〜個人の趣向〜
第10話〜驚きのゲームオーバー〜

サンゴジェの前で4人。

3発目を殴られる直前に今度はチノがチャンニョルを殴る。

倒れ込んだチャンニョルに駆け寄り『大丈夫?』と労わるケイン。

チノはそれを悲しい目で見つめている。

それでもまくしたてているチャンニョルをイニが止める。

そして必死でチノをかばうイニ。

二人を残して家に入ったチノとケイン。

ケイン「チノさん、チノさんてば。痛くなかった?」

チノ「恋人の心配しろよ」

ケイン「恋人って?」

チノ「奴に駆け寄ってただろ」

ケイン「教えられた通りにやったの。心配するふりも駆け引きのうちよ」

チノ「駆け引き?」

ケイン「殴られて呆然としている時に大丈夫?と優しく駆け寄れば思わずホロっとくるでしょ?きっとうまくいったわ」

チノ「だから演技だったって?」

ケイン「もちろん」

チノ「君に演技が出来るとはとても思えない」

ケイン「本気を出せばアカデミー賞だって取れるわ。ほっぺた痛い?氷で冷やした方がいいわね」

氷を取りに行こうとするケインを腕を掴んで止めるチノ。

ケイン「痛い」

チノ「本当に、出来る?」

ケイン「え?」

チノ「『ゲームオーバー』の合図で復讐を遂げられるか?」

ケイン「ええ。彼に伝えるわ」

腕を離す。

ケイン「そういうあなたは忘れてない?あなたの一番の親友は私だってこと」

チノ「覚えてるよ」

ケイン「イニに取られそうで心配だったけど安心した」

チノ「考えすぎだよ」

ケイン「人の心は変わるものだわ。イニは欲しいものを必ず手に入れる。あの子がこうと決めたら必ずそうしちゃうのよ」

チノ「僕は変わらない。君こそ約束を守れよ」

飲み屋でイニとチャンニョル。

チノがゲイじゃないことをケインに話して何の得があるのかとイニが話している。

イニは自分がチノを欲しいと思っていること、チノがゲイでないことをケインに話したらケインをチノに取られるからとチャンニョルに悪知恵を吹き込んでいる。

洗面所で水を出したまま回想にふけるチノ。

さっきケインがチャンニョルに駆け寄った場面を思い出していた。

チノ『何が演技だ』

キッチンで氷枕を用意して飛んできたケイン。

ケイン「ねえ、これを当てて」

チノ「いいよ」

ケイン「腫れちゃうわよ。ほら」

チノ「痛くも痒くもない」

いきなり門を入ってくるイニが。

ケイン「何しにきたの?」

イニ「さっきはさんざんだったわね。ビールをどうぞ。一緒に飲みたいけどケインは嫌だろうからこれで帰るわ。ケイン、私の代わりに彼を元気づけて。チノさん、また連絡するわ。おやすみ。じゃあね」

氷枕をチノに叩きつけて部屋に戻るケイン。

ケイン『私の代わりにですって?』

携帯が鳴る。

ケイン「どうしたの」

チャンニョル「門の前だ。来てくれ」

ケイン「今日はもう会いたくない」

チャンニョル「来るまで待つ」

電話を切るチャンニョル。

水を飲もうとしてたチノは部屋から出ていくケインを見てため息をつく。

ケイン「なに?」

チャンニョル「チノの奴がゲイだとしても家に置くのは反対だ」

ケイン「口を出さないで。まだあなたを許してない」

チャンニョル「お前がそういうなら我慢する。お前にとっていい友達なら何も言わない。これからはお前の考えを尊重すると決めたんだ。だけど俺を許せる時がきたらチノと一緒に住むのをやめて欲しい。頼む」

