鮫〜愛の黙示録〜 |
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第12話 夜の公園。 イスを呼び出したヘウはキム・ジュンに向かって『イス』と呼びかけもうやめるようにと懇願するがイスは聞き入れようとしない。 ヘウ「私が止めるわ。何があっても私があなたを止めてみせる。必ず」 イス「簡単にはいかないだろう。俺を止めようとするなら地獄まで付いて来なくちゃならないから」 ヘウ「キム・ジュンではないハン・イスをもう一度見つけることさえできるなら地獄の底まででも行けるわ。それにもうあなたも私も地獄の入り口まで来ているわ」 イス「はたしてそうかな?もう始めるだけだ。自信がないのなら今からでも逃げろ」 ヘウ「いいえ!私は自分がしなくてはならないことをするわ。キム・ジュンが願うからではなく私が自分から真実を見つけるわ。それがハン・イスをもう一度見つけ出す道だから」 ヘウが帰っていくとイスはふらふらと歩き出す。 痛む足を引きずりながら。 この12年間のことを思い出すと自然と涙があふれてくる。 しかし父親や自分の事故のことを思いその背後にいるチョ会長への憎しみを思い出すと、生まれ変わったように冷たい表情に戻り再び歩きだす。 チョ家のリビング。 ジュニョンが帰ってくるとチョ社長が一緒に酒を呑もうと誘う。 自分がひき逃げ事故のことで謝罪したことを自慢し『誰だってミスはする。単純な事故だった』と言う。 ジュニョン「お父様のミスで人が死にました」 ジュニョンは弟の事故を思い出して我慢ができなくなり自分の部屋に上がろうとする。 社長「誰のおかげで地検長の息子になったと思ってるんだ!」 チョ社長が声を上げる。 書斎にいたチョ会長が出てきて社長をしかりジュニョンには気にするなとなだめる。 帰宅途中のオ地検長の携帯に音声ファイルが送られてくる。 チョン・マンチョルの証言が聞こえてくる。 『自分は仕方なくオ地検事の頼みを聞いただけ。チョ会長と親しいから地検事が事故を隠した。自分は証拠を隠しただけ。ハン・ヨンマンもハン・イスもチョ会長が殺したんだろう。地検事も知っているかもしれない』 唖然とするオ地検長に今度は電話が。 イス「ひき逃げ事故で死んだ次男に恥ずかしくないのか。真実を明らかにする機会をやろう」 こうした小細工は全てイスが仕組んだものだったから。 チョ家の前。 車の中でイスの言葉を思い出すヘウ。 『私がハン・イスだと証明できればイスになって差しあげましょう』 ヘウは外出する父親(チョ社長)に声をかけるが(証拠の)動画を警察に渡すなんて自分の娘じゃないと言われる。 チョ会長の部屋。 動画のことを謝るヘウ。 誰が動画を送ったか心当たりがないか聞かれるがヘウは『ない』と答える。 突然『ひいおじいさんはどんな方でしたか?』と聞かれて驚きながらもヘウのひいおじいさんの話をするチョ会長。 写真を見せられて『おじいさんはひいおばあさんに似たんですね。家族写真はないんですか』と尋ねるヘウ。 戦争で村ごとみんな燃えてしまったと言われる。 ヘウがなぜこんなことを聞くのかいぶかしく思うチョ会長。 部屋に戻ったヘウ。 最近謝ることが多いヘウに『そんなに謝ってばかりだと何か隠し事でもあるんじゃないかと疑わしくなる。冗談だよ。防犯カメラの映像は見た?』というジュニョン。 ヘウは言葉を濁して部屋を出る。 同じく部屋に戻ったイス。 突然チャン秘書と一緒にドンスが訪ねてくる。 ドンスは買ってきたチキンを広げながら何も知らずにイヒョンの話をする。 話を聞いて心配そうにするイス。 イスは『これからは連絡なしに来ることが無いように』と注意しますがドンスが『フカヒレも一人で食べれば靴下の味がする』とジョークを飛ばすと思わず笑みがこぼれる。 ドンス「代表、笑うとほんとにイケメンですね〜〜」 チャン秘書はパク女史が持ってきてくれたおかずも出してくる。 普段からあまり食事をしようとしない代表(イス)を気遣うチャン秘書の思いがここに現れる。 イヒョンの部屋。 イヒョンはパソコンでチョ社長が被害者に謝罪した記事を見ている。 ピョン刑事は入りかけてそっと出ていこうとするが『お父さん、私、どうしたらいい?』というイヒョン。 『お父さん(実父)の濡れ衣が晴れて喜ぶべきなの?謝ればすむことなの?これじゃお父さんが可哀想。悔しくて私頭がおかしくなりそう』とイヒョンが泣き出す。 養母が慰める。 『今まで我慢してきた分も全部泣きなさい』と。 一人になったイス。 望遠鏡を見ながらイヒョンのことを思う。 古本屋では。 