〜個人の趣向〜
第7話〜え?みんなでカミングアウト?〜

深夜のサンゴジェ。

チノ「父が死ぬのを見てるしかなかった」

ケイン「チノさん・・・」

チノ「いくら走っても、前に進めない」

大粒の涙をこぼすチノを見て一緒に涙目になるケイン。

ケイン「チノさん、泣かないで」

涙を拭いてあげるケイン。

チノはゆっくりとケインにキスをする。

翌朝。

結局眠れなかったケイン。

ケイン『あれって・・・何だったの?どういうこと?女にも興味が?しかも私に?私?』

チノの部屋のドアが開く音が聞こえ飛んでいく。

ケイン「今から仕事?」

チノ「ゆうべは飲みすぎちゃってね。迷惑かけなかった?」

ケイン「何も覚えてないの?お金を貸してあげたことも?5万ウォン貸したのに」

黙って財布を取り出すチノ。

ケイン「やだ、冗談よ。酔っても普段通りクールでガッカリ」

チノ「変なことしたのなら許して欲しい。酒のせいだ」

ケイン「よしてよ。友達だもん、真剣に謝らないでよ。いってらっしゃい」

部屋に逃げ込むケイン。

ケイン『そっか。私を恋人と錯覚したんだ。それにしても誰にでもキスする?』

チノの事務所。

チノは引っ越し業者に電話している。

応募資格を失ったことで、もうサンゴジェにいる必要がなくなったから。

チノ「では、土曜日に」

サンジュン「サンゴジェを出るのか?」

チノ「いる理由がない」

サンジュン「どうせコンペには参加出来ないしな。気持ちを新たに出直そう。営業に出れば仕事はすぐ見つかるさ。ところで一つビッグな話があるんだ。遠い親戚が大統領官邸の厨房で働いてる。そのコネを利用して官邸の改装を請け負う。どうだ?」