ケイン「考えとく」

チャンニョル「そうか。そう言ってくれてよかった。じゃあな」

戻ったケインは置き去りになっているビールを見る。

ケイン「飲めば」

チノの部屋へいき差し出す。

チノ「なぜ僕が?」

ケイン「イニがあなたに買ってきたのよ」

チノ「飲む気はないから捨てろ」

ケイン「私に気を使うことないわ。イニとよろしくやれば?」

チノ「本気か?」

ケイン「どうしようとあなたの自由だもの」

チノ「つまり僕にも口を出すなってことか」

ケイン「誰がそう言った?」

チノ「奴が来たんだろ?どうしようと君の自由だから僕の指導は必要ないな」

ケイン「それは、その・・・次にどうするかいちいち聞くのも何だし・・・」

チノ「じゃ頑張って」

ドアを閉めてしまうチノ。

そのままビールを置いて部屋に戻る。

『結婚式場でイニがチャンニョルさんの隣にいた時より、イニがチノさんと親しく話してることの方がずっと胸が痛んだ』

翌朝、事務所で。

チノは携帯を持ったまま悩んでいる。

『どうかしてたんだ。君に当たって悪かった』

電話をかけようとして、発信ボタンを押せないチノ。

ケインは携帯を持ったまま考えている。

『復讐なんかやめようかな。そのせいであなたと喧嘩しちゃうんだもの』

やっぱり発信ボタンを押せないケイン。

久しぶりに事務所の皆で飲まないか?とサンジュンに誘われるが、今日は帰ると断るチノ。

そしてスーパーで食材の買いだしに来る。

チノ『どうしてここまで・・・』

帰ってきて『ただいま』と声をかけるが返事はない。

『まだかな』

その時、雨が降ってくる。

急に降り出した雨で、ケインは近くにあったバス停に逃げ込む。

しばらく待ってみるがやみそうにないのでベンチに置いていた封筒を掴んで走りだす。

本を置き忘れたまま。

入れ違うようにバス停にやってくるチノ。

バス停のベンチに座り、ケインを待っている。

だがふと隣を見ると本が。

ケインのものだと気づいたチノは後を追う。

本を忘れたことを思い出して振り返るケイン。

ケイン「あ、忘れた!」

チノ「これだろ?」

ケイン「チノさん?」

チノ「天気予報で雨だと言ってただろ?」

ケイン「雨の中を歩くのが好きなの」

チノ「雨に濡れた子犬か?」

ケイン「喧嘩売ってるの?」

チノ「傘くらい持って出ろよ」

ケイン「事務所からの帰り道?車は?」

チノ「家から来た」

ケイン「わざわざ迎えに?」

チノ「喧嘩したままだと気まずいから。仲直りのつもりさ」

ケイン「だったら傘を2本持って来ればいいのに」

濡れたチノの肩の水を払ってあげるケイン。

チノ「くっつけば?」

腕を組むケイン。

そのまま歩く。

ケイン「子供の頃、ママに迎えにきて欲しかったけどやっと叶った。いつもは雨に濡れた子犬なのにね」

チノ「そう言われるのは嫌じゃなかったっけ?」

ケイン「忘れちゃった」

チノ「君らしい」

ケイン「憎たらしい。せっかく仲直りしたのに」

チノ「濡れるよ」

そういってケインの肩を抱くチノ。

二人で一つの傘に入って歩く。

サンゴジェに戻った二人。

小さな箱をチノに渡すケイン。

ケイン「おわびのリンゴよ」

それは木で作ったリンゴを半分に切った形のモチーフ。

手にとって眺めているチノ。

ケイン「イニのことで当たってごめんなさい」

チノ「反省してる?」

ケイン「お互い様でしょ?これでチャラよね?気の利いたプレゼントまで用意したのよ」

チノ「僕は夕飯の材料を買ってきた」

抱きつくケイン。

ケイン「なんて気が利いてるの。あなたって最高!・・・料理もお願い」

チノ「君に任せる」

ケイン「自信ないもん」

笑いあう二人。

リンゴの皮をむいているチノ。

それを見つめるケイン。

ケイン「本当に上手に剥くわよね。料理も掃除も完璧。苦手なことは?」

チノ「ないね」

ケイン「自分で言ってて恥ずかしくならない?」

チノ「事実だから」

ケイン「あなたに欠けてるのはね、謙虚な気持ちよ」

ふっと笑うチノ。

ケイン「明日は日曜ね」

チノ「仕事がたまってる」

ケイン「お花見はどう?」

チノ「気がのらない」

ケイン「いい女になるぞプロジェクトの最終章よ。桜が満開よ。ワクワクしない?」

チノ「どれだけこき使う気だ?」

ケイン「少し?」

翌日、腕を組んで歩く二人。

チノ「いつ『ゲームオーバー』にする?」

ケイン「プロポーズの言葉が出た時?『結婚してくれ』と渡された指輪を地面にたたきつけてやる。それとも結婚式をすっぽかす?そうだ。式の最中にあなたが私を連れ去るのは?いい考えでしょ?」

