鮫〜愛の黙示録〜
第5話

散歩の途中ヘウは湖畔でイスと出会う。

サングクが重要な客を招待したと言っていたのがイスのことだとわかり急に言葉遣いもあらたまるヘウ。

ヘウ「私、おじいさんが重要なお客様というから・・・。 いや、先生が重要ではないというのではなくてだから、もう少し重厚な・・・。 いえ、つまり先生が重厚でないという意味ではなくて・・・」

イス「先生と呼ばれると重厚な感じがする気はしますね。 この湖に名前はありますか?」

ヘウ「特別な名前はなくて人ごとにマチマチです」

イス「何と呼ぶんですか? チョ・ヘウさんが呼ぶ湖の名前」

ヘウ「私はただ湖と呼んでいます。それが一番よく似合ってるみたいなので。前に修飾語がつくとなんだか派手に美しく飾った感じがしてかえって汚す気がするというか?あの、実はちょっと気にかかっていました。あの日初めてお会いした方の前でお恥ずかしい姿を見せてしまって。慌てられたと思いますが私がちょっとああなんです。感情のコントロールがうまくできないんです。それで失礼なことも多いです」

イス「失礼だったのは私のほうでは?もしも不快だったなら謝ります」

ヘウ「いえ、そんな」

イス「湖に魚は棲んでいますか?」

ヘウ「勿論です。千年もの間黄金の魚が棲み続けているという話もあります。村を守る守護神だというんですけど黄金の魚に惹かれて水に飛び込んで永遠に帰ってこられない人もいるそうです。もちろん伝説です」

イス「本当かもしれないでしょう?」

ヘウ「本当ならずっと人の目に触れなければいいと思います。誰かがまた黄金の魚に惹かれて永遠に帰って来られなくなるかもしれませんから」

イス「ここで星を見たらきれいでしょうね」

ヘウは以前のイスを思い出してまた涙が溢れそうになる。

祖父が着く頃だといって別荘に戻る。

昼食会の席にはもうサングクとウィソンが既に座っていた。

招待客が主を待たせるなんて、父親がヤクザだから息子も・・・と文句を言うウィソン。

『遅れてすみません』と現れたイス。

話が進む中、ウィソンがイスに話しかけてもイスはほとんど言葉を発さない。

『ホテルマンが自分のことを隠すような態度では良くないのでは』というウィソン。

『人は誰でも隠し事があります。何もないようにつくろう人もいますが』というイスの言葉にドキッとする。

そこにヘウ宛に荷物が届く。

中身はウィソンが落としたのと同じ腕時計だった。

ヘウはまた父親を問い詰める。

ひき逃げ事故だけでなくチョン・マンチョル殺害についてもウィソンを疑っている。

証拠があるなら持って来い!とウィソンは怒る。

携帯に今度はバスの写真が送られてきて、ヘウはピョン刑事に連絡する。

ジュニョンが心配して大変だったら事件から手を引いてもいいんじゃないかと言うが『頭では逃げ出したいと思っても心がそれを許さないの』と反論。

ひき逃げ事故の目撃者の少年のおじいさんは入院中。

誰かが独り部屋に移して手術の費用も全部支払って行く。

『ついさっき男性が・・・』

少年が男性を探すが見つからない。

すぐそばにはイスがいるが少年は気づかない。

サングクとウィソンがひき逃げ事故の話をしている。

ヘウが自分のことを疑っていて再捜査も担当するというので真相が分かった場合の自分の体面を心配するウィソンに父親なら子供が受ける心の傷の心配をしろと怒鳴りつけるサングク。

それをパク女史がこっそり聞いている。

イスがホテルに帰ってみると部屋に絵と水槽が飾られていることに驚く。

チョン秘書がイスの好みに合わせて用意したものだった。

本当はサメをプレゼントしたかったけれど水槽が小さすぎて諦めたと言い訳を。

イス「ドンスさんには連絡しましたか?」

ドンスはイヒョンにジャイアントホテル代表の運転手になったと自慢しているがイヒョンはいつもの望遠鏡の前で立ち止まっている。

そこに母親から電話があり家に帰ってみると欲しかった天体望遠鏡が届いていることに驚く。

イヒョンがよく書き込みをするサイトのイベントで当選したようだがイスの部屋にも同じ望遠鏡、そして壁にはオルフェウスの絵。

ヘウから聞いたオルフェウスの伝説を思い起こすイス。

イス「(独り言)振り返るな」

またいつもの冷たい顔に戻るイス。

バスの写真はその前の写真の場所を探すヒントだと考えヘウとピョン刑事は停留所を一つ一つ調べていく。

終点まで来るとピョン刑事はここに来たことがあると言い出す。

しばらく行くと写真の建物「希望スーパー」があったが中にいたのは口のきけない女の子だけ。

ピョン刑事は『行くところがある』と店を出ようとするが女の子はヘウという名前の人に渡すようにと鍵を預かっていた。

ピョン刑事の言う『行くところ』とはカン・ヒスが殺されたアパートだった。

女の子から受け取った鍵で中に入ると壁に大きな赤い円が描かれていた。

ピョン刑事はここで起こった殺人事件のことを話す。

被害者とサングクが関係があることや二つの殺人事件とひき逃げ事故がイスの事故にも関連する可能性があると。

ヘウも何か話そうとするがピョン刑事は続きは明日にしようといって帰ってしまう。

ヘウは考え事をしながら馴染みの呑み屋まで歩いていく。

そこにはまたイスがいた。

昨日ヘウから聞いた"美味しい店"を探してここまで来ていたのだった。

疲れた様子のヘウだったがイスと話をするうちに元気づけられる。

イス「疲れているようですね」

ヘウ「そうですか?」

イス「はい、とても疲れてるように見えます」

ヘウ「ちょっと複雑な事件を担当したんです。もしかすると私が手を引くことになるかもしれなくて」

イス「どんなに複雑な問題でも結局は解けるものですよ。問題があるなら答えもあるものですからね」

ヘウ「時には解きたくない問題もあるんですよ」

イス「今回がそんな場合なんですか?」

ヘウ「そうかもしれません」

イス「理由を聞いてもいいですか?」

ヘウ「もしあなたが見つけた真実が大切な人を失うことになるとしたらどうしますか?いえ。余計な話をしましたね」

イス「全てのものは戻ってきます。私の経験から見れば避けて逃げても結局はしなければならないことは私にまた戻って来たんです。もっと超えることが難しい山になってですよ。真実を見つけようとするなら時には大切なものを失う覚悟が必要になる時があります」

ヘウ「それもあなたの経験ですか?」

イス「はい。元気を出してください。チョ検事さんならうまくやり遂げられます」

ヘウ「なんだか元気が出てきました」

イス「よかったです」

ヘウ「本当はここまで歩きながら逃げる口実をさがしていたんですよ。あの友達(イス)のことを考えたらそうしてはいけないのに。そういえばあなたに会うたびになんだか励ましてもらっているみたいですね。ありがとうございます」

帰るころになって外は夕立。

軒先でジュニョンの迎えを待つヘウ。

すぐに迎えが来るから心配しないで先に帰っていいと言われてイスは立ち去ろうとするが急に立ち止まり向きを変えて戻ってくる。

『どうしたんですか?』と尋ねるヘウ。

イスはいきなりヘウに激しいキスをする。

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