シンイ〜信義〜 |
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第15話〜運命のキス〜 トックングンに呼ばれて皇宮に来るチョル。 王が戦法を変えたことで王を打つか、医仙をどうするかと相談している。 ウンスから天門が開くのは2か月後と聞かされているチョル。 だから婚礼を1か月後に設定した二人。 でも騙されているのかもしれないと言いだすチョル。 婚礼を早めようと決めてしまう二人。 近衛隊達に指示を飛ばしているヨン。 禁軍の中でトックングンの息がかかった者を調べること。 反抗的な者達から目を離さないこと。 トックングンを見張ること。 例の書(天の手帳)の隠し場所を突き止めること。 プオングンの私兵を見張ること。 それぞれを言いつけている。 王の居所を突き止めて視察にやってくるファスインとチョヌムジャ。 止める近衛隊を無視して勝手に入るが兵の数だけ数えて帰って行く。 深夜。 ウンスはこっそり部屋を抜け出し宮中を歩いている。 そして部屋という部屋に入り手帳を必死に探している。 だが後ろから禁軍の兵がつけていることをウンスは知らない。 こっそり入った部屋で棚をあさっている。 後ろをつけていた禁軍の兵を一撃で倒し、今度はヨンが後ろからつける。 棚をあさっているウンスを見てため息をつくヨン。 危うく落としそうになった器をすんでの所で拾うヨン。 それに驚くウンス。 ヨン「盗人の真似ですか?」 ウンス「あなたこそ」 ヨン「手帳なら別の所です」 ウンス「そう?ならあっちの部屋?一人で碁を打つ部屋なんだって。そこにあるかも」 指で『来て』と合図するウンスを見てニヤっと笑うヨン。 見張りの禁軍が来たので慌てて隠れる二人。 そこにあった小さな部屋に入る。 ヨン「手帳には私のこと以外には何が?」 ウンス「天門が開く日時と・・・」 ヨン「あなたに危険が迫る日などは?」 ウンス「なかったわ」 ヨン「ならば・・・もう諦めましょう」 ウンス「でも・・・」 ヨン「私は己の運命を知ろうとは思いません。だから諦めましょう」 ウンス「あなたの・・・」 ヨン「知りたくありません。どうでもいい。いつ死んだって」 ウンス「私にはこれしかしてあげられないんだもん。もうすぐ私達は離れ離れ。普通に喧嘩して別れて仲直りできたり偶然また会えたりもしない。二度と会えない永遠の別れになる。それでも扉の向こうの世界で『あなたが生きてる。幸せに暮らしてる』そう思いたいの。だから諦めない」 禁軍の声「曲者だ!誰かいたぞ!」 お互いに複雑な思いを抱えて見つめ合う二人。 先に動いたのはヨン。 ヨン「何事だ?夜更けに」 そういって出ていく。 ヨンの指示で禁軍の一部をヨンの部屋に集めた近衛隊。 ヨン「久しぶりだ、アン・ジェ」 ジェ「チェヨン、波瀾万丈だな。それでなぜ隠れて会う?」 ヨン「早速本題に入ろう。お前ら、主君を皇宮から追い出した逆賊か?違うか?」 一斉に剣に手をかける禁軍達。 ジェ「いかにも」 ヨン「部下を9人失った」 ジェ「こちらは30人」 ヨン「お前らの上官だけ懐を肥やしたか?」 ジェ「それなりに」 ヨン「戻ってこぬか?王がお待ちだ」 ジェ「そちらに行けるのか?」 ヨン「お膳立てしよう。どうだ?」 ジェ「いつまでに決めればいい?」 ヨン「1日も早く」 ヨンの命で王の所に使いに来たテマン。 その手紙で禁軍を味方につけたと知る王は役職を与えると約束する。 チョルの屋敷。 禁軍を味方につけるであろうことは予測済なチョルとトックングン。 先に王がいるヒョンゴ村を奇襲するために名分を探す二人はウンスとの結婚式をしている最中に事を起こすと決めてしまう。 しかも婚礼は明後日だと。 その頃こっそり会う尚宮とヨン。 尚宮「そんなに焦らずとも」 ヨン「1日が惜しい」 尚宮「婚儀までに医仙を取り戻せばいいんだろ?」 