〜個人の趣向〜 |
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第11話〜未来予報は今日から快晴? ケイン「私と同じ思いをさせてやりたかった。でも、もうダメ。出来ない」 チャンニョル「ケイン、お前の気持ちは解ってる。これから二人でいい関係を築いていこう」 ケイン「いいえ。あなたとじゃ無理」 チャンニョル「ケイン・・・」 ケイン「解らないでしょ?私が・・・私の心が・・・本当は誰を求めているのか・・・」 そこまで聞いたチノはケインに向かって歩き出す。 そしていきなりケインの腕を掴む。 驚くケイン。 チノ「ゲームオーバーだ」 チノはケインを抱き寄せて長く激しいキスをする。 あっけにとられて見るチャンニョル、イニ。 驚きのあまり身動き一つ取れないケイン。 我に返ったチャンニョルは二人を引きはがす。 チャンニョル「(チノに)おい、お前何の真似だ。消えろと言ったろ?」 チノ「そのつもりだったが、やめた」 チャンニョル「何だと?」 チノ「僕は男として彼女に交際を申し込む」 チャンニョル「お前・・・」 ケイン「チノさん・・・今の言葉は?男としてってどういう意味?」 チノ「ケインさん、僕はゲイじゃない」 ケイン「じゃ・・・」 チノ「すまない。言えずにいた。こんな僕を許してくれるか?」 涙があふれるケイン。 その場で泣き出す。 大粒の涙をこぼしながらケインはチノの胸を何度も叩く。 チノはそんなケインを思いきり抱きしめる。 そしてケインの手をとって会場を後にする。 飲み屋でチャンニョルとイニ。 チャンニョルは荒れてかなり酒が入っている。 イニ「諦めるの?」 チャンニョル「仕方ない」 イニ「ケインに泣きつくのよ」 チャンニョル「無駄さ。見ただろ?本当のことを知った時のケインの顔を。あの表情が物語ってる。俺に望みはないってことさ」 イニ「情けない人ね。そんなに好きなら奪い取りなさいよ」 チャンニョル「嫌だね」 イニ「なぜ?」 チャンニョル「なぜなのか聞きたいか?愛してるからさ。俺よりもチノの方がケインを幸せに出来るのなら・・・」 イニ「笑わせないで。潔く引き下がるのが愛だというの?ただの錯覚よ。弱い自分を正当化したいだけだわ。好きなだけ飲んでれば?後は私一人でなんとかするわ」 立ち上がろうとするイニを止めるチャンニョル。 チャンニョル「もうよせ。自分が惨めになるだけだ!」 イニ「私にとって愛とは欲しいものを独占することよ」 その夜、公園のベンチに座るケインとチノ。 チノ「黙ってて悪かった」 ケイン「どうしてゲイだなんて嘘を?」 チノ「始めはあえて誤解をとくことはないと思った。そのうち状況が複雑になって言いだせなくなった」 ケイン「今になって打ち明けた理由は?」 チノ「本当のことを知らせたかった。僕はゲイじゃない、女性に恋をする男だと」 ケインの手を握る。 チノ「ごめん」 ケイン「帰る」 そういってチノを振り切って立ち上がるケイン。 チノ「ケインさん!」 ケイン「離して!」 チノ「嫌だ」 ケイン「私がどれだけ悩んだか解る?あなたを好きだなんて、なんてバカなんだと自分を責めてきたのに」 チノ「不安だったんだ。チャンニョルに未練があるんじゃないかって」 ケイン「本当にバカみたい。あなたとずっと一緒にいられるなら女としての幸せなんか捨てたっていいとさえ思っていたのよ。どうかしてる。毎日いろいろ考えてものすごく大変だったんだから」 チノ「ごめんよ。許してくれ」 帰りの車中。 ケインは助手席でずっと外を向いたまま一言も話さない。 チノはケインの横顔をチラチラと不安そうな目で見ている。 ケインの天気予報『一生友達でもいいと覚悟してたのに突然男として好きだと打ち明けられた。