笑うサンジュン。

チノ「笑えないね」

サンジュン「こいつめ。そのうち友達がいなくなるぞ」

美術館で。

イニから封筒を渡される。

イニ「どうぞ」

ケイン「これ・・・何なの?」

イニ「それが職場での言葉使いですか?手付金だそうです。資材などの準備に使って下さい」

それだけ言ってイニは電話をかけ始める。

イニ「チノさん、大丈夫?昨日の件が気になって電話したの。一杯おごるわ。今夜空いてる?」

チノ「今日はちょっと」

イニ「そう言わずに付き合って」

チノ「先約が」

イニ「仕方ないわね。とにかく元気を出して」

ケイン「今の・・・何の話?昨日の件って?」

イニ「彼から聞いてない?設計コンペに応募資格が設けられたの。準備してきたことが水の泡ってわけ」

昨夜を思い出すケイン。

『いくら走っても、前に進めない』

そう言って泣いていたチノ。

イニ「気遣ってるようで結局は何も解ってないのよね。彼もあんたに話す気はないだろうけど」

館内を歩きながらチノに電話をするケイン。

出ない。

帰り道、ふと通りかかった店でぬいぐるみを見かける。

チノそっくりの猿のぬいぐるみ。

足が長くて、ハットを粋にかぶり、キザなバラを持っている。

買って帰るケイン。

ケイン『おい、ここが君の家だぞ。足が長いお兄ちゃんがいるの。君みたいに。バラなんか持っちゃって。今日ここで君をチノと命名する』

一心不乱に料理するケイン。

夜、チノが帰ってくる。

車を降り、サンゴジェの前でつぶやく。

『土曜までだぞ。いいな、チョン・チノ。いる理由がない』

チノのために必死で料理したケイン。

ケイン「たくさん食べて」

鍋を覗き込むチノ。

チノ「これはいったい何だ?」

ケイン「タラのスープ」

チノ「タラが見当たらない」

ケイン「変よね。ちゃんと入れたはずなのにいつの間にかなくなっちゃった」

チノ「乱暴にかき回しただろ?」

ケイン「味の決め手は真心よ」

チノ「これからは真心だけ頂く」

ケイン「あなたは違うかしら?どんなにつらくてもごちそうを前にすれば『よし、これを食べてまた頑張るぞ!』って自然と前向きになれるの」

チノ「食べてせいぜい元気を出せ」

ケイン「チノさんも負けないで。食べましょ」

チノ「君はよく転ぶから傷薬を常備しとけ。包丁で手を切るな」

ケイン「あなたがいるから平気よ。転んで手を切ってもあなたが薬を買ってきてくれる」

チノ「ずっといると思うなよ」

ケイン「急にどうしたの?まるで出ていくみたいな言い方ね」

チノ「ここは僕の家じゃない」

ケイン「そうね。それはそうだけど・・・急にそんな言い方されると変な気分だわ」

チノ「今すぐに出るわけじゃない。食べよう」

ケイン「チノさんがいなくなると思うと食欲がなくなっちゃった」

チノ「よせよ。いちいち別れを惜しんでたら大変だろ」

ケイン「性格なんだもん。愛情に飢えてるのかも」

そう言っておどけて見せるケイン。

部屋で荷物の整理をしているチノだが、ケインがいきなり入ってくる。

ケイン「仕事中?」

チノ「だったら何だ?」

ケイン「ゴミを捨てに行くの」

チノ「それで?」

ケイン「重いから手伝ってくれる?」

チノ「軽そうだけど?」

ケイン「ついでに散歩すれば気分も変わるわ」

チノ「仕事がある」

ケイン「実は暇なくせに・・・」

チノ「何だって?」

ケイン「こっちの話」

チノ「明日は?」

ケイン「何で?」

チノ「最終テストをする」

ケイン「何のテスト?」

チノ「いい女計画の総まとめだ」

ケイン「内容は?」

チノ「僕が恋人の役をして1日そばにつき特訓の成果を見る」

ケイン「デートね」

チノ「そうじゃない。卒業試験だ」

ケイン「明日仕事は?」

チノ「休みだ」

ケイン「素敵なレディーに変身してみせるわ。お楽しみに」

陽気に出て行くケイン、寂しそうな顔のチノ。

ゴミだしに行こうと門を出ると、そこにチャンニョルが座り込んでいた。

かなり酔っている。

ケイン「どうしてここに?」

チャンニョル「その・・・もう帰るよ。じゃあな」

ケイン「どうして来るのよ」

チャンニョル「解らない。ダメだと言い聞かせてもいつの間にかここに足が向いちまった。胸の内を話したくても聞いてくれる人もいない。お前はいつも話を聞いてくれたよな」

ケイン「裏切られさえしなければ今もそうしてたはずよ」

チャンニョル「待てよ!あのな、母さんが・・・俺のおふくろが・・・」

ケイン「どのお母さんよ?まさか亡くなったの?」

※チャンニョルのお母さんは7人いる。

ケインの部屋を訪ねるチノ。

声をかけてドアを開けると誰もいない。

外。

チャンニョル「親父と別れた後再婚した相手が国際協力団に勤めててさ。一緒にアフリカに行くそうだ。もう2度と会えないかも」

ケイン「アフリカか。遠いわね」

チャンニョル「親父に式に出るなと言われたからイニの顔を知らないんだ。息子夫婦を食事に招きたいと言ってる。発つ前に会いたいと」

ケイン「そういう話はイニにしたら?」

チャンニョル「俺達別れたんだ。イニは幻に恋してたそうだ。ケインは世界一の男だと言ってたけど実際は違ったとさ。ケインだけがいい男だと思っていてくれたんだな。すまない」

