鮫〜愛の黙示録〜
第16話

取り引き場所。

イスと犯人の睨み合いが続いている。

そこにキム係長(スヒョン)が犯人の妻を連れてくる。

妻を助けたければイヒョンを解放しろとイスが言うが犯人は計画の変更はしない、車に乗れと言う。

サングクの書斎。

ヘウはサングクにイヒョンを無事に帰してほしいと言うがサングクは何のことだかわからないと答える。

今まで最善を尽くして生きてきた、すべてはヘウのために築いてきたものだとサングクは言う。

ヘウ「真実はいつかは明らかになります。砂の城はどんなに巨大でもいつか崩れます。私が証明してみせます」

ヘウが書斎を出ると携帯にイスの携帯位置情報が表示される。

急いでその場所に向かう。

途中ジュニョンに止められるが振り切って車を出発させる。

ピョン刑事とナ刑事もイスの携帯位置を追跡している。

取り引き場所。

イス「あなたには妻の命よりチョ会長のほうが重要なようだな。すごい忠誠心だ。感心した」

イスが時間を稼ごうとする。

イスの合図でスヒョンが発砲。

犯人がひるんだ隙にイヒョンを助けたイス。

しかし犯人の撃った弾がイスの首筋をかすめてしまう。

スヒョンが犯人を追いつめるが頭を殴られその隙に犯人は妻が乗ったスヒョンの車で逃走してしまう。

発砲音を聞いて出動してきたのか遠くでパトカーのサイレンが聞こえる。

イス「ここから抜け出そう」

イスの車をスヒョンが運転し後ろの席でイスに寄りかかって眠るイヒョン。

イスは携帯の電源を切る。

ソウル市内。

別の場所でイスとイヒョンが話をしている。

イヒョン「兄さんは変わってないのに気づかなくてごめんなさい。でもどうして兄さんが キム・ジュンなの?危険なことをしてるの?もうやめて私と一緒に暮らそう、約束したじゃない」