ときめきで胸が高鳴るけど今まで涙を流した分今日は彼を許したくない。でも明日からはどんな悪天候も恐れずにいられそうだ』 サンゴジェに着く。 門の前で立ち止まるケイン。 ケイン「帰って。今日は顔をみたくない。じゃあ」 後を追うチノ。 チノ「君の気持ちはよく解る。許せないのも当然だけど、どうしたらいいか解らなくて僕もずっと悩んでた。こんな気持ちは初めてで戸惑ってたんだ」 ケイン「嘘ばっかり。恋したことはあるはずよ。この前会ったユン・ウンスさん」 チノ「気になるのか?全部話すよ。ウンスとは・・・」 いきなり門が開き酔っぱらったヘミが入ってくる。 ヘミ「チノさん!」 テフン「ヘミ、よせよ」 ヘミ「私じゃダメ?」 チノ「テフン、送ってやれ」 ヘミ「私じゃダメなの?あの人(ケイン)より若くて綺麗よ。あなたへの思いも負けない」 チノ「ヘミ・・・」 ケインは呆れて行ってしまう。 チノ「ケインさん待って・・・」 ヘミ「なんであの人なのよ!」 チノ「僕には彼女しか見えない、解ったか?」 その言葉を聞いて立ち止まるケインだがそのまま行ってしまう。 暗い部屋で一人ケインは立ち止まる。 ケイン『あんな言葉にごまかされるもんですか』 自宅に戻ったヘミは熱を出しチノの母に介抱されている。 母「寝たわ。よっぽどあなたが好きなのね」 チノ「ダダをこねてるのさ。テフンの優しさに気付けば僕のことなんかすぐに忘れるよ」 その頃ケインは一人縁側でイライラしていた。 ケイン『戻らないつもりね』 チノの家。 チノ「じゃあ」 母「あの家に戻るの?結婚する仲でも同棲は感心しないわ」 チノ「その、実は・・・仕事上のパートナーでもあるから一緒にいた方が都合がいいんだ」 母「彼女も建築家?」 チノ「いや、家具デザイナーさ。今度の仕事では家具も作るんだ」 母「それでも同棲なんて・・・」 チノ「ヘミと距離を置くためにもここにいない方が・・・行くよ」 サンゴジェ。 ケインはチノのぬいぐるみを天井からぶら下げて睨みつけている。 そしてチノJrを殴るケイン。 ケイン『こらチノ。白状しなさい。どんな甘い言葉で女の子を夢中にさせたわけ?この女たらしめ」 チノ「いったい何してるんだ?」 チノJrを殴っている所を見つかって焦るケイン。 チノ「こいつがチノ?スッキリした?僕を殴れよ。好きなだけ殴ればいい」 チノはケインの手を掴んで自分を殴らせる。 ケイン「やめてよ。もういい。ヘミさんとの仲は?ただの友達が婚約者だなんて言うはずない」 チノ「7歳の頃から言ってた」 ケイン「そんなに前から?わあ、天性のプレイボーイね」 チノ「やきもち?」 ケイン「ち・・・違うわよ」 チノ「図星だな?」 ケイン「違うってば。あなたってどういう人?クールで真面目そうに見えて実はすごく冷たい人なんじゃない?その気がないなら断るのが相手への思いやりよ」 チノ「当たり。僕は冷たい男だ。他人を気遣う余裕なんかなかった。それで君のことも傷つけた」 ケイン「ユン・ウンスさんとのことは?」 チノ「引き留めるなら留学はしないと言われた。でも、止めなかった」 ケイン「どうして?今までで一番心惹かれた人なんでしょ?」 チノ「僕の人生において大切な人なのか確信が持てなかった」 ケイン「じゃ、私はあなたにとってどんな存在?」 チノ「何があろうと失いたくない人だ」 真剣な目で見つめるチノに戸惑うケイン。 ケイン「その・・・ラーメンでも食べない?作るから」 行こうとするケインを引き寄せて抱きしめるチノ。 チノ「照れると食べ物の話を始める君が、大好きだ」 翌朝のサンゴジェ。 ヨンソン「え?」 ケイン「チノさん、ゲイじゃない」 ヨンソン「はい?」 ケイン「女である私が好きだって」 ヨンソン「気は確か?