鮫〜愛の黙示録〜
第15話

イヒョンの靴につけた発信機の信号を追ってイスは自分の部屋に辿り着く。

イヒョンが履いているはずの靴を見て愕然とする。

イスの部屋。

イスはまずイヒョンの携帯に電話する。

イス「もしもし」

『イヒョン』と呼びかけてみるが『イヒョンさんが携帯を置いて出てしまって・・・』と答える店の従業員。

次はキム係長に電話する。

イス「イヒョンが拉致された。店の防犯カメラの映像を確認しろ」

次はどうすればいいのかイスは考える。

そしてチョ会長に電話するがなかなか出ない。

イス「出ろ。出ろ。出ろ・・・」

チョ会長の書斎。

ヘウと一緒に外にいたチョ会長(サングク)が部屋に入る直前に携帯の呼び出し音が切れる。

サングクはヘウにチョン・ヨンボを殺した経緯を話すロバート・ユンから聞いた話と食い違う部分もありヘウには疑問が残る。

どちらが嘘をついてるのか。

イスの部屋/サングクの書斎。

イスはもう一度サングクに電話する。

イスは『イヒョンはどこだ。何が望みだ』と訊くがサングクは『お前は私のほしいものを持っていない』と言ってすぐ電話をきってしまう。

今度は番号非通知の電話が入る。

犯人からだった。

犯人はイスの命とカン・ヒスが持っていた文書の原本を要求してくる。

イス「原本は俺が持っている。どこに行けばいい?」

犯人「原本はヨシムラ会長が持っているはずだ。まずそれを探せ」

盗聴していたチャン秘書も驚く。

ピョン刑事がイスのマンションに辿り着く直前目の前を1台のトラックが走っていくがピョン刑事は気づいていない。

中にはイヒョンがいた。

イスはピストルを用意して急いで出かける。

訪ねてきたピョン刑事に急用があるのでと言って立ち去ろうとするが後ろから『イス!』と声をかけられ思わず振り向きそうになるイス。

ピョン刑事もやっと信じる気になったようだ。

ピョン刑事にキム係長から『イヒョンさんが拉致されたようです』と知らせが入る。

イスの車中。

イスはチャン秘書に電話をしてヨシムラ会長がどこにいるか確認する。

チャン秘書「会長はホテルにいるはずです。正確にどこにいるか確認してお知らせします」

チョ検事室。

ヘウにもピョン刑事からイヒョンが拉致されたと知らせが入る。

ヘウ「今どこですか?私も行きます」

出かけようとするがまずイスに電話する。

ヘウはイスが脅迫されていることを知り自分も手伝うと言うがイスは『君が手を出せばイヒョンがもっと危険になる。犯人が本当に恐れているのは俺じゃない、君だ』と言って電話を切ってしまう。

ヘウはイスの携帯位置情報を追跡する。

ジュース店。

ピョン刑事からイヒョンを誘い出した男の写真をみせられた店員。

店員「開店直後からずっとゲームばかりしていました」

ピョン刑事「他に特徴はないか?」

店員「ありません」

キム係長の車中。

ピョン刑事からの電話に『男を探しています。いいえ、今は各自動くのが効果的だと思います』と答える係長。

実はイスから何か指示を受けている。

”時間がない。急いでくれ”というイスの声。

ジャイアントホテル。

車はそのまま停めておくようにと言ってイスは急いで中に入る。

チャン秘書からヨシムラ会長はホテルのバーにいると聞くと会長が宿泊している部屋の鍵をフロントでもらう。

イス「会長に書類を持ってくるように頼まれたので」

ヨシムラ会長の部屋。

イスが入っていくところを会長の手下が見ている。

ホテルのバー。

ヨシムラ会長はチョ社長と話中。

イスが部屋に入ったことを知らされて険しい表情。

ヨシムラ会長の部屋。

中ではイスが文書の原本を必死で探している。

会長が部屋に入る直前チャン秘書が声をかける。

チャン秘書「会長、お探ししていました・・・」

チャン秘書の機転とわずかな抵抗。

その声に気付き荒らした部屋を片付けるイス。

会長が部屋に入る。

ヨシムラ「何をしている」

イス「父が残した文書の原本、会長が持っておられますか?私が持って行かなければなりません」

ヨシムラ「何があったんだ、ジュン」

イス「訊きたいのは私のほうです。文書どこにありますか?」

ヨシムラ「それを探す理由を先に話せ」

イス「会長が持っているというのが本当だということですね。ひょっとして私の事故・・・チョ会長でなく会長がしたことですか?」

ヨシムラ「お前を狙ったのはチョ会長だ。私はそれを知っていてお前を見守っていた。おかげでお前を助けることができたというわけだ」

イス「いつもそれが気になっていました。どうして私を助けることができたのか・・・私を助けることができた人間は現場にいた犯人だけです。そいつが現場に私をそのまま置いて行くはずがありませんから」

