〜個人の趣向〜 |
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第2話〜救世主 現る! 式場での一部始終をいたたまれない気持ちで眺めていたチノだが、その醜態に会場を後にする館長を追ってチノも走り出す。 そして偶然を装って車をぶつける。 館長「何か?」 チノ「車を止める時にぶつけてしまって。すみませんでした。お詫びを」 館長「必要ない。連絡先を残してあるならそれで。コンペのプレゼンテーション、印象的でした。よろしければ火曜に連絡を」 そういって館長に名刺を渡される。 交差点の真ん中で泣き崩れているケインを見るチノ。 そしてこの一件で結婚が破断になるイニとチャンニョル。 サンジュン「タム美術館の増築だが館長の発案でコンペが開かれる。国内外から作品を募るそうだ」 チノ「そうか。有難い話だ」 サンジュン「思わぬチャンスだな。お前は運がいい」 チノ「どうかな」 そこへやってくるテフン。 飲み比べで首になったはずだと追い出されそうになるが、必死で懇願する。 テフン「コンペで勝つ秘策があるんだ!サンゴジェだよ!知ってる?」 その頃、サンゴジェでは。 ウォノを追ってきた借金取りが見張りをしている。 ウォノはそれを隠れて見ながら必死でケインに電話するが意気消沈しているケインは出ない。 庭に落ちている督促状を見て、初めてウォノが自分に黙って借金をしたことを知るケイン。 その担保がこのサンゴジェになっていたのだ。 夜、父から突然電話を受けるケイン。 帰国は8月の予定だったが5月に帰ると言われ慌てるケイン。 サンゴジェが競売にかけられることを父が知ったら殺される。 なんとかしないとと必死で考えるケイン。 一方チノの事務所。 会長のお気に入りの著名な建築家に以前仕事を依頼したが断られたと知る。 その著名な建築家が設計したのがサンゴジェ。 このサンゴジェの謎を調べて秘密を知ればコンペは楽勝だ!と相談している。 ケインの電話で駆け付けたヨンソン。 ヨンソン「ケイン、いるのー?」 後ろ向きで座りこむケインが。 心配して近寄ると口いっぱいにご飯を頬張っているケイン。 ヨンソン「こんな時でも食欲はあるのね。そうよね、食べなきゃ。たくさん食べなさい」 ケイン「あんたが頼りよ」 ヨンソン「任せて。親友でしょ?」 ケイン「じゃ聞くけど、お金ある?」 ヨンソン「私が分けてあげたおかずね」 ケイン「親友でしょ?」 ヨンソン「まぁそうは言っても友情にも限界ってものが・・・」 ケイン「とっとと帰って」 ヨンソン「お父さんに話せば?」 ケイン「殺されちゃうわ」 ヨンソン「妻への愛情が深すぎるのも問題ね」 ケイン「ヨンソン」 ヨンソン「いや、その・・・この家のためにあんたが寂しい思いをしてるから・・・ごめん」 その頃チノの事務所ではサンゴジェを調べている。 サンジュン「サンゴジェ完成後に教授は妻と死別。以降30年近く一般公開されてない。建築界の偉才が建てたにしては地味な家だ。何が魅力なんだ?」 チノ「海外にいる教授の代わりに誰が管理を?」 サンジュン「娘らしい。待てよ、娘ということは女だ。ブラボー!イケメンの出番だぞ?頑張れよ」 チノ「くだらない」 サンジュン「一番確実な手だぞ?教授の奥さんは美人だったらしい。その娘なら期待できるぞ」 チノ「くだらない。俺は美術館を当たるから美人が住む家の方は任せる」 サンゴジェ。 一人回想にふけるケイン。 『今までパパに認められたくて頑張ってきたけど結局今もここに座りこんでるだけ。だけど今日は泣いてもいい日よね。今日だけは思い切り・・・思い切り泣いて明日から頑張る。私はママに似て強いんだから』 一人むせび泣く。 翌朝。 占い師に電話するケイン。 ケイン「伺いたいのは・・・いえ、今29歳です。いいえ違います。そのつまりこの先私はどうなりますか?」 占い師「お待ちを。見える見える・・・見えましたぞ。東から貴いお方が来ている。今日東から来る人が運を開いてくれますよ。逃さぬよう」 ケイン「東からの人?」 その時呼び鈴が。 サンジュンだった。 ケイン「もしかして東から?」 サンジュン「カンナムからだけど?」 ドアを閉めてしまうケイン。 そして電話が。 展示会で売れたはずのテーブルが全部返品になってしまう。 美術館に来たチノ。 館長に会いにきたのだが、チャンニョルの父と共にでてくる館長。 『改めて出直します』と頭を下げるチノ。 チノの回想。 幼きチノは母と共に家から出てくる。 父が他界し家を出ざるを得なくなったのだ。 そこへやってくるチャンニョル親子。 