イス「今はやらなければならない事がある。すべて終わったら全部話をするから」

約束してイヒョンをスヒョンに送らせる。

キム係長「早く乗って。気になることがたくさんあることはわかる。走りながら説明するから」

某所。

イスの位置が分からなくなってイライラしているピョン刑事。

携帯にメッセージが入る。

『イヒョンは無事です。もうすぐ家に着きます』

ピョン刑事「車を回せ!!」

来た道を帰っていく。

ヘウ車中/ピョン刑事車中。

ピョン刑事がヘウにメッセージを伝える。

ヘウはすぐイヒョンの家に行くと言うがピョン刑事が止める。

ピョン刑事「家でイヒョンの無事を確認したらまた連絡するから」

ヘウはキム・ジュンに電話しようとするがやめる。

チャン秘書の部屋。

マンションにたどり着いたイスはチャン秘書の部屋に行く。

イス「ちょっとケガしたんだが手が届かない。手伝ってくれますか?」

さっき撃たれた傷だ。

イヒョンの家。

イヒョンはスヒョンに送られて家に到着する。

イヒョン「ありがとうございました。パパに会っちゃダメなんでしょ。早く行ってください」

キム係長「今度一緒に映画見よう・・・映画は嫌い?」

イヒョン「早く行ってください」

恥ずかしそうに家に入るイヒョン。

中で待っていた養母がイヒョンを抱きしめて喜ぶ。

チャン秘書の部屋。

ケガの治療を終えたチャン秘書は病院に行くようにと勧める。

チャン秘書「抗生剤も必要なようです」

イス「抗生剤は自分で持ってます」

チャン秘書「そんなものまで持ってらっしゃるんですか?」

イス「ボスがヤクザ出身だってこと忘れてますか?」

笑うイス。

チャン秘書「今そんな冗談がよく言えますね・・・気をつけてください」

心配するチャン秘書。

ジュニョンの部屋。

ジュニョンがキム・ジュンのプロフィールを見ている。

以前ヘウが『違う顔・・・なぜ?』と書いていたのを思い出す。

今までのキム・ジュンの記憶を思い起こすジュニョン。

いつもヘウと一緒だった。

やっとキム・ジュンがイスだとわかったようだ。

ヘウ車中。

ヘウは家に帰ってきたが車の中でイヒョンからの電話を受ける。

イヒョンからイスがケガをしたと聞いてそのまま車でイスのもとに向かう。

ジュニョンが部屋の窓からそれを見ている。

怒りが込み上げてくるジュニョン。

イスの部屋。

スヒョンからの電話を受けるイス。

犯人(チェ・ビョンギ)は妻を療養院に置いて姿を消したと言われる。

チョ会長が自分の右腕であるが自分のことを一番よく知っている証人でもあるチェ・ビョンギを抹殺するかもしれないというイス。

イス「その前に我々が探し出さなければ。会長を倒すのに必要な証拠だから」

イヒョンの家。

ピョン刑事がイヒョンに話を聞く。

イヒョンは犯人の顔をちゃんと覚えていないし助けてくれた人も誰だかわからないとごまかす。

イヒョン「電話で”文書を持って来い”と言っていた。それと”チョ検事を利用するな”って。これヘウ姉さんのこと?」

ピョン刑事「調べてみるよ」

イヒョンは疲れたからと部屋に逃げる。

イヒョンと一緒に寝るという妻に『一人にしておけ。出かけてくるから鍵をちゃんとかけろ』と言ってピョン刑事は出かけていく。

イスの部屋。

ヨシムラ会長から受け取ったUSBを手に何かを考えているイス。

携帯が鳴る。

ヘウ車中。

イスのところに行く途中車を停めて迷うヘウ。

公園。

ピョン刑事がイスを公園に呼び出す。

イス「お話とは何ですか?」

ピョン刑事「お前は本当に悪い奴だ。お前が何をしているのかわかってるのか?お前が味わっているその苦痛をイヒョンにまで背負わせている。お前だってそんなことを望んでいるわけじゃないだろう。12年間お前のことを待っていたイヒョンのことを考えてもうやめて考えを替えろ。加害者への審判はお前の役割じゃない」

イス「12年前にも同じことをおっしゃいましたが結局真実は隠されました」

ピョン刑事「ああその通りだ。真実は隠された。だが永遠に隠されたわけじゃない。もう一度だけ私を信じてはくれないか?私を信じてお前が背負っている荷を私に降ろしてみてはダメなのか?」

イス「私は人を信じません。それと同じ失敗は二度はしません」

ピョン刑事「私の手でお前を逮捕するなんてことはしたくないんだ、イス」

イス「そんなことにはなりません。すべてのことが終わったら私が自分から刑事さんのもとを訪ねますから。イヒョンを拉致した者の名前はチェ・ビョンギです。チョ会長の家の近くで古本屋を経営していますが当分の間店にその男が現れることは無いでしょう」

ピョン刑事「私にその話をする理由は何だ?」

イス「犯人を捕まえるのが刑事さんの役割だからです」

ピョン刑事「いったい何を考えているんだ?」

イス「お話が終わったのならこれで失礼します」

ピョン刑事「チョン・マンチョル殺害。お前がやったことか?犯人を捕まえるのが刑事の役目だから訊いてるんだ」

イス「私を訊問するには合法的手続きを踏まなければならないでしょう」

帰ろうとするイスにピョン刑事が呼びかける。

ピョン刑事「すまない、イス。12年前私が真実を突き詰めていれば、もう少し早く事故現場に着いていればお前がこんな不幸なことにはなってなかっただろうに。本当にすまない、イス。それとありがとう。イヒョンを無事に家に戻れるようにしてくれて」

イス「礼を言うのは私です。イヒョンを明るく育ててくださってありがとうございます」

ピョン刑事「イスヤ」

イス「もう行きます」

深々と一礼して去るイス。

イスの部屋の前。

イスが自分の部屋に帰ってくるとドアの前でヘウが待っていた。

ヘウ「ケガしたって聞いたわ。治療は受けたの?大丈夫?」

何も言わずに部屋に入るイス。

冷たく無視されたヘウは帰ろうとするがエレベーターが来るのも待ちきれず非常階段を降り始める。

イスがそのあとを追って後ろから抱きしめる。

イス「行くな。行かないでヘウヤ。行くな・・・」

マンションの入り口にはジュニョンが来ていた。

ヘウの車を見つけて驚く。

ヨシムラ会長の手下がマンションに入っていくジュニョンを見ている。

イスの部屋。

疲れてソファに横になっているイス。

結婚指輪を気にするヘウは窓ガラスに映った自分を見てイスに何も言わずに帰る。

エレベーター。

ジュニョンがエレベーターで上がってくる。

ちょうどイスの部屋から出てくるヘウを見て驚いたジュニョンはあわててエレベーターの中に後ずさり。

ヘウは気づいていない。

ジュニョン車中。

やけになったジュニョンは泣きながら車を飛ばす。

エントランス。

イスの部屋から帰る途中マンションのエントランスでヘウはイ・ファヨンに遭う。

ファヨン「私に会いに来たの?」

ヘウ「いいえ」

ファヨン「私をそんなに憎まないで。ヘウさんから見たら、私が本当に情けなく見えるでしょうけど人の感情というのはそんなに単純ではないの。正直言うと以前ヘウさんが私を訪ねてきて言った言葉ずっと傷になって残ってるの。もちろん私がヘウさんにもっと大きな傷をつけたことはわかるわ。理解してほしいとも思わない。ただ私とお父さんのこと汚らわしく見ないでくれればうれしいわ」

