〜個人の趣向〜 |
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第9話〜私のいい人(マイマン)〜 チャンニョルに家まで送って貰ったケイン。 家の中までついてこようとするチャンニョルを追い返そうと言い争いしている二人。 そこへタイミングよくやってくるヨンソン。 チャンニョルを追い払ってくれる。 一人事務所に戻ったチノ。 デスクの明かりを一つだけ灯し、病院での光景を思い出している。 ケインから着信が。 チノ「はい」 ケイン「何度も電話したのよ」 チノ「何か用?」 ケイン「電話が途中で切れて驚いたでしょ?あの時急に木材が倒れてきてね。病院に運ばれたの」 チノ「それで?」 ケイン「幸い軽い怪我で・・・」 チノ「何よりだ」 ケイン「ひょっとして何かあった?いつもと違うみたいだけど」 チノ「別に何も」 ケイン「帰りは?」 チノ「徹夜で仕事なんだ。もう切るよ」 切ってしまうチノ。 ご飯を食べるケイン。 ヨンソン「何だって?」 ケイン「徹夜で仕事だって」 ヨンソン「冷たくない?友達が怪我したら普通は心配するわよね」 ケイン「してたってば。駆けつけたいけど仕事があるんだって」 ヨンソン「結局、友達より仕事か。本当によく食べるわね。お変わり持ってくる?」 ケイン「ノー。私は生まれ変わったの」 ヨンソン「どういうこと?」 ケイン「これからは男を虜にしてやる」 ヨンソン「チャンニョルとやり直す気?」 ケイン「大丈夫。作戦があるの。このままじゃ気が済まないんだもの」 ヨンソン「作戦って何なの?ちゃんと説明してよ」 一人事務所で仕事をしていると、イニから電話が。 イニ「チノさん、大変なの」 チノ「イニさん?」 イニ「部屋に空き巣が・・・他に連絡出来る人がいなくて・・・どうしたらいい?」 それだけ言って電話を切り、イニは部屋の中を自分でめちゃくちゃにする。 帰っていくヨンソンを見送ったケインは一人取り残された気分になる。 『忙しいからって怪我した友達をほっとくなんて。薄情なやつ』 イニの家に駆けつけたチノ。 部屋の惨状を見てため息をつく。 チノ「大変でしたね。大丈夫でしたか?」 黙ってチノに抱きつくイニ。 イニ「来てくれてありがとう。とても怖かった。帰ってきたら部屋の中が・・・」 チノ「落ち着いて」 部屋を片付けるチノ、二人分のお茶を入れてくるイニ。 イニ「チャンニョルさんにもケインにも連絡出来なくて他にはあなたしかいなかった」 チノ「じゃ僕はこれで」 イニ「お茶を飲んで」 チノ「仕事が残ってるので」 イニ「今夜は泊ってくれない?一人じゃ不安だわ。怖くてたまらない」 チノ「一晩中二人きりでいるのはよくないでしょう」 イニ「あなたは平気なはずよ?ケインと一緒に住んでる。あの子とはよくて私はダメなの?お願い。今夜一晩でいいの」 その頃ケインはベッドでひつじを数えていた。 ケイン『ひつじが588匹・・・』 そしてチノのぬいぐるみに話しかける。 『ねえ。チノさん変じゃない?変よね?そうでしょ?』 仕方なくチノはイニの家のソファで目を閉じる。 今にも透けそうなネグリジェで現れるイニ。 チノに毛布をかけてあげる。 イニ「客間に布団を敷いてあるのに」 水を1杯飲むチノ。 イニ「落ち着かない?私を女として見てる証拠ね」 チノ「帰ります」 イニ「泊まると約束したはずよ」 チノ「もうすぐ朝です」 思うようにいかないイニはむっとした顔でチノを見送る。 そして結局眠れなかったケイン。 こっそりチノの部屋を覗くと、誰もいない。 