ヨシムラ「そいつはお前が死んだと確信したんだろう。生きていることはあり得ないくらい大きな事故だったから。万一私が少しでも遅かったならお前を助けられなかったはずだ。天がお前にもう一度生きる機会を与えたということだろう」

イス「理解ができません。私をどうして助けたんですか?」

ヨシムラ「思い出せないか?生きていればいつか機会があるといった言葉を」

イス「どんな機会のことを言ってるんですか?」

ヨシムラ「私もお前と目的は同じだ。チョ会長を完全に倒すこと」

イス「それで私を利用しているんですか?」

ヨシムラ「お前は誰かに利用されるほど愚かではない。私はただお前が意志を遂げられるよう手を貸しているだけだ」

イス「文書どこにありますか?会長を傷つけたくありません」

ヨシムラ「お前は私の息子だ。お前が望むなら何でもくれてやろう、私の命でも」

イスに犯人から電話が入る。

犯人「文書は見つかったか?」

イヒョンの無事を確認するためにイヒョンと話をするイス。

イス「お兄ちゃんがすぐ助けに行くから心配しないで待ってるんだよ」

その様子を見て状況を把握したヨシムラ会長はイスに一つのUSBを渡す。

ヨシムラ「文書の原本だ」

イスはすぐ中身を確認する。

ピョン刑事車中。

ピョン刑事は妻にイヒョンが拉致されたから家に帰って待機するようにと電話する。

ピョン刑事「おかしな電話があればすぐ連絡しろ」

妻(イヒョンの養母)は『イヒョン!』と泣き叫びながら家に帰る。

イヒョンが乗ったタクシーを追跡するために所轄にも支援を要請する。

ピョン刑事「静かに動けと伝えてくれ。どういう意味かわかってるな?」

ふと思い出す。

『急用があるので』と言っていたイス。

ピョン刑事「あの男、もう知っていた!」

ジャイアントホテル/車中。

ピョン刑事はヘウに電話してイスの携帯番号を聞こうとする。

ピョン刑事「スタービルのあの男がイスだということ君はもう知っていただろう。イスならイヒョンの行方を知っていそうだ」

ヘウ「性急に動けばかえって危険です。イスが脅迫されているようです。イスを信じて・・・」

ピョン刑事「信じられん!君は殺人容疑者を匿ったんだぞ!!もういい、自分で調べる!」

ヘウはイスの携帯位置を追跡してイスに会おうとする。

ヨシムラ会長の部屋。

ヨシムラ会長はイスに犯人が文書原本を要求した本当の目的はカン・ヒスに文書を送ったのが自分だと確かめるためだと言う。

イス「それでも持って行かなくてはなりません」

イスはUSBを持って出かける。

心配そうなチャン秘書。

ロビーでヘウは父親と鉢合わせする。

ヘウはイスを見つけて自分も力になりたいと言うが邪魔になるだけだから手を出すなと言われ追い返される。

イスを追いかけようとするヘウにジュニョンから電話。

入院している父親のところに一緒に行こうと言われるが急用があると言って断る。

イス車中。

イスはキム係長に状況を確認し次は自分から連絡すると言って携帯の電源を切る。

これで追跡不能となる。

ヘウ車中。

イスを追えなくなったヘウはピョン刑事に電話する。

ヘウ「白黒写真(証拠の写真)のコピー、まだ持ってますよね?」

ヘウは自分ができることを思いついたようだ。

ヨシムラ会長の部屋。

ヨシムラ会長はチャン秘書に『イヒョンが拉致されたことをすぐに伝えなかったのはイス(ジュン)を助けるためだったのでは?』と不信感を抱く。

『慎重に行動しただけです』と答えるチャン秘書。

チャン秘書「代表ひとりで大丈夫でしょうか?」

ヨシムラ「あいつが解決しなけらばならない問題だ。あいつに任せておけ」

カヤホテルロビー。

ジュニョンはチョ社長に話しかけられるが病院に行くのでと出かけようとする。

チョ社長「ヘウは一緒に行かないのか?さっきジャイアントホテルいたぞ」

ジュニョン「ドンスに会いに行ったんでしょう」

チョ社長「そうか?私の見まちがいかなぁ」

ジュニョンはムン社長に言われた言葉を思い出す。

『君の夫人とキム・ジュン、普通の関係じゃない』

イス車中。

キム係長に状況を確認する。

キム係長「今着きました」

イス「どんな手を使ってでも必ず連れてきてくれ」

キム係長「はい。・・・兄貴、俺のせいです。すみません」

イス「そんなこと言ってる時間は無い。急げ」

療養院。

キム係長は犯人(チェ・ビョンギ)の孫を装って入院している妻を連れ出そうとしている。

職員「ご家族の欄にお孫さんの記載はありません。保護者に確認します」

キム係長「ダメです。祖父は僕が米国から帰ってることを知りません。祖父も両親も僕の結婚に無条件に反対だと言うのでケンカしてて。寂しくて祖母にどうしても会いたくなって内緒で来たから・・・」