ヘウ「お二人の問題に関与するつもりはありません」

逃げるようにその場を去るヘウ。

手が震えて車のエンジンがなかなかかからない。

バー。

ヨシムラ会長の手下が会長に何か報告している。

チョ社長がやってくる。

ヨシムラ会長はUSBを渡す。

ヨシムラ「中に重要な内容が入っています」

古本屋。

ピョン刑事が中を見るが鍵がかかっていて誰もいないようだ。

チェ・ビョンギについて徹底的にしらべるようにとナ刑事に電話で指示している。

ナ刑事からは広津港で乗り捨てられたトラックが見つかったという報告を受ける。

遠くからチェ・ビョンギがピョン刑事を見ている。

チョ家。

ヘウが家に帰ってくる。

サングクが話しかけるがヘウは冷たい目で見るだけでさっさと二階に上がっていく。

部屋の明かりを点けるとジュニョンが椅子に座っていた。

ヘウ「明かりも点けないでどうしたの?」

ジュニョン「考えることがあって・・・どこに行ってたの?」

ヘウ「事務室に」

嘘をつくヘウ。

ジュニョンは当分の間入院中の父親の付き添いに母親に代わって自分が行くと言う。

ヘウも一緒に行くと言う。

ヘウ「話があるの」

ジュニョン「今は聞く気になれない」

ジュニョンは出て行ってしまう。

残されたヘウにパク女史がメモを渡す。

「もしかしたらチョ社長の生母の住所かもしれません」

『慶尚南道 居昌郡 南下面 梁項里 173-27』
(キョンサンナムド コチャングン ナムハミョン ヤンハンリ)

チョ社長室。

ヨシムラ会長から渡されたUSBの中身を見るチョ社長。

チョ社長「チョン・ヨンボが誰だって?」

"チョン・ヨンボに関する真実"を読んで驚く。

バー。

ヨシムラ会長はチャン秘書にイスとヘウが一緒にいる写真を新聞社に送るようにと言いつける。

チャン秘書「代表が困ることになります。それに結局チョ会長にもみ消されるでしょう」

ヨシムラ「だから送るんだ。ジュン(イス)は今揺れている。しっかりさせなければ。 そして一番気になることはチョ会長がどう出るかだ。すべてジュンのためにやることだ」

イスの部屋。

USBを手に考えるイス。

『目的は同じだ。チョ会長を完全に倒すこと』

ヨシムラ会長の言葉を思い出す。

イヒョンから電話。

兄さんが生きていたことが嬉し過ぎて眠れないと言う。

イヒョンの部屋。

部屋の外で電話を聞いていたピョン刑事がイヒョンに言う。

ピョン刑事「イスがお前を助けたことは父さんも知っているから隠さなくていい」

イヒョンは養父にイスの力になってと泣きながらお願いする。

ピョン刑事「わかった。父さんができることは全部するから」

チャン秘書の部屋。

イスとヘウの写真を手に困った表情のチャン秘書。

バー/納骨堂。

ジュニョンは一人で酒を呑み街に出ていく。

どこにも吐け口のないジュニョンは納骨堂に行き弟に話しかける。

ジュニョン「ジュノ、今日、兄さんはお前に会いたくてたまらない」

床に座り込んで泣くジュニョン。

すべてを吐き出したジュニョンは何か決意をしたようにしっかりとした足取りでそこから出ていく。

新聞社。

速達で送られてきた写真を見た編集者。

ヘウだと気づくとすぐチョ会長に電話する。

チョ会長は写真を自分に送るようにと言う。

ホテルロビー。

イスはチャン秘書に傷の手当の礼を言う。

いつものような元気がないドンス。

失恋して昨夜は一睡もできなかったと言う。

イス「誰に失恋したんですか?」

ドンス「訊かないでください。私にも隠しておきたい秘密はあります。行きましょう」

イス「ひょっとして、相手が誰だか知っていますか?」

チャン秘書に尋ねるイス。

チャン秘書「いいえ」

イスの携帯が鳴る。

写真が送られてきた。

驚くイス。

心配そうなチャン秘書。

病院。

父親に付き添っているジュニョン。

ヘウから電話が入りますが出ようとしない。

チョ検事室。

『イヒョンさんが無事に戻ってよかったです』というキム係長。

ピョン刑事が訪ねてきてチェ・ビョンギを知っているかと訊く。

ヘウ「初めて聞く名前です」

ピョン刑事「拉致の容疑者、古本屋の店主だ」

ヘウ「あのおじさんがですか!?」

驚くヘウ。

イスの執務室。

落ち着かない様子でウロウロするイス。

チョ会長から電話が入る。

チョ会長「あの写真、君が新聞社に送ったのかね。君じゃないとしたら誰がこんな幼稚なことを」

イス「写真を私に送った理由は何ですか?」

チョ会長「その写真が外に流出すればヘウの検事生命はもちろん社会からも葬られることになる。何よりもヘウが耐え難いことだろう」

イス「会長の力で十分に孫娘を守る事が出来そうですが?」

チョ会長「ヘウを守るのは君だ。ヘウをそうさせたくなければすべてのことを暴かずにそっとしておけ」

イス「私を脅迫するのですか?」

チョ会長「脅迫ではなく取引だ」

イス「相手を間違えているようですね。私はあなたの孫娘が不幸になるのを誰より望む人間です」

チョ会長「果たしてそうかな?他のものはだませても、愛はだませないものだからな。ハッハッハッ」

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