そしてチノのタンスを順番に開けてみる。 完璧に整列してる下着達。 ケイン『怒られちゃうかな。平気よね。友達だもん』 チノの事務所。 サンジュンが遅れてやってくる。 昨日の晩イニと酒を飲んだ話をするサンジュン。 チノ「何を話した?」 サンジュン「いろいろ話したさ」 チノ「どんな?」 自分の話もしたことを知るチノ。 『昨日と同じ服だな』と話をごまかすサンジュン。 チノ「ああ、まぁ・・・」 サンジュン「どこかに泊まったのか?」 チノ「徹夜で仕事してたんだ」 サンジュン「そうか。サンゴジェについて調べてるか?図面さえあればすぐに解りそうだけど。写真は?」 チノ「撮影禁止だ」 サンジュン「こっそり撮れるだろ。じゃお前がケインさんを連れ出せ。その間に俺が撮る」 チノ「まずいだろ」 サンジュン「弱気になるなよ。コンペで入選するためだ。良心が痛むか?どうせもうすぐオサラバ・・・おい。お前ひょっとして彼女のことを・・・まさかな」 テフン「お客さんだよ」 入ってきたのはケイン。 ケイン「どうも」 サンジュン「朝からどうしました?」 外に出る二人。 ケイン「替えの下着と靴下よ。あなたは毎日替える派でしょ」 チノ「引き出しを開けたのか?」 ケイン「恥ずかしがらなくたって。友達じゃない」 チノ「わざわざ持ってこなくても」 ケイン「『ありがとう』素直にそういえば?」 チノ「どうも」 ケイン「泣ける?」 チノ「え?」 ケイン「怪我しても心配一つしない友達に着替えを届けるこのけなげさ。感動しない?」 チノ「別に」 ケイン「ほら、見て。私死ぬ所だったのよ」 チノ「君は簡単に死なないから大丈夫だ」 ケイン「言ったわね。あんまりだわ。心配でたまらなかったとか言えない?」 チノ「それが何だ?チャンニョルに復讐するんだろ」 ケイン「ちょっと急に話を変えないでよ」 チノ「余計なことを考えるな。忙しいから戻る」 ケイン「仕事のこと以外考えてる暇はないってわけね」 チノ「その通りだ」 ケイン「じゃあね。せいぜい頑張って」 美術館のキッズルームで作った家具にペンキを塗っているケイン。 ケイン『あんな奴だったなんて。がっかりだわ。まったく。友達だったら・・・』 ぶつぶつ言っていたら後ろから館長が。 館長「(口で)トントン」 ケイン「館長!」 館長「怪我でも?」 ケイン「ちょっとしたかすり傷なのでご心配なく」 館長「注意しないと。これは・・・何を作ってるんです?」 ケイン「パーティションです」 館長「パーティション?」 ケイン「積み重ねて壁にするんです」 館長「カラフルで子供が喜びそうだ」 ケイン「色は子供の脳を刺激するの。美術館にふさわしいかと」 館長「なるほど」 ケイン「館長には感謝しています。コンペの件と美術館に残ってくれたこと」 館長「君からの『ファイト』が効いたみたいだ」 ケイン「コーヒーをおごります」 館長「嬉しいな。行こう」 コーヒーを館長に渡すケイン。 館長「おいしいな」 ケイン「タダだから?」 館長「ケインさん、片思いのいいところは?」 ケイン「いいところ?まず安上がり。両想いだとデート代がかかります」 館長「束縛されずに常に自由」 ケイン「いちいち気遣う必要もない」 館長「見つめているだけで幸せになれる」 ケイン「人を傷つけずに済む。自分だけが耐えればいい」 館長「私よりも詳しいようだ」 ケイン「経験豊富ですから」 館長「今も誰かに片思いを?」 ケイン「よく解らないけど、ただほっとけないんです。