鮫〜愛の黙示録〜
第13話

ヘウが帰ると同時に戻って来た店主。

イスは図書館でも聞いた“カチッカチッ”というボールペンの音にハッとする。

イスは独立運動家チョ・インソクの本やプロの殺し屋の本は無いかと聞いて店主の反応を見るがなかなか尻尾を出さない。

店を閉める時間だと言われイスは店を出る。

オ地検長室。

机の上には証拠の写真。

息子の言葉を思い浮かべる。

ジュニョン『今まで誰よりも父さんを尊敬して来ました。もう誰も信じることができません』

あの苦い言葉を。

オ地検長は総長に電話をかける。

オ検事長「重要なお話があります。チョ会長にも関係することです」

オ地検長は覚悟を決める。

チョ会長書斎。

総長からの電話を受けるチョ会長。

「私には心当たりがないが私に迷惑がかかると思って辞職するつもりかもしれない。もしそうなら君が説得してくれ」

オ地検長室/チョ会長書斎。

写真を封筒に入れるオ地検長。

チョ会長からの電話。

「特に用事はないがいろいろ気を使わせたと思って。近いうちに会いに来なさい。健康に気をつけて」

受話器を置くと首の横に振るチョ会長。

古本屋。

店主が店を閉めずに出かけて行く。

外で身を隠していたイスは店の中の帳簿や引き出しを調べ始める。

引き出しには大量のボールペン。

毒針ペンを探すがどれもちゃんと書けるものばかり。

不吉な予感に襲われたイスは慌てて店を出る。

イスの車/養母の姉の店。

イスは車の中からイヒョンに電話する。

イヒョンはその頃養母と一緒に伯母さんの店にいた。

あとからピョン刑事も来ると言う。

イヒョンが安全だとわかってホッとするイス。

客の男からの電話を怪しがるピョン刑事。

イヒョンは『本当になんでもないって!』と否定する。

駐車場。

家に帰って来たイスは電話で話しながら車を降りる。

イス「イヒョンのそばに誰か付けないと。お前ひとりじゃ無理だ・・・」

突然男に襲われて腹をナイフで切りつけられるイス。

腹からは大量の出血。

男をやっつけて問い詰める。

イス「誰の仕業だ!言え!!」

男「チョ社長」

イスの部屋。

部屋の前でヘウが待っていた。

話があるというヘウにイスはケガを腕で隠して平静な顔を装い『帰れ』と追い返そうとする。

しかしイスのケガを見つけたヘウは部屋の中まで入り手当てをし始める。

ヘウ「このままじゃダメ、病院に行かなきゃ。私と行くのが嫌ならチャン秘書と・・・」

しゃべり続けるヘウをじっと見ていたイスはいきなりヘウにキスをする。

それに驚き思わずヘウはイスを突き放す。

切ない目で見つめるイスはもう一度ゆっくりヘウにキスをする。

今度は激しいキス。

黙って受け入れるヘウ。

イス「治療、受けるよ」

涙をこぼしながら帰っていくヘウ。

ヘウは車で家に帰る途中事故を起こしそうになる。

涙で視界がぼやける。

オ地検長室/チョ家の外。

オ地検長はジュニョンに電話をするが出てもらえず。

オ地検長「今からでも最善の方法を取る。すまない、ジュニョン」

留守電に入っていたメッセージを聞いたジュニョンはヘウと一緒に父親を探しに行く。

オ地検長室前の廊下。

明日で定年退職するという警備員に『お疲れ様でした』と挨拶するオ地検長。

ジュニョンの車。

ジュニョンは何度も父親に電話するが繋がらなくてイライラする。

母親にも連絡はないとのこと。

『キム係長にも頼んだからすぐ見つかるわ』というヘウ。

偶然オ地検長がタクシーに乗るところを見つけて後を追う。

タクシーの中。

オ地検長は総長に『もうすぐお宅にお伺いします』と電話を入れている。

そしてオ刑事の言葉を思い出す。

オ刑事は写真のコピーを地検長に渡しチョ会長が偽物だということを話していた。

オ地検長「どうして私のところに?」

オ刑事は新入りのとき地検長と一緒にした潜伏捜査を通して地検長の人柄を知りそれを信じてここに来たと言っていた。

タクシーを降りた地検長が横断歩道を渡り始める。

ジュニョンとヘウが追い付いて声をかけると地検長は立ち止まり小型トラックに轢かれてしまう。

ジュニョンはすぐ救急車を呼ぶ。

ヘウは警察に電話してトラックを探すよう特徴を伝える。

病院。

ジュニョンはヘウに犯人を絶対に捕まえてくれという。