館長やサンジュンさんのことは?そんなにつらい?妄想の世界に逃げ込む程?」 ケイン「私も最初は夢かと思ったわ。でも全部誤解だったのよ」 ヨンソン「しっかりしてよ。プロポーズの件は?母親を安心させるためのカムフラージュでしょ」 ケイン「私達ね、チャンニョルさんとイニの前で・・・キスしちゃった。『僕は男として交際を申し込む』そう言って私の腕をバッと掴んだの。心臓がドキドキ足はガクガクで・・・」 ヨンソン「それ本当?本当に?」 笑うケイン。 ヨンソン「冗談だったら殺すわよ」 ケイン「冗談じゃないってば」 手を叩いて喜ぶヨンソン。 そして一芝居打たれたサンジュンに怒りを燃やすヨンソン。 ヨンソンはその足でサンジュンを喫茶店に呼び出す。 ゲイじゃないことがバレたことを知るサンジュン。 更に、ケインとチノが出来ちゃったことを知り驚く。 慌てて事務所に戻ったサンジュン。 サンジュン「おい、チノ!」 チノ「どうした?」 サンジュン「お前・・・ケインさんと・・・」 チノ「耳が早いな」 サンジュン「くっついたって本当か?」 チノ「うん、まあな」 ニヤっと笑うチノ。 サンジュン「館長のことはどうする?お前に心底ホレてるんだぞ?」 チノ「話すつもりだ」 サンジュン「おい、冗談じゃないぞ。館長が逆上してコンペに出られなくなるかもしれないぞ」 チノ「仕方ない」 サンジュン「そんなに彼女が好きか?」 チノ「うん」 またニヤっと笑うチノ。 美術館。 ケインは館長から済州(チェジュ)島行きのチケットを渡される。 館長「テーマパークを見学すれば仕事に役立つかと」 ケイン「はい」 館長「チノさんも済州島でのセミナーに出るので今度こそよろしく」 ケイン「はい?」 館長「あの食事への招待はあからさますぎて焦ってしまったよ。次は自然な感じでお願いしたい」 真実を知ってしまったケインは気まずくなり言葉に詰まる。 館長「片思いの先輩に頼りすぎかな?」 ケイン「その・・・館長。チノさんのことですが・・・」 イニが館長を呼びにくる。 複雑な思いで館長を見送るケイン。 今更『ゲイではなかった』とは言えない。 ケイン『どうしよう・・・』 その頃チノの事務所。 サンジュンはまた同じことを蒸し返している。 ケインと結婚すればパク教授と義理の親子になれる、サンゴジェの秘密が解ると。 美術館を訪れたチノはばったりイニと出会う。 イニ「思いが叶ってよかったわね。素敵だった」 チノ「それは何よりです」 イニ「勇気があるのね。館長という後ろ盾を失ってもあの子を選ぶの?」 チノ「ええ。館長に会うので」 イニ「あなたらしいわ。事実を話に来たんでしょうけどあいにく出張中よ」 チノ「では日を改めます」 封筒を渡すイニ。 イニ「済州島でのセミナーの招待券よ。タム芸術院の審査員も出席するわ。館長からあなたに渡すように頼まれたの。済州島は館長の大好きな場所なのにあなたの衝撃告白で嫌いな場所になるかもね」 チノ「じゃあ」 イニ「なぜケインなの?私を選ぶ方がメリットが大きいわ。館長の信頼が厚いし審査員にも顔が利く。コンペで入選したいでしょ?」 ふっと笑うチノ。 チノ「僕が求めてるのは人生のパートナーです」 イニ「あの子がパートナーになれるかしら?」 チノ「まだ解りませんか?昨日見たでしょう。君の出る幕はない」 イニ「一度決心したことを簡単に覆せると思う?」 チノ「自分を大事にするべきだ」 悔しいイニ。 キッズルームで仕事に励むケインを訪ねてきたチノ。 チノ「傑作だな。デートでもする?」 ケイン「まあ、どうしてもと言うなら・・・」 チノ「そうきたか」 ケイン「待ってて。今日はゆっくりウンスさんのことを聞きたいわ」 チノ「ああ、仕事があるのを忘れてた」 ケイン「へへ・・・あなたの弱点を見つけたわよ」 チノ「戻らないと」 ケイン「逃がすもんか」 その時母から電話が入るチノ。 