星から来たあなた |
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第8話 あの崖で。 ソンイが拉致されたあと車にのせて崖に向かって落とそうとしていたのはジェギョンの配下の者の仕業だった。 ミンジュンはビルの屋上から神経を集中させ必死でソンイの声を拾い、瞬間移動で駆けつけ車が崖から落ちる寸前でボンネットを叩きつけてなんとか車を止めることに成功する。 イファを救えなかった場所でソンイを救ったミンジュン。 呆然と車を降りたソンイが見たときにはもうミンジュンの姿はなかった。 車の前側は破壊されていた。 ソンイ「ト・マネージャー、ト・ミンジュンさん、どこに行ったの?早くちょっと出てきてよ、怖いじゃないの!どうかお願いだから」 電話が鳴る。 フィギョンだ。 フィギョン「どうして通話ができな・・・(ソンイの鳴き声)どうした?どこだ?」 ソンイ「わからない、わからない。ここには木もあって崖もあるんだけど、わたしはここがどこかわからないわ。フィギョン。わたしほんとに死ぬところだった・・・」 ソンイに一旦気を確かに持って位置情報が追跡できるようにしろというフィギョン。 そしてソンイの元へ行く。 車に乗せ病院へとソンイを連れて帰る。 病院前で。 フィギョン「お隣!おまえはこいつを病院に連れてきたなら、ちゃんと守らないといけないんじゃないか?何が起こったと思うんだ?」 ソンイ「どこから来たの?」 ミンジュン「言ったじゃないか、警察に行ってくると」 ソンイ「ほんとに警察署から来たの?もしかしてわたしのところから来たんじゃなくて?言ってよ。さっき崖に来たんじゃない?わたしは確かに見たのよ、ト・ミンジュンさんを」 ミンジュン「何を言っているのかよくわからないんだが。警察署のことはうまく解決した。友達がいるからわたしはこれで行ってもいいだろ?」 フィギョン「当然だ、行け。それと、オレはただの友達じゃなくて彼氏だ」 振り返り無言で去るミンジュン。 左手はずっとポケットに入れたままだ。 さっきソンイを助けた時怪我をしたから。 フィギョン「崖で何を見たんだ?」 ソンイ「見間違ったようだわ」 フィギョン「驚きすぎて幻影を見たんだろ。そうだな、そういうこともある」 幻影でもお隣ではなくオレを見ろとフィギョン。 ソンイ「フィギョン、ありがとう。わたしさっき本当に死ぬかと思ったわ。あなたがいなかったらわたしはどうなってたか」 フィギョン「おれこそ、おまえがどうにかなったらどうなったことか。入ろう」 怪我をした左手をポケットから出すミンジュン。 ジェギョンの部下は崖で起きたことをジェギョンに話す。 気づいたらふたりとも離れた高速道路に投げ捨てられており行ってみるとすでにソンイはいなかったと話す。 急に出てきた者の正体もわからないという。 1時間記憶が無いのは変な薬を使ったからじゃないかと医師に抗議するフィギョン。 生理食塩水以外は投与していないという医師。 誰かが来て注射をしたとソンイが言っているとフィギョン。 ソンイは医師のガウンを着ていたが顔は見ていないという。 医師は血液採取をして検査に回すという。 CCTVを確認するのはどこに行けばいいのかと問うフィギョン。 ミンジュンの家へ。 家で手の治療をするミンジュン。 傷口から引き抜いたガラスの破片をゴミ箱に捨てる。 ソンイはこれ以上病院に居たくないと別の病院に行こうというフィギョンの提案を断り家に帰ってくる。 CCTVも壊されているから計画的だ。けど心配するな、オレが捕まえるからとフィギョン。 もう疲れてうんざりだからさっきも言ったように警察には通報しないでとソンイ。 ソンイ「どうしたの?」 フィギョン「いつまでおまえ一人が入るのを見なければならないんだ。不安で痛ましく本当に嫌だ」 入って休むとソンイ。 なんかあったらすぐ電話しろとフィギョン。 フィギョンが去ったあとソンイは家に入り大きな声を出す。 家がグチャグチャに荒らされていたのだ。 それを聞いたミンジュンがドアを叩く。 ドアを開けるソンイ。 