鮫〜愛の黙示録〜 |
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第10話 キム・ジュンがイスだと確信したヘウは電話でジュンを呼び出す。 ヘウ「出てきてくださってありがとうございます」 イス「礼を言うのはこちらのほうです。チョ・ヘウさんと会う口実を探すのが容易ではないので。なぜそんなに見るんですか?」 ベンチに座りヘウが持ってきた缶ビールを飲みながら話を続ける。 ヘウ「12年前、大切な友人が交通事故で私のそばを離れました。そんな風に友人がいなくなっていつからか私は笑うことも忘れていたんです。お酒は私にとって恩人みたいな存在なんです。お酒を習ってからは酔えば冗談もいい、笑いもするようになったからです」 イス「その友人の名前がイスなんですね」 ヘウ「そうです。ハン・イス。今は違う名前で呼ばれているかもしれないけど。沖縄へ行った時イスが生きていることがわかりました。昨日イスの写真を沖縄に送って同じ人かどうか確認してもらいました」 イス「同じ人だと言われましたか?」 ヘウ「いいえ、顔が全然違うと言われました」 イス「がっかりしたでしょうね」 ヘウ「沖縄にいたのはイスだったと思います」 イス「どうしてですか?」 ヘウ「だから考えてみました。どうして顔が違ったんだろう?ふたつの可能性が浮かび上がりました。ひとつは写真を確認してくれた人が嘘をついているかもしれないということ。二つ目は・・・」 イス「二つ目は?」 ヘウ「キム・ジュンは本名ですか?」 イス「いえ、ムラカミ・シンジ、韓国名はシンヒョク、それが私の本名です」 ヘウ「そうなんですか」 イス「私にこんな話をする理由は何ですか?」 ヘウ「今日、お宅の前で会った時、代表は何も聞きませんでした。まるで私が来ることをすでに知っていた人のように」 イス「何よりチョ・ヘウさんがそこまでする理由があって来たのだろうし、その理由を知らなければならない必要性が感じられなかっただけです」 ヘウ「人は普通そんな反応は見せません」 イス「全ての人が同じではありません」 ヘウ「正直に話してくれることを期待したんですがお酒も効果ありませんね」 イス「私が何か隠していると思っているんですか?」 ヘウ「さあ」 イス「いい意味で一つ忠告しておきましょうか?誰かを信じていないときには自分が信じていないということさえも相手に悟られないようにしなくてはならないものです。チョ検事が相手をする人たちの大部分は隠していることが多い人たちですから」 ヘウ「代表もその中のひとりですか?分かると思っていました。どんな顔をしていても私だけはイスだとわかるはずだと思ってたのに・・・。分かりませんね。変わったのがイスなのか、それとも私なのか・・・」 イス「大部分の人たちは目に見えることを信じようとします。なのにチョ・ヘウさんは自分が信じていることを見たいようですね」 ヘウ「信じたくない真実を見ようとしているのかもしれません」 イス「信じたくない真実をどうして見ようとしているんですか?」 ヘウ「そうすればイスを見つけることができますから」 イス「その人をなぜそうまでして見つけようとするのですか?」 ヘウ「止めなければならないから。私にはわかります。イスは私が自分を探しに来てくれることを、そして私が自分を止めてくれることを願っているということを。さようなら」 チョン・マンチョルの家で写真を手に入れたオ刑事は写真の"サングク"がチョ・サングク会長のことなのか確認しようとする。 だがどうも顔が違うように見える。 キム係長はヘウからイヒョンの周辺を調べるように依頼される。 バイトが終わったイヒョンは外にいるイスを見つけて『イス兄さんみたいに声が素敵なお客さん』というとイヒョンを迎えに来ていたピョン刑事はその客の後を追おうとするが『あ!俺としたことが!誰かもわからないのに・・・』と引き返す。 ジュニョンは父親のオ地検長のことが心配。 地検長「おまえチョ社長に関する報道が本当かどうか知りたいんだろう。一部は真実だが大部分はただの憶測だ」 ジュニョン「僕はお父さんのことが心配です。お父さんを信じています」 息子の言葉にまともに顔を見せられないオ地検長。 イスはさっきのヘウの言葉が頭から離れない。 そこにチャン秘書が美味しいジュース店を見つけたからとイスにもジュースを買ってやってくる。 マンションの入り口ですれ違ったアナウンサーのイ・ファヨンに気付くチャン秘 書。 チャン秘書「私、TV中毒なんですよ。おやすみなさい」 イス「ジュースありがとう」 ヘウが家に帰るとジュニョンが待っていた。 ジュニョン「携帯にも出ないで何してたんだ」 ヘウ「事務官と夕食を」 嘘をつくヘウ。 ジュニョンは父親と会ったことを話す。 ジュニョン「君が"多くの人が係わってる"と言っていたから心配したけど、正直がモットーの父さんは自分の名前まで出たことで大変な思いをしているみたいだった」 イスの言葉『大部分の人は目に見えることを信じたがる』を思い出すヘウ。 サングクは二人に『真実でないうわさは結局は消える。堂々としていればいい』とねぎらう。 ウィソンがヘウに話があると言ってくる。 ウィソン「おじいさんにはファヨンのことは言わないでくれ。チョン・マンチョルを殺したのは私じゃない。私が他に何の悪いことをしたというんだ」 ヘウ「お父さんは本当に自分が悪くないと思っているんですか?12年前自分が何をしたか考えてください。私はお父さんを絶対許しません」 疲れているヘウを心配するジュニョンに『ちょっと休めば大丈夫』というヘウ。 