星から来たあなた
第9話

ミンジュンの講義「米国の著名な心理学者ハリー・ハローは実験をしました。人間と遺伝子が95%似た赤毛ザルの子猿を親から離して 二つの猿人形がある部屋に閉じ込めたのです。一つの人形には金網で作られた体に哺乳瓶をぶら下げ他の人形は柔らかい布で包みました。哺乳瓶はつけなかったのです。子猿は二つ人形の内、どちらの人形をより好んだのでしょう」

哺乳瓶の方だという生徒。

ミンジュンの講義「実験の前の予想も子猿が哺乳瓶を縛りつけられた人形をより好むだろうというのでした。 しかしその予想に反して子猿はやわらかい布猿の人形に強い愛着を見せました。これにより証明されたのがスキンシップの重要性なのです」

思い出す。

ソンイ「わたしに15秒ちょうだい」

ミンジュン「どんな15秒?」

ソンイ「15秒後にもまだわたしが陶磁器・子犬・木なら認めるわ。わたしが無魅力だということ」

ミンジュン「チッ」

立ち去ろうとするミンジュン。

そんなミンジュンを引き止めてスマホでタイマーをセットし『始め!』と言いミンジュンを見つめるソンイ。

ミンジュンの講義「目を合わせることはやはり間接的なスキンシップということが言えますが人は好む相手と目を合わせれば脳内にある神経物質であるドーパミンが出てきて喜びが高まります」

また思い出す。

ソンイにキスをするミンジュン。

ミンジュンの講義「キスをすれば心拍数が普段の二倍に増加して平均呼吸数も1分平均20回以上増加して血圧も瞬間的に跳ね上がります。なので心臓がドキドキして呼吸が息苦しくなって目まいも感じることになり自分自身が愛に陥ったと錯覚するのは簡単でしょう。 けれどこれら全てのものはスキンシップのいたずらでありホルモンのいたずらであるだけでそこにだまされてしまってはいけません」

キスの後、眠れない二人。

ミンジュンの心臓のBPMはどんどん上昇しソンイのBPMは次第に落ち着く。

キス三時間後、ベランダで毛布にくるまっている時に180を突破。

キス五時間後、ついに200を突破。

目が覚めたソンイ。

心臓のBPMは82だ。

リビングに行くとミンジュンが調子悪そうにしていた。

ソンイ「ト・マネージャー?ト・ミンジュンさん?しんどいのかな?」

ミンジュンの額に手をやるソンイ。

ミンジュンの心臓のBPMは240を超える。

ミンジュン「しないでくれ、触れないでくれ」

力ない言葉を発するミンジュン。

ソンイ「なんですって?」

聞こえなかったため顔を近づけるソンイ。

BPMは300を超え破裂音がする。

ミンジュン「近くに来るなって、向こうへ行け!行け!」

寝返り背中を向けるミンジュン。

ミンジュンの講義「絶対だまされてはなりません。心臓の鼓動と恋に落ちる件、区別する必要があります」

講義中のミンジュン。

部下がジェギョンに崖で見た顔はト・ミンジュンだったと報告している。

その名前はソンイの家に行った際の駐車場で聞いたジェギョン。

ソンイがUSBを持っていないならミンジュンが持っている可能性が高いと報告を続ける部下。

キスの後遺症。

ソンイ「いや、あれってわたしとするやいなや具合が悪くなって横になるのってどんな糞マナーなの?わたしがまさにウイルスの塊のようじゃない。あれ、ト・ミンジュンさん、ト・ミンジュンさん」

