〜個人の趣向〜
第6話〜甘いあまーい共同生活〜

パーティ会場で。

チノ「いいから黙って・・・」

ケイン「いったいいつまで隠すつもり?」

チノ「何を言いだすんだ」

ケイン「はっきり言ってあげなきゃダメでしょ。相手の気持ちも考えて。この子がどんなに傷つくか・・・」

ヘミから水をかけられるケイン。

凍りつくチノ、サンジュン。

チノ「(ヘミに)何のマネだ!こい」

ヘミの腕を掴んで外に連れ出すチノ。

その醜態をはたで見ているチャンニョル親子とイニ。

イニ「いい気味よ」

ケイン「なんでこうなるのよ。どうして?何も悪いことしてないのに」

サンジュンがタオルで拭いてくれる。

トイレで一人拭くケイン。

ケイン『いつまで隠しておくつもりよ。好きな男がゲイだと知ったら・・・ショックだろうな。それにしてもビチャビチャだわ。せっかくのメークが・・・」

一人ブツブツ言っていたケインだが、お腹の痛みに気付く。

そしてトイレに駆け込む。

ケイン『やだ!どうしよう・・・』

その頃、駐車場。

ヘミ「チノさんひどい!あんまりだわ!」

テフン「ヘミ、泣くな。まるでパンダだ(マスカラが流れてる)」

サンジュン「化粧品は日々進化してるのに落ちないマスカラを知らないのか?」

チノ「なぜ来たんだ?」

ヘミ「あの人は誰なの?なぜ一緒にいるのよ!」

チノ「ただの友達だ。頼むから帰ってくれ」

ヘミ「本当に友達?」

チノ「テフン、送ってやれ」

テフン「了解」

サンジュン「ところで、ケインさんは大丈夫かな?」

ヘミを見届けたチノは急いで会場に戻るがケインが見当たらない。

サンジュン「その辺を探してみるよ」

チノ「頼む」

チャンニョルに呼び止められるチノ。

チャンニョル「派手にやらかしたな」

チノ「関係ないだろ」

チャンニョル「水をかけられたケインが気の毒だ」

チノ「気の毒?お前が言うか?」

チャンニョル「何だと?」

チノ「彼女を裏切った奴がよく言えたもんだな」

今度はイニに呼び止められる。

イニ「ずいぶん女性にモテるのね。あなたに男を感じる女は私だけじゃないみたい」

それに気づいた館長がイニを呼ぶ。

チノ『あいつ、どこ行ったんだ・・・』

携帯が鳴る。

チノ「どこだ?ずっとトイレに?出てくれば?」

女子トイレの前で止まるチノ。

チノ「すまない。嫌な思いをさせたね」

ケイン「あのね、実は・・・そのことよりも・・・」

チノ「どうかしたか?言えよ」

ケイン「その・・・アレが必要なの。羽つきのやつ」

チノ「え?羽根?羽根って?」

ケイン「だから、その・・・急にアレがきちゃって・・・」

チノ「アレって?何が来たんだ?」

コンビニに走るチノ。

チノ『どこまで世話を焼かす気だ!』

コンビニに着き目当てのものを見つけるが周りの目が気になって取れないチノ。

傍で見ている女子高生達。

女子高生「ねえ見て。すごくかっこいい。超イケてない?」

仕方なく目の前にあったヒゲ剃りを手に取りつつもさっと生理用品を掴んでレジへ逃げる。

それを見た女子高生達。

「ああ彼女が羨ましい。買い物してあげてるんだ」

女子トイレに戻ったチノ。

誰もいないことを確認して中に入る。

チノ「いる?」

ケイン「チノさんここ!」

チノ「ここか?どこから渡す?」

ケイン「下からお願い」

袋ごと渡す。

ケイン「遅いから足がしびれたわ」

チノ「こっちの身にもなれ」

ケイン「ねえ、この髭剃りは?」

チノ「足の毛でも剃れ」

ケイン「ありがとう」

チノ「外にいるよ」

ケイン「すぐ済むわ」

チノ「ごゆっくりどうぞ」

恐る恐るトイレから出てくるケイン。

チノ「大丈夫?」

ケイン「ええ」

チノ「前もって準備しておけよ」

ケイン「忙しくてつい忘れちゃうの」

チノ「何も考えてないだけだろ?」

ケイン「悪いけどバッグに入らないの。あなたのポケットに入れてくれない?」

チノ「冗談じゃない!これを持ってろと?」

ケイン「入れる所がないのよ」

チノ「なんで僕が・・・」

ケイン「お願い・・・」

チノ「捨てる」

ケイン「ダメよ!もったいない!」

押し問答する二人だが諦めてチノが残りの生理用品を車に置きに行く。

待ってるケイン。

そこへチャンニョルが。

チャンニョル「なぜチノの奴と?腹いせか?」

ケイン「どういう意味?」

チャンニョル「俺とチノはライバルだ」

ケイン「だから?」