ふとイスの仕業ではないかと思いついたジュニョン。

ジュニョン「もしイスの仕業なら絶対に許さない」

病院で治療を受け終わったイスにもオ地検長の事故の知らせが入る。

医師の説明によると命は取り留めたが意識が回復しても普通の生活には戻れないだろうとのことだった。

郊外。

ピョン刑事はトラックの行方を探している。

古本屋店主とすれ違うが気が付いていない。

病院でケガの治療をして帰って来たイスにヘウが尋ねる。

イス「どうした?」

ヘウ「地検長が交通事故で意識不明なの。計画的な事故よ」

イス「それで?」

ヘウ「あなたがしたことなの?」

イス「俺がしたことだと思うのか?」

ヘウ「違うと願ってる。違うと願って聞いてるのよ」

イス「俺かもしれないな。想像力を発揮させてみろ。真実を隠そうとしている者が誰なのか」

ヘウ「知ってるなら話して。誰なの?答えて!」

イス「証拠がなければ何も証明できない。証拠を探せ。それは君がすることだ」

ヘウ「わかってる。あなたが望んでることが何なのか。結局は私も破滅することになるのね。それでもそれが真実を見つけることなら、あなたへの罪滅ぼしになるのならやり遂げるわ。ひとつだけ教えて」

イス「何だ?」

ヘウ「あなたにとって私は単に道具に過ぎないの?本当にそれだけなの?」

イス「そうだ」

ヘウ「残忍ね、ハン・イス」

イス「俺はキム・ジュンだ。ハン・イスはとっくの昔に死んだ」

ヘウ「ケガしないで」

それだけ言い残してヘウは帰っていく。

郊外/病院。

地検長を轢いたトラックが見つかったがナンバープレートもなく持ち主もいない幽霊車両だった。

犯人を特定できるものは何も見つからない。

『警察が見つけられないのなら自分が探します』というジュニョン。

『警察に任せろ。捜査は始まったばかりだ』というピョン刑事。

チョ会長の書斎。

大変なことが起こったが地検長の命が助かってよかったというチョ会長。

ヘウやジュニョンが傷ついたのではと心配している。

チョ会長「大変だろうがお前なら耐えられるだろう。私はお前のことを信じている」

ヘウ「私もおじいさんを信じています」

書斎の外。

酔ったウィソンが帰ってくる。

パク女史が地検長の事故を伝える。

どうしてこんな事ばかり続くのかと不思議がるウィソン。

ヘウが挨拶しても『どちら様ですか?』と無視して自分の部屋に入って行く。

ヘウはジュニョンの着替えを持ってまた病院に行く。

イスの部屋。

イスは謎の『友人』に電話をかける。

『計画変更だ』と指示を出す。

チョ家リビング。

チョ会長が新聞を読んでいる。

人探しの広告を見て驚き怒り出す会長。

広告には

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『“チョン・ヨンボ”を探しています。

・1930年6月6日 慶南(キョンナム)居昌郡(コチャングン)神院面(シノォンミョン)出生。

・ふくらはぎに火傷の痕あり。

・チョン・ヨンボに関するどのような情報でもお持ちの方々に後ほど謝礼。

連絡先:臣民日報 広告局 0212・・・』

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と書いてあった。

依頼主はもちろんイス。

マンションのエントランス。

出勤するイスの顔色が悪いとチャン秘書もドンスも心配している。

『人には言えない悩みが・・・』というイス。

ドンスは『女性問題でしょう・・』とまた早とちり。

チョ社長室。

イスがジャイアントホテルソウルオープン式への招待状をチョ社長に渡す。

社長は自分が行く席ではないと言うがイスは『社長から沢山のことを教えてもらいました。これからもよろしくお願いします』いぶかしがるチョ社長。

カヤホテルロビー。

帰っていくイスに挨拶するカヤホテル従業員。

チャン秘書が首をかしげる。

チョ検事室。

キム係長が地検長ひき逃げの捜査報告をしている。

証拠が何も見つからない完全なプロの仕業。

ヘウ「ところでカン・ヒス氏が通っていた精神科医の件は?」

忙しくて手が回らないというキム係長。

昨夜オ地検長が挨拶した警備員が地検長から預かったと言って封筒を持ってくる。

“万一私に何かあったらチョ検事に渡してください”