ミンジュンを揺するソンイ。

手がだらりとソファーから落ちる。

ソンイ「死んだの?」

ミンジュンの胸に耳を当てるソンイ。

鼓動のスピードがとんでもない。

ソンイ「ものすごくはやく弾んでるけど?心臓がこのようにはやく弾んでも人が生きられるの?」

ミンジュンに触れようとする。

ミンジュンの右手がソンイの手をつかむ。

ソンイ「大丈夫?どうにかなったのかと思ったじゃない?」

ミンジュン「どけ!」

ソンイの手を放り投げるミンジュン。

ソンイ「ダメなようよ、応急室に行きましょう。額で焼き物ができるわ。すごく熱いって、すぐ行きましょ」

ミンジュン「行かない」

ソンイ「どうして?どうして?どうしていかないの?」

ミンジュンはよたよた歩きベッドへ行く。

汗をかきうなされているミンジュン。

ホン社長のアドバイス。

ソンイはホン社長に電話を入れる。

ソンイ「熱が途方もなく出て、何度かって?何およそ50度?」

ホン社長「50度で人が生きいられるの?お願いだからちょっと常識的な線で対話しましょうよ」

ソンイ「とにかく熱いの、完全に熱いの。これ。どのようにしなければならない?病院に行こうっても行かないって」

ホン社長「誰なの?」

ソンイ「それがそんなに重要?どのようにしなければならないのかって。あんた甥を三人も育ててみてこうしたことがよく分かるって!」

ホン社長「わかるわよ。熱が出た時には無条件に脱がして」

ソンイ「必ずそうしなければいけない?」

ホン社長「脱がした?」

ソンイ「まだ」

ホン社長「すっかり脱がしてぬるいおしぼりで全身をマッサージして」

ソンイ「全身マッサージ・・・そうしなければいけない?」

ホン社長「それが鉄板よ!うちの甥っ子たちの時はおむつまですべて脱がしたわ」

ソンイ「あ〜、ちょっとそんな状況じゃないわ」

ミンジュンのうめき声が電話越しに聞こえ怪しむホン社長。

一旦切ると電話を切ってしまうソンイ。

ソンイ「そうね、人を生かそうとしてみないと」

ホン社長に言われたとおりにミンジュンの服を脱がし温めのおしぼりで体を拭くソンイ。

目覚めるミンジュン。

ミンジュン「何をやってるんだ、いま」

ソンイ「熱を下げようと。これがテッパンだって。じゃなきゃ服をちょっと脱いでみて」

ミンジュン「するな、出ろ、ちょっと」

ソンイ「運がいいと思いなさい。わたしが本来の夢がヘレン・ケラーだったの。知ってるでしょ?白衣の天使」

ミンジュン「ナイチンゲールだろ?」

ソンイ「ディティールに執着しないで!とにかく看護師が夢だったわたしが今看病しているのがポイントじゃない。ぬるいおしぼりで全身をマッサージして上げればいいってことでしたのよ。わたしにされるのが嫌ならセルフマッサージでもする?」

ミンジュン「出て行けって、お願いだから」

ソンイ「もしかして、昨晩のことでぎこちないというの?そちらの間違いじゃないわ。わたしが警告したじゃない。わたしケミの塊だって。魅力の塊。わたし理解するわ。ト・ミンジュンさんも男なのでその、まあ、自分の意志で制御ができるのかって話でしょ。そうだとしてもキ、キ・・・とにかくそうしてから急にこのように病んで横になったらわたしがどうなるのよ?もしかして初めてなの?初めて?」

ミンジュン「そんなわけが・・・」

地球人とのキスは初めてだったミンジュン。

ソンイ「いや、歳がいくつなのに今までどうしてたの?なによ、されたのはわたしなのに事がこうなってしまうとわたしが申し訳ないようじゃない。とにかく熱を下げないといけないから寒くてもちょっと我慢して。あ〜急にどうしたのよ。丈夫なのに」

窓を開け冷気を入れるソンイ。

セミの疑問。

セミの告白を思い出しているフィギョン。

フィギョン「寝たか?寝てなければ電話しろよ!」

セミにメールを送るフィギョン。

セミはメールを無視しその後兄の部屋へ行く。

知りたいことがあると言い質問を始める。

セミ「この前のCCTVの写真に撮影されたその人ト・ミンジュンという人、何歳なの?今は大学の講師だと。もともと何をしてる人なの?もしかしたらその兄弟関係のようなもの知ることできる?まあ双子だとかまたは兄がいるとか」

ユ検事「それがどうして気になるんだ?」

セミ「その人とチョン・ソンイ、どんな関係なの?知ってることがある?」

ユ検事「おまえソンイとはすごく親しい友人じゃないのか?そんなことはオレに聞かずにおまえの友達のところに行って直接聞かなきゃ」

セミ「わたし、あの子の友達じゃないわ」

ユ検事「友達じゃないならより一層おかしいな。友達でもないのにおまえがその人とチョン・ソンイとの関係がどうして気になるんだ?」

セミ「ただ答えてくれちゃダメなの?チッ。その人どうにもおかしいってことよ」

ユ検事「何がおかしいんだ?」

寝袋。

目が冷め超能力で窓を閉めようとするミンジュン。

体調が悪いからかうまくいかない。

諦めて立って閉めに行く。

閉めたあと振り向くと何かが転がっていた。

ソンイが寝袋に入って転がっていたのだ。

足でつついても起きない。

ミンジュン「なにしてるんだ?その中で?」

ソンイ「あ、ああ、起きたの?からだは大丈夫なの?いや心配でそばにいなければいけなかったんだけど窓を開けてたからすごく寒くて・・・開かないわ」

もがくソンイ。

ミンジュン「もういいから出てこい」

ソンイ「E、Excuse me! 今なんて?いいから出ろ?わたしが間違って聞いたの?そうでなければト・ミンジュンさんが辛くて正気が失せてる?それが言う言葉?一晩中看護した人に言う礼儀知らずが帰ってきたからもう、ちょっと生きることだけしてみようと?」