キム・ジュンの写真を見ながらボールペンをカチカチさせる殺し屋。 オ地検長室。 オ地検長がチョ会長に電話で音声ファイルのことを報告する。 オ地検長「具体的なことは無く真実を明らかにしろとだけ。3日というのは3日後に何かをマスコミに流すということでは?会長にもかかわる内容かもしれません」 会長「心配するな。それくらいのことで弱腰になるとは地検長らしくない。君にはもっと上に行ってもらわないといけない。私には君が必要だ、そして君には私が」 チャン秘書の部屋。 チャン秘書はヨシムラ会長から受け取った封筒をもって悩んでいる。 チョ会長に送るように指示された封筒。 中身を確かめようとするがやっぱりやめる。 警察署。 証拠が無いと愚痴をこぼす後輩刑事。 ピョン刑事に国立科学捜査研究院から電話が入る。 ピョン刑事がヘウに確認する。 ピョン刑事「カン・ヒス、ハン・ヨンマンそしてハン・イスもあの"文書"を見たことで殺害された。そしてその文書は君の祖先のチョ・インソクに関することらしいがチョ・インソクはすでに死んでいる。文書に書かれた秘密が明らかになることを恐れる人物はチョ会長だと考えられる。これから明らかになることは君も知ってはいけない秘密のようだが覚悟ができていないならここで手を引け」 ヘウ「みんな私に選択を迫りますね」 ピョン刑事「みんな?みんなとは誰?」 オ刑事が証拠の写真を合成かどうか調べてもらっていた。 写真は父子のようで裏に"サングクとともに"と書いてあったと言う。 研究員「オ刑事が写真をコピーしていたかもしれません」 封筒からコピーされた写真を取り出すオ地検長。 ヘウはキム係長にオ刑事の周辺から"写真"を探すよう指示する。 係長「父子の写真なら普通の写真なのにオ刑事は何を調べようとしていたんでしょう?」 ピョン刑事の携帯が鳴る。 「図書館の防犯カメラの記録が盗まれたという申告があったそうだ」 またイヒョンの働くジュース店にやってきたイス。 イスが店に入ろうとすると中からイヒョンが出てくる。 昼休みで昼食を食べに行くところだった。 一緒に食べようとイスが声をかける。 イヒョン「ここ、高そうですけど」 イス「大丈夫。お金は沢山あるから」 スパゲティが有名な店だというのにイヒョンは『子供のころは好きだったけど今はスパゲティは食べない』と言う。 イスは自分が事故にあう直前の電話でイヒョンがスパゲティを食べていたことを思い出す。 自分のせいで好きだったスパゲティが食べられなくなったイヒョンにスパゲティを食べさせようとする。 イス「ちょっと食べてみて」 イヒョン「私が?これでも多いです。残ったらもったいないでしょう」 イス「残ったら僕が全部食べるから一回試してみて」 イヒョン「本当に大丈夫です。これで十分です」 イス「子供のころ好きだったって、だから」 イヒョン「今は違います。食べません。あ(の〜)」 イス「大丈夫。一回・・・」 泣き出すイヒョン。 イヒョン「私が大丈夫じゃないんです。私が嫌なんです。私が嫌だって言ってるんです。お兄ちゃんすごく痛かっただろうに・・・私そんなことも知らないでスパゲティを食べてました。お兄ちゃんが死んでいくときに私はスパゲティなんか食べてたんですよ。お先に失礼します」 歩き出したイヒョンを追うイス。 イス「勝手なことしてゴメン。僕の考えが足りなかった」 イヒョン「いいえ。私の方こそすみません。今日に限ってどうしてこうなのかわかりません。ビックリしたでしょう? 本当に申し訳ありません」 イス「そんなことないよ。僕が悪かったよ。どこか違うところに行って食事しよう」 イヒョン「いいえ。もう行きます」 イス「お腹が空いたまま仕事じゃ大変だよ。海苔巻き買って公園に行こうか?」 イヒョン「私にどうしてこんなに良くしてくれるんですか?ひょっとして私が好きですか?あの、私もお客さんのこと好きです。でもそんなんじゃないんです」 イス「僕も君のこと好きだけどそんなんじゃないよ」 イヒョン「あぁ・・・」 ちょっと笑うイヒョン。 イス「気分ちょっとよくなった?」 イヒョン「そうみたいです」 イス「じゃあご飯食べに行こう」 イヒョン「また今度。時間が無いから。私のせいでちゃんと食事もできませんでしたね。すみません」 イス「いいよ。行こう。送っていくよ」 イヒョン「いや、すぐそこですから。今日のことは忘れてください。さようなら」 イス「あの・・・」 後ろ髪惹かれる思いで見送るイス。 この二人のやり取りをこっそり見ている古本屋のおじさん(殺し屋)。 チョ会長の書斎。 宅配で届いた封筒を会長が開けてみると”証拠の写真(コピー)”が入っていた。 