ヨン「時間がない」 尚宮「気をつけな」 ヨン「これ以上どうしろってんだよ?会うのも控えてるのに!」 尚宮「偉そうに威張るな。トックングンの謀反を暴き失脚させ医仙を取り戻す。来月15日までに・・・」 ヨン「来月15日が・・・その日なんだ。あの方が帰る日」 驚く尚宮。 尚宮「本当かい?聞いてみたか?残る気はないかと」 ヨン「残るわけない。そんな気はこれっぽっちも」 尚宮「ここでの苦労を思えば無理もあるまい」 ヨン「禁軍のホグンらが集う場所を調べてくれ。一人ずつでは余計な手間が増える。一気に片付けたい」 尚宮「でもあの様子・・・医仙の話を聞くとまんざらでも・・・」 気づくともうヨンはいなかった。 ウンスは部屋で勝手に渡された結納の品々を見ている。 それら全てを引きちぎったカーテンに押し込み引きずりながらトックングンに会いに行く。 ウンス「やめましょ」 トックングン「何の話だ?」 ウンス「本気で結婚する気はないんでしょ?プオングンとの取引に必要だっただけ」 トックングン「王妃になれるぞ?」 ウンス「だからあなたは王になれないんだって」 トックングン「(手帳の)残りはいらぬか?」 ウンス「ええ」 トックングン「参ったな」 ウンス「もう諦めたの」 トックングン「あの書の正体を教えてくれれば渡さぬとも限らぬ」 ウンス「あれは宿題」 トックングン「宿題?」 ウンス「誰かが私に残した宿題をどうしても解きたかったの」 トックングン「なのに諦めるのか?」 ウンス「あの人の傍にいるつもり。そうすれば答えが解けるはずだもの」 トックングン「婚約を破棄すると?」 ウンス「ごめんなさい。それじゃ」 トックングン「それは大事だ。破談は近衛隊長との不義が理由となろう。さすれば両人の処分は軽くて官奴婢、島流し。鞭打ちの刑も」 ウンス「プオングンが許さないわ」 トックングン「プオングンの奴婢になるか?二人仲良く」 ウンス「あの人は喜んで従うわ」 トックングン「ヒョンゴ村にいる王の護衛は50名のみ。私の禁軍は2千だ。王の命で試すか?チェヨンは恋しい女より王を取るかな?」 作戦開始の伝令を王に出すヨン。 でもその時ムガクシが尚宮の伝令を持ってやってくる。 その頃ウンスと尚宮。 ウンス「待ってよ、今何て?」 使い「本日婚礼の儀を執り行います」 ウンス「いったいどういうこと?」 尚宮「私がお連れする。どちらへ参るのか?」 使い「トックングン様と重臣の方々が既にお待ちです。ポジェ寺へは皆様で参ります」 尚宮「だが・・・このままでは参れぬ。トックングンとのご婚儀にこの姿のままでは」 使い「ポジェ寺に支度しております。まず移動し、そちらで」 ウンス「どうしよう」 打つ手がなくなった尚宮。 途中で止まるウンス。 チョル「どうしました?中でお待ちですよ。今頃王がおわす村を我が兵が包囲しております。王は生かしてお連れするよう申し付けました。ご婚儀の大事な正客。でも取りやめなら王はいらぬ。観念して挙げて下され」 トックングン「驚いたか?ポジェ寺は近い。重臣達と秋風に吹かれて参ろう」 歩きだしたその時、前からヨンが飛んでくる。 ヨン「これは何です?」 チョル「喜ばしい日に水を差すな」 近寄ろうとするヨンの肩に手をあて内功を発するチョル。 だがその手を掴み更に強い内功を発し手をどかすヨン。 すかさず近づく二人。 ウンス「王が危ないの」 ヨン「ゆえに急いでいます」 ウンス「早く行って」 しばらくウンスの顔をじっと見つめたあとで。 ヨン「こうするしかありませぬ」 ウンスのうなじを掴んで重臣達皆が見ている前でキスをする。 王もウンスも両方助けるにはもう他に手がないと腹をくくったのだ。 そこにいた全員、開いた口がふさがらない。 もちろん尚宮も。 ヨン「よって、婚儀は認めませぬ」 トックングン「王族の婚約者を辱めた狼藉者を獄に入れよ!」 