脱出できずにまだあがいている。

ミンジュン「口をちょっとつぐんでくれない?」

ソンイ「ジッパーが故障したようなの。外から開けてよ!」

ミンジュン「そのままそうしてろ、気にせずに」

ソンイ「開けろ、ト・ミンジュンさん、ト・ミンジュン、おい!」

うるさいソンイ。

無視して眠ろうとするミンジュン。

ソンイ「ははは、わたしが恩恵を施したのにこんなふうに後頭部を打つの?これはダメだと見るんだけど。人がそれではいけないわよえぇ?辛い時に助けてもらえばありがとうという言葉が最初じゃないの?世間をそうして生きるんじゃないのよ。わたしの心のこもったアドバイスを聞きなさいって。えぇ?」

なんとか自力で立ち上がったがベッドと反対の方にいる。

ソンイ「これを早く開けてよ。わたしは3つ数えるわよ。わたしもそれ以上は我慢できないわよ。責任取れないって。1、2、2半、半の半分、半の半分の半分、半半半、パンパラパン・・・」

業を煮やしたミンジュンは少しだけ寝袋の隙間を開ける。

ミンジュン「静かにしろ、頭がいたい」

ソンイ「わたしを取り出して!」

ソンイを抱えリビングへ行きソファーの上に投げる。

その間のソンイは。

ソンイ「きゃー、これは何の仕業よ!わたしを取り出してよ!あんたこれ放さない?あんたわたしが出ると本当にきゃー!あんたわたしをここに(置いて)出ていっていいって?くそ、わたし本当に怒ると怖いわよ!」

もがきつつケリを入れようとするソンイ。

その後も悪口は止まらないがミンジュンはすでにいない。

ミンジュンの大学での持ち物が盗まれる。

ミンジュンは休暇をもらっている。

どこか悪いのかと同僚たち。

チャン弁護士の勘。

チャン弁護士がミンジュンの家を訪れる。

そして寝袋がもぞもぞと動くのを見て驚く。

チャン弁護士「誰ですか?」

ソンイ「あ、お父様?」

チャン弁護士「チョン・ソンイさん?」

ソンイ「あはは、またお会いしましたね。お父さま、あはは、新年おめでとうございます」

芋虫状態で挨拶するソンイ。

チャン弁護士「はい、チョン・ソンイさんも」

ソンイ「お父さま、時間があればわたしをちょっと取り出してくださってはダメですか?」

こうしてようやく脱出する。

ソンイ「それでは明け方にお父様に電話をしたんですか?ト・ミンジュンさんが?ところで急にどうしてでしょう?あのように苦しがってたのに病院に行かないって」

チャン弁護士「病院には行かなくていいんです」

ソンイ「どうしてですか?」

答えないチャン弁護士。

まさか『宇宙人だから』とは言えない。

おかゆの膳をベッドルームに運んでいる。

チャン弁護士「つらくても少し召し上がってください」

ミンジュン「喉が痛くて何も通りそうにありません」

チャン弁護士「一体何があったのですか?」

スプーンを持たせるチャン弁護士。

チャン弁護士「こんなことは三十有余年前に銀行に勤務している時、ほら最初にお会いした時ですよ。先生をものすごく嫌いだった職員一人がコーヒーに唾吐いて持って行ってそれを召し上がって気絶なさってしまい一週間ひどく辛かったではないですか」

※地球人と唾液が混ざってしまった事件。

ミンジュン「ミン・ジョンオク、わたしはまだあいつの顔をしっかりと覚えています」

チャン弁護士「もしかするとあのようなことがあるかと思い一緒に食事もされなかった方がチョン・ソンイさんと一緒に食事をされたのですか?」

ミンジュン「まあ・・・」

チャン弁護士「違いますね。食事はこの前わたしとも一緒にしたし・・・そのぐらいは大丈夫だったじゃないですか?いや一体どんなことがあってか・・・もしかしてそうなのですか?それ!?」

勘の鋭いチャン弁護士。

ミンジュン「何がですか?ちょっと休まなければ」

チャン弁護士「ちょっと我慢するでしょ。命をかけてすることですか?・・・それならお休みください。どうしてよりによって発たなければならないこの時なのか。残念です。もしかしてですが行かないというのはダメなのですか?心が深くなったあとに行ってしまったら行かなければならない人もそうですが残された人の心も深くなっただけ辛くありませんか?」

