シンイ〜信義〜
登場人物紹介
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恭愍王『コンミンワン』役(リュ・ドックァン)
◆10歳で人質として元(げん)の国へ連行され実兄と甥が高麗王の座を追われるのを目の当たりにして遺恨を抱いた。
弱小国の悲哀を痛感し武術も騎馬も学ばなかった。
元の王女と結婚させられて唐突に高麗王に任じられ故国に帰る途中でチェ・ヨンとウンスに出会った。
この二人の協力があれば立派な王になれるのではないか、そうすればもう少しマシな世になるのではないかと考える。
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チェ・ヨン役(イ・ミンホ)
◆設定29歳〜物語最後で34歳。
高麗王室の護衛部隊である『ウダルチ』(近衛隊)の隊長でもと赤月隊隊長。
内功の使い手。(属性:雷)
女にも金にも興味がない。
暇さえあれば寝ている。
頭はキレるのだが勝つための策を弄さず常に正面突破して死をいとわない。
死んでしまえばそれまでと達観しているからだ。
王命により神医を探すため天に通ずる門に飛び込み660年の時をくぐり抜け、現代のソウル(2012年)に着いた。
たまたま出会ったユ・ウンスを神医だと勘違いし拉致して高麗に連れ帰った。
かねてより疎ましい宮廷を去り自由人として暮らすのが唯一の望みだったのだが、ウンスと共に恭愍王を護るうちに思わぬ方向に事態がこじれ始める。
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ユ・ウンス役(キム・ヒソン)
◆設定33歳〜物語最後で34歳。
整形外科専門医。
もともとは外科医だったが苦労ばかりで金にならないと見切りをつけて美容整形外科に鞍替えした。
3年後には金持ちの友達に融資させて江南(カンナム)の開業医になるのが目標だった。
そんなある日薄汚い鎧のような恰好で現れた男に拉致されて高麗時代に連れてこられてしまった。
抗生剤も細菌概念もないこんなおぞましい時代から1日も早く21世紀に帰りたい一心だが自分を連れてきた男が気になる。
彼の傍には恭愍王(王)と魯国公主(王妃)がいるが自分が知っている歴史とは少し様子が違う。
誤った行動をとれば後世の歴史が変わってしまうかもしれない。
愛国心や地球平和などにまったく関心がなかった彼女が歴史と政治に関わり始める。
自分をここに連れてきた男の心の奥を垣間見てから、そのまま放っておけなくなってしまう。
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チャン・ビン役(イ・フィリップ)
◆設定33歳。
高麗宮殿の内医院である典義寺の名医。
内功の使い手。(属性:気)
小さい頃から貿易商の父に従って各国を回りインドで医術を学んだ。
下級医師は病を治し、中級医師は人を治し、上級医師は国を治すと聞いた。
医術の助けになるかと点穴法と内攻運気法を学んだおかげで自分の身は自分で守れるが争いは好まない。
ウンスの漢方医学の師匠になり現代の算術的医師として生きてきたウンスに医師の本質を気づかせることになる。
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魯国公主『ノグクコンジュ』役(パク・セヨン)
◆設定21歳。
毅然とし果敢でプライドの高い元(げん)の王女であり高麗の王妃。
恭愍王を愛していたが、とある理由から王は王妃に心を閉ざし彼女を直視したことがなかった。
そればかりか王は王妃の祖国である元(げん)に刃を向けた。