チノ「どうして僕が?」

ケイン「そうね。そこまでさせられないか」

チノ「解った。やるよ。その時がきたら恋人役をしてやるよ。友達だろ?」

ケイン「式の当日にこうやって手を握って一緒に逃げるのよ。約束ね」

チノ「解ってるよ」

サンゴジェの門から出てくる母とヘミとテフン。

手を繋いで歩く二人を見てしまう。

母「チノ!信じられない」

倒れ込んでしまう母。

母をチノのベッドに運ぶ。

仕事のために部屋を借りたと思っていたのにこんなこととは・・・と母に言われるチノとケイン。

『あんたのせいよ!』とヘミに罵倒される。

そしてヘミはあろうことかチノに『私はあなたの婚約者よ!』と叫んでしまう。

ケイン「婚約者?だって、その・・・チノさんは・・・」

部屋を出て二人で話すチノとケイン。

ケイン「この際本当のことを打ち明けたら?」

チノ「何を?」

ケイン「あの子が可愛そうよ。あなたと結婚出来ると信じてる。お母さんを気遣って言えなかったんだろうけどもう限界よ。きちんと話せば解ってくれる」

チノ「バカを言うな」

ケイン「チノさん、親子の絆は深いんだから。例え初めはショックでも理解してくれるわ」

チノ「ゲイだと告白しろと?」

ケイン「うん」

チノ「正気か?」

その会話をドアの外で聞いていた母、ヘミ、テフン。

一様に驚いている。

そしてまた母が倒れる。

チノ「母さん、僕の彼女だ」

誤解を解くためにケインを引き寄せて肩を抱く。

チノ「結婚したい。(ケインに)自己紹介して、早く」

ケイン「その・・・パク・ケインです」

チノを愛してるのか?と母に聞かれ、困った顔でチノを見上げるケイン。

仕方ないので『はい、とっても』と答える。

その夜、一人考えるケイン。

『僕の彼女だ。結婚したい』

ケイン『あんな大ウソついちゃうなんて!しかも親の前でよ。この後どうする気なの?』

そこへヨンソンが。

ヨンソン「何をぶつぶつ言ってるの?どう考えても今のままじゃよくないわ」

ケイン「何が?」

ヨンソン「あんたとチノさんよ。恋人同士にしか見えない」

ケイン「恋人になるわけないでしょ?」

ヨンソン「そうね」

ケイン「彼は友達であり師匠なの」

ヨンソン「チャンニョルに復讐するための特訓ですって?」

ケイン「それで今必死なんだから」

ヨンソン「どうだか。チノさんと一緒にいるための口実じゃない?私にはそう見える。図星か。ケイン、目を覚まして。彼はゲイよ。好きになっても仕方ない人なの」

ケイン「解ってる」

ヨンソン「これっぽっちも望みはないのよ」

ケイン「事態はより深刻なの」

ヨンソン「どういうこと?」

ケイン「彼が結婚したいって」

一方、ヘミを追いかけてきたチノ。

海に飛び込んでやると泣き叫んでいるヘミを必死に止めるテフン。

『お前とは結婚できない、テフンの気持ちを解ってやれ』とヘミに言うチノ。

泣くヘミを置いて行ってしまう。

サンゴジェ。

ヨンソン「腹が立たない?チノさんに利用されたのよ」

ケイン「お母さん思いなのよ」

ヨンソン「どうするの?本当に結婚でもする気?」

ケイン「本当に、しちゃだめかな」

ヨンソン「ちょっと、それ本気?」

ケイン「チノさん、きっと一生お母さんには言えないと思う。だったらそれに協力してあげたい。そうしたらダメかな」

ヨンソン「バカなこと言わないで。解ってる?一生女として愛されないのよ?」

ケイン「一生友達じゃダメ?」

ヨンソン「ケイン・・・結婚は友達同士でするものじゃないわ」

ケイン「チノさんはお母さんの前では理想の息子でいたいのよ。友達として出来ることがあれば何でもしてやりたい」

ヨンソン「やっぱり本気で好きなのね?そこまでして一緒にいたいの?どうかしてるわよ。部屋を貸すことを勧めなきゃよかった。私のせいだわ」