中身は証拠の写真でした。

チョ家。

パク女史はチョ会長が何に怒ったのかクシャクシャにした新聞を調べている。

『チョン・ヨンボ』の記事を見つける。

そこにヘウから電話。

ヘウ「おじいさんは家にいますか?」

パク女史「病院に面会に行きました」

警察署。

ひき逃げ車両の映像を食い入るように見ているピョン刑事。

後輩にいわれて食事する。

広げてあった新聞の広告に目が留まる。

出身地がチョ・インソクと同じだった。

チョ会長の書斎。

会長の留守中に書斎を調べるヘウ。

アルバムを見る。

ある時期より前の写真はない。

空白のページが続いた後一枚の写真を見つける。

“1959.9.4 ウィソン満1歳記念”と記された写真と1950年の写真とを見比べる。

パク女史はチョ会長が新聞広告を見て怒っていた、とヘウに新聞を見せる。

ファヨンの部屋前。

ウィソンがファヨンの部屋から出てくる。

ファヨン「記者がいるかもしれないからしばらく来ないで」

ウィソンが車に乗ると後ろの席からピストルが。

イスはさりげなくイヒョンの安全を確かめにジュース店にやってくる。

イヒョン「いらっしゃい」

イス「昨日は僕のせいですごく驚いたでしょう?」

イヒョン「ちょっと。昨日はここに来て無駄足でしたね」

イス「ええ。そんなことも君がするの?」

イヒョン「そうですよ」

イヒョンがイスの後ろを覗き込んでいる。

イヒョン「今日も一人でいらしたのかと思って」

イス「どうして?一人で来るのが変?」

イヒョン「いや変じゃありませんけど。いつも一人だから。ただちょっと気にかかって」

イス「じゃあ君が僕の友達になってくれればいいんじゃない?」

イヒョン「もう友達じゃないですか」

イス「そうだね、うん。友達は何時に家に帰りますか?」

イヒョン「8時過ぎに。でも、どこか具合が悪いんですか?」

イス「いや」

イヒョン「すごく疲れてるように見えます」

イス「そう?全然疲れてないけど」

イヒョン「それならよかったです。注文お受けしますね。ところで私の携帯番号はどうして知ってるんですか?」

イス「それは、ここの本社に知ってる友達がいるから聞いたんです」

イヒョン「本社にバイト学生の記録も全部入ってるんですか?」

イス「そのようですね」

イヒョン「抗議しなきゃ。承諾なしに個人情報を流出するのは犯罪なのに」

チョ検事室。

ピョン刑事が新聞を持ってくる。

ヘウ「この広告が何か?」

ピョン刑事「出身地がチョ会長と同じだ」

ヘウ「出身地が同じ人間は沢山います」

ピョン刑事「チョン・ヨンボはもう死んでいる」

ヘウ「じゃあ広告の目的が他にあるということですね。広告主は?」

ピョン刑事「“望遠鏡”と同じ手法だ」

(つまりイスと同じ方法だと疑っている)
ヘウ「おじいさんの故郷に行ってみなければ」

ピョン刑事「一緒に行こう。また連絡する」

言って帰ろうとするピョン刑事に何か言いたそうなヘウ。

ヘウ「・・・また今度にします」

オ地検長から受け取った”証拠写真”を見るヘウ。

ジャイアントホテル。

ヨシムラ会長がイスを労う。

ヨシムラ「オープン式の準備で大変だろう。・・・夜、酒でも」

イス「先約がありますので」

暗い倉庫のような場所で椅子に縛られているチョ社長。

カメラで監視されている。

イスの部屋。

テレビにチョ社長の縛られてもがく映像が映っている。

ジュース店前。

キム係長がイヒョンを車で送ろうとするがイヒョンは嫌がる。

キム係長「嫌でも乗ってくださいイヒョンさん」

イヒョンの家の前。

キム係長「早く入って」

イヒョン「とにかくおかげ様でちゃんと帰り着いたから。ありがとう」

キム係長「君、僕のことが好きだろう?」

イヒョン「え?」

キム係長「僕も君のことが好きだ」

イヒョン「何言ってるんですか?」

キム係長「君も僕を好きになってもいいってこと。入って」

車の窓を開けさせて。

イヒョン「私は違いますけど」

キム係長「また明日な」

イヒョン「何よ!」

文句を言いながら笑みを見せるイヒョン。

そのやりとりをこっそり殺し屋(古本屋の主人)が見ている。

養母が出てきてイヒョンを中に入れる。

さりげなくイヒョンの帰り時間を探っておいたイスがキム係長に指示したのだ。

そして本当にイヒョンに心を寄せるキム係長。

チョ社長室。

チョ社長が昼食の約束があると言って出ていったきり帰ってこない。

ジュニョンはヘウに電話する。

病院。

ジュニョンから電話。

ジュニョン「お父さんと連絡が取れない」

ヘウ「ファヨンさんのところかも」

ジュニョン「もう電話してみたが2時ごろ出たそうだ。時々こういうことがあるが悪い予感がする」

時計を見るヘウ。

もう9時35分。

イスのマンション。

イスが車で出かける。

尾行するヘウ。

イスはそれに気づいている。

チラチラ後ろを見ている。

車を運転しながらチョ会長に電話する。

チョ会長書斎/イスの車。

チョ会長の携帯に動画が送られてくる。

ウィソンが椅子に縛られている映像だ。

そしてイスから電話。

イス「贈り物は届きましたか?」

チョ会長「要求は何だ?」

イス「あなたが今までしてきたことを全部国民に告白してください」

チョ会長「何のことだかわからんな」

イス「あなたが偽物だということです。本当のサングクはあなたが殺したから」

イスを尾行しているヘウはピョン刑事に電話してウィソンの携帯の位置情報を調べるよう頼む。

ウィソンはイスとチョ会長の電話でのやり取りを信じられない思いで聞かされている。

イス「断れば息子さんが死にますよ。どうしますか、チョ・サングク会長?」

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