鮫〜愛の黙示録〜
第14話

イスの部屋のテレビに椅子に縛られているチョ社長の監視映像が映っている。

イスが車で出かけるとヘウがそれを尾行する。

ヘウはピョン刑事に父親の携帯の位置情報を追跡するようにと電話する。

イスは車中からチョ会長に電話している。

チョ会長「要求は何だ?」

イス「あなたが今までしてきたことを全部国民に告白してください」

チョ会長の書斎/イスの車中。

イス「真実を告白して息子を助けますか?それとも息子を見捨てますか?どうなさいますか?チョ・サン・グク・会・長?」

(わざと気を持たせて話している)

目は氷のように冷たい。

ウィソンを殺せばイスの妹(イヒョン)も生きてはいられないというチョ会長。

そして『しかし人の生き死には天の意思』と息子を見捨てたような言葉を吐く。

イス「息子を見捨てるんですね」

チョ会長が続ける。

チョ会長「子供を捨てる親はいない。君の父親も私も子供のために新しく生きたかっただけだ。お父さんのためにも過去は隠しておくほうがいい。君の知らないことも多い」

イス「ひとつ確かなことはあなたは過去を隠すために私の父も私も、そして多くの人たちを殺した。そのことにあなたは罪悪感さえ感じていない」

チョ会長「罪悪感が一生ついて回れば気楽に生きることはできない。私も君の父親もそうだった。後悔したくなければ今すぐ息子を解放しろ。そうすれば君の父親の真実を教えよう」