ヨンソンを帰したあと、一人たたずむケイン。

チノが帰ってくる。

ケイン「おかえり。お母さん大丈夫?あなたはお母さん似なのね。とても綺麗な方だわ」

チノ「巻き込んでごめん。ついあんな・・・」

ケイン「解ってる。お母さんのことをどれだけ思ってるか」

チノ「そのうち落ち着いたら・・・」

ケイン「チノさん、考えたの。もしもの話よ。もしかしたら打ち明ける勇気が出ないかもしれないでしょ?そしていつかお母さんを喜ばすために女性と結婚する必要があれば私に言って。形だけでも私と結婚すれば誰もあなたをゲイだとは疑わないわ。好きなように生きていける」

耐えられず立ち上がるチノ。

チノ「ふざけるなよ!君の人生はどうなる?結婚は愛する人とするものだ!」

ケイン「あなたは愛する人と結婚できないのよ。女として愛されなくてもあなたとなら一生を共に出来るわ」

チノ「救いようのないバカだ。ゲイと結婚するだって?」

ケイン「こんなバカな私をあなたは一番の親友だと言ってくれたじゃない。あなたのためなら何だって出来るわ」

チノ「もう、うんざりだ。友達ごっこは終わりだ」

涙があふれるケイン。

暗い部屋に戻ったチノは電気もつけずに顔を覆う。

そして涙を必死にこらえる。

チノ『女として見てくれと、なぜ言えない?』

部屋に戻ったケインはチノのぬいぐるみに話しかける。

ケイン『どうしよう。友達でさえいられない』

翌日。

今のケインをなんとかしようと思い立ったヨンソンは館長のもとに訪れる。

『ケインに仕事をくれたお礼がしたい』と言い訳をこじつけてサンゴジェに館長を食事に招待する。

一方ケインはチャンニョルから電話でデートに誘われる。

気分が乗らないと断るケイン。

『また今度ね』と一方的に切ってしまうケイン。

チャンニョルの父ハン会長はケインの父教授に電話している。

息子とケインさんの結婚の相談をしたいと勝手に。

そして近々教授が帰国することを知る。

コンペの期日は迫っている。

なんとかせねばと焦るハン会長。

ケインのいるキッズルームを訪れたチャンニョル。

ケイン「電話で断ったはずよ」

チャンニョル「実は話があってさ」

ケイン「今日は困るわ。これを仕上げないと」

今はあなたよりチノさんの存在の方が大事だとチャンニョルに言い放つケイン。

やり直す気にはなれないと。

肩を落として歩くチャンニョルは通路でイニに会う。

そしてイニに『チノを絶対にものにしろ』と言うチャンニョル。

『チノさんを落とす自信があるわ』と言い放つイニ。

なんとしてもケインを取り戻すと誓うチャンニョル。

事務所で打ち合わせをしてるチノにヨンソンから電話が。

『夕食をごちそうしたいから早く帰ってきて欲しい』と言われるチノ。

ヨンソンは何かをたくらんでいる。

チャンニョルに呼び出されるチノ。

チノ「いったい僕に何の用だ?」

チャンニョル「俺はケインを待たせてばかりだった。約束の場所に先に来るのはいつもあいつでそれを当然に思ってた」

チノ「なぜそんな話を?」

チャンニョル「怒りもせず俺を待ち続けるケインを内心見下してないがしろにしてた」

チノ「ちっ。お前らしい」

チャンニョル「でも今は解る。待つ側の気持ちがだ。俺を許してくれないあいつを見て待つってこういうことかとね」

チノ「僕に話す理由は何だ?」

チャンニョル「ゲイじゃないんだろ?どうも信用出来なくてな。調べさせた。本当のことをケインに話そうかと思ったが出来なかった。お前のためじゃなくケインのためだ。言われたよ、今は俺よりお前が大事だと。それほど信じてる奴に騙されてたと知ればあいつがショックを受ける。二度とあいつを泣かせたくない。よく聞け。あの家を出ろ。友達のままケインの元を去るんだ。俺が何を言いたいか解ってるよな」