チャンニョル「奴と仲のいい所を見せつけようと・・・」

ケイン「うぬぼれないで。あなたなんかもう何とも思ってない」

チャンニョル「嘘をついてもすぐに解るぞ。意地を張るな。お前はホレた男を簡単に忘れる奴じゃない」

それを見るチノ。

チャンニョル「わざと見せつけるためにチノとつるむことはない」

ケイン「あなたがいなくても元気にやってるわ。泣き暮らしてると思ったら大間違いよ」

チャンニョル「ケイン、素直になれよ。今も俺のことを・・・」

黙って聞いていたチノだが。

チノ「チャンニョル。いいか、彼女に関わるな」

チャンニョル「これは俺とケインの問題だ」

チノ「しつこいぞ。お前と彼女はもう何の関係もない。そうだろ?ケインさん?」

ケインの手を掴んで連れていくチノ。

ドアを抜けた後。

ケイン「男役をしてくれてありがとう。殴るよりスカーっとした」

手を繋いでることを思いだして慌てて離す。

チノ「友達だからさ。行こう」

会場に戻る二人。

重役「お集まりの皆様を代表してタム美術館の発展を心よりお祈り申し上げます」

館長「皆様は家を作る方々です。人にとって家とは何か。日々の生活の営み、子供を産み育てそして夢を見る場所です。芸術とは夢なのです。タム芸術院は夢を形にする場でありたい。この願いを皆様と分かちあえれば幸いです。ありがとうございました」

ケイン「パパの言葉に似てる。直接は聞いてないけど論文にこう書いてた。『サンゴジェは妻と娘が夢を見るための小さな世界だ』その家に住んでるのがこんな娘じゃきっとガッカリするわね」

じっと見つめるチノ。

その夜、サンゴジェ。

テラスに出たチノは酒を飲みながら一人感慨にふける。

チノ『夢を見るための小さな世界・・・か』

ケインが腹を押さえて部屋から出てくる。

チノ「今度は何だ?」

ケイン「鎮痛剤がなくて・・・」

チノ「頭でも痛いのか?」

ケイン「ううん、生理痛」

チノ「帰りに言えばいいだろ」

ケイン「店が閉まる時間だったし。家に残ってると思って・・・」

チノ「ひどい?病院に行くか?」

ケイン「ただの生理痛で?」

チノ「薬くらい買っとけよ」

ケイン「我慢するわ」

チノ「何かすることは?」

ケイン「いいの、大丈夫」

部屋に戻ったチノはPCで生理痛について調べている。

『痛みを緩和させるためには・・・』

しょうが湯を作りケインの部屋に持っていくチノ。

チノ「これを飲んで」

ケイン「何?」

チノ「話すのもつらい?」

ケイン「昔から、生理痛がひどい方なの」

チノ「しょうが湯だ。身体を温めてくれる」

ケイン「つらいけど幸せ。労わってくれる男友達がいるんだもん」

チノ「前向きで結構だ。休んで」

ケイン「ありがとう」

しばらくした後、またケインの部屋のドアをノックするチノ。

チノ「おい」

ケイン「起きてたの?」

ドアを開けると死んだような顔でベッドに横になるケインが。

チノ「まだ痛む?」

ケイン「朝になったら薬を買いに行くわ。早く寝て。私のせいで仕事に遅れたら悪いから」

チノ「明日は日曜だ」

ケイン「そっか・・・」

あまりに痛そうな様子を見たチノはため息をついて車に駆け込む。

『やれやれ。休む暇もない』

自宅まで薬を取りに行く。

薬を見つけて急いでサンゴジェに戻りケインの部屋へ行くと、床で寝ているケインが。

チノ「なんで床に?」

ケイン「ベッドより温かい気がする」

チノ「さあ薬だ」

ケイン「え?どこで買えたの?」

チノ「家にあった」

ケイン「家って?家があるのになぜ部屋を借りる必要があるの?」

チノ「それは・・・事務所から遠いからさ」

なんとかごまかす。

ケイン「そんなに遠いのに薬を取りに行ってくれたの?」

チノ「早く薬を・・・」

チノに思い切り抱きつくケイン。

ケイン「愛してる」

驚くチノ。

ケイン「愛してるぜ、相棒」

動揺しつつ『早く飲んで寝ろ』と部屋を出ようとするチノ。

ケイン「ちょっと待って・・・頼む相棒。やって欲しいことがある」

またいつものすがるような目で訴えるケイン。

ケインのお腹をさすっているチノ。

チノ「いったい僕は何をやってんだ・・・」

ケイン「生理痛でつらい時はいつもイニがこうしてくれた。『ママの手は魔法の手、ケインのお腹はポンポコリン』ってね。とことん嫌いになって忘れられたらいいのに。でもいい思い出があるから憎めないの。昔からずっと優しくしてくれたから。思いっきり憎んで全部忘れたいのに」