新証拠発見。

ユ検事とパク刑事がユラのストーカーだった死んだ男の家を訪れる。

壁一面にユラの写真が貼られていた。

大家のおばさんは明け方に帰ってくるので顔も見てない、家賃が下がるので噂にしないでくれと言っている。

そこで1ヶ月以内にユラが産婦人科に通っていた写真を発見する。

子供ができてたのかとパク刑事。

ユ検事が解剖記録にはなかったというがお腹が大きくない限りはそこまでは調べないのだというパク刑事。

事件がドラマチックだ、ユラに男がいたんだなと、パク刑事。

臨終体験館に一緒に来ていた男でひょっとしてミンジュンではないかと続ける。

美容室で二人が争ったことを根拠に言っているのだ。

さらにパク刑事の推測(妄想)はつづく。

ミンジュンとソンイが隣同士で親しくなりその後ユラと浮気した。

ミンジュンは品よくかっこいい上に金持ちだからそれでソンイが大騒ぎしてミンジュンはソンイを選択したがユラの妊娠が発覚して人面獣心のミンジュンはユラを亡き者にしようと船に乗ったと。

ミンジュンにはアリバイもあるし証拠もないのに勘ぐるのはやめようとユ検事。

チャン弁護士が帰り際にミンジュンを頼むとソンイに言う。

残ったおかゆは食べろと行って温めてくれともいう。

相変わらず外面のいいソンイ。

ソンイ「はい、そうしますお父さま。心配なさらずに行ってください」

チャン弁護士「もしもあいつが悪く振る舞ったとしてもおかゆにツバのようなものを吐いたりしてはダメですよ」

ソンイ「そうしようと思ってたのに」

唖然とするチャン弁護士。

ソンイ「あはは、冗談ですお父さま」

チャン弁護士「本当にダメですよ。大事になりますよ」

去っていくチャン弁護士。

ミンジュンの汗を拭きながら日記に書いてあった『最後の3ヶ月』という言葉がよぎるソンイ。

ソンイ「いや、まさか・・・」

ジェギョンもユラが妊娠初期だったことを知る。

初期だと解剖結果には出ないと部下。

ユラがジェギョンに驚くと行っていたのはまさにこの事だったのだ。

検事もユラの男を探すのに集中しそうでソンイが参考人として呼ばれル可能性も高くそうすればジェギョンとユラとの関係を話す可能性もあると部下。

交渉決裂。

ソンイの母ミヨンが他の芸能事務所カン代表と会う。

かなりいい条件を提示されたので驚いてしまうミヨン。

けれどカン代表はソンイも年が行っているのだから成人向けコンテンツを提供しようと言い出す。

それに怒り水をぶっかけるミヨン。

『お母さん』と言われているため誰があなたの母よ!とミヨン。

カン代表は金がほしいなら正直に言え、娘の霊を売って生きるチョン・ソンイの母じゃないか!もうこの業界ではアウトだ、あんたの食い扶持も終わりだ、正気になれと言い去っていく。

看病しながら眠ってしまったソンイ。

ベッドにいたミンジュンはリビングに移動していた。

ソンイ「ちょっと大丈夫?手はまだ治らない?どれだけ怪我したの?」

ミンジュン「全部治った、もう」

ソンイの手を避けるミンジュン。

ソンイ「お父さんが長くおられてあなたの心配をすごくされてたわ。お母さんよりお父さんとより親しいようね。わたしもそうなのに」

ミンジュン「お父さんはどこにいらっしゃるんだ?」

ソンイ「知らないわたしも。会えなくなってもう12年にもなるわ。会いたいのに一度も出てこないの。おそらくわたしが最後にすごく意地悪して愛想が尽きたんだわ」

12年前の回想シーン。

ソンイの両親が別れ話をしている。

二人は自分が育てるという父に対してミヨンが金になるソンイを連れて行くと行っている。

ソンイをデビューさせ、なにかとさせたのはわたしで今後成功させるというミヨン。

おまえができることは私もできる、あの子が稼ぐ金がどのくらいだと。そんな莫大な金をお前に任せられると?と言う父。

その言葉を聞いたソンイ。

父はそうではないと弁明したがソンイは聞かなかった。

こうなることを父は予測していたのだ。

ソンイ「触れないで。名前を呼ばないで。お父さんはもうわたしのお父さんじゃないわ。二度とわたしの前に現れないで。お父さんがまた私の名前を呼べばわたしはほんとに死んでやるから!」