イス「父さんのことは自分のほうがよく知っている」

チョ会長「果たしてそうかな?」

もう時間が来たと言ってイスは電話を切る。

『息子を探せ!!』と電話するチョ会長。

イスも誰かに『計画通り進めろ』と電話をする。

あるマンション。

イスは車をあるマンションの前に停め中に入っていく。

ヘウも後を追うがピョン刑事から父親の現在位置が分かったという知らせが。

そちらに向かおうとするがやめてマンションの中へイスを追っていきマンションの4階に上がっていく。

イスは尾行するヘウをマンションの非常階段におびき寄せる。

イス「何故俺を尾行する?」

ヘウ「パパはどこ?」

イス「それを何故俺に訊く?」

ヘウ「あなたが知っているから」

イス「俺は今君と一緒だ」

ヘウ「協力者がいるでしょう。答えて。パパは今どこにいるの?」

イス「携帯の位置追跡でもしてみれば?」

ヘウ「携帯がある場所にパパはいないわ」

イス「どうして?」

ヘウ「警察を他のところに誘導するために電源を入れておいてあるから。自分の手で人生を台無しにしないで。イス!これ以上罪を犯してはダメよ」

イス「俺を止めようとするなら真実を見つけなくちゃな」

ヘウ「真実より重要なのはあなた自身よ。あなたの人生より大切なものは何もないわ」

イス「このことを終わらせなければ俺は死んだも同然だ」

ヘウ「イヒョンのことを考えて。あなたがこんなことをするのをイヒョンは望まないはずよ。今のあなたの姿をイヒョンが知ったら・・・」

イス「イヒョンは俺を理解してくれるさ」

ヘウ「苦しむわ。私みたいに。そしてあなたみたいに。あなたを愛する人のことを考えて。これ以上の犠牲は何の意味もないわ」

イス「オ刑事を殺したのは俺じゃない。地検長の事故もだ」

ヘウ「あなたが止まれば相手も止められる。私が真実を探せば・・・」

イス「順序が違う。真実を見つけることが先だ」

ヘウ「それの何が重要なの?私が守りたいのはイス、あなたよ。あなたが駄目になれば真実も何も私には何の意味もないってことが何故わからないの?」

ヘウを抱きしめるイス。

そしてヘウの耳元でささやく。

イス「諦めろ。俺は止まらない」

ヘウ「あなたの思うようにはいかないわ。私は誰であっても正当な対価を払わせてみせる。あなたも例外ではないのよ」

イス「期待してるよ」

イスの『諦めろ』には二つの意味があった。

イスの計画を止めようとするヘウに対して、そして未だヘウを切望する自分に対して。

ウィソンの監禁場所。

殺されるかと思って悲鳴を上げるウィソンだが犯人は紐を解いてウィソンを車に乗せる。

『計画通りやりました』と電話で報告するイスの協力者。

イスと秘密裏で繋がっていたのは実はキム係長だった。

古本屋。

『ご苦労』と電話に答えるイスはまた古本屋に来ていた。

店には鍵がかかっている。

ウィソンの監禁場所。

ピョン刑事たちが到着すると先にキム係長がいた。

警察が突入するが中には誰もいない。

椅子の上にはウィソンの携帯と名刺が一枚。

ロバート・ユンというシカゴ大学教授のものだった。

ヘウも現場に到着。

ピョン刑事はウィソンの携帯の履歴を見てチョ会長に電話する。

チョ会長の書斎/現場。

チョ会長「息子が死ねばお前も生きてはいられないぞ!」

犯人からの電話だと思って怒鳴るチョ会長。

ピョン刑事は携帯は見つけたがウィソンがまだ見つかっていないと知らせ、犯人と直接話をしたかと訊く。

会長は脅迫を受け金を要求されたと言う。

チョ会長「犯人の心当たりはありません。息子を必ず見つけてください」

ヘウ「お金を要求された?」

ヘウは疑問を抱く。

チョ家の外。

車の中でヘウからの電話を受けるジュニョン。

パトカーがウィソンを乗せてくる。

とてもショックを受けている様子で。

ジュニョンがウィソンを家の中に連れていくとチョ会長が声をかけるがウィソンはチョ会長を避けるように自分の部屋に入っていく。

息子である自分を一度は見捨てようとする発言を聞いてしまったウィソン。

そして父だと思っていた人が実は父ではないかもしれないという疑念。

心中穏やかではない。

ウィソンの部屋。

ウィソンはベッドに横になり思い出す。

チョ会長の声『人の生死には天の意思。息子との縁もこれまでかもしれん』

ボイスチェンジャーの声『あなたが偽物だとあなたがよくご存じでしょう。本物はあなたが殺したから』

取り乱すウィソン。

入って来たチョ会長に尋ねる。

ウィソン「私は本当に父さんの息子ですか?どれが本物か偽物か、わからなくなってしまって」

チョ会長の書斎。

『こういうことだったのか。これを望んでいたんだな』と独り言をいうチョ会長。

バー。

酒を呑んでいるイスのところにキム係長がやってくる。

チョ家の外。

ヘウが帰ってくる。

ピョン刑事も一緒だ。

ジュニョンにウィソンの様子を聞くと話を聞くのは無理そうだと解る。

ヘウは自分が話を聞いてみるからといって事情聴取は明日にしてくれるようピョン刑事に頼む。

チョ家の内。

ウィソンは尋常ではない様子でチョ会長の書斎に入っていき、いきなり以前イスが持ってきたツボを割ってしまう。

ウィソン「祖父の魂を壊したのです。惜しいですか?私が生きて帰ってきてガッカリしましたか?私はお母さんのように簡単には捨てられません。立派な父さんのそばで一生尊敬しながらガムのようにくっついて生きていきます」

ヘウに向かって。

ウィソン「お前、おじいさんを世の中で一番尊敬しているだろう?」

死んで生き返った記念にと万歳三唱するウィソン。

「大韓独立万歳!!」

チョ会長に睨まれると今度は子供のようにおびえながら『ママ!ママ!』と泣くウィソン。

バー。

一人で酒を呑んでいるイス。

キム係長もやってくる。

古本屋の店主について調べたことを報告している。

------------------------------------------------------------------------------
名前はチェ・ビョンギ。

年齢は66才。

妻は10年前に痴呆判定を受けて現在は療養院に入っている。

一人息子は子供のころ米国に留学してそのまま米国で暮らしている。

特殊部隊除隊後警察に入って1980年に退職。

その後の記録は一切なし。

1988年に古本屋を買収。

それも妻名義で税金の記録もない。

チョ会長とは家が近所というほかは何も関係を示すものは無い。

------------------------------------------------------------------------------
イス「古本屋を始める前からチョ会長と知り合いだったことは間違いないんだがな。それで古本屋を会長の家の近所に出した」