喫茶店でチノの母を待つチノとケイン。 緊張で顔を気にするケインを見て笑うチノ。 チノ「大丈夫だよ。怖くないから」 ケイン「緊張しちゃう。私って落ち着きがないから気に入って貰えないかもしれないわ」 チノ「そうだね」 睨むケイン。 チノ「僕が選んだ人なら母も気に入るさ」 ケイン「そう?」 チノ「うん。娘のように思ってくれる」 母がやってくる。 母「ケインさんだったわね?この前はロクに話もしないでごめんなさい」 ケイン「こちらこそご挨拶に伺うべきなのに・・・」 母「チノを信じてるわ。きっと非の打ちどころがない人なのね」 ケイン「欠点だらけなのに・・・」 チノ「(ケインに)堂々というな。(母に)正直なんだ」 母「よっぽど好きなのね。そうやって優しくフォローするなんて」 チノ「少しは点数を上げとかないと」 母「息子が選んだ人だもの。反対はしないわ。でも気がかりなの」 ケイン「え?」 母「共同でやってる仕事、その作業のために同居してるそうね」 ケイン「共同の仕事?」 慌てて口をはさむチノ。 チノ「二人で進めてる芸術院のプロジェクトさ」 ケインにウィンクして『話を合わせろ』と合図を送るチノ。 チノ「建物の設計や家具の製作のやり取りで一晩中追われてるだろ?」 ケイン「あぁ・・・そのことね」 母「そのために一緒に住むのが都合がいいのは解っているのよ。だけどね、一つだけ約束して欲しいの」 ケイン「はい?」 母「デキちゃった結婚だけは避けて欲しいわ」 思わずむせるケイン。 サンゴジェに戻った二人。 後ろを歩いていたチノは突然立ち止まったケインに驚く。 チノ「びっくりしたな」 ケイン「家に帰って」 チノ「え?」 ケイン「嘘をついてまでここに住むの?デキ(ちゃった結婚)・・・変に誤解されるわ!」 チノ「心配するな。何もしないって約束するよ」 ケイン「いくらそう言ってもお母さんは心配するわ」 チノ「帰って欲しい?」 ケイン「帰って」 チノ「ずいぶん冷たいな。い・・・いいのか?」 ケイン「当然でしょ」 部屋の着替えをカバンに詰めているチノ。 それを眺めてるケイン。 ケイン「何か手伝おうか?」 チノ「結構です」 ケイン「わざとゆっくりしてない?」 チノ「そう見えるだけだ」 ケイン「ここにいたい?」 チノ「とんでもない。君に煩わされずに済む」 ケイン「これからデートは週に1度にしない?キッズルームの仕事で忙しいのよ。週に1度も無理かもしれない」 チノ「へえ、そう。僕も忙しいからちょうどいい。月に1度にしよう」 うんうんと頷くケイン。 ケイン「いいわ、賛成。じゃ荷造りしたら早く出ていってね」 チノ『こんなはずじゃ・・・』 車に乗り込んだチノ。 チノ『解ってないな。戻ったら自由の身じゃなくなるのに』 作業場で。 ケイン『デキちゃった結婚?あんなこと言われて一緒に住める?』 チノは車を発進せずに門の前でグズグズ言い訳を考えている。 『おなかが痛い・・・トイレを貸してくれ!』「ただのバカだな」 『戸締りしたか?確かめにきた』「ウソっぽい」 『ガス欠なのに持ち合わせがない』 『僕宛の郵便物が届いてない?』 諦めたチノは事務所にやってくる。 チノ『今日は疲れたな』 さっきのことを思い出している。 ケイン「何の用?」 チノ「パソコンを忘れた」 ケイン「早く帰ってよ」 チノ「帰る準備をしてるんだ」 チノの部屋の前で足を痛がるケイン。 慌ててドアを開けるチノ。 チノ「どうした?」 足を見てあげるとケインが笑いだす。 チノ「嘘か?」 ケイン「違うわ!」 二人の顔が数センチの所にあり動揺する。 暗い事務所の中でニヤニヤしてるチノ。 チノ『さあ、仕事だ』 翌日。 