ウンスを見てかすかに笑うヨン。 『大丈夫だ』と目で合図をする。 歩き去るヨンの後ろ姿をじっと見つめ続けるウンスの目には涙が光っている。 立ち止まり、もう一度ウンスを見つめるヨン。 王のいるヒョンゴ村。 いよいよ襲撃が始まる。 ファスインとチョヌムジャが確認に来るがもうもぬけの殻になっている。 その頃王達は山道を逃げていた。 牢に入れられているヨンは落ち着きなくウロウロしている。 そこへアン・ジェが。 ジェ「大胆な真似(キス)をしたとか?」 ヨン「お前の下に忠義な奴は何人いる?」 ジェ「おい、脱獄の片棒を担がせる気か?」 ヨン「王が危ない。プオングンの私兵が賊を装って襲撃を。情報では3〜400名」 ジェ「今王は?」 ヨン「逃げておられよう。俺の部下だけでは数が足りぬ。何とか言え」 ジェ「上官の命令なしに兵は動かせぬ」 ヨン「裏金で謀反を起こした上官だろ?」 ジェ「ああ」 ヨン「そっちは俺に任せろ。お前は王を頼む。一刻も早く」 ジェ「どこで落ちあう?」 ヨン「峠を越えるようお伝えした。王はお前をホグンにとお考えだ。行け」 ジェ「しょうがねえな」 アンジェに牢から出して貰うヨン。 その頃逃げる王達。 山賊に出くわし立ち往生している。 テマンの偵察でその数ざっと50名と。 山賊ではなく賊の格好をした刺客だと読んだ副隊長はこの場にチュソク率いる10名だけを残し近くの水車小屋へ避難することに。 これがチュソクの最後の姿となる。 皇宮。 チョルがしびれをきらし『医仙をよこせ』と言いにトックングンのもとへ。 明日必ず迎えにくると言い残して帰るチョル。 考えたトックングンは部屋に閉じ込めておいたウンスに会いにくる。 ウンス「そこで話して。私に近づかないでよ」 トックングン「さっぱりだ。何が気に入らぬ?手を組めば国は我が物」 ウンス「王になれないと言ったでしょ?」 トックングン「なぜだ?占いにそう出たのか?そうだ。婚儀を邪魔した乱心者は処刑する。平静を取り戻した私の婚約者は・・・」 ウンスはとっさに足首につけてあった短剣を掴みトックングンの首に突き付ける。 ウンス「扱いはプロ仕込みよ。でも習ったのはここまで。近寄らないで!虫唾が走る」 トックングン「そなたも刀が使えると聞いたことがある」 ウンス「話が終わったら出てって」 トックングン「合点がいかぬのだ。チェヨンはなぜ素直に捕まった?」 ウンス「私が出て行く?」 トックングン「奴が脱獄した。禁軍に内通者がいたのだ」 ウンス「ほらね」 トックングン「頼む」 ウンス「何よ?」 トックングン「私を助けてくれ」 ウンス「よく言えるわね」 トックングン「プオングンにそなたを渡せば私の切り札が残らぬ」 ウンス「だから何なの?」 トックングン「逃げてくれぬか?チェヨンのもとへ。あの男しかそなたは守れぬ」 持っていた短剣を降ろして椅子に座るウンス。 ウンス「続けて」 トックングン「プオングンから逃げる気だろう?天門や天界が偽りだと気づかれる前に」 ウンス「ええ」 トックングン「10日間身を隠してくれ。10日たち元より勅書が届けば私は王になれる」 ウンス「お好きに」 ふいをつかれたウンス。 トックングンに手首を掴まれ毒針を刺されてしまう。 トックングン「それは担保だ」 ウンス「何をしたの?」 トックングン「上質の毒だ。特に症状は出ぬ。ただし私が呼べば駆けつけよ。命が惜しくばな」 尚宮の偽の勅書で禁軍のホグンらを一同に集める。 トルベのみを連れてそこに入るヨン。 『たった二人か?』と馬鹿にされるが難なく全員片付けるトルベ。 そして大将を捕まえて刀を突きつけるヨン。 王が乗っていたであろうと思われる馬車を見つけるファスインとチョヌムジャ。 中はもぬけの殻でイムミルポプで『上だ』と指示を出すチョヌムジャ。 そこへ隠れていたチュソク達。 