家を飛び出してしまう。

ソンイ「歳を重ねたみたい。父がその時言った言葉が今は理解できる。本心じゃなかったはずよ。ただ今わたしが腹が立っているのは父がわたしといた時間がすごく短かったこと。そんなに短かいのであればわたしをそんなに愛さなければよかったのよ。その時それでわたし飛び出して本当に死ぬとこだったの。道路を渡っていこうとしてトラックに轢かれたのよ。けれどあるおじさんがわたしを助けたわ。今考えても本当に変なの。確かにトラックとぶつかる一歩前だったのに正気に戻ったらわたしが向かい側に行っていたって。そのおじさんの懐に抱かれて。そのおじさんは何なのだろう?人間なのか?幽霊なのか?服は真っ黒にしてて直符使者(チョスンサジャ)のようでもあり」

イファと同じことを言われるミンジュン。

ミンジュン「言葉が長くなったらいつも戯言を言うな」

ソンイ「そうよ理解して。わたしのようだと戯言も言うわよ。そうだけどこれは事実なのよ。わたしだけが見たんじゃないわ。フィギョンも一緒に見たの」

ミンジュン「眠ろう」

その時電話が鳴る。

ジェギョンからだ。

ソンイ「あ、ジェギョンオッパね。最近このオッパはわたしにどうしてよく連絡してくるの?」

ミンジュンは超能力でソンイの手からスマホを落とす。

ソンイ「あら、急にどうして!」

ジェギョンはソンイの部屋から電話をしていた。

ソンイを呼ぶジェギョン。

ジェギョン「運がいい女だな」

その声を聞くミンジュン。

ソンイ「ジェギョンオッパ、最近気配がちょっと変なの」

ミンジュン「何が?」

ソンイ「どうにもわたしを気にかけているようで。この前家に訪ねてきて健康管理をしっかりしろってわたしのことを気にかけご飯を食べようってしきりに電話してきて。あ〜、どうするか。わたしはこんなの本当に嫌なのに。兄弟の乱というようなのが起きるんじゃない?わたしのせいでフィギョンとジェギョンオッパとの友愛が割れたりしたらどうしよう?」

ミンジュン「世界の男たちがみんなお前を好きだと思ってるのか?」

ソンイ「そちらを除いてみんな・・・。確かにもうそちらも除いてはダメね。昨晩は少し当惑したわよ。理想形はどんななの?」

ミンジュン「そんなものはない」

ソンイ「わたしはあるのに。わたしは長く長くわたしのそばに居てくれる人。わたしのお父さんのように急に消える人ではなく本当に生涯長く長くいてくれる人。そう考えるとフィギョンがぴったりなんだけど」

急に立ち上がるミンジュン。

ソンイ「どうして?」

ミンジュン「明日の講義の準備をしなければ」

ミンジュンがいなくなったカウチにミンジュンがしていたように座り天窓から空を眺めるソンイ。

宣戦布告。

ジェギョンがソンイの家から出てくると玄関先にはミンジュンが立っていた。

隠しカメラの映像を思い浮かべるも『誰でしょう?』と問うジェギョン。

ミンジュン「わたしが問いたいですね。誰であってチョン・ソンイさんの家から出てくるのですか?その家に今人がいないことを知ってるのに」

ジェギョン「ああいないと?いると思って入っていったのに。もしソンイに会えば会えなかったことを残念だったと伝えてください。必ずまた会うようになるとも伝えて」

エレベーターに乗り、下に降りようとするジェギョン。

ミンジュンはドアの隙間に手をはさみエレベーターのドアを止める。

ジェギョン「なんですか?」

ミンジュン「やめろ」

ジェギョン「フッ、何を?」

指輪を触りCCTVが映らない場所までミンジュンに近づくジェギョン。

ジェギョン「お前のところにあるだろ?USB。それを出したほうがいいぞ。お前にもチョン・ソンイにも。フッ、おまえが知らないことがあるんだがおまえのような若造が相手をするそんな人間じゃないんだ。おまえが今生きているのもオレが生かしているからだ。チョン・ソンイも同様に。だからありがたく思え」

ミンジュンの手を払いエレベーターで降りる。

1階でエレベーターが開くと目の前にミンジュンが居て驚くジェギョン。

瞬間移動だ。

ミンジュン「あなたがチョン・ソンイに触れる瞬間あなたの実体は世間に暴かれることになるぞ。わたしがそのようにするから。それとあなたが知らないことがあるんだがあなたはわたしを絶対に殺すことはできない」