イニは秘書室長と会っている。 会長がパク教授に依頼を断られなければコンペは必要なかったのにと言われる。 イニがなぜか?と問うと、芸術院にサンゴジェの様式をどうしても起用したかったのだと知る。 何かをひらめくイニ。 ケインはキッズルームで仕事に励んでいると、ヘミが訪ねてくる。 ヘミ「彼と結婚するの?さっさと答えて。空港へ行く途中なの」 ケイン「外国へ?」 ヘミ「チノさんが他の人と結婚するところを見たくない。カナダの両親と離れても傍にいたかったのに」 ケイン「ごめんね。そんなに好きだったのね」 ヘミ「彼を思う気持ちはあなたなんかに負けない」 ケイン「あなたよりも彼を思ってるかどうかは解らない」 ヘミ「ほら、見なさい」 ケイン「でもね、彼がゲイでないことを証明するためにお母さんの前で結婚を宣言した時とっさにこう思ったの。彼がゲイだとしても一緒になりたい。ずっとそばにいられるなら・・・」 ヘミ「何よ、もういい」 それを聞いたヘミは返す言葉もなく立ち去っていく。 その後、喫茶店にいるヘミとイニ。 ケインという女は、今チノとチャンニョルの二股をかけていると吹き込むイニ。 そしてチャンニョルがハン会長の息子であることも教える。 チノの母がこれを知ったらどう思うか?と。 ケインがサンゴジェに帰ってくると、門の外でチャンニョルの父が待っていた。 そこへ偶然やってくるチノの母。 ケインと一緒にいるハン会長を見て、チノの母は『もう気安く呼ばないで』とケインを振り切って帰ってしまう。 サンゴジェにやってくるチノ。 ケイン「お母さん、すごく怒ってる?」 チノ「なぜハン会長が君の所へ?」 ケイン「プレゼントを持って家の前で待ってたのよ」 チノ「復讐なんか考えるからだよ」 ケイン「ゲイを好きになっちゃって心がモヤモヤしてたから・・・」 チノ「正直に言えばいいだろ?あなたが好きで悩んでるって」 ケイン「言えるわけないわ!ゲイじゃないと言ってくれたらよかったのよ」 チノ「僕の責任だ。何とかするよ」 自宅に戻り、母に釈明しているチノ。 チノ「チャンニョルとはだいぶ前に別れてる」 母「ひと月前に結婚式をぶち壊したっていうじゃない」 チノ「驚いただろうけど・・・」 母「もう何も聞きたくない」 チノ「僕の方がケインさんを好きになったんだ。チャンニョルと続いてたら好きになってない。僕を信じてくれ」 母「あの子はダメ。あの家と関わりのあった人を嫁には出来ない」 チノ「僕には彼女しかいない」 サンゴジェでは、ケインがヨンソンにチノの母とのことを説明している。 そして済州島出張当日。 ヨンソンと二人、飛行機に乗り込む。 ロビーでヨンソンを待つケイン。 なかなか来ないのでヨンソンに電話をかける。 ケイン「早く降りてきてよ」 ヨンソン「解ったすぐ行く。ごめん、キャッチが入った。切るね」 ヨンソンはそのままサンジュンに電話する。 ヨンソン「ケインはロビーにいるわ。そっちは?」 サンジュン「姉さんばっちりよ。二人だけにしていいのかな?」 ヨンソン「いいのよ。後は当人同士に任せましょ。きっと大丈夫よ」 ロビーを歩いていたチノはソファに座るケインに気付き驚く。 チノ「追いかけてきたとか?」 ケイン「ヨンソンね・・・仕事で来たの。館長がテーマパークを視察しろと」 チノ「嘘ばっかり」 ケイン「本当よ」 チノ「続きは外で」 ケインの腕を掴んで連れていく。 海辺で二人。 ケイン「お母さんの誤解はすぐには解けないわね」 チノ「任せて」 ケイン「どうする気?」 チノ「脅かしといた。一緒になれなければ死ぬって」 ケイン「チノさん・・・」 チノ「真に受けるなよ。死ぬわけないだろ?」 ケイン「茶化さないでよ。不安でたまらないのに」 ケインを後ろから抱きしめるチノ。 