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キ・チョル役(ユ・オソン)
◆高麗貴族。
元(げん)の奇皇后の兄。内功の使い手。(属性:氷)
意図的に宮廷女官として妹を元(げん)に送り込み皇后に仕立て上げた。
妹のおかげを蒙って徳省府院君(トクソンプオングン)として高麗を牛耳る権力者となった。
人の欲望や感情を巧みに操って自分の意に添わせてきた。
だが彼の手に乗らないチェ・ヨンが現れ恭愍王をバックにして敵対し始める。
天から来た医院だという女も意のままにならず胡散臭い。
天下のキ・チョル様に吐いた言葉が『やかましいわね』。
何がなんでもあの二人を手に入れてみせると誓う。
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チョヌムジャ役(ソンフン)
◆テグム(横笛)で音波武功を使う。内功の使い手。(属性:音)
まだ修行中のため攻撃対象に術を命中出来ない。
技の習得のため猫や鳥を殺すことに心を痛める孤独な男。
ファ・スインを愛している。
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ファ・スイン役(シン・ウンジョン)
◆右手に熱を集中させる火攻の名手。内功の使い手。(属性:火)
キ・チョルと同門で武功を鍛錬してきた。
武術を鍛錬するために多くの人を殺してきたので人の命が尊いなどと考えたことはない。
大切な人間は師兄キ・チョルと師弟チョヌムジャだけ。
美貌と嬌態で男を弄ぶことが生き甲斐。
だが自分の誘いにまったくなびかないチェ・ヨンが現れた。
自分になびかない男は存在しないと信じて疑わない彼女は新しいゲームを仕掛けてみたくなる。
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チョ・イルシン役(イ・ビョンジュン)
◆設定40代。
恭愍王の信頼の置けない臣下。
権力のためならなんでもするが残念ながら頭のキレが悪い。
自分の利得の判断には動物的勘を備え己の保身を図る生存本能を持っている。
やがて欲と権力に酔いブレーキがきかなくなった機関車のように歯止めがきかなくなる。
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ペ・チュンソク役(ペク・グァンドゥ)
◆設定30代半ば。
ウダルチ(近衛隊)の副隊長。
思慮深く、忠誠心に篤く、チェ・ヨンを尊敬し行動を共にする。
素手での勝負には自信があるスバクの達人。
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オ・テマン役(キム・ジョンムン)
◆設定10代後半。
チェ・ヨンの直属の伝令兵。
元(げん)の国境地帯の人里離れた山中で生まれ育ったせいで、元(げん)の言葉にも高麗の言葉にも疎くて感情表現がうまく出来ない。
猛獣の長所を生かした武術を駆使してキョンゴン(軽功)の達人のように挙動がすばしっこい。
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トルベ役(カン・チャンムク)
◆設定20代半ば。
ウダルチ(近衛隊)の隊員。
一大関心事は、1にも2にも3にも女の子。
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トクマン役(ユン・グンサン)
◆設定20代前半。
ウダルチ(近衛隊)の最年少者。
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第1話〜過去から未来へ、現在から過去へ〜