職員「307号室です。今度は必ず連絡してから来てくださいね」

キム係長「はい。ありがとうございます」

市街地/警察署。

ピョン刑事はイスの携帯についての報告を受ける。

部下「名前は”キム・ジュン”。電源が切られていて位置は追跡できません」

ピョン刑事「追跡できるようになったら連絡してくれ」

イヒョンを誘い出した男の車が見つかるが男はいない。

『ゲームばっかりしていました』ピョン刑事はネットカフェを見つけて入っていく。

ジュニョンは父親の事故の捜査状況を聞きに警察署に来ている。

開いたままのPC画面に映ったキム・ジュンの姿を見つける。

『他の事件の資料なので』と慌てて画面を閉じるナ刑事。

ナ刑事「お父様の事故の捜査は最善を尽くしていますが・・・すみません」

イスの執務室。

ドンスが出勤してきて心配そうなチャン秘書にどうしたのかと尋ねる。

チャン秘書「もしハン・イスさんが生きていたらどうしますか?」

「そりゃもう、毎日一緒にご飯も食べて酒も飲んで海外旅行にも行って彼女ができたらダブルデートもして、イヒョンの天文台で星も見て・・・どうしてこんなことを聞くんですか?」

悩みがあるなら自分が全部解決するというドンス。

チャン秘書をデートに誘うが断られる。

チャン秘書「私を好きにならないでください。私は良い人じゃありませんから」

警察署。

ピョン刑事は若い男に『イヒョンはどこだ!俺は刑事じゃない、イヒョンの父親だ!!』と殴り掛かる。

男はアルバイトをしただけで犯人の顔も見ていないし何も知らないと答える。

警察署外。

ピョン刑事はヘウにイヒョンの拉致の犯人の心当たりを聞くがヘウは答えようとしない。

そして自分のできることをするというヘウに証拠写真のコピーを渡す。

病院。

チョ会長は地検長の見舞いに来ている。

意識が戻ってよかったというチョ会長。

『会長のおかげです』と母親は言うがジュニョンはあまりうれしくなさそうな表情。

小さな港。

イスは取り引き場所に到着する。

携帯の電源を入れて車に残しピストルを持って停まっていたトラックに近づく。

中からイヒョンの泣き声が聞こえてくる。

イス「イヒョン!兄さんがすぐ助けるから!」

荷台のドアを開けようとしていると後ろから犯人にピストルを突きつけられてしまう。

イス「望みの物は持ってきた。イヒョンを解放しろ」

犯人「私が約束を守ると思ったのか?」

イスは気絶させられてしまう。

イスの意識が戻った時にはもう夜になっていた。

犯人がイヒョンに銃を向けて立っている。

イスを見たイヒョン。

イヒョン「お兄ちゃんだったのね。ずっと会いたかったのに何で連絡してくれなかったの?」

イス「お兄ちゃんが悪かった。すまない」

犯人はイヒョンの口を塞ぐとイスに車に乗ってそのまま海に入れと命令する。

サングクの書斎。

ヘウはサングクに証拠の写真を見せている。

チョ会長「お前の曾祖父(チョ・インソク)の写真だな。初めて見た。隣にいるのは誰かな?」

ヘウ「チョ・インソクさんの息子さんです」

チョ会長「どういうことだ?」

ヘウ「それはおじいさんのほうがよく知ってらっしゃるでしょう」

港。

イスはゆっくりと後ずさりして自分の車に近づく。

『急げ』という犯人。

そこにキム係長と犯人の妻が乗った車が到着する。

キム係長は銃を犯人の妻に向けている。

イス「イヒョンをこっちによこせ。奥さんを助けたければイヒョンを放せ」

犯人「車に乗れ。私の計画に変更はない」

サングクの書斎。

ヘウが何のことを言っているのかわからないというサングク。

イヒョンを無事に帰せばサングクの過去のことは聞かないというヘウ。

しかしイヒョンに万一のことがあればたとえイスも戻ってこられなくても自分がサングクの過去を最後まで追求すると言い放つ。

睨み合うヘウとサングク。

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