おせっかいはやめようと努力してるんですけど」 館長「気になるんだね」 ケイン「他のことに集中してその人を頭から追いだします」 館長「やってみよう」 ケイン「館長も片思いを?」 館長「たぶん」 ケイン「私が片思いばかりなのは臆病だからかもしれません。館長の片思いの相手は館長を嫌いなわけではないと思います。公私混同と疑われないためにわざと距離を置いてるのかも。私が知る限り彼はそういう人です」 館長「ネバってみろと?」 ケイン「ネバーギブアップですね」 二人とも笑いだす。 館長「ありがとう、先輩」 ケイン「ファイト!後輩」 また二人で笑う。 美術館にやってきたチノは廊下でイニとばったり会う。 イニ「館長とお約束かしら?」 チノ「はい」 たまたまそれを遠くから見かけるケイン。 やり取りを聞いてしまう。 イニ「身体は大丈夫?明け方まで私の部屋にいて結局ほとんど寝ていないでしょう」 チノ「ご心配なく」 イニ「安心した。今日時間ある?」 何も答えずに頭を下げて立ち去るチノ。 言葉をなくすケイン。 今度はチノまで・・・。 館長に会うチノ。 館長「私の好きな美術館を設計した建築家の資料だ。特別扱いされてるようで気になるかな?」 チノ「はい」 館長「厳しい競争に挑む友人への思いやりだ。受け取ってくれ」 チノ「お心遣いには感謝しますが実力で勝負したいんです」 館長「余計なことをしたね。拒まれると解っていながら君に電話したのは・・・その、ただ・・・退屈で」 チノ「え?」 館長「館長という立場にいると職員は遠慮して気軽に話しかけてこない。除け者みたいなものでね。どうか大目に見て欲しい」 チノ「はい」 館長「たまには話し相手になってくれるかな?」 チノ「出来れば次はもっといい口実を」 館長「嬉しいよ。うまい理由を思いつくといいが・・・こうやって少しずつ解り会っていけるかな?ケインさんに勇気を出すようにと励まされたよ。だから私なりに勇気を出して呼び出した」 さっきのイニの会話を思い出して気落ちしながら通路を歩いていると、いきなり花束を渡されるケイン。 チャンニョルだった。 ケイン「チャンニョルさん」 チャンニョル「花束を贈ったことなかったよな?振り出しに戻ってみたのさ。早く受け取ってくれよ、ほら」 しぶしぶ受け取るケイン。 チャンニョル「照れくさいな」 向こうからイニと歩いてくるチノ。 イニ「ステキ。よかったわね。ずっと夢みてきた瞬間でしょ?友達として祝福するわ。チャンニョルさんもやっと失恋の痛手から立ち直れたみたいね。二人ともお幸せに。(チノに)邪魔者は消えましょう」 イニはチノを、チャンニョルはケインを連れて別方向に歩き出す。 その後、飲み屋でイニとチノ。 イニ「よかったわ、二人がよりを戻して。ケイン、綺麗になったわ。愛されてるからかしら」 どこも見ていないうつろな目のチノ。 さっきの場面を思い出している。 イニ「ここは人気のお店なのよ。気に入った?」 やはり反応がないチノ。 イニ「チノさん?」 チノ「あ・・・はい?」 イニ「ゆうべのお礼をしたいの。うちで飲まない?いいお酒があるのよ」 チノ「遠慮します」 イニ「ちょっと失礼」 そういってバッグから薬を取り出してチノの目の前で飲むイニ。 チノ「具合でも?」 イニ「空き巣の件で精神的に参ってて診察を受けたの。一人で家に帰りたくない。不安で仕方ないの。怖いのよ。もう一晩泊まってくれない?」 イニを部屋まで送ってきたチノは、先に部屋に入り中を調べてあげる。 チノ「どうぞ」 玄関に入るイニだが、いきなり振り向いてチノにキスをする。 チノ「何をするんだ?」 イニを突き返す。 イニ「嫌いなのは女?