キム係長「チョ会長の履歴をもう一度調べてみます」

イス「・・・イヒョンのことだが・・・」

キム係長「心配しないでください。私が守ります」

イス「一人じゃ無理だ。信じられる人間が必要だ・・・」

警察署。

チョ社長誘拐事件の捜査中のピョン刑事。

携帯にメッセージが入る。

“あなたの娘を守ってください”

ピョン刑事はまだイスだとは気付いていない。

あわてて妻に電話する。

ピョン刑事「イヒョンは家にいるか?」

イヒョンと養母とドンスの3人はおばさんの店に居た。

ピョン刑事「こんな時間にどうして出かけてるんだ!俺が行くまでそこに居ろ!イヒョンを一人にするな!」

ピョン刑事はメッセージの発信元を調べるように後輩に頼んで急いでイヒョンのもとに向かう。

チョ家。

ヘウがパク女史に祖母のことを尋ねる。

ウィソン満1歳の写真に写っていた祖母がヘウが覚えている祖母とは違っていたことを疑問に思ったからだ。

パク女史の話では『会長はウィソンの実母と別れて再婚した。ウィソンの生母はある日家を出て行って帰ってこなかった』と言われる。

ヘウ「失踪したということですか?」

パク女史「そこまではよくわかりません」

ヘウとジュニョンの部屋。

ジュニョンは総長に会うと言う。

『警察がもう会った。捜査は警察に任せて』というヘウ。

ジュニョン「警察に任せていても何もわからないじゃないか。イスが12年かけて計画したこと警察には防げない。お父さんたちの次はお前かもしれない」

ヘウ「二つの事件は同一犯ではないわ」

ジュニョン「なぜわかる?今のイスは以前のイスじゃない。復讐しか頭にない犯罪者だ」

イスの部屋。

イスは発信機を持っている。

テーブルにはピンクのカワイイ靴。

救急箱が目に留まりイスはヘウとのことを思い出す。

ヘウの部屋。

ヘウはサメのペンダントを見つめながらイスのことを思い出している。

『諦めろ。俺は止まらない』

ペンダントを握りしめ祈るように目を閉じるヘウ。

部屋の外からそれを見ているジュニョンも辛そうだ。

ジュース店。

イヒョンが働くジュース店でイスはイヒョンが出勤してくるのを待っている。

ピョン刑事がイヒョンを送ってくる。

店に入るとすぐイスを見つけるイヒョン。

イヒョン「お早いですね」

イス「家が近所だから散歩がてら歩いてきたんだよ」

イヒョン「そうですか。朝食は食べましたか?食べてなければ私がサンドイッチを作ってあげましょうか?」

箱を差し出すイス。

イス「いいよ。あの。これ・・・」

イヒョン「私にくれるんですか?」

イス「プレゼントじゃないから遠慮しないで受け取っていいよ」

イヒョン「プレゼントじゃなければ何ですか?」

イス「在庫処理」

イヒョン「在庫処理?」

イス「友人が履物事業してるんだけど在庫がたくさん余ってるみたいで。だからひとつ持ってきただけだよ」

イヒョン「ただプレゼントって言っても受け取るつもりだったのに。ここであけてもいいですか?」

イス「どうぞ」

箱の中には可愛いピンクの靴。

イヒョン「わぁカワイイ!」

イス「サイズが合うか一回履いてみて」

イヒョン「わぁピッタリ!ん〜すごく楽」

イス「そう?よかった」

でも気づくイヒョン。

イヒョン「これ在庫じゃないわ。新商品ですよ、これ」

イス「そう?行かなきゃ。時間が・・・」

イヒョン「大事に履きます。ありがとうございます」

イス「また来るよ」

帰り道。

イスはイヒョンの靴につけた発信機の作動を確認する。

チャン秘書とドンスも一緒になって3人で朝食をとることにする。

『ドンスさん、これからはちょくちょく一緒に朝ごはん食べましょう』とチャン秘書がドンスに言う。

『私とですか!?』と喜ぶドンス。

チャン秘書「代表と3人で」

ドンス「ああ・・・3人で・・・」

それでも嬉しそうなドンス。

病院。

ジュニョンは父親の面会からの帰りグランブルーのムン社長と遭う。