会長は驚く。 保安室で状況を聞くヘウとピョン刑事。 閲覧室でオ刑事が見ていた本をチェックしてみるとオ刑事が本の中のチョ・インソクの写真を見ていたようだ。 特別な写真ではなさそうなのに犯人はどうしてカメラの記録を削除したのか不思議がるヘウ。 オ刑事を殺した犯人がカメラに映ってしまったからだろうというピョン刑事。 防犯カメラの映像は削除されていたが10日程で回復できるようだ。 ピョン刑事はイヒョンが報道を見てショックを受けているから元気づけてほしいとヘウに頼む。 チョ会長の書斎では。 キム・ジュンがイヒョンに会ったという報告を受けるチョ会長。 会長「まだダメだ。あの子の背後に誰かいるかもしれない」 イスの部屋。 ヨシムラ会長がイスに尋ねる。 ヨシムラ「チョ会長はもうおまえがイスだと気づいているだろう。するとイスを助けたのが私だということも察しが付くがこれからどうするつもりだ?」 イス「会長に迷惑をかけることは無いでしょう」 ヨシムラ「私はチョ会長をよく知っているから私のほうが有利だ。お前がどんな計画をもっているか知らないがチョ会長よりも大きな目標を持っていなければならない」 イス「私は事業のほかは関心ありません」 ヨシムラ「それがお前の長所だ。誰も信じない、私も含めて」 イスの携帯が鳴る。 ヨシムラ「チョ会長だろう」 電話はやはりチョ会長からだった。 黙って部屋を出ていくヨシムラ会長。 イスに会いたいが自分は外に出られないからこっちに来てほしいと言われる。 ちょうどチョ会長が外出中にヘウが帰ってくる。 『秘密がばれて困る人は誰か・・・チョ・サングク会長だ』というピョン刑事の言葉を思い出すヘウ。 ヘウは書斎に必要な本があるからと書斎に入っていくと机の周辺を調べ出す。 鍵がかかった引き出し。 鍵を見つけて開けようとしているとチョ会長が帰ってくる。 ヘウはとっさに手近にあった本を掴んで『この本を一度読んでみようと思って・・・』と誤魔化して出ていく。 ジュニョンのオフィス。 チョ社長の言葉を思い出して悩むジュニョン。 『誰のおかげで地検長の息子になれたと思って!』 チョ社長の言葉を引きずっていた。 キム係長を呼び出して確かめようとする。 ジュニョンがキム係長に尋ねる。 ジュニョン「ひき逃げ事故のことを父は知っていたのですか?」 係長「いいえ」 ジュニョン「嘘が下手ですね。いつから関わっていたのですか?まさか12年前から?」 係長「地検長は何も関係ありません」 ショックを受けたジュニョンは泣きながら車を運転していて事故を起こしそうになる。 イヒョンに会いにきたヘウ。 会いたくなさそうなイヒョンを座らせて言う。 ヘウ「昔、イスが私にこう言ったの。『つまらない人に傷つけられても自分までつまらない人間になることはない』イヒョンも自分を傷つけないと約束してちょうだい」 イヒョン「約束するわ。私はイスの妹よ」 チョ会長に会いにきたイス。 チョ会長は”キム・ジュン”を見ていると”ハン・イス”を思い出すと言う。 会長「この頃やけに会いたくなってね。生きていればの話だが」 そしてイスに忠告する。 会長「人には裏の顔がある。それを見れば恐れも出て自分が倒れてしまうこともある」 イス「私は単純に恩を受ければ恩を返し、そうでない人には受けたものと同じものを返すだけです。それでバランスが取れますから」 会長「人生はもっと複雑だ」 イスが帰ろうとすると最後にもう一つだけとチョ会長がつけ加える。 会長「君が信じている真実が全部ではない。そして君の相手が誰かということを忘れるな」 オ検事長室。 オ地検事は辞表と(写真が入った)封筒を準備して意を決してチョ会長に電話をかけるがジュニョンが入ってきて慌てて電話を切り机の上を片付ける。 ジュニョンは父親のことが理解できないと言い放つ。 自分はひき逃げ事故で死んだ弟のことを考えると今でも眠れなくなるというのに。 ジュニョン「もう誰も信じられなくなりました」 廊下でヘウに会っても『ほっといてくれ。お前とする話はない』と振り切って行ってしまう。 古本屋にきたイス。 イスはチョ会長が以前『ヘウが教えてくれた古本屋だが今では私が常連になった』と言っていたのを思い出し古本屋にやってきた。 いつものように店主はいない。 イスが昔ヘウと来たことを懐かしく思っているとそこにヘウもやってくる。 ヘウ「どうしてここに?」 イス「なんとなく」 ヘウ「そうですか、ではまた」 帰って行ったヘウを追って外に出ると店主が帰ってくる。 ボールペンのカチッカチッという音。 イスは冷たい目で店主を睨みつける。 第13話へ |