それとも私?」 チノ「なぜこんなことを?」 イニ「意思表明よ。あなたを私のものにしてみせる。それを伝えたかったの」 チノ「迷惑なんです」 イニ「あなたこそ私の理想の人なのよ」 チノ「見当違いだ」 イニ「いえ、私の選択は間違ってない。絶対にあきらめないわ」 チノ「そういうことなら失礼する」 イニ「あなたと私は同類よ。目的のためには手段を選ばない」 黙って立ち去るチノ。 チャンニョルに送って貰ったケイン。 チャンニョルの父がケインに勝手に合いにきたことを詫びるチャンニョル。 そして父がしたことと自分は関係ないと懇願する。 本気でやり直したいんだとたたみ掛けるが、信じられないとはねつけるケイン。 疲れたからとさっさと車を降りる。 チャンニョルはケインの後ろ姿を目で追いため息をつくが、ふと助手席を見るとあげたはずの花束が置き去りになっていることに気付き更に打ちのめされる。 入れ違いでサンゴジェにやってきたのはサンジュンとテフン。 サンゴジェの秘密をなんとか探らないことには前に進まないのに、チノが動かないからと痺れを切らしたのだ。 写真を撮るだけだと言い張るサンジュンに、バレたら殺されると止めるテフン。 言い争っている二人の車にノックが。 後をつけてきたヘミだ。 とうとうここにチノがいることを知られてしまう。 必死で止める二人。 そこへケインがゴミを持って出てきてしまう。 チノとケインが同じ家で暮らしていることも知られてしまう。 まくしたてるヘミに切れたサンジュンはヘミをテフンに任せて一人でサンゴジェへ向かう。 サンゴジェに入るサンジュン。 サンジュン「チノに大事な資料を預けててね。待たせて貰ってもいい?」 ケイン「ええ、どうぞ。彼の部屋で待ちます?」 サンジュン「あ、ちょっと家の中を見てもいいかな?」 ケイン「え?」 サンジュン「実は・・・こんな家に住むのが夢なんだ。その・・・綺麗な奥さんとかわいい子供とさ」 ケイン「奥さんと子供?」 サンジュン「正確に言うと、おふくろの夢。もちろん男を愛する身では実現出来ないけど」 ケイン「つらいところよね。あなたも悩んでるのにチノさんのことばかり気にしてた。ごめんなさい」 サンジュン「熱いお茶でも飲めば気持ちも落ち着くわ」 ケイン「すぐ入れるから待ってて」 こっそりカメラを取り出すサンジュン。 チノが帰ってくる。 そして男物の靴があることに気付く。 サンジュンのために入れたお茶を持ってきたケインだが、チノと顔を合わせて気まずい。 チノ「誰が・・・」 ケイン「サンジュンさんが・・・」 二人同時に口を開く。 チノ「先輩が?どこに?」 ケイン「ここにいたのに」 家中を探し回るチノ。 写真を撮っているサンジュンを見つける。 チノ「何してる?」 サンジュン「仕事に決まってる」 チノ「よせ」 サンジュン「邪魔するなよ。ここにいる目的は何だ?この家の秘密を探るためじゃないのか?」 チノ「もうどうでもいい」 サンジュン「しっかりしろよ。入選したくないのか?」 チノ「したいさ。そのために人を傷つけたくない」 サンジュン「オーバーだな」 チノ「よく考えろ。どんなにひどいことをしているか」 サンジュン「そんなに彼女が大事か?仕事よりも?」 返答に詰まっているとケインの声が。 慌てて逃げるサンジュン。 ケイン「ここで何を?サンジュンさんは?喧嘩でも?」 チノ「ああ」 ケイン「どうして?」 チノ「君に話がある」 ケイン「話さなくても解るわ」 行こうとするケインの腕を掴んで止めるチノ。 チノ「解ってない。今でなきゃ話せない気がする。