部屋に戻るミンジュン。

ソンイはカウチで寝ている。

ミンジュンはさっきソンイが言っていたことと、チャン弁護士が言っていたことを思い出す。

自分のそばに長く居てくれる人、残された人の気持ち、という話だ。

セミからのコンタクト。

翌朝ミンジュンが自転車で出勤している。

セミがミンジュンを待っていて写真で顔を確認したあと車から出て話しかける。

セミ「ト・ミンジュン教授?おはようございます」

ミンジュン「どちら・・・?」

セミ「あ、わたしはユ・セミと申します。俳優で」

ミンジュンはソンイと見たドラマを思い出す。

ミンジュン「あ〜」

セミ「すみません、今日授業をされると聞いて考えもなく探しにきました。ご存知かわかりませんがわたしはソンイの友達なのでソンイの問題を相談したくて。少し時間はいいですか?」

場所を移動する二人。

セミ「すみません、忙しいのに」

ミンジュン「話というのは何ですか?」

セミ「もしかして、ソンイにわたしのことを聞いたことがありますか?」

ドラマを見ながら悪口しか聞いてないため『さあ・・・』と答えるミンジュン。

セミ「わたしは以前にソンイから教授の話は多く聞いたんですよ。何かと助けを受けてくれてるって。ソンイがとても頼っているようで。実はソンイとわたしは中学校の時から一番親しい友達でした。けれど今回良くない事件が起こって誤解が起きて今はちょっと遠い状況です。わたしはなんとしても和解したいんですがソンイの性格を知ってらっしゃるかわかりませんが・・・」

ミンジュン「知ってますよ、性格」

セミ「簡単じゃないんです」

ミンジュン「簡単じゃないでしょう」

セミ「ハァ〜、状況が良くないのははっきりと分かるのですがどうにか力になりたいんです。そうなのですがわたしがこのようだと知ればまた嫌われるような・・・。お願いをひとつだけしてもいいですか?ソンイの状態がどうなのか悪いことが起きてないか心配で・・・。わたしが直接連絡できるってこともなくて・・・。気になる時連絡を差し上げてもいいですか?」