門を挟んでその会話を聞いているチノ。

チャンニョル「イニの代役を頼もうなんて勝手すぎるよな」

チノ『なんてやつだ』

チャンニョル「盆唐の母さんは俺が親父に殴られるたびに身体を張って守ってくれた。俺のせいで怪我を・・・頼れるのはお前しかいなんだ」

ケイン「どこまで無神経なの?信じられない」

チャンニョル「ケイン、盆唐の母さんは実のおふくろなんだ」

ケイン「本当のお母さんは亡くなったんでしょ?」

チャンニョル「盆唐の母さんは親父の愛人だったから戸籍上俺は本妻の子になってる。ケイン、頼む。おふくろの願いを叶えてやりたい」

チノが水を飲もうとしている所に戻ってくるケイン。

ケイン「あの・・・チノさん。デートは今度にしない?友達に赤ちゃんが生まれたの。お母さんも親戚もいない子だから私が面倒見てあげないと」

チノ「ヨンソンさん以外に友達が?」

ケイン「失礼ね。こう見えても友達が多いんだから。ねえ、デートできなくて残念?」

チノ「とんでもない。こっちも好都合だ」

ケイン「言いだしたのはそっちよ」

チノ「君の計画から手をひきたくて適当な口実を作ったのさ」

ケイン「急になぜそんなこと言うの?」

行ってしまうチノ。

さっきの会話を全部聞いてしまったことを、ケインは知らない。

部屋でケイン。

ぬいぐるみのチノに話しかけている。

『コンペのことが悔しいのよね。だったら正直にぶつけたらどう?友達だもん、全部吐き出してよ。かっこつけて』

チノの出ていく音に気付き、ケインも飛び出す。

ケイン「チノさん!どこへ?」

チノ「関係ないだろ」

ケイン「ごめん。約束を破ったのは私の方なのに。許して。別の日に試験してくれるよね?ね?今からどこへ?一緒に連れていって」

車を飛ばすチノ。

助手席の窓から叫ぶケイン。

チノ「顔を出すなって」

ケイン「大声で叫んだことないでしょ?どんな時もじっと耐えてるわけ?」

チノ「いったい何の話だ」

ケイン「つらい時は正直にそういえばいいのよ」

チノ「誰がつらいって?」

ケイン「溜め込んじゃだめ。ほら。思いっきり大声で叫ぶのよ。さあ、早く!」

とにかく叫べと煽るケイン、僕の趣味じゃないと聞かないチノ。

そのうちケインに根負けしてチノも大声で叫ぶ。

「いいか、今に見てろ!」

海辺に車を止め、暗い海を眺めている。

ケインがコーヒーを二つ持ってやってくる。

ケイン「どう?すっきりしたでしょ?相棒に感謝してよ。ねえ、せっかくだからここで試験する?」

チノ「やめとく」

ケイン「きっと気分も変わるわよ。私が何点とれるか試したくない?」

チノ「いいか、勘違いするなよ。僕は君を愛してない」

ケイン「そうよね。言われなくても・・・これは試験なの?わあ、真に迫った演技ね。続けて」

チノ「僕には付き合ってた人がいた。君は彼女に似ている。だから僕は君と一緒にいるんだ。忘れようとしても忘れられない。君を見てると彼女の名前を呼びそうになる。君の中に彼女の面影を見ているんだ。それでもいいかな?」