僕がここに住んだ理由は・・・」 どこかから猫の声が。 サンジュンが邪魔しているのだ。 『あっちに猫が』とケインを行かせるサンジュン。 サンジュン「絶対に言うなよ」 チノ「先輩」 サンジュン「言うなよ。言ったら舌を噛んで死んでやる」 ケイン「見つからないわ」 サンジュン「きっと家に帰ったのさ」 適当に誤魔化すサンジュン。 ため息をつくチノ。 その頃、チノの自宅では泣きながら帰ってきたヘミが『チノさんが女と同棲してる』とまくしたてていた。 驚く母。 本当のことを突き止めてやると決意してしまうヘミ。 サンゴジェ。 ケイン「忙しそうね。本当の所は解らないけど」 チノ「やったな。花束を貰うとは上出来だ。押し花にでもしろよ」 ケイン「そんな言い方よして。これはリベンジなのよ」 チノ「順調に進んでてよかったという意味だよ。演技とは思えない程喜んでたけど?」 ケイン「チノさんの『ゲームオーバー』の一言で終わるわ」 チノ「これは君の問題だ。決着は自分でつけろ」 部屋でまたため息をつくチノ。 『らしくないぞ。チョン・チノ』 携帯が鳴る。 イニからだ。 出ずに携帯の電池をはずすチノ。 作業場で仕事をしていたケインの携帯が鳴る。 イニからだ。 ケイン「何か用?」 イニ「家なの?」 ケイン「だったら何よ」 イニ「デート中かと思った」 ケイン「用件は?」 イニ「あんたに用はないわ。チノさんは?」 ケイン「帰ってるわ」 イニ「携帯が繋がらないの。代わって。お願い」 チノに携帯を差し出すケイン。 ケイン「イニからよ。急用みたい」 電話を代わる。 チノ「はい」 イニ「ごめんなさい」 チノ「何の用です?」 イニ「私のことを避けてるのね。強引に迫られて迷惑でしょうけど一人が耐えられなくて。あなたの声を聞こうと・・・」 チノ「切ります」 最後まで聞かずに切ってしまうチノ。 チノ「鈍感だな。わざと携帯を切ってるんだ」 ケイン「知らないわよ」 チノ「君はイニさんの使い走りか?電話なんか取り次ぐな」 ケイン「いい迷惑だわ。私を巻き込まないでよ。あなたがイニと一晩過ごそうと・・・」 言ってしまってからバツが悪くなるケイン。 チノ「なぜそれを?」 ケイン「話が聞こえたの。イニから電話が来たらまた取り次ぐわ。コンペの情報をくれるかもしれないしあなたにとって私より大切な存在になるかもしれないじゃない」 ケインを追ってきたチノ。 トンカチを取り上げる。 チノ「怪我するぞ」 ケイン「ほっといて」 チノ「彼女の家に空き巣が入った。連絡が来て家に行ったんだ。わざわざ説明なんて・・・」 ケイン「空き巣と鉢合わせして怪我でも?」 チノ「心配か?まったく君は・・・」 ケイン「そういうことならもっと早く言ってよ」 チノ「いちいち報告しろと?」 ケイン「あなたは女性の部屋に泊まっても何もないって解ってるけど・・・」 チノ「けど?」 ケイン「知った時は胸にズキっときたわ。世界で一番大切な友達までイニに奪われるんだって」 チノ「余計な心配だ」 ケイン「本当?」 ケインの携帯が鳴る。 チャンニョルだ。 ケイン「チャンニョルさん?酔ってる?早く帰って」 チャンニョル「俺があげた花束、車に忘れて行ったな」 ケイン「うっかりしてた」 チャンニョル「俺が初めて贈った花束を忘れて帰っちまうなんてな。昔は俺があげた物を宝物みたいに大事にしてた。変わったよな」 ケイン「切るわよ」 切ってしまうケイン。 チノの部屋の前まで行くが、入らずにやめる。 その夜は二人とも寝付けなかった。 翌日。 ケインは美術館のキーズルームで仕事の電話をしている。 