いくら近衛隊といえど相手は内功の使い手。 近衛隊チュソク率いる10名、ここで全員斬られてしまう。 小屋に避難した王達。 王は思い出す。 隊長と内通していたことを知りチュソクに自害しろと刀を投げた記憶。 飛んでくるテマン。 テマンの偵察でファスインとチョヌムジャがここに向かっていることが解る。 もう後がないと判断した副隊長。 王と王妃の身代わりを立てここに残して逃げよと言い放つ。 反対する王に『隊長の判断です!』と。 山道を必死で逃げる王達。 各所に残してきた近衛隊が気になり振り返る王。 生きて残っているとは思えない。 人の気配に警戒する副隊長。 一斉に剣を抜く。 ジェ「もしやヒョンゴ村よりお越しですか?鷹揚郡チュンナンジャンのアン・ジェ、お迎えにあがりました」 そういって一同膝をつく。 ジェ「近衛隊長チェヨンから護衛するようにと。いざ皇宮へ」 安堵する近衛隊、王、王妃。 皇宮。 残った近衛隊に指示を出しているヨン。 これから王を迎える。 ヨンのもとへ部下が飛んできて耳打ちする。 ウンスが待っていると。 チョニシへ無我夢中で走る。 部屋へつくなりウンスを抱きしめるヨン。 息をきらしながら。 ヨン「ご無事で?」 うんうんと頷くウンス。 ヨン「でもなぜ奴が解放したんですか?今度はどんな取引をしたんです?何を条件に・・・」 ウンス「帰らせてって泣きわめいたの」 ヨン「な・・・泣いた?」 うんうんと頷くウンス。 ヨン「泣いただけで?本当に?」 笑うウンス。 ウンスの笑いはどうも信用出来ない。 ヨン「医仙」 ウンス「一緒にいたくて帰ったんだから喜んでよ。なのに怒って質問攻め?」 ヨン「気が気じゃありませんでした。あまりにも心配で」 ウンス「行くんでしょ?」 ヨン「え?」 夢中だったので役目を一瞬忘れるヨン。 ウンス「王がお戻りになるのよね?お迎えに行って」 ヨン「ああ・・・ええ。王もご無事です。医仙はこちらに?」 うんうんと頷くウンス。 ヨン「改めて参ります」 ウンス「早く行って。話は後で」 ヨン「はい」 ウンス「ただ・・・顔が見たかったの」 ヨン「はい」 後ろ髪引かれる思いでもう一度振り返るヨン。 笑いあって別れる二人。 ヨンが見えなくなるとウンスの顔が曇る。 腕に刺された毒を報告出来ずにいる。 チョルの屋敷ではファスインの報告で殺したのは王の身代わりで王が死んでいないことが解る。 皇宮にいるトックングンにも王が死んでいないと報告が入ってくる。 そんな会話をしている所へヨンがやってくる。 近衛隊を従えて。 ヨン「謀反、収賄のみならず諸々の事由により王がトックングン様を尋問なさる。拘束せよとのご命令だ」 トックングンの配下にあったはずの禁軍達がいっせいにトックングンをひっ捕らえる。 あくる日。 無事皇宮に入る王と王妃。 それを出迎える侍女、残りの近衛隊、尚宮、ムガクシ、そしてヨン。 王はヨンのところまでくると一旦立ち止まる。 王「隊長」 ヨン「はい、王様」 王「許してくれ」 悲しい顔で歩き出す王の背中を見る。 まだヨンは『許してくれ』の意味を知らない。 副隊長「近衛隊員・・・甲10名、乙は10名とも、他4名、計・・・24名が討ち死にしました」 後ろで必死に涙をこらえているトクマン達を見る。 ヨンは思い出す。 チュソクに言った言葉を。 『俺のせいで命を落とすかもしれん。許してくれ』 その通りになってしまった自責の念。 ヨン「ご苦労だった」 一言だけを残して隊員達を残し歩き去るヨン。 必死で悲しみをこらえて。 その頃ウンスはチョニシでトックングンに刺された毒針の跡をチャン侍医に見て貰っている。 チャン侍医「発疹の症状から思い当たる節があります」 ウンス「あるの?」 チャン侍医「日本国に生息する飛虫の毒かと」 ウンス「飛虫がダニの類なら抗生剤が効くわ」 チャン侍医「抗・・・生剤?」 