ケイン「その人のことを本当に愛してたのね」

チノ「ああ」

ケイン「解った。私はあなたを心から愛してるからあなたが幸せならそれで・・・」

ケインの肩を掴むチノ。

チノ「君は何も変わってない!僕が教えたろ?解ってるのか?」

ケイン「その・・・私はただ・・・思ったことを正直に言っただけよ。あなたからの頼みだもの」

チノ「自分はどうなってもいいのか!」

ケイン「だったら、どう答えればいいの?愛情ってそういうものでしょ。相手のためなら何もかも捨てられる」

チノ「相手のことより自分を守れ。いいか、人を簡単に信じたり、愛したり、許してはダメだ。もっと強くなれ。僕の講義は以上だ」

ケイン「解った。努力するわ」

自分の言葉を思い出すチノ。

『結局はチャンニョルの言いなりだ』

ケイン「何よ?信じられない?きっと変わってみせるから」

何も答えず車に乗り込んでしまうチノ。

サンゴジェに着くが、ケインだけ降ろして出掛けるチノ。

一人あれこれ思いだしながら車を飛ばすが、突然脇に止める。

ふと見ると、花屋が。

バラを1輪買って、ケインの部屋の前にそっと置く。

『もっと、強くなれ』

翌朝。

ケインは部屋を出るとそこに1輪のバラが。

そしてチノが出てくる。

ケイン「これ、あなたが?」

チノ「バラにはトゲがある。その意味が解れば君は晴れて合格だ」

チノの事務所。

イニから電話が入り、館長が今別荘にいると聞かされる。

館長は会長と大喧嘩をしたと。

まだコンペ参加の可能性があるから諦めるなと言われ電話を切る。

そこへサンジュンにも電話が。

サンジュン「あら姉さん?どうしたの?」

ヨンソンのことだ。

まだゲイのふりをしているから。

それを聞いてたチノ。

チノ「姉さん?」

喫茶店で会う二人。

今日こそはゲイではないことを告白しようと決めていたのに、ヨンソンにまくしたてられてタイミングを逸するサンジュン。

サンゴジェ。

出掛ける準備をしてる所に帰ってくるチノ。

チノ「どこか行くのか?」

ケイン「赤ちゃんが生まれた友達の所へ行くの」

チャンニョルのお母さんに会いにいくとは言えない。


チャンニョル母「イニはよく食べるのね」

会話したくないケインはただ黙々と食べている。

母「気取らない所が気に入ったわ」

チャンニョル「イニはうまいものに目がなくてさ」

母「よく食べる人はおおらかだと言うわね。それにしても緊張してるのかしら?さっきからずっと黙ってる」

チャンニョル「少しは話せよ」

ケイン「文句ある?」

チャンニョル「食べてばかりで・・・」

母「たくさん食べてくれて嬉しいわ。食事が済んだら話をしましょうね。いろいろ聞きたいわ」

チャンニョル「それは俺から話すよ」

まだ黙々と食べ続けるケイン。

トイレにきたケイン。

『何してるんだか。情けないぞ、ケイン』

戻ろうとすると、チャンニョルと母の会話が耳に入り立ち止まるケイン。

母「コンペにはチノも参加するそうね。準備は順調?」

チャンニョル「やっと勝負するつもりが親父がまた裏で手を回してさ」

母「何をしたの?」

チャンニョル「応募資格を設けさせて奴を締めだしたのさ」

隠れて聞いているケイン。

母「正直ホッとしたわ。父親の因縁でいがみ合うのは不幸よ」

全て解ってしまうケイン。

胸中複雑。

チャンニョルに車で送って貰ったケインはさっさと家に入ってしまう。

帰ってくるなりケインは口を押えてトイレに駆け込む。

たまたま部屋から出てきたチノ。

慌ててトイレを覗き込むと、ケインが便器で吐いている。

チノ「おい、大丈夫か」

手であっちへ行けと合図するケイン。

チノ「何を食べたんだ?」

背中をさすってあげるチノ。

ケイン「出産祝いの手土産を食べすぎたみたい。気持ち悪くて・・・」

チノ「おやすみ」

ケイン「待って。胃がもたれてるから指の血抜きをしてくれる?」

チノ「やったことない」

ケイン「簡単よ。針で指の腹をチクッと刺すだけ」

チノ「自分でやれ」

ケイン「自分では怖くて出来ない」

チノ「悪いけど断る」

結局根負けして引き受けるチノ。

ケイン「早く刺して」

チノ「ここ?」

ケイン「違う、ここ」

チノ「自分でやれば?ここか?」

思い切って刺すチノ。

ケイン「軽く刺すだけでいいのに!血がたくさん出てきた」

チノ「胃は治った?」

ケイン「うん」

チノ「満足?」

ケイン「あの・・・あなたのお父さんとハン会長は知り合いだったの?」

チノ「なぜそれを?」

ケイン「昔チャンニョルさんに聞いたことがあるの」

チノ「おしゃべりな奴め」

ケイン「でも詳しいことは知らないわ」

チノ「ハン会長は父の部下だった。当時部長だった彼が父の会社を乗っ取ったのさ」

ケイン「だから頑張ってきたのね。失ったものを取り戻すために・・・」

チノ「いくら頑張っても結果が出せなきゃ意味がない」

ケイン「諦めないで!あなたらしくない。裏で手を回してライバルを締め出すなんて許せない」

チノ「なぜ君がそのことを?」

ケイン「その・・・美術館の職員が噂してたの。ハン会長の仕業だそうね」

チノ「おやすみ」

ケイン「チノさん、夕飯を作るわ。言ったでしょ?どんなにつらくてもごちそうを前にすればまた頑張ろうと力がわいて来るって。元気を出して」

チノ「食べすぎるなよ」

館長の別荘を訪れたチノ。

館長「一緒にどうです?」

チノ「え?」

館長「そうやって睨んでると魚が逃げる」

チノ「はい」

館長「釣りの経験は?」

チノ「ありません」

餌の虫に飛び退くチノ。

館長「いつも冷静な君らしくないな」

笑われる。

館長「コンペの件でいらしたんでしょう?話があるのでは?」

チノ「友人として座ってる方がよさそうです」

