妃を助ける。 誰の差し金か尋ねるも使いは自害してしまう。 トダン会議。 医仙は天の人ではないと断言する王。 ただ国の地固めをするために王自身が流したデマだと。 タンサガンは『これで終わりではないぞ』と言い残し去っていくが、これを聞いたチョルは黙っていない。 今までの話は嘘なのか?とウンスを捕まえて問いただすが言いよどむウンス。 ウンスは『天界から来たのか?』の問いに『正確には違います』と答えた。 未来から来たのであって、天界からではないから。 でも頭に血が登っているチョルに、言葉の裏を読む余裕はなかった。 王妃が戻ったとの知らせに引っ張っていかれるウンス。 窮地はまぬがれる。 王妃の部屋に飛んできた王だが尚宮に止められる。 『まず医仙に診て欲しい』という尚宮。 ウンスはトギだけ連れて中に入る。 そして部屋から出てくるウンス。 ウンス「意識もあり命に別状はありません。ただ・・・お腹のお子は助かりませんでした。お話を伺ったところ薬を飲まされており強い睡眠薬と思われます。それがお子に障り・・・」 泣くウンスの前にそっと移動するヨン。 そして皆の目から見えないよう隠しウンスの手を握る。 王妃の部屋に入った王は向こうを向いて泣く王妃を後ろから抱きしめる。 ウンスの部屋にやってきたヨン。 ヨン「重臣達の前で天人ではないと言ったとか?」 ウンス「王様が言ったのよ。なぜ?」 ヨン「プオングンが医仙と面会したいらしく」 ウンス「困ったわね」 ヨン「私達に出来ることは2つに1つ。1つ、天門が開くまで死にもの狂いで逃げきる」 ウンス「この間みたいに元の刺客に追われて戦って逃げての繰り返し?」 ヨン「2つ。先制攻撃。追手を先に消すのです」 ウンス「消すって、殺すの?」 ヨン「はい」 ウンス「冗談でしょ?」 ヨン「プオングン、トックングン、必要なら元の使臣も。私は隊長やホグンの官職を返上します。王にご迷惑がかかりますゆえ。そのために・・・」 ウンス「3つ目にするわ」 ヨン「何です?」 ウンス「その日まで一番安全な所にいるわ」 ヨン「どこです?」 ウンス「でも(王様の)お許しを貰わなくちゃ」 ヨンの部屋でヨンとアンジェ。 ジェ「トスンウィサはお前が適任だ。小競り合いどころか戦になりそうだ」 ヨン「そうだな」 ジェ「お前・・・どうした?」 ヨン「何が?」 ジェ「官職を捨て宮を去るのか?部下が心配してる」 ヨン「そうか」 ジェ「女のことか?」 ヨン「さあな」 ジェ「それとも剣が重くて?赤月隊の師匠がなくなる前日、うちに来た。親父と話し込んでたよ」 ヨン「師匠・・・」 ジェ「あの夜何度もおっしゃってた。剣が重く感じると。両手でも持てぬ時があると。俺は聞いたよ。どういう意味かと」 ヨン「それで・・・師匠は何と?」 ジェ「潮時がきたようだ。だから・・・最後の舞台を探すと」 ヨン「何て?」 ジェ「そうおっしゃった。次の日皇宮へ行き亡くなった。悔しくてな。あれほどの方があんな王の手で。何年になる?いつから人を斬った?」 ヨン「解らん」 ジェ「16の時家を出たよな?ざっと13年か14年か。その間何人斬った?お前も剣が重くなったか」 師匠から譲り受けた剣を手に持ち眺める。 そして遠くを見つめる。 チョルはトックングンに会いに来る。 そして国を弄んだ罪を償って貰うと怒り心頭のチョル。 トックングンは命の危険を感じる。 ヨンが自分の部屋に入ろうとすると部屋の前に近衛隊が。 トルベ「隊長、お話が」 ヨン「何だ?」 トルベ「近衛隊の新入りの選抜で」 ヨン「副隊長に言え」 トルベ「隊長にぜひ見ていただきたく」 ヨン「だから副隊長に言え!」 トクマン「隊長!今度の新入りですが」 ヨン「何か問題が?」 新入り「上から推された・・・」 ヨン「上だと?初めてじゃあるまい?家柄や身分は15番目、縁故は105番目、まず実力だ」 トクマン「しかし王のご命令で・・・」 ヨン「何だと?」 テマン「隊長の部屋にいますよ?」 ヨン「誰が?」 テマン「新入りの近衛隊員です」 不思議に思いながら自分の部屋に入るとそこにウンスが。 ウンス「2等兵ユ・ウンス。本日づけで配属されました!忠誠!」 髪を上げ鎧まで着ている。 呆れて見るヨン。 ヨン「これは?」 ウンス「高麗で一番安全な所に隠れるつもり。離れないわ。王様のお許しも出た。それからこれも。剣もくれた。見て、私の剣よ」 何も言わないヨン。 ちょっと気まずいウンス。 ウンス「近衛隊の兵舎には女子寮なんてないからここで過ごそうかなって・・・そこに簡易ベッドでも置いて・・・ほら、椅子2つでもよく寝られるタイプだし」 ドアの前で盗み聞きされていることが解っているヨンは怖い顔でドアを開けて部下達を追い払う。 急いでドアを閉める。 そしてゆっくりウンスに詰め寄る。 ウンス「タダじゃないわよ?隊員達の健康診断や治療だってするし・・・」 ヨン「だから俺にもここにいろと?」 