チノ「本気だよ。ずっと一緒だ。心配するな」 ホテルに戻ってきた二人。 チノ「いいこと考えた。険悪なフリをするんだ」 ケイン「ヨンソン達を騙す気?」 そこに館長が。 日本での仕事が早く終わって予定より早くやってきたと言う館長。 夕食でもどうかと聞かれる二人だが、話があると遮るチノ。 館長とチノは別の場所へ向かう。 チノ「(ケインに耳打ちで)うまく話すから任せて」 ロビーに入ったケインはチャンニョルと鉢合わせ。 話がある、とチャンニョルを呼び出す。 館長「セミナーはどう?」 チノ「お気遣いに感謝します」 館長「礼はいいよ。才能ある若者への投資だと思ってる。出世しても他人のフリをしないでくれ。ところで、話って?」 チノ「あの・・・」 館長「そうだ。渡したいものがある。カンディンスキーの貴重な画集だ。部屋に取りに来てくれるかな?何ならロビーに預けるよ」 チノ「せっかくですが遠慮します」 館長「これはコンペの審査とは関係ない。受け取ってくれないか。君の反応は予想していたが実際にこうして拒まれるとつらいな。その顔からすると話というのも愉快な内容ではなさそうだ。聞くのはまたの機会にするよ」 チノ「館長」 ケイン「お父さんにもう来ないように言って」 チャンニョル「解った、伝えるよ。もうお前を苦しめたくないからな」 ケイン「あなたに復讐しようとしたことは謝るわ」 チャンニョル「何も出来ずじまいだな」 ケイン「じゃあ」 チャンニョル「幸せなんだろ?チノといて幸せか?」 ケイン「うん」 チャンニョル「それならいいんだ」 歩き出したケインは走ってくる車に気付いていなかった。 それに先に気付いたチャンニョルがとっさにケインをかばって飛び込み代わりに怪我してしまう。 チノ「すみません」 館長「なぜ謝るんだ?」 チノ「ケインさんを愛しています」 チャンニョルとケイン。 声をかけても反応がないチャンニョル。 何も言わず黙って立ち去る館長。 病院で手当てを受けるチャンニョル。 それに付き添うケイン。 意識が戻るまで待てと言われる。 力なく部屋に戻る館長。 テーブルの上には綺麗にラッピングされリボンがかけられた画集が置いてある。 手に取りそれを投げつける。 ケインの部屋に来たチノだが呼び鈴を鳴らしても誰もいない。 イニ「ケインなら外出したわ。チャンニョルさんとね」 意識が戻らないチャンニョルにため息をつくケイン。 やっと目を覚ます。 ケイン「大丈夫?」 チャンニョル「お前こそ平気か?」 ケイン「私はなんともない。頭痛がする?頭を強く打ったのよ」 チャンニョル「大丈夫だよ。心配ないさ」 助けてくれてありがとうと礼を言うケイン。 ケインからの最後の言葉がサヨナラよりマシかと笑うチャンニョル。 チノは一人でバーで飲んでいる所にやってくるイニ。 イニ「一人でいるってことはケインは今もチャンニョルさんと一緒ね。長く付き合ってたんだもの。すぐ忘れられるわけない」 チノ「一人で飲みたいんだ」 イニ「ケインとチャンニョルさん、似たもの同士だと思わない?お人よしですぐ情に流される」 チノ「一人にしてくれ」 イニ「私達も似てるわよね。目的のためには手段を選ばず、必要がなくなれば容赦なく切り捨てる。館長に本当のことを話した?なぜなの?黙ってれば友人でいられたのに」 チノ「騙すのは嫌だ」 イニ「そんなにいい人だったかしら?ゲイのフリをして騙してたのは誰?一つ解らないことがあるの。ゲイのフリまでしてサンゴジェに下宿した理由」 チャンニョルと一緒にロビーに戻ってきたケイン。 エレベーターに乗ろうとすると、エレベーターから降りてくるチノとイニが。 チノがイニの肩を掴んで壁に押し付けているその光景を目にしたケインは・・・。 第12話へ |