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その昔、後漢末期に華佗と呼ばれる伝説の名医がいた。

この世の全ての病を治した。

とりわけ手術では神の手と称され切開して内臓を取り出し治療した。

同じ頃、天下統一を図っていた曹操は長いこと激しい頭痛に悩まされていた。

華佗はそれをたった数針で治してしまった。

その腕に惚れ込んだ曹操は己の典医にと望んだが華佗は従わなかった。

華佗「世に救うべき患者は曹操だけにあらず」

怒った曹操は追っ手を放つが、富にも名誉にも関心のない華佗は高らかな笑い声と共に天穴へと消えて行った。
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西暦1351年 元の国境。

近衛隊長チェ・ヨン率いる近衛隊一同は新たに即位された高麗王と王妃を高麗宮殿へお連れするため激しい雨の中、山道を進んでいた。

この時王の臣下であるイルシンは山の向こうに広がる怪しい赤い光を目にし『華佗か?』と思うが黙っている。

副隊長「隊長、怪しい者がつけています」

ヨン「解ってる」

副隊長「あの動き盗賊ではありません」

ヨン「心配するな」

その時、王妃を乗せた馬車が轍にはまり動かなくなってしまう。

その頃隊長の命で使いに出ていたテマンは近くの村に船を手配に来ていた。

テマンの特技は誰よりも早く走り誰よりも素早く動くこと。

ヨン「船の手配は?」

その時帰ってきたテマン。

テマン「隊長、船がありません」

副隊長「入り江の村に船がないだと?」

テマン「どの船も出てると言われたんです。明日の昼まで戻らないと」

諦めたヨンは王の馬車に語りかける。

ヨン「宿を取ります」

王「よきに計らえ」

ヨン「承知しました」

反対するイルシンを無視し一行はそのまま村へ向かう。

宿に到着するなり宿主に大金を掴ませそこにいた客全員を追い出させる。

途中後をつけてきた刺客からの襲撃にそなえ警戒態勢を整えるために。

ヨンは副隊長に警備を命じその場に寝てしまう。

その頃イルシンは王の部屋で怒っていた。

10歳で元の国へ人質として連れ去られ元の水を飲み続けて育った王がやっと祖国である高麗に帰れるというのにこのザマはなんだ?と。

その時王の部屋にあくびを噛み殺しながら勝手に入ってくるヨン。

ヨン「王妃様をこちらに。護衛の数に限りがあります。お二人が不仲なのは存じておりますが」

『勝手に入るな』と怒るイルシンに短剣を押し付けるヨン。

あんたは窓を守れと。

睨みあう王と王妃。

その夜。

宿に忍び寄る刺客達。

近衛隊一同必死で戦うが王の部屋までやってきた複数の刺客。

ヨン「刺客はかなりの数です。何があっても私から離れないで下さい」

王「離れぬ」

ヨン「必ずお守り致します」

そういって剣を抜くヨン。

王の部屋までやってきた刺客達を次々に切り捨てるが侍女が離れた隙を狙って王妃が切られてしまう。

首からは大量の出血。

高麗一と言われるチャン侍医が手当てをするも助ける術はない。

ひとまずその場で王妃の出血を抑えるべくヨンは雷攻を使う。

掌から発する雷のようなものを初めて目にする王はとても驚くが何も言わずヨンを信じ見守る。

またいつものように大騒ぎするイルシン。

イルシン「高麗が滅亡しかねん。王妃は元の魏王の娘でございます。ここで死なせればかねてより従属を迫る元勢力に都合のいい口実を与えることになります。我が高麗は一飲みです」

王「助からぬのか?」

チャン「首の血管が半ば切断され手の少陰心経と少陽三焦経の気を抑え一時的に止血しております」

イルシン「切れたものは繋げばよい」

チャン「心拍数を半分に減らしました。うかつに触って気を乱せば出血しかねず。神医でない限り不可能です」

この時ヨンは知る。

狙いは王ではなく王妃だったのだと。

浅知恵を思いつくイルシン。

さっき見た赤い光、神医を連れてくればいいと。

ヨン「神医はどこですか?部下を送ります」

イルシン「それは天界でございます」

天門へと向かう前に王はヨンへ話しかける。

王「近衛隊長、高麗の開京から長旅だっただろう」

ヨン「ええ」

王「余を迎えに来る道のりで何を思った?」

ヨン「何も思うことなど」

王「余を王としてどう思うかと聞いておる」

ヨン「聡明でお優しい王様で高麗の民は幸せだと。足りませんか?」

王「余が・・・嫌いか?」

ヨン「王様を?」

王「会う前から嫌っておったな?」

ヨン「私の首が飛びますゆえ」

王「なぜ嫌うのか?そなたの主君だ。王命だと言えば本心を話してくれるか?」

ヨン「先代の慶昌君(キョンチャングン)が王位に就かれたのは14歳。幼君を認めない元に廃位されました」

王「知っておる」

ヨン「王様は21歳。歳若いのは先代の王と同じです。王様は10歳で元に渡られ元の水を飲んで育たれた。そんな方に国を委ねる我が高麗の民は不幸だとも思いました。それだけです」