ケイン「怪我はもう治りました」 木材問屋「ところでどっちが恋人なんだい?」 ケイン「え?」 木材問屋「迎えにきた青年かい?それとも電話でどの病院かと聞いてきた人?」 ケイン「誰のことです?」 木材問屋「会わなかったのか?病院に行ったはずだぞ?わしには友達だと言ってたが恋人を心配するような声だった。モテる女はつらいな」 ケインはこの時初めて知る。 チノが飛んできてくれたことを。 チノの事務所。 携帯が鳴る。 チノ「もしもし?」 ケイン「相棒、会えるか?」 桜の木の下で弁当を開けるケイン。 ケイン「一度こういうことしたかったの」 チノ「相手を間違えてる」 ケイン「もう、解ってるくせにまた・・・」 チノ「どうだか」 ケイン「私がせっかく海苔巻きを・・・」 チノ「まさか手作り?」 ケイン「だといいんだけどね。食べて。おいしいと評判の店なの」 チノ「どこのも同じだろ」 ケイン「そう言わずに。はい、アーン」 チノの口に押し込む。 ケイン「最高でしょ?感謝の気持ちがトッピングされてるからよ。病院に来てくれたんだってね。どうして黙って帰っちゃったの?」 チノ「計画の邪魔だろ」 ケイン「よく居場所が解ったわね」 チノ「楊平の木材問屋だろ?電話で調べた」 ケイン「早く言ってくれたら大泣きして喜んだのに」 チノ「別に深い意味はないぞ」 ケイン「期待してたのに。大事な友達だと思われたいってことよ。チノさん、私が男だったら?友達とは別の感情を抱いた?」 チノ「想像出来ない」 ケイン「そうかな」 海苔巻きの海苔を鼻の下につけるケイン。 ケイン「どう?」 思わず吹くチノ。 ケイン「今日1日、男になってみる!決まってるでしょ?」 帽子に髪を全部入れ、ヒゲをつけて二人はプリクラを撮っている。 ケインの顔に思わず笑いだすチノ。 ケイン「よし、撮ろうぜ」 店の前でもめている。 チノ「その格好で出歩くのか?」 ケイン「男装って興味があったの」 チノ「みんな呆れてるぞ?」 チノを叩くケイン。 ケイン「腕力だって男並みよ?試してみる?」 チノ「やめろよ。恥ずかしい」 男装のままゲームセンターで遊ぶケインとチノ。 並木道を並んで歩く。 ケインの天気予報『ずいぶん迷いました。感謝の思いをどう伝えるか。思いを告白したかったけど勇気が出なくて男を演じてみました。彼も同じように思ってくれたらいいのに。このところ明日の空模様が予測不可能な私です』 その頃チャンニョルは探偵からの報告でチノがゲイじゃないことを知りケインに会いに来ていた。 ケインにこのことを教えるために。 帰りの車中で。 ケイン「相棒、酒でも1杯やるか?」 チノ「忙しい身だ」 ケイン「冷たいな。酒を酌み交わしながら腹を割って話すんだ。男同士の話で盛り上がろうじゃないか」 チノ「さっさと取って。ヒゲも」 ケイン「いきなり何よ?」 チノ「うるさい」 ヒゲを無理やり取るチノ。 チノ「痛い?」 ケイン「当たり前でしょ!」 チノ「似合ってないよ」 ケイン「今度生まれ変わったら男になりたい。あなたは男のままでいてね。そしてもう一度巡り合うの」 チノ「今の君がいい」 チャンニョルの電話でサンゴジェに駆けつけたイニ。 そしてケインとチノがここで同棲してることをバラす。 そこへ帰ってくるチノ達。 いきなりチノを殴るチャンニョル。 言い争いを始める4人。 2度チャンニョルに殴られるチノだが、3発目を受ける前に今度はチノがチャンニョルを殴る。 倒れ込んだチャンニョルに駆け寄り「大丈夫?」と尋ねるケイン。 それを悲しい目で見つめるチノ。 第10話へ |