チノ「パパの手は魔法の手、ケインのお腹はポンポコリン・・・」

何度も唱えてくれるチノに涙するケイン。

ケイン「本当にありがとう。パパは一度もさすってくれなかった。あなたは私にとって友達みたいな、お父さんみたいな存在だわ」

泣くケインの肩をトントンしてあげる。

翌朝。

息子の手を引いてケインを訪ねてきたヨンソン。

名前を呼びながらケインの部屋のドアを開けると、ケインのベッドで一緒に寝ている二人が。

自分の目を疑うヨンソン。

息子「おばさん、結婚したの?」

その騒ぎに目を覚ましたチノは慌てて飛び起きて洗面所に逃げ込む。

チノ『うるさいのが増えた・・・』

ヨンソン「いくら何でも一緒に寝るのはどうかしら」

ケイン「実はね、生理痛がひどくてさすってもらってたの」

ヨンソン「お腹を?」

ケイン「しかも薬を取ってきてくれたのよ。おかげで本当に助かったわ。優しいわよね」

ヨンソン「あっそ。よかったわね。一緒に寝た感想は?」

ケイン「それがね、とても安らぐの。不思議なくらい。パパの胸で眠るってあんな感じかも。想像だけど」

ヨンソン「本当に恵まれてるわ。前世でいいことした?私の前世では・・・」

ケイン「ズバリ、AV女優。朝から何か用?」

ヨンソン「チノさん」

ヨンソンはチノにモデルを頼みに来たのだ。

ヨンソン「ねえお願い。そこをなんとか協力して」

チノ「経験がないから無理だよ」

ヨンソン「ちゃんと指示するから」

頑なに断るチノだがヨンソンの推しに負けて引き受けることに。

ヨンソン「コンセプトは幸せな家族よ。親子で楽しむ春の休日よ」

笑えと言われひきつる笑いを浮かべるチノ。

ヨンソン「チノさん、顔が怖いわ。ケインを奥さんだと思っていとおしそうな顔をしてよ」

やってみるが。

ヨンソン「二日酔いに苦しんでる顔だわ。もっと幸せに・・・」

チノ「そう言われても・・・」

ケイン「チノさんには無理よ。女は恋愛対象じゃないんだから」

ヨンソン「ケインをサンジュンさんだと思えばいいじゃない。いい案でしょ?」

場所を変えて。

ヨンソン「後ろから抱きしめて。そう、ぎゅっと」

次から次に指示が飛ぶ。

ヨンソン「次は椅子に座って。ママ(ケイン)のホッペにチューして」

チノ「え!?」

ヨンソン「ここが大事なとこなんだから」

チノ「なんでここまで・・・」

ヨンソンにこき使われて疲れ切ってサンゴジェに帰ってきた二人。

ケイン「モデル料としておかずをたくさん詰めてくれたわ。こんなにたくさん作ってくれたのは初めてよ。お疲れ様。うわ、すごいごちそう。どれどれ」

チノ「誰のおかげだ」

ケイン「ほら、味見」

そういって手づかみでチノの口に差し出す。

チノ「手づかみで・・・」

ケイン「美味しいわよ、さあ」

仕方なく食べるチノ。

ケイン「美味しいでしょ?」

チノ「風呂は?」

ケイン「生理だからやめとく」

チノ「いつもそうだろ」

ケイン「男のくせに毎日入るの?さすがゲ・・・」

睨むチノ。

ケイン「イニのフットバスがあるから使って」

その頃新居では、また二人が争っている。

チャンニョルが結婚したことを知る母が嫁と一緒に食事したいと言ってきたのだ。

母のため形だけでも一緒に行って欲しいと頼むチャンニョルだが、イニは頑なに拒む。

アフリカに行ってしまう母のために。

自分の部屋でフットバスを使っているチノ。

『サンゴジェでの生活は苦労ばかりで気が休まらない。パク・ケイン、何も考えてなくて常識はずれの宇宙人』

とつぶやいて一人笑うチノ。

そこにいきなり入ってくるケイン。

チノ「ノックしろよ!」

ケイン「気持ちいいでしょ?レモンティーをどうぞ。ゆうべのお礼。マッサージしてあげようか?」