チャンニョル「ここが新しい家?」 あの悔しかった日を思い出すチノ。 サンジュン「今のはハン会長だな。また裏で手を回す気かよ」 チノ「進展は?」 サンジュン「驚くぞ。震度12の大地震並みの大ニュースだ」 チノ「どうした?」 サンジュン「例の女だ。式をぶち壊した女さ。あの家具デザイナーが教授の娘だ」 チノ「なに?」 サンジュン「家の中を見せてくれなんて頼むだけ無駄だよ。諦めよう」 チノ「先輩、僕に任せろ」 チャンニョルの事務所。 結婚が破断になって父に怒られるチャンニョル。 父「この馬鹿息子め。チノの奴が美術館のコンペに出る」 チャンニョル「え?またか?」 父「今回はDAセンターの時のようにはいかない。チェ館長はMSグループの御曹司だ。金では動かんだろう」 チャンニョル「チノには負けないから安心してくれ。それと、イニとももう一度・・・」 父「あの女の話はするな!」 部屋を追い出されたチャンニョル。 チャンニョル「いいか、チェ館長の身辺を調べろ」 秘書「といいますと?」 チャンニョル「行きつけの店や女性関係、利用できそうな弱みを探れ。チョン・チノ、覚悟しろよ。今回も俺が頂く」 サンゴジェの前にやってきたチノ。 だが呼び鈴を鳴らしても誰もいない。 ケインは返品になったテーブルをトラックに積み込んでいた。 ヨンソン「借金をなんとか出来る方法はないかしら」 ケイン「ウォノを捕まえる」 ヨンソン「無駄よ。どうやって探すの?」 ケイン「じゃどうする?」 ヨンソン「イニがいた部屋を貸せば?」 ケイン「冗談でしょ!あの家に他人を入れるなんて!パパが許さないわ」 ヨンソン「他に返済の当てがあるわけ?」 ケイン「ない」 ヨンソン「不動産会社に寄ろう」 サンゴジェの前でケインを待つチノ。 思い立って家の写真を撮り始める。 それを物陰からじっと見るウォノ。 ちょうど帰ってきたケイン達に見つかるウォノ。 必死で逃げるウォノ、追いかけるケイン。 途中で転ぶケインは同じく追ってきたチノに代わりにウォノを捕まえて貰う。 怒り心頭のケインだが、ウォノを心配しご飯を食べさせてあげる。 ケイン「どうしてくれんのよ、1千万ウォン。パパの帰国が3か月も早まったのよ。仕方ないから空き部屋を貸すことにしたわ」 その会話を側で聞いていたチノ。 『空き部屋を貸す?』 これだ!と思うチノ。 ウォノ「トイレ行ってくる」 ケイン「すぐ戻ってよ」 チノ「馬鹿だな。逃げたぞ?」 ケイン「大丈夫よ。そこまで悪い奴じゃ・・・」 そこまで言いかけて心配になるケイン。 ウォノに逃げられるが足をくじいていて追いかけられない。 チノ「万事この調子?」 ケイン「何が?」 チノ「すぐ人を信じる」 ケイン「ほとんど病気かも」 チノ「大丈夫?歩けるか?」 ケイン「ご心配なく。転んだだけだもの」 チノ「病院へ行こう。捕まって」 病院で。 ケイン「(独り言)どう考えても変よね」 手続きと支払を済ませて戻ってくるチノ。 チノ「行こう。家まで送るよ」 ケイン「どういうつもり?ウォノを捕まえてくれて、治療費を払った上、家まで送るなんて。急に親切にされると気持ち悪いわ」 チノ「素直にありがとうと言ったらいいのに」 ケイン「治療費は返すわ」 チノ「金で返す必要はない。サンゴジェを見せてくれないか?」 ケイン「なぜその名を?父に頼まれたの?」 チノ「本で見たのさ。お父さんのことは知らない」 ケイン「なぜ家を見たいの?」 チノ「部屋を探してる」 サンゴジェに到着する二人。 ケイン「その・・・今日はありがとう。このお礼は必ず」 チノ「中を見せて欲しい」 ケイン「一般には公開してないの。それじゃ」 チノ「部屋を貸すんだろ?」 ケイン「あなたに貸す気はないわ。しつこい人ね」 チノ「待ってくれよ」 門に貼られた督促状を見る二人。 チノ「これは?家を担保に?」 ケイン「関係ないでしょ?」 チノ「なるほど。借金のカタにこの家を取られるのか」 ケイン「うるさいわね。ほっといて」 チノ「なぜダメなんだ?僕に部屋を貸せば急場はしのげる」 ケイン「女ひとりの家に男を住まわせろと?」 チノの心の声『お前のどこが女だ?』 その時サンゴジェから出てくるヨンソン。 ヨンソン「おかえり。ウォノは?やっぱり逃げられたのね。家具は運んどいたから」 ケイン「ありがと」 チノに気付く。 ヨンソン「あ、結婚式の時の・・・どうして一緒なの?」 ケイン「もう帰って下さい」 チノ「部屋が必要なんだ!」 一度閉められた門がまた開く。 ヨンソン「(チノに)あの、私が説得してみるからちょっと待ってて」 ヨンソン「足どうかした?」 