ムン社長「すまなかった。脅迫をうけて仕方なく。君も気をつけろ。夫人とキム・ジュンは普通の関係じゃない」

ジュニョン「もう一度でも妻を侮辱するなら、私も黙ってはいませんよ」

キムジュンがイスだと気づいてるジュニョンは胸中複雑。

チョ家。

ヘウとピョン刑事が事情聴取に来るがウィソンの体調がまだ悪いからまだ無理だとチョ会長は言う。

そこにウィソンが自ら進んで話をしに部屋から出てくる。

『犯人の顔は見れなかったし声も聞かなかった。身代金を要求された』という父親の言葉に驚きながらも話を合わせるウィソン。

ウィソン「心当たりはありません。私を恨む人間は沢山いますから」

チョ家 外。

二人とも何か隠しているというピョン刑事。

「もしかして君も何か隠しているんじゃ?」

ヘウにジュニョンから電話が入る。

夜会いたそうなジュニョンにまだ予定が立たないというヘウ。

ピョン刑事にもチョン・ヨンボを探す広告に電話してきた人物がいたという連絡が入る。

昨日拉致現場にあった名刺の人物ロバート・ユン。

ピョン刑事「まずそこに行こう」

イスの執務室。

チョ会長の『罪悪感が一生ついて回れば気楽に生きることはできない。私も、君の父親もそうだった』

という言葉が気になって仕方がないイス。

キム係長に電話するがこのことは口にせずイヒョンがプレゼントした靴を履いているかと尋ねる。

イスは『息子が死んだらお前の妹も生きてはいられないぞ』という会長の言葉を思い出しどこかに出かけていく。

ジュース店。

キム係長がイヒョンに尋ねる。

キム係長「何時に終わる?」

イヒョン「今日はパパが迎えに来るわ」

キム係長「もしパパが来られなかったら電話して。送るから」

イヒョン「いやよ」

キム係長「言うこと聞けよ」

イヒョンのおでこを小突く。

イヒョン「なにするんですか!」

キム係長「可愛いから・・・電話しろよ」

言ってキム係長は帰っていくが何やら怪しい男が店にいる。

ロバート・ユンのマンション。

ヘウとピョン刑事はロバート・ユンを訪ねてくる。

昨日ヘウがイスを追って入ったマンションだった。

カフェ。

ヘウとピョン刑事はロバート・ユンにチョン・ヨンボについて話を聞く。

ユン氏は歴史学科教授で2年前に米軍機密文書の中でチョン・ヨンボという名前を発見したと言う。

記録によるとチョン・ヨンボは人民軍のスパイだったが米軍につかまるとすぐさま米軍のスパイになるというような自分勝手な人物で多くの人を虐殺したと言う。

ヘウがチョン・ヨンボの写真はあるかと尋ねるが見つかっていないと言われる。

しかし『チョ・サングク会長なら何か知っているようなので会うつもり。そして以前一度チョン・ヨンボについて電話で尋ねてきた人がいる。ハン・イスでした』と。

話を聞き終わったピョン刑事はヘウにもう少し話をしようと言うがヘウはオ地検長から預かった写真を渡すと会わなくてはいけない人がいると言う。

ジュース店。

怪しい男がイヒョンに『ハン・イスが生きている』というメモを渡す。

急に店を飛び出していくイヒョン。

イヒョンはタクシーで男の車を追う。

古本屋。

イスはどうしても古本屋の店主が気になってまた古本屋に来たが店は鍵がかかっている。

イヒョンの靴の発信機の信号が店を出ていく。

イヒョンに電話しても繋がらない。

イスは急いで発信機の位置を追いかける。

警察署。

ピョン刑事は図書館のカメラ映像の中にイスを見つける。

『あの男だ!』とヘウと一緒に行ったスタービルの部屋から出てきた男だと気づくと急いで署を出る。

チョ家。

ヘウは祖父に尋ねる。

ヘウ「真実を聞きに来ました。チョン・ヨンボをご存知ですね。おじいさんがその人ですか?」

チョ会長「告白するときが来たようだ。私は人を殺した。私がチョン・ヨンボを殺した」

イスのマンション。

イスが信号を追っていくと自分の部屋にたどり着く。

部屋にはイヒョンが履いているはずの靴だけがポツンと置いてあった。

第15話へ