ウンス「ここは隊長の部屋だしあなたは隊長・・・」 ヨン「俺が隊長だから?」 壁まで追い詰める。 ヨン「ここに?」 ウンス「ここにいて。私から逃げないで」 下では近衛隊員達が皆でニヤニヤしている。 『隊長と医仙様が二人きりだ』と。 ニヤニヤしてないで散れ!と怒るトルベもニヤニヤしている。 ウンスを無理やり座らせ向かいに座るヨン。 ヨン「なぜです?」 ウンス「何が?」 ヨン「半月もすれば天界へ帰る方がなぜ俺の部屋に?なぜだ?」 ウンス「だって・・・王様がここが一番安全だっておっしゃるし・・・」 ヨン「王がですか?」 ウンス「わ・・・私からお願いしたの」 ヨン「何をお考えなのか解らぬ」 ウンス「私のこと?」 ヨン「笑ったり怒ったり理解出来ぬ方ですが、でも解ったことがあります。いつも俺を心配してくれてる。俺のために泣き笑う。俺を守ろうとする。今回戻ったのも俺のためですね?俺が皇宮を気にしていたから」 うんうんと頷くウンス。 ヨン「ご自分の命を顧みず」 ウンス「死ななかったわ」 ウンスの手を握るヨン。 ヨン「こうしましょう。まず解毒薬を見つけます。薬を見つけ天界へ行かずとも助かるのならその時言います。残って欲しいと。天界にはあなたの帰りを待つ人がいる。それでも聞きます。一生守るから俺の傍にいてくれないかと」 ウンス「私のお守りはすごく大変よ?」 ヨン「承知の上です」 ウンス「一生よ?」 ヨン「傍にいてくれるなら死ぬまで離しません。生きている限りずっと。その日、その時に俺が聞いたら返事を・・・くれますか?」 うんと頷くウンス。 そのまま見つめあう二人。 部屋の外では部下達がニヤニヤして護衛として立っている。 ヨンが来ると急いで真顔になり整列する。 怖い顔で王に会いにくるヨン。 副隊長までニヤニヤしている。 ヨン「お呼びですか?」 王「掛けよ」 刀を置いて座る。 王「戻る気はないか?医仙には国医大使の位を考えていた。高い位につけばそれだけ安全だと思うた。だが近衛隊に入ると言いだした」 ヨン「さようで」 王「そなたも宮中に留まれる」 ヨン「先に決着をつけねばなりませぬ」 王「トックングンか」 ヨン「王妃様をさらい・・・」 王「解毒薬もいろう」 ヨン「斬る許可を」 王「タンサガンが庇護しておる」 ヨン「公にしづらければ私が内密に」 王「王命にて罰そう」 外では近衛隊達が腕試しの戦いをしている。 それを見にくるヨン。 必死で戦うトルベを笑って見ていたヨンだが、ウンスも一緒になって皆と騒いでいるのを見つけまた怖い顔に。 隊員達と抱き合ったり手をたたき合ったりしている。 ヨンに気付いた隊員達は一斉に頭を下げる。 ヨン「続けろ」 怖い顔のヨンはウンスに『あっちに』と目で合図を送る。 ヨンの部屋に来る二人。 ヨン「出ては困ります」 ウンス「隠れてるわよ?」 ヨン「さっきのは?」 ウンス「皆近衛隊でしょ?」 ヨン「だとしても」 ウンス「今日チョニシに行くから許可を頂くため待っておりました、隊長。チョニシで薬を貰うの。解毒薬も研究中だし。許可を下さい、隊長」 ヨン「単独行動は慎み、4人一組で」 ウンス「承知しました」 ヨン「戻ったら部屋で研究とやらを続けること」 ウンス「はい、隊長。どうして来たの?私の顔を見たくて?」 更に険しい顔になるヨン。 ヨン「帰りは遅くなります」 ウンス「はい、隊長」 ヨン「用がありますゆえ」 ウンス「待ってます、隊長」 ウンスをじっと見つめた後ゆっくりウンスに近づく。 そして耳元でささやく。 ヨン「隊長と・・・もう一度呼んでくれ」 ウンス「隊長?」 ウンスにキスしようとした矢先、あと少しの所で副隊長が飛んでくる。 それを見て気まずい副隊長。 副隊長「じ・・・準備できました」 その場の空気を壊すように明るく手をふるウンス。 ヨン「解った」 ヨンが行った後ウンスの顔が曇る。 額に手を当てて、そして腕の傷を見る。 王に会いにくるチョル。 王はウンスを別の場所に移したから面会はできぬと言うが『探し出してみせます』と言い放つチョル。 その頃チョヌムジャとファスインがチョニシに押し入っていた。 そこにいた薬員達を全員殺しウンスを探す。 隠れて必死で息を殺すトギ。 チョヌムジャとファスインはウンスの部屋にやってくる。 近衛隊達と話していたウンスをトギが呼びに来る。 トギに連れられてチョニシに来ると薬員達が全員血を流して殺されているのを見る。 警戒しながらウンスの部屋にきた近衛隊達は荒らされた部屋の中でチャン侍医の遺体を見つける。 その時自分の部屋に駆けつけたウンス。 部屋に入ろうとするが隊員達に止められる。 トルベ「刺客の姿はなくこれが・・・」 トルベが持っていたのは作りかけの解毒薬の3つのうちの1つ。 トルベ「チャン侍医が隠し持っていました」 ウンス「どういうこと?チャン侍医は?」 ウンスの解毒薬を守るためにチャン侍医が亡くなったと知るウンス。 第18話へ |