ウンス「私の世界では一般的な薬。検査で毒も特定出来る」 チャン侍医「最初は発疹程度で何の症状もありませぬ。でもひとたび発熱すれば余命1週間」 ウンス「発熱までは?」 チャン侍医「飛虫なら潜伏期間は1か月のはず」 ウンス「薬が欲しければ来いと言ってたわ」 チャン侍医「毒を使う者は信用なりませぬ」 ウンス「どうしよう?」 チャン侍医「解毒薬を作るのです」 ウンス「作れるの?」 チャン侍医「やってみないことには何とも。・・・隊長には知らせないのですか?」 ウンス「言えないわ。落ち込んでると思うし・・・」 『まだ来ないのかな』とヨンを待つウンス。 ヨンは自分の部屋に死んだ隊員達の祭壇を作り一人涙をこらえて座っている。 入ってきたのは王。 王「そなたを待っていた。何をしておる?」 ヨン「座っておりました」 王「そなたの大切な部下、そのもの達の命と引き換えに戻った。決して無駄にはせぬ。参ろう」 ヨン「私の責任です」 王「そなたは責められぬ」 ヨン「私の責任です」 王「隊長」 ヨン「現場にいるべき私が不在だったせいです。この前も同じく。チョイルシンの動きに気付きながら防げず。今日も小半日投獄されておりました。大事な局面を逸したためです。だから王様は皇宮を追われ私の部下は・・・死んだのです。いつかお尋ねになりましたね?王様に仕える理由を」 王「覚えておる。確かに問うた」 ヨン「私にとりあの方(ウンス)が一番で、この国高麗への忠誠心などよく解りませぬ、王様」 王「続けよ」 ヨン「このような考えの者を王様の近衛隊に据えるのは危険です」 王「それで?」 ヨン「お暇を頂きたく」 王「明日のトダン会議に出ろ。プオングンとトックングンの処分を検討する。この件は改めて」 ウンスは部屋で紙に何やら書いている。 それは現代で言うカレンダー。 天門が開く来月15日までの日付を書き、過ぎた日をバツで消している。 それを入口に立ちじっと見つめるヨン。 そこにじっと立つヨンに気付く。 ウンス「来てたの?ビールでも?って誘いたいけどないもんね。お茶でもどう?座って」 ヨン「では」 刀を置いて向かいに座る。 ヨン「トックングンが投獄されました。もう数日あれば捕らえる手筈が整うと思い婚礼の件を後回しにしました。婚儀が早まろうとは夢にも思わず・・・」 キスしたことを謝ろうとするヨンだがウンスが途中で遮る。 ウンス「トックングンがね、10日もすれば元から何か届いて王になれるって」 ヨン「10日?」 ウンス「それまで私に身を隠すように言ってたわ。プオングンにも秘密で」 ヨン「ここが隠れ場所?」 ウンス「バレても誰かさんが守ってくれる。隊員達のこと・・・」 ため息をつくヨン。 ウンス「心を痛めて食事もしないでふさぎ込んでたんでしょ?これね、ある映画を真似したの」 何枚か紙を見せる。 ウンス「これはね、天界の文字よ。何て書いたかというと・・・『(1枚目)大丈夫よ。(2枚目)心配しないで。(3枚目)うまくいくわ。(4枚目)そうでしょ?』 ふっと笑うヨン。 ヨン「はい」 立ち上がって入口まで歩き立ち止まるヨン。 ヨン「プオングンは天門の開く日を?」 ウンス「2か月先だと言ったら怪しんでた。私を見つけたら天門の場所に連れていくわ」 ヨン「あの者の足を縛らなければ。片を付けるまでお待ちください。ここでお守り致します。必ず間に合うよう私がお連れします。あの場所・・・天門へ」 部屋へ帰っていくヨン。 一人残されたウンスは涙をこぼす。 その涙が書いた紙に一粒、二粒、染みを作る。 思い悩む王は食事も睡眠もとらずカンアン殿に籠っている。 それを気遣う王妃。 ヒョンゴ村にいた時の楽しかった日々を思い出し『皇宮に戻らなければよかった』と尚宮にこぼしている。 いてもたってもいられず王に会いにきた王妃。 王妃「お迎えにあがりました。