ミンジュン「そうしてください」

セミ「それでなのですが、ソンイとは最近初めてお会いになったのですか?でなければもともと知っていて親しい仲だったのですか?」

ミンジュン「チョン・ソンイさんが引っ越ししてきて初めて会いましたよ」

セミ「あ、そうですか。とにかくとても良かったです。いまソンイのそばに教授のような方がいらして」

ミナ「ソンイ姉さん、これ」

セミとソンイを間違えて呼んでしまうスタイリストのミナ。

ポム「おい、狂ったやつ!」

声を出さずに口を動かすポム。

セミ「ありがとう、美味しくいただくわ」

ミナ「ゴメンナサイ姉さん。癖になっててしきりに」

セミ「大丈夫よ。ソンイと長くいればこんなこともあるでしょ。あなたたちも苦労が多いわね。ソンイがああなってしまって気分も良くないのにすぐにわたしのところに来て」

ミナ「そんなことないです」

ポムも同調する。

セミ「けれどソンイのようなトップスターの仕事をしてわたしと仕事をすれば残念そうだわ。わたしがまあわからないところででも話して」

ミナ「本当にそんなことはありません。姉さんは天使の人じゃないですか?わたしは正直ソンイ姉さんと仕事をするのより姉さんと仕事をするほうが好きです」

セミ「ほんとに?」

ミナ「そうですよ!」

セミ「ほんとうなの?」

ポムにも聞くセミ。

ポム「当然でしょ、はるかに好きです」

セミは笑顔だがポムもミナもちょっとぎこちない。

キスシーン。

セミの撮影現場。

ミナを小突くポム。

ポム「天使?おい、おまえそれはないだろ?」

ミナ「チッ、オッパは?当然でしょ、はるかに好きですだって?」

ポム「はぁ〜、ほんとに食べて生きるってなんなのか」

ミナ「『ママが好き?パパが好き?』以降で最も答えるのが難しい質問だったわ」

ポム「オレは幼い時はパパの前ではパパが好きママの前ではママが好きって言ってたぞ。けれど心はいつもおばあちゃんだった」

ミナ「どうして?」

ポム「おばあちゃんが育ててくれたからオレ。今日も心はソンイ姉さんなんだけどオレセミ姉さんだと嘘をついた」

ミナ「わたしも・・・」

フィギョン「おまえら!」

フィギョンがやってくる。

そしてセミはどこかと問う。

ポムもミナもあそこだと指をさす。

撮影が始まっていた。

キスシーンだが角度が合わないなどその都度難癖をつけてわざと何度もする男性主人公。

フィギョン「あいつなんだ、あれ」

ポム「もともとわざとです。キスシーンの撮影のときだけNGを出して」

キスシーン後、誰かにキスシーンのことを電話している男性主人公。

すれ違いざまわざと強くぶつかりその男を倒すフィギョン。

男性主人公「あんたなんだ!」

高い目線から睨みを利かすフィギョン。

そしてセミを見つけて態度を急変させセミの方へ行く。

フィギョン「撮影辛いだろ?寒くないか?」

その様子を見て惨めな思いをするその男。

ソンイ「ユ・セミとどうして会ったの?あの子がどうしてト・ミンジュンを探して行ったの?」

ミンジュン「話したじゃないか。ユ・セミさんはあなたを心配していた」

ソンイ「心配?笑ってひっくり返るわホント。あの女はわたしの友達じゃないわもう。ほんとに呆れた子だね。一体何の心積もりなの?何を知りたいのよ?わたしがどんなに惨めに過ごしているか、そんなのを掘り出そうとしてるのよ、何よ!」

ミンジュン「古くからの友達だって?」

ソンイ「それがなんの関係が?」

ミンジュン「いい人のようだった」

フォークに刺したイチゴを投げるソンイ。

ソンイ「ト・ミンジュンさん今誰の側よ?わたしの側なの?ユ・セミ側なの?」

ミンジュン「いまそんな話じゃないじゃないか!」

ソンイ「どうして違うの?わたしがユ・セミが嫌だって言ったらそれなりの理由があるだろうという考えはないの?」

ミンジュン「そうだな、すべてのことには理由があるだろう。チョンソンイさんあなたの周りの人々があなたから去ったのにも理由があるだろうし」

ソンイ「なに?わたしがこのようになったのはわたしのせいなの?それなら?」

ミンジュン「周辺の人々がおまえの側についてくれないと恨む前におまえはなぜその人々をおまえの側にできなかったか考えてみろってことだ。もしかしたらおまえが孤独なのはおまえのせいだ!」

ソンイ「わたしは孤独じゃないわ。誰が孤独になったって!」

ミンジュン「違うならどうしてここに来ているんだ?友達のところにも家族のところにも行けずどうして見知らぬ男性の家にやってきてる?どうしてわたしに頼る?おまえは孤独なんだ。誰もそばに居なくて。どこにも行き場がなくて」

ソンイ「出て行け!」

ミンジュン「ここは私の家だぞ」

ソンイ「ひとことも言わずに消えろ!」

走って何処かへ行くソンイ。

告白へのリプライ。

フィギョン「オレのメール受けなかった?」

セミ「受けたわ」

フィギョン「けどどうして電話しない?」

セミ「怖くて」

フィギョン「あの時、おまえの電話を受けてすごく考えたんだ。今までオレが気配を読まずそうだったと。初めてソンイが好きだと告白したのもおまえでオレの手紙ソンイに届けてくれたのもおまえでソンイのせいで辛い度に呼び出して相談したのもおまえで・・・おまえおれがそうするたびにどれだけ辛かったんだ?すまなかった。けれどこれからもすまないようだ。オレを見てくれない人を好きなその気持、誰よりもオレがよく知っていて。おまえの心がほんとうに痛いこと誰よりもオレがよくわかっていてそれを考えるとオレも本当に残念なんだが愛する女性を他に閉じ込めておいてオレがおまえに何をしてあげられると言うんだ?オレがお前にしてやれるのは拒絶しかない。だから、すまない。心を整理したら連絡してくれ。オレは友人ユ・セミを失いたくないから」

フィギョンは去ろうとする。

セミ「フィギョン!ソンイのお隣に住むト・ミンジュンという男性どこかで見たようじゃない?」

フィギョン「急に何のことだ?」

12年前の写真を見せるセミ。

フィギョン「これはなんだ?」

セミ「言ったじゃない。12年前の事故でソンイを救ったその人わたし知ってるって。その時わたしが撮った写真よ。あなたが見たところどう?わたし、同じ人に見えるんだけど」

フィギョン「これ話になるか?12年前だぞ!お前も変わりオレも変わったのに」
セミ「どうなってるのかわたしもわからない。重要なのは12年前その人と同じような男性が今ソンイの前に現れたってことよ。ソンイはその人がその時のその人だってことまだ知らないだろうし」