チョ・ウィソン社長はファヨンと会っているところを写真に撮られてしまう。 イスの顔がどうして変わったのか・・・考えるヘウ。 昔撮ったビデオを見て昔のイスとキム・ジュンの顔を見比べるが答えは見つからない。 捜査資料を見て何かを思いついたヘウは早朝飛び出していく。 行先はキム・ジュン代表(イス)のマンション。 何度も呼び鈴を押そうとするが結局押せず。 イスもヘウが近くにいることを感じて外に出るがヘウはもういなかった。 出勤したヘウはイスの事故現場近辺の病院などを自分で確かめると言うが『それより、問題が発生しました』というキム係長。 昨夜のチョ・ウィソン社長とイ・ファヨンの密会が記事になっている。 チョ・サングク会長は『父親が苦労してで築き上げてきたものを子供のお前が一瞬にして崩してしまった。もう顔も見たくない』と激怒している。 ジュニョンはウィソンにファヨンとのことはきちんと認めたほうがいいと提案する。 ジュニョン「明日の創立記念日にはグランブルーとの合併も発表しなくてはなりません。その前にきちんと・・・」 警察でもピョン刑事が記事を見ている。 チョ社長とイ・ファヨンの関係が明らかになった以上チョン・マンチョル殺害現場から出てきたスマートキーをこのまま隠しておけないという後輩刑事。 そこにジュニョンから捜査に協力したいという電話。 ヘウは部長から『人事異動があるかもしれない。オ地検事にまで影響が及ばないように慎重に行動するように』と通達される。 オ刑事は図書館で独立運動家のチョ・インソクについて調べている。 イスはその様子を見守っていたが一瞬油断した隙にオ刑事が消えてしまう。 ボールペンのカチカチという音。 オ刑事の身を案じたイスは仲間に急いでオ刑事を探すようにと電話する。 オ刑事は電話でピョン刑事と夜会う約束をする。 ピョン刑事「14番ロッカーにあった証拠を見つけたのか?」 オ刑事「はい、写真でした」 詳しい話は会った時にと言って電話を切るとオ刑事は歴史学者の研究室を訪ねていく。 事情聴取を受けるウィソン。 イ・ファヨンとの関係は素直に認めるがチョン・マンチョル元刑事との関係についてはしどろもどろ。 ジュニョンが助け舟を出す。 ジュニョン「殺害事件については根拠のない憶測なのでこちらでも法的措置を講じる予定ですので」 ヘウはオ地検長に会って辞表を預ける。 ヘウ「これ以上捜査ができないのなら自ら辞職します。懲戒委員会の決定が出るまでは検事として自分の仕事をするだけです」 オ刑事は『歴史を正す会』を訪ねる途中だが場所が分からず。 『道に迷ってしまって、お待たせしてすみません』と電話したあとピョン刑事にもメールを送る。 そこにボールペンを持った殺し屋(古本屋のおじさん)が現れる。 イスに電話が入る。 イス「どうなった?いや、私の失敗だ。油断した。すでにチョ会長の手に渡ったかもしれない。そうでないことを願うしかない・・・いや、気が変わった。チョ検事に直接送ってくれ」 オ刑事がチョン・マンチョルのように椅子に縛られている。 殺し屋が尋ねる。 古本屋の主人「他に写真を見たものはいるか?」 オ刑事「私だけだ。その音を止めてくれ。やめてくれ〜!」 ボールペンのカチカチという音。 カヤホテル創立記念日当日。 ピョン刑事は連絡が取れないオ刑事を心配する。 イヒョンは創立記念式典に招待されていておめかしに時間がかかっている。 義母「私も家の片付けをして出かけなきゃいけないのに、早く出て行って。・・・早く帰ってきてね」 イヒョン「は〜い!」 養母/妻の小言から逃げるように出かけるふたり。 イスは創立記念式典に向かう車の中でオ刑事のことが気にかかる。 オ刑事に電話をかけるピョン刑事にオ刑事が殺されたという知らせが入る。 創立記念式典で来賓を迎えていたジュニョンはグランブルーホテルがカヤではなくジャイアントと合併すると発表したことを知らされる。 カヤホテルグループへの裏切りだ。 イス(キム・ジュン ジャイアントホテル代表)に『外で話をしよう』と会場を出る。 イスは電話でオ刑事が殺されたことを知りチョ会長を鋭い目つきで睨む。 その様子を見て何かおかしいと感じるヘウ。 イヒョンが到着して入り口でイスとぶつかる。 "声が素敵なお客さん"だと気づいたイヒョンは何も知らず挨拶をして話しかける。 グランブルーとジャイアントの合併を知ったチョ社長が大声を上げてイスに掴み掛かる。 事業ですからというイスに『事業家なら事業家らしく、チンピラのようなまねはやめろ』と怒鳴るウィソン。 『沢山の人が見ていますよ、独立運動家の子孫らしい振る舞いを・・・』というイス。 『記者が見ています』とジュニョンが止めに入る。 事務所に向かうイスとジュニョンとすれ違ってホテル職員がヘウに届け物を持ってくる。 職員「重要なものなので今すぐ確認してください、とのことです」 封筒にはUSBが入っていた。 事務室でジュニョンがイスに尋ねる。 ジュニョン「我々の合併の話を知っていましたか?」 イス「知っていました」 ジュニョン「キム代表は人に対する義理と信頼よりも事業のほうが重要なようですね」 イス「私は人を信じません」 ジュニョン「人を信じることが無ければ人を失います。人を失えばすべてのことを失うことになります」 イス「私は、これ以上失うものはない人間です」 ヘウは急いでホテルのパソコンを借りてUSBの中身を確認する。 するとその音声が記念式会場に流れ出す。 内容はチョ社長とマンチョルの会話。 ひき逃げ事故をネタにマンチョルがチョ社長を強請る声。 ヘウや関係者が唖然とする一方記念式会場内は騒然とする。 第11話へ |