勝手にチノの太ももを揉むケイン。

チノ「いいって」

ケイン「そう言わず」

チノ「よせってば」

ケイン「うれしくない?」

チノ「いいから」

ケイン「題して尽くす女」

チノ「いいから早く出てってくれ」

ケイン「お湯を捨てないでね」

チノ「使う気かよ!進歩がない」

受け取ったレモンティを怪しい目で見るチノだが、飲んでみる。

案外おいしいと、ふっと笑うチノ。

ヨンソンから貰ったおかずをテーブルに並べているケイン。

ケイン「ねえ早く来て!冷めちゃうわ。今夜はごちそうね。食べて」

ケインが食べようとしていたご飯を取り上げるチノ。

ケイン「何よ!」

チノ「いい女には程遠い」

ケイン「忘れたの?パーティでは完璧だったわ。チャンニョルさんも驚いてた。返して」

チノ「おめでたいな。メイクや服で飾り立てて立ってただけだろ」

ケイン「ううん、館長と優雅におしゃべりしたじゃない」

チノ「羽根の件は?」

ケイン「私のせい?」

チノ「忍耐力どころか計画性もない。抜けてる女が男にモテると思うか?」

ケイン「ねえ。とにかく食べてから話さない?もう死にそう」

スプーンに1すくいだけ器に盛り、それを渡すチノ。

ケイン「ゲ!なんじゃこれ」

チノ「言葉に品がない。いいか、『私あんまり食べられないんです』さあ」

ケイン「『私あんまり食えないんです』」

チノ「いい度胸だ」

ケイン「この鬼教官め」

チノ「ガツガツするな。聞いてんのか?」

部屋で設計図を書いていると何かを抱えて勝手に入ってくるケイン。

チノ「それは?」

ケイン「作ったの。ゆうべの薬のお礼。人間が出来てるでしょ?お腹がすいて倒れそう。気に入った?」

身長長けくらいの洋服かけ。

チノ「まあ邪魔にはならない」

ケイン「なんて素晴らしいんだ!とか言えないの?まったく。もう話す気力もない」

チノ「食べにいくか?」

チノのいきつけのサービスエリアに来た二人。

ケイン「いいの?」

もう箸を持って食べる気マンマンのケイン。

それをじっと見るチノだが。

チノ「どうぞ」

ケイン「よっしゃ!」

言ってから『やべ』っという顔をするケイン。

ケイン「こんな言葉を使うのはあなたの前だけよ。どうしたの?鬼教官が珍しく静かね」

チノ「洋服かけで買収された。食べて」

食後のアイスを食べながら出てくる二人。

ケイン「よく来るの?」

チノ「遅くまで仕事がある日は時々ね」

ケイン「サービスエリアに?」

チノ「気分転換になる。旅をしてる気分になれるんだ」

ケイン「よく旅行するの?」

チノ「子供の頃父と行ったきりだ」

ケイン「大学時代はどうしてたの?」

チノ「勉強してた」

ケイン「友達がいなかったのね。根暗で引きこもってたんでしょ?」

チノ「自分に言い聞かせてた。『失ったものを取り戻すのが先だ』とね」

ケイン「失ったものって?」

チノ「帰ろう」

ケイン「失ったものを取り戻したら一緒に旅行したい!ねえお願い」

チノ「早死にしたくない」

ケイン「おとなしくするし、荷物も持つわ」

チノ「本当だな?」

ケイン「連れてって」

チノ「考えとく」

帰りの車の中。

ケイン「しりとりでもする?」

チノ「幼稚だな」

ケイン「やろうよ」

チノ「嫌だね」

ケイン「『トタン屋根』」

チノ「ね、か?」

しばし考えるチノ。

ケインの天気予報『春風が運んできた女友達みたいな彼に癒される夜だ。でもどこからか現れた正体不明の空気の渦が私の心を乱している』

館長の父である会長に会いにきたチャンニョルの父。

ハン会長「本日はお時間を頂きありがとうございます。今回のプロジェクトは文か産業の発展に大きく貢献するでしょう。私も事業家の端くれですがまだまだ会長の足元にも及びません」