王「民の心でもあるな。高麗の民の」

ヨン「10余年で5人目の王様です。民は関心もないでしょう」

王「そなたは正直だ。ありがとう」

ヨン「王様、それゆえ嫌ってはおりません」

恭愍王(コンミンワン)、高麗第31代王。

そしてチェ・ヨン、高麗近衛隊の隊長。

二人の初めての心の会話。

王妃の無事を王が3日3晩寝ずに飯もとらず祈祷し続けたという姿を民と元に知らしめるために天門へ祭壇を作り集まる一同。

王命によりヨンは一人その天穴へと入ることとなる。

神医を連れてくる為に天界へ。


ヨンがたどり着いたのは2012年のソウル。

目の前に広がるのは見たこともない世界。

立ち並ぶ高層ビル、電光掲示板、ヘッドライトで道を照らしながら走る自動車達。

そして歩く人々が手にするのはスマホ。

エライ所に来てしまったと諦めて座り込むヨンだがそこへ一人の住職が。

ヨン「チェ・ヨンと申します。恐れ多くも下界から参上致しました」

住職「何の用ですかな?」

ヨン「神医はいずこに?華佗を探しております」

住職「医者のことか」

ヨン「はい」

住職「医者にも専門がある。内科に外科に産婦人科に歯科。どこをお悩みか?」

ヨン「ここです」

王妃が切られた首を示す。

そして勝手に納得してしまう住職。

住職「美容外科ですな」

美容外科が何なのかはヨンには解らない。

ヨン「ご存知ですか?」

住職「カンナムには美容外科が多いんです」

ヨン「神医がいらっしゃるんですね」

住職「有名な先生をお探しか?コエックスで美容外科の学会がある。有名な先生に会えますよ」

ヨン「コエ・・・?」

住職「コエックス」

ヨン「行き方は?」

住職「あの建物です。見えるでしょう?」

ヨン「あちらの方は先程通りましたがどう行けば?」

住職「まっすぐ行くだけ」

ヨン「まっすぐ・・・行くだけ・・・」

何かを思いつくヨン。

納得し住職に教わった方向へ向かう。

住職の言葉を肝に銘じたヨンは、激しく車が行き交う道路をそのまままっすぐ突っ切る。

鳴り響くクラクションの音を無視しそのまま道路を渡ってしまう。

そしていよいよ『美容外科学会』の看板を見つける。

ロビーの中は医療展示会が開催されていてさまざまな医療器具が展示されている。

初めて目にするその光景に驚愕しながらもヨンは学会が行われている会場に足を踏み入れる。

檀上ではモニタを使いながらウンスが発表を行っていた。

そこへ入ってきた一人の男。

薄汚い鎧を身にまとい、手には刀を。

そして開いた口がふさがらない様子でウンスをじっと見つめている。

乱入者と勘違いされたヨンは警備員たちに取り押さえられ警備室に連れていかれてしまう。

ヨンの乱入で大事な発表が台無しになってしまうウンス。

トイレで友達に電話し発表が台無しになったとこぼしている。

一方警備室に連れてこられたヨン。

警備室の壁にはたくさんの防犯用モニタが埋め込まれてある。

その一つにウンスの姿を見つけるヨン。

警備員の警告を無視して尋ねる。

ヨン「この中(モニタ)に入れますか?どうすれば開くんです?中にいる医員にぜひ会いたいのです」

時代劇ごっこかとバカにする警備員が持つ警備棒を刀で切り捨てモニタから消えたウンスを探しに向かう。

本物の刀だと知った警備員は急いで警察へと連絡してしまう。

ロビーで最新の医療器具を見ていたウンスはさっき会場に乱入してきた男と再び会う。

ウンス「時代劇のエキストラかと思った」

ヨン「重症の患者がいます」

ウンス「だから?」

ヨン「首の血管が切断された状態です。助かりますか?」

ウンス「私に聞かれても」

ヨン「どうなんです?」

新手のナンパかと本気にしないウンス。

そこへさっきの警備員が。

ヨン「患者を救ってくれますか?」

ウンス「解らないわ。傷の状態を見てないもの」

そう言われたヨンは、さっきの警備員の首を王妃と同じように刀で切りつける。

ヨン「ちょうどこれくらいの刀傷です。助かりますか?」

怯えるウンスだがヨンに根負けしその場で警備員の首を手術する。

警備員の生存を確認したヨンはそのままウンスを引っ張って出口へと向かうが周りは警察が包囲していた。

自首を勧めるウンスを無視しヨンは得意の雷攻で警察も何もかも吹き飛ばしウンスを担いで天門へと向かう。

天門にたどりついたヨンはウンスを下すが怯えるウンス。

ウンス「お願い助けて!」

ヨン「中に入ります」

ウンス「まだ死にたくない」

ヨン「ご安心を。治療が終わればお帰しします」

ウンス「嘘よ。顔を見てしまったもの。誘拐犯は顔を見た人を殺すんでしょ?映画で見たわ」

ヨン「私はチェ・ヨンと申す。高麗の武士の名にかけて必ずお帰しする。約束します」

以降、この約束があらぬ方向へと二人を巻き込んでいく。
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ウンスの記憶

これより10日前。

ウンスは恋人にフラれよく当たると有名な占い師の元を訪れている。

ウンス「いつどこで運命の人に出会えますか?」

占い師「昔の男と出ています。過去です。数えきれないほどの昔の男の中にいると出ている。1年後に遠い所へ旅立つと出ていますよ」

結局なんのことか解らずに出て行くウンス。
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ヨンの記憶

兵舎では新しい隊長がやってくると騒いでいる。

トルベ「まだ若干22歳だそうですよ。赤月隊の部隊長だった」

トクマン「並外れた武功の持ち主で刀の一振りで数人の敵を倒し仙人掌ほどの高さも軽功術でゆうに飛び越える。赤月隊には特殊な能力が。新隊長は雷功の使い手で手から稲妻を放つそうです。烈火のごとき性分で寝てるのを叩き起こされて相手を半殺しに」