寝殿へ参りましょう」 王「考え事がある」 王妃「考え事は私にお預け下さい」 王「明日余はある決断を下す。後で大きな代価を払うことになろう。余の民は余のためまた血を流すやもしれぬ。近衛隊のように」 王妃「元と戦うのですね」 王「王妃の祖国だ」 王妃「かつては」 王「では、今や高麗が祖国だと申すのか?」 王妃「お言葉ですが、私にとり国の名など小事。私は夫が心安らかに眠れればそれでよいのです」 ふっと笑う王。 王「そなたもチェヨンと同じことを言う。あの者も申しておった。己の心に従うとな」 翌日。 ヨンはトルベに指示を出している。 元の使臣が開京に入る前に捕らえろと。 トダン会議が始まる。 議題を並べ、そして最後に王がヒョンゴ村から戻る際に襲撃にあった時の賊を調べプオングンの私兵であることを自白したと言い放つ王。 プオングンの屋敷にいる兵を全員調べ謀反と収賄を調査する間プオングンを自宅謹慎にすると命ずる。 自分の部屋で手帳の紙を見ているウンス。 それを日の光にかざしじーっと見ていると椅子に座ったまま後ろに倒れそうになる。 それをヨンが支え起こしてあげる。 ヨン「邪魔はしませぬ」 それだけ言ってヨンは部屋の隅にあった椅子に座り持っていた本を読み始める。 ヨンが足を乗せた棚には作りかけの解毒薬が置いてあった。 それを見たウンスは『大変!』と急いでヨンに駆け寄りヨンの足を引きずり下ろす。 ウンス「本も読むのね」 ヨン「読みます」 ウンス「ところで、何か用?」 ヨン「護衛です。プオングンは気が立っています。居場所を知れば何をしでかすか」 ウンス「誘拐されても助け出してくれる?」 ふと本から目をあげウンスを見るとまた髪がぼさぼさになっていることに気付くヨン。 ウンス「私賭けをしてるの。チャン侍医より先に解毒薬を作れるか。これは病原菌の培養よ・・・」 一生懸命説明しているウンスのぼさぼさの髪をじっと見てるヨン。 ウンス「つまりね、韓方で抗生剤を作るの・・・」 ウンスを無理やり鏡の前に連れていくヨン。 ヨン「見ろ。髪がぼさぼさだ」 ウンス「いいでしょ別に・・・」 髪を直していたウンスの腕に包帯が巻いてあるのを見つける。 ヨン「これは何です?」 ウンス「別にただの・・・」 急いで包帯を取るヨン。 ヨン「何なのですか?」 ウンス「これはつまり・・・」 ヨン「倭寇が使う毒の傷に似てる。これの解毒薬ですか?」 仕方なくうんと頷くウンス。 ヨン「いったい誰が・・・トックングンか?だから解放したんだな?」 ウンス「不意をつかれて・・・」 ヨン「なぜ!黙ってたのですか?」 ウンス「急性の毒じゃないし解毒薬も作ってるから・・・」 ヨン「私は遠い存在ですか?大事な話を秘密にする程・・・遠いのですか?」 ウンス「すぐ怒る」 ヨン「当然でしょう!」 ウンス「あなたが乗り込めば何をさせられるか。玉璽を盗めみたいに難題をふっかけられるわ。あなたは私のために何度頭を下げ投獄されたか。そんなことをさせてはだめなの」 ヨン「だから・・・そうやって・・・距離を置くと?」 出ていこうとするヨン。 ウンス「行かないで!」 ヨンを追いかけて捕まえ泣いて訴える。 ウンス「振り返らずそのまま聞いて。1つだけ聞かせて。私・・・残ろうかな。いてもいい?」 振り返ろうとするのを止める。 ウンス「許してくれる?」 ヨン「毒に苦しんだでしょう?まだ懲りませぬか?」 ウンス「だったらお願い。残された時間は毎日・・・あなたに愛を伝えるわ。あなたは私が去ったら全部忘れて。絶対投げやりになったり寝てばかりいないで。そんなのはだめ。全部忘れられる?」 ヨン「忘れろと?」 ウンス「そう約束して」 チョルの屋敷。 自宅謹慎を命じられたチョルは自由を奪われ半ば半狂乱の状態。 生きたままトックングンを連れて来いと大騒ぎしている。 もうチョルの頭は天界でいっぱいになっている。 第16話へ |