サンゴジェでは。

ヨンソンがごちそうを準備している。

ケイン「なんで4人分なの?」

ヨンソン「全て私に任せて。あんたは黙ってて」

ケイン「すごいごちそう」

呼び鈴が。

館長がやってくる。

驚くケイン。

ヨンソンから何も聞かされていないケイン。

そしてチノも帰ってくる。

館長がいることに驚くチノ。

テーブルにつく4人。

気まずい空気。

ヨンソンの掛け声で乾杯はするが、そこへヨンソンに電話が。

息子がいなくなったと。

席を立つための裏工作だ。

息子を探すからと急いで帰るヨンソン。

ヨンソンを送りに行くケイン。

館長とチノ、二人残される。

門の外までヨンソンを送りにきたケインは、ヨンソンから息子の件は嘘だと聞かされる。

そして館長とチノがこれでうまくいけば諦めもつくでしょ?と。

二人残されたチノ達はやっぱり気まずい空気のまま。

先に失礼すると席を立つ館長。

館長を見送った後、怒り心頭でケインを待つチノ。

そしてケインが帰ってくる。

ケイン「その・・・ヨンソンの息子は友達の家にいたわ。よかった」

チノ「僕と結婚も出来ると言ったものの急に人生が惜しくなったか?」

ケイン「チノさん」

チノ「僕に館長を押し付ける気だろ?」

ケイン「考えてもないわ」

チノ「よかったよ。君がただのバカじゃなくて」

ケイン「なぜそんなことを言うの?」

チノ「週末、荷物を運ぶ」

ケイン「え?」

チノ「保証金は後日返してくれ。出ていく」

ケイン「え?今すぐ?本気?」

チノ「ああ」

出ていってしまったチノ。

ケインの天気予報『心地よい春風が運んできた友達が出て行ってしまった。もうすぐ来る夏の間も冬の寒さを感じそうで肩がすくむ思いだ』

涙がこぼれる。

翌日、チノの事務所。

昨日から食事もとらずに事務所にこもりっきりのチノを心配するサンジュン。

窓を見つめながらチャンニョルに言われた言葉を思い出している。

『それほど信じてる奴に騙されてたと知ればあいつがショックを受ける。あの家を出ろ。友達のままケインの元を去るんだ』

チノ『満足か?友達でさえいられなくなった』

そこへ訪ねてくるイニ。

イニ「何かあった?」

チノ「何の用です?」

イニ「館長がミュージカルの招待券をくれたの。一緒に行ってくれる?」

チノ「断る」

イニ「ケインも券を貰ってたわ。チャンニョルさん、ケインに会いに毎日美術館に来てるわ。今日も出てくるのを待ち伏せしてた」

チノ「僕には関係ない」

イニ「提案だけどあの二人がよりを戻せるように力を貸してあげない?私達が親しくしてる所を見ればケインはあなたを忘れて彼の気持ちを受け入れるわ」

ミュージカルに来たケインとチャンニョル。

開始時間を待っていると、そこへチノとイニもやってくる。

4人は並んでミュージカルを見ているが、隣で耳打ちで話しているチノとイニが気になって仕方ないケイン。

イニはチノの手に自分の手を添えている。

いたたまれなくなったケインは途中で抜け出す。

チャンニョルも後を追う。

たまらずチノも後を追いかける。

チャンニョル「ケイン、どうしたんだ?慌ててどこへ行く?」

ケイン「もうやめる」

そのやり取りをチノとイニが立ち止まって見ている。

チャンニョル「何を?」

ケイン「あなたへの復讐よ。私と同じ思いをさせてやりたかった。でも、もうダメ。出来ない」

チャンニョル「ケイン、お前の気持ちは解ってる。これから二人でいい関係を築いていこう」

ケイン「いいえ。あなたとじゃ無理」

チャンニョル「ケイン・・・」

ケイン「解らないでしょ?私が・・・私の心が・・・本当は誰を求めているのか・・・」

そこまで聞いたチノはケインに向かって歩き出す。

そしていきなりケインの腕を掴む。

驚くケイン。

チノ「ゲームオーバーだ」

チノはケインを抱き寄せて長く激しいキスをする。

あっけにとられて見るチャンニョル、イニ。

驚きのあまり身動き一つ取れないケイン。

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