時間を節約するために今回のプロジェクトに関して応募資格を設けるのはどうかと提案するハン会長。

『一理ある』と同意してしまう館長の父。

美術館でイニと鉢合わせするケイン。

イニ「なんであんたが?」

そこへ館長が。

館長「約束時間ぴったりですね、ケインさん。(イニに)ケインさんは君の友人だったね。キッズルームの仕事を頼んだ。こちらへ」

ケイン「はい」

面白くないイニ。

館長「親が鑑賞している間子供を遊ばせておく部屋です」

ケイン「家具をどのように配置するのか内装担当の方に話を伺います」

館長「いえ、全てあなたにお任せしたい」

ケイン「え!?」

館長「著名な建築家である父君から多くを学ばれたのでは?」

ケイン「とんでもない。こんな大きな仕事・・・父の娘だという理由なら出来ません。父の名に傷がつきます」

館長「いえ、それは誤解です。何かにひらめくと勝手に想像してしまうんです。あなたが作った椅子を見た瞬間、共に夢の空間を作れそうだと思いました」

ケイン「あの・・・家具を作ることは出来ますが部屋をまるごと作るなんてとても無理です」

館長「力を試したいとは思いませんか?」

ケイン「自信はありませんが頑張ります」

館長「大丈夫ですか?イニ君と頻繁に顔を合わせることになる。彼女の式に出席しました。何があったかは想像がつきます」

ケイン「気まずいですがチャンスを失いたくはありません。任せて頂き感謝します」

館長「親しい友人同士だからか、あなたはチョン・チノさんにどこか似てますね」

その頃、チノの事務所。

パソコンを覗きこんでいたサンジュンが叫ぶ。

サンジュン「大変だ!」

チノ「何だ?」

コンペの応募資格が設けられたことを知る。

建築士経験歴や海外での受賞歴、大型施設の設計実績など、チノたちには到底及ばないものだった。

小さな事務所は門前払い。

ハン会長の狙いはこれだった。

つまり応募資格すら失ってしまったわけだ。

それを知った館長は、父に直談判していた。

自分に一任したはずだと。

最後まで任せて欲しいと。

でないと、自分は手を引くと。

一方チャンニョルもさすがに怒っていた。

応募資格を設ける案は父のたくらみだと知っていたから。

実力でチノと勝負したかったのにと。

その後、チャンニョルと海辺で話すイニ。

二人の昔話をする。

一方チノの事務所。

サンジュン「諦めるしかない」

テフンの調べでハン会長の仕業だと知る。

館長に会いに行くチノ。

やってきたのはイニ。

イニ「今日館長は戻らないの。応募資格の件ね。私もさっき知ったばかりよ。館長はその件で本社に行ったみたい。お気の毒だわ。いくら館長が抗議しても無駄でしょうね。会長が決定を覆すとは思えないもの。飲みにでもいく?」

チノ「やめておきます」

イニ「じゃ、家まで送ってくれない?」

チノ「すみませんが今日はこれで」

チっと舌打ちのイニ。

チノは一人、飲み屋で酒を飲んでいる。

今までの出来事を回想しながら。

グラスを握りしめる。

サンゴジェでは。

ケインは館長から受けた仕事のデザイン画を描きながらふと時計を見ると深夜12時を過ぎていることに気付く。

まだ帰らないチノを心配している。

チノはまだ飲んでいる。

立ち上がろうとしてその場に倒れ込む。

ケインは心配になって門の外でチノを待つ。

『家に帰るならそう言ってくれればいいのに。電話にも出ないなんて』

するとフラフラの状態で歩いてくるチノの姿が。

ケイン「チノさん!電話くらい・・・」

チノ「あ、相棒じゃないか。憎たらしい相棒、パク・ケイン」

ケイン「お酒臭い!どんだけ飲んだのよ?」

チノ「何も考えてなくて能天気な相棒パク・ケイン。何があってもへこたれない僕の相棒」

ケイン「酒癖が悪いのね。しっかりしてよ。早く入ろう。今夜は変ね」

ケインはチノを背負って連れていく。

ケイン「チノさん大丈夫?」

水を持ってきてあげるケイン。

ケイン「はい、飲んで。こんなに飲むなんて何かあったのかな?」

チノ「こんな日もあるさ。死ぬ程飲みたい日」

ケイン「いったい何があったのよ。サンジュンさんと喧嘩した?」

チノ「歯を食いしばってここまで来たんだ。必死でやってきたのに僕は今もあの頃のままだ。父が死ぬのを見てるしかなかった。悔しくて腹が立った。それなのに僕は何も出来ないまま壁を叩いてた。僕は・・・」

大粒の涙をこぼすチノ。

ケイン「チノさん・・・」

チノ「いくら走っても、前に進めない」

ケイン「チノさん、泣いてるの?」

自分も涙目になりながら、黙って涙を拭いてあげるケイン。

その顔をじっと見つめるチノ。

ケイン「お願い、泣かないで」

チノはそのままゆっくりとケインにキスをする。

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