ケイン「途中でつまずいたの」 ヨンソン「あの人部屋を借りたいって?」 ケイン「うん」 ヨンソン「よかったじゃない。決めちゃえば?お互い助かる」 ケイン「知らない男と一つ屋根の下に住める?」 ヨンソン「知らない仲でもないでしょ?ほら、襲ってくる心配はない。女には興味ないんだから」 チノがゲイだと思い込んでいる二人。 ケイン「そうかな?」 ヨンソン「心配ないってば。イニみたいな奴よりずっとマシよ。何か問題があったら追い出せばいいんだし。彼ってゲイでも意外と頼れるかもよ?」 想像が膨らむ二人。 ヨンソン「あの、入って。早く早く。どうぞ。中を見てみて」 家をざっと見回すチノ。 そして事務所に一旦戻ってくる。 サンジュン「どうだった?ダメだろ?」 チノ「部屋を借りた」 サンジュン「部屋?何の話だ?家を出るのか?」 チノ「ヘミから逃げられるしな」 サンジュン「どこの部屋?」 チノ「もちろんサンゴジェさ」 サンジュン「何だって?本当に?」 チノ「(ニヤニヤしながら)ああ、すごいだろ」 サンジュン「どうなってる?」 チノ「ヘミとテフンには内緒だぞ。いいな?」 サンゴジェで。 契約書に判を押すチノ。 ケイン「ルールは一つだけよ。家の中での写真撮影は禁止。冷蔵庫と洗濯機は自由に使って。以上」 チノ「待った。僕からも言っておく。家の中が汚すぎる。常に清潔を心がけて欲しい。それから食事だけど僕の食品には手を触れないでくれ。それから洗濯物は決して一緒には洗わないこと。共同生活のマナーだ」 ケイン「いいわ。そうくるなら自室と共用スペース以外は立ち入り禁止よ。破ったら・・・」 チノ「破ったら?」 ケイン「切り落とすわ」 チノ「何を?」 ケイン「境界を越えた身体の部分」 ものすごい形相の二人に『ブラックジョークよ』と笑ってごまかすヨンソンとサンジュン。 部屋で二人。 サンジュン「おい、怒らせてどうするんだ」 チノ「不潔なのは許せない」 足をぶつけて怪我するチノ。 サンジュン「大丈夫か?見せてみろ。ズボンを脱げ」 チノ「いいって」 サンジュン「遠慮する仲でもないだろ?痛くないように塗るから。まるで子供だな」 そのやり取りをこっそり聞いているヨンソン達。 ケイン「何やってるのよ!」 ヨンソン「羨ましいわ。私もここに住もうかな」 ケイン「共同生活のマナーだなんて。日が暮れた途端にイチャイチャして・・・」 ヨンソン「いいじゃない。愛の証よ」 ケイン「相手の男が可愛そうだわ」 ヨンソン「アツアツなのに?」 ケイン「あのチノって男、こんな身体をした男とモーテルにいたのよ」 ヨンソン「ほんと?であんたは誰と?」 ケイン「思い出したくない」 その頃、チャンニョルはイニと一緒に住むはずだった新居で結婚式の写真を眺めている。 一人旅行から戻ったイニはその足で新居へ向かう。 チャンニョルがいるとは知らずにベッドに入ったイニは、動く気配に驚く。 ベッドで鉢合わせする二人。 イニ「あんたとはとっくに終わったのよ!出て行って!」 チャンニョル「親父に追い出されたんだ。ここは親父が買った家だぞ」 イニ「せこい男ね。どいて。このベッドはケインがくれたの」 チャンニョル「図々しいな。あいつを裏切っておいてよく言えるな」 イニ「あんたも同罪。布団もパジャマも私のものよ!」 やりあう二人・・・。 夜。 サンゴジェの秘密を探るべく、家の中を一人こっそり散策するチノ。 ふと見つけた部屋に入ってみる。 そこにあった書きかけの設計図を見ていると電話が。 母からだと解るが、出ない。 そしてまた母から電話が。 母「チノ?」 チノ「(小声で)取り込み中なんだ。かけ直すよ」 母「どこで何してるの?」 チノ「訳は後で話すよ。じゃあね」 ケイン「今話してくれる?」 突然現れたケインに驚くチノ。 ケイン「ここで何を?」 チノ「暗くて部屋を間違えたんだ」 ケイン「昼間伝えたルールを覚えてる?」 チノ「な・・・なんだっけ?」 チェーンソーを持ってるケイン。 慌てて部屋へ逃げるチノ。 新居にいられなくなったイニがサンゴジェへやってくる。 泊めて貰う腹だ。 罵倒し合うケインとイニ。 その騒ぎに気付くチノ。 チノ「悪いけど静かにしてくれ。迷惑だ」 それを見たイニは更に怒り出す。 ケイン「今度はあの男に目をつけたの?」 イニ「男には不自由してないけど、10分あれば落とせるわ」 ケイン「やってみなさいよ。あんたは彼の好みじゃない。彼はゲイだもの!」 部屋の中でそれを聞いてしまったチノ。 自分がゲイだと思われていることに初めて気づく。 第3話へ |