怯えるトクマンにバカにするトルベ。

トルベ「俺に言わせれば赤月隊なんて敵の寝首を襲って逃げるそれだけの奴らだ」

副隊長「王命だ。知りもせず言うな。高麗があるのは赤月隊のおかげだ」

これからやってくる新隊長をバカにして振り上げた足を振り払って入ってくるヨン。

副隊長「名前を伺います」

副隊長の質問を無視して辺りを見回していたヨンにキレたトルベはヨンに軽く突き飛ばされてしまう。

ヨン「ここの長は?」

副隊長「副隊長のチュンソクだ」

それだけ聞いたヨンは副隊長に抱きついて耳元で言う。

ヨン「どこにある?俺に寝床をくれるんだろ?」

たまたま目に入った寝床に荷物を放り投げそこに寝てしまうヨン。

そして3日3晩起きない。

トルベ「もう3日あのままです。飯も食わないし小便もしない」

トクマン「まさか寝てる間に死んだとか?」

トルベ「手を当て息は確認しました」

副隊長が見にいくとヨンは寝たまま飛んでいる虫を追い払っている。

それだけ確認した副隊長は行ってしまうがまだ疑うトルベ達。

『俺がたたき起こしてやる』とトルベがヨンに近づいた瞬間、棒が飛んできてトルベのおでこに命中する。

自分の額の血を見たトルベは悔しがる。

寝たままニヤっと笑うヨン。
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天門の前でヨンの帰りを待つ一同。

危険だから宿に戻りましょうという皆の言葉を無視し『ここで隊長を待つ』と言い張る王。

そこへ激しい稲妻と共に天門から出てくるヨンの姿が。

女の手を引いている。

ヨン「この方が天の医員です」

まだ逃げようとするウンスを捕まえ負傷した王妃の元へ。

ウンスは王妃の傷を見るもまだ信じられず『映画の撮影で負傷してしまったのね。黙っててあげるから救急車を呼びましょう』と携帯を取り出すと『怪我人を目の前にしても何もしようとしないのか』と怒り出すチャン侍医。

仕方なくウンスはそこで王妃の手術を執り行い、王妃は一命を取り留める。

それを見届けた王妃の侍女はこっそり抜け出し密偵に連絡する。

天の医員が現れて王妃が助かってしまったと。

『このままベッドレストさせて』と言い残しまた逃げようとするウンス。

ヨンもチャン侍医もベッドレストの意味は解らない。

そして残された医療器具を物珍しい目で眺めるチャン侍医。

またヨンに捕まるウンス。

そこへ王が。

ウンス「患者のご親族?水分補給がもっとも大事ですから意識が戻ったら水を少し。たくさんは飲ませないで。誤嚥性肺炎になりますから」

王「意識は?」

ウンス「経過を見ないと解りません。私に責任はないと明確にして下さい。だってこの手術・・・(隣のヨンを見て)無理矢理だったんですもの!医師免許とは関係なく・・・」

王「天の医員殿」

ウンス「私のこと?」

王「我が国の存亡はあの女人の命次第」

ウンス「国って?」

王「天がそなたを遣わした。まだ我が国を見放しておらぬということか」

ますます意味不明なウンス。

王「ご加護を信じますぞ」

歩き出そうとするウンスの道をふさぐヨン。

ウンス「覚めて。夢ならどうか覚めて」

頭を抱え座り込むウンス。

ヨンが聞いている前でまた浅知恵を思いつくイルシン。

このままウンスを帰さず手中に収めれば我が国は安泰だと。

天門をくぐりここへ連れてきたことはこの目でしかと見届けたはずだと。

ウンスを天界へ送り帰すべきではないと。

ヨン「私が約束したのです。治療が終わったら必ずお帰しすると」

まだつべこべと御託を並べるイルシンをどかし王に直訴するヨン。

ヨン「私は高麗の武士。元でお育ちの王様はご存知か否か。高麗の武士にとり約束は命に値します」

王「天の医員を伴えば余は安泰らしい」

ヨン「そんな安泰など価値はありません」

王「国の行く末を思えば一個人の約束より大事なことがあろう?違うか?」

ヨン「重臣は国のためなら約束を犬のえさにし私は武士ゆえ国のために人を斬ります。しかし王様だけはあるべき姿で正道を歩んで頂きたいのです。理想ですが」

その言葉をじっと吟味している王。

第2話へ