疑惑。

ソンイの家に急ぐフィギョン。

ソンイ「チッ・・・消えろと言ったら本当に消えたの?あ〜、おなかがすいたのに」

チャイムが鳴る。

そのころミンジュンはチキンとビールを買っていた。

ソンイがドアを開けるとフィギョンがいた。

フィギョン「おまえがどうしてここに?・・・おまえがどうしてト・ミンジュンの家に来てる!?ト・ミンジュンどこだ?」

ソンイ「ちょっと、あんたどうしたの?」

フィギョン「出ろ、出ろって!」

ソンイをつかみ出すフィギョン。

ソンイ「あ〜、離してよ!行くところがなくてここに来たのよ。病院から出てきた日誰かがウチを乱闘場にしてすごく怖かったんだけど行くところがなかったの」

フィギョン「どうしてないんだ?母さんの家もあるしホテルもあるし」

ソンイ「お母さんの家はもっと嫌でわたしが女優なのにホテルに・・・わたしが今そんな状況なの?」

フィギョン「けれどここじゃない。本当に行くところがないならウチに来ていろ」

ソンイ「話になる話をしてよ」

フィギョン「じゃなきゃオレが家を買ってやる。そこにいろ。とにかくここは駄目だ。他のところは全て良くてもここは駄目だ」

ソンイ「イ・フィギョン、落ち着いて」

フィギョン「チョンピョンにウチの別荘がある。ご飯を作ってくれるおばさんもいるし警備で立っている人も多い。そこに行っておこう当分の間。そこに行っておこうソンイ。おまえ最近大変だったじゃないか。行って休んだりして、そうしよう」

ソンイ「車に先に行っていて。荷物を持って下りて行くわ」

フィギョン「(聞いてくれて)ありがとう」

ソンイ「そうね。あんたのいない間にわたしの荷物をサクッとすべて抜けた時の喪失感を一度感じてみなさい!」

独り言を言いながら荷物をまとめるソンイ。

ミンジュンが帰ってきてフィギョンとロビーで会う。

12年前の事故のシーンを思い出しつつじっくりと近づくフィギョン。

ミンジュン「なんですか?」

黙って出ていくのは気が引けるソンイは置手紙を書いている。

『わたし、チョン・ソンイだけどとにかくこの間ありがたかったわ。わたしはチョンピョンにあるフィギョンの別荘・・・』

そこまで書きかけて手が止まる。

ソンイ「どうしてわたしがどこに行くのかまで書くの?探してってことのようじゃない。なくしてみて、書かない書かない」

用紙をゴミ箱に投げ込もうとするソンイ。

だがゴミ箱の中にある血のついたガラス片を見つける。

事故の時のヘッドライトの破片だと気づくソンイ。

ミンジュン「なぜこうかって?」

フィギョン「あんた誰だ?」

ミンジュン「なに?」

過ぎ去ろうとするミンジュンをつかむフィギョン。

フィギョン「あんたもしかして、12年前ソンイを助けてくれたその人か?」

第9話エピローグ。

ミンジュン『わたしが持つ能力で他の人を助けたことは何度にもなりません。能力を顕すのはわたしの正体を顕すということなのでわたしが誰かと知っていてもわたしを利用することなくあるがままを受け入れてくれる人は多くなかったからです。能力の限界はわたしもよくわかりません。空間移動は場所を正確に知っているならば半径2・300キロメートルは可能なようです。時間を止めるのは約一分程度可能です。重要なことはわたしのからだの状態です。チャン弁護士に初めて会った時わたしのからだの状態がとても悪かったために危うくその方を殺すところでしたね』

1976年ソウルの銀行。

※当時ミンジュンは銀行員だった。

同僚のミン・ギョンウクがお茶を飲んでと言い持ってくる。

チャン弁護士『どうか助けてください。そのお金がなければわたしの母、手術を受けられません。わたしの司法試験の世話をされるのに死ぬ苦労された方です。どうか人一人救うと考えて。母が亡くなればわたしも死にます』

支店長にすがる若き日のチャン弁護士。

母の手術代を借りに来たのだ。

支店長『こいつここがどこだと思って・・・』

チャン弁護士『どうかお願いします』

チャン弁護士をはねのける支店長。

チャン弁護士『支店長、支店長・・・』

その後、泣きじゃくり屋上から飛び降りようとするチャン弁護士。

ミンジュン『ちょっと待て!』

けれど体調が悪くミンジュンもよたよたしている。

※唾入りのお茶を飲まされたから。

なんとか時を止めすでに空中に身を投げているチャン弁護士の足を引っ張り助けるミンジュン。

助けられ、遠くにいたはずのミンジュンが目の前にいるのを見るチャン弁護士。

チャン弁護士『どなたですか?幽霊ですか?』

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