館長「誰かに愛を告白したことは?昔たった1度だけ経験したことがある」

チノ「僕も好きな人はいました」

館長「相手は大学の図書館でアルバイトをしていてね。毎日通いつめたよ。気持ちを伝えた後短い間だったが付き合った。そして別れたよ。よくある話さ」

チノ「なぜ別れたんですか?」

館長「その人にとっては重荷だったんだな。この前貸したハンカチはその人から貰ったものだ」

チノ「そんなに大切なものをなぜ僕に?」

館長「君と友達になりたかったのさ」

まだチノは知らない。

館長の密かな思いを。

サンゴジェで二人。

庭で月を見上げている。

チノ「やれることはやった。ここから眺めた夜空がいつか、恋しくなる日が来る」

ケイン「このままずっと住めばいいのに」

美術館で館長に会うケイン。

ケイン「どういうことですか?」

館長「私が辞めても何も心配せず仕事を続けて下さい」

ケイン「なぜ急に・・・芸術院のコンペのことで?」

館長「もう一度交渉するつもりです。それでもダメなら辞職します」

ケイン「そんな・・・」

館長「前もって伝えたかった。突然去ることもありえるのでね。それじゃ」

ケイン「館長!ファイト!」

ふっと笑う館長。

この事実をチノに伝えるため電話しようとするが、思い直して走り出す。

チノは机に飾ってあったケインに貰った椅子のモチーフを手に取り見つめている。

『また人を好きになれるかな』

『チノさんは本当にママからの贈り物だわ』

『チノさんがルームメイトで本当によかった』

『あなたは私にとって友達みたいなお父さんみたいな存在だわ』

そしてあの時のキスを思い出す。

チノ『僕はどうかしてる』

隣の部屋ではサンジュンとテフンがいい争っている。

テフンがサンジュンの服にコーヒーをこぼしてしまう。

服を脱がそうと争っている所に偶然ケインが。

ケイン「まさか二人は・・・ひどい人ね!チノさんは大変な時期なのよ。彼の恋人なら・・・」

慌ててケインの口をふさぐサンジュン。

チノの部屋で。

ケイン「そんな人だったの?彼を裏切るなんて」

チノ「何事だ?」

サンジュン「その・・・ケインさんが俺とテフンの仲を誤解してさ。俺はチノ一筋さ」

チノが怒ってサンジュンを追い出す。

ケイン「二股かけるなんて最低だわ」

チノ「付き合ってなんかない」

ケイン「え?」

チノ「全部君の誤解だ」

ケイン「誤解?」

チノ「僕はゲイじゃ・・・」

告白しかけたのにサンジュンが入ってくる。

サンジュン「ケインさん、本当に誤解だよ。テフンと俺は何でもないんだ」

サンジュンを追い出すチノ。

チノ「まったく・・・」

ケイン「そうだ!用件を忘れてた!館長に会ってきたのよ。コンペに参加出来るかもしれない。それを伝えにきたの。館長を辞める覚悟でもう一度交渉してみるそうよ。だから希 望を捨てないで!」

チノ「電話でよかったのに」

ケイン「直接伝えてあなたの笑顔を見たかったの」

ケインが美術館のキッズルームの仕事を依頼されたことを知ったチャンニョル。

秘書と共に張り込みをしている。

チノと一緒に入って行くケインを見かけるチャンニョル。

古い友達と偶然会うチャンニョル。

友人から『館長はゲイだ』と聞かされる。

チノはハンカチを返しにきた。

館長から「君が好きだ」と言われるチノだが「僕もです」と答えてしまうチノ。

まだ意味を解っていない。

館長と話すうちにやっと理解するチノ。

館長もまた、チノをゲイだと思っている。

館長の真剣な告白を聞き、後に引けなくなる。

今更ゲイではないと言えるわけがない。

肩を落として歩いてるチノはチャンニョルに絡まれる。

チャンニョル「コンペに参加出来ない弱小事務所の所長がここに何の用だ?」

チノ「相手する気分じゃない」

チャンニョル「まさかとは思うがゲイのふりまでして館長に取り入る気じゃないよな?正々堂々と勝負するんだろ?結局口だけか?」

チャンニョルを殴るチノ。

チャンニョル「殴ったな。痛いところを突かれたか?まったく感心するぜ。大した野郎だ。館長の趣味を利用するとはな」

チノ「言いがかりはよせ」

チャンニョル「だったら説明しろ。なぜここに出入りする?」

ふと見ると向こうに館長が立っている。

悲しい目で見つめている。

チャンニョル「館長を利用しているんだろ?それともお前も実はゲイだとでも?」

向こうで同じく聞いていたケイン。

チャンニョル「どうなんだ?」

チノ「そうさ。僕は・・・ゲイだ」

それを聞いて、持っていたファイルを落とすケイン。

チャンニョル「何だって?お前がゲイ?男じゃないってことか?そりゃまずいぜ。天国の親父さんが聞いたら悲しむぞ。一人息子がゲイだなんてな。いつからそうなったんだ?なぜ黙ってた?もっと早く知っていれば男を紹介するとか・・・」

思わず近寄ろうとした館長だが、一足先にケインが駆け寄る。

ケイン「やめてよ。何が悪いのよ。バカにしたら許さない!男を好きで何が悪いの」

チノ「よせ」

ケイン「あなたの方がよっぽど男らしくない。平気で人を傷つけて男らしいと言えるの」

チノ「やめろ!」

チノを追いかけるケイン。

ケイン「チノさん、ちょっと話そう」

チノ「何の話だ。話すことはない」

ケインを置いて行ってしまう。

一人美術館から出てくると、チャンニョルが待っている。

チャンニョル「なんであいつの肩を持つんだ?」

チャンニョルを平手打ちするケイン。

ケインの変わり様に驚くチャンニョル。

ケイン「今までは裏切られても文句も言えなかったけど、チノさんが私を変えてくれたの」

ケインにとってチノはもう大事な存在になっていた。

荒れるチノ。

車を暴走させる。

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