ミンジュンが入ろうとすると引き止めるソンイ。 ソンイ「まだ隠れていたらどうするの?」 ミンジュン「どこか外のところに行き場所はあるか?」 行き場のないソンイをしばらくここにいろと連れて帰るミンジュン。 ソンイ「わたしがつらくなると不思議にもいつもト・ミンジュンさんがいるわね。それでさっきあそこにいなかった?」 ミンジュン「あそこってどこなんだ?」 ソンイ「いいえ、わたしはますますおかしくなるみたいね」 ミンジュンの左手の包帯に気づくソンイ。 ソンイ「どうしたの?怪我したの?」 ミンジュン「警察署から出たところで接触事故にあったんだ」 ソンイ「どんな接触事故?」 ミンジュン「大したこと無い。気にせずに早く洗って寝よう」 なんとなく不思議がるソンイ。 セミの憂鬱と証言。 フィギョンはセミの家の前まで来ていた。 薄着で出てくるセミを車に乗せるフィギョン。 ソンイの話ばかりするフィギョンにうんざりするセミ。 行って一緒に寝てやってはダメかと問うフィギョン。 更にエスカレートして話すフィギョン。 セミ「その話をしようと来たの?」 フィギョン「おまえ驚かない?ソンイがそんなコトされたのに?」 セミ「何をわたしまで驚くの?あの子が何かされれば驚いても助けてくれるという人は散らばったけどソンイになにか起きればフィギョンあなたがじっとしてられる?」 フィギョン「おまえ、ソンイと喧嘩したのか?オレたちのソンイは最近大変じゃないか。アイツまたおまえに気を使わせたのか?優しいおまえが理解しろよ」 セミ「フィギョン、わたし優しくしないとダメ?わたし別に優しくないの。実はわたしまったく出来なかったの。けれどただ優しいフリをしてるのよ。そうすればあなたと・・・」 フィギョン「おまえがどうしてやさしくないんだ。オレのセミ、世界で一番優しいぞ」 セミの頭を撫でるフィギョン。 フィギョン「だからオレはソンイにできない話も全ておまえにしたじゃないか」 12年前にソンイに片思いしたフィギョンから相談され助けてくれ、おまえ優しいじゃないかと言われたことを思い出すセミ。 セミは唐突に12年前事故の時にソンイを助けたあの男性を見たと言い始める。 自分もあの事故を偶然見たんだと。 セミ「もしも、ソンイにこの話をしたらどうなると思う?ソンイあの人をずっと待ってたの」 涙を流すセミ。 フィギョン「その男性は誰なんだ?誰なんだそいつ?」 男の服で。 髪にタオルを巻き、ミンジュンの服を着たソンイ。 ソンイ「ごめん」 しおらしいソンイ。 ミンジュン「何が?」 ソンイ「わたしが映画をたくさんとったからわかるのよ。わたしほどの女が服がないという言い訳でこのようにぶかぶかな男の服を着て家の中を歩きまわるのがどんな意味なのか」 ミンジュン「どんな意味なんだ?」 ソンイ「男としてはときめくでしょう。それでも他の誤解はしないで。わたしは本当に 家に服を取りに行くのが怖くてそちらの服を借りたのだから他の意図は全くないということ」 ミンジュン「意図があろうとなかろうと関係ない」 ソンイ「そうね、そう言うわよね。本人の口と心が別にふるまうのを自責しないでね。すべて人の心はそのようなものじゃない?美しいものを見れば嬉しくときめいて」 立ち上がるミンジュン。 ミンジュン「この陶器はどうだ?美しいだろ?」 ソンイ「ん?なに?」 ミンジュン「陶磁器がいくら美しくても陶磁器を見てときめかないだろ?似たような例で子犬が可愛いからと子犬を見てときめかない。松の木に気品があるからと松の木にときめかない」 ソンイ「なんの話?それ?」 ミンジュン「今わたしの前に立っているチョン・ソンイさんは陶器や子犬や松の木と変わらない存在だという話だ。だからわたしがそちらのせいでときめくかと申し訳なく思ったり心配しないでいいという話で無駄な心配をする時間に眠ろう」 ソンイ「わかったわ。陶器や子犬や松の木と変わらないわたしは眠るのに転がって寝るから布団を持ってきて」 ミンジュン「入って寝ろ」 ソンイ「わたし、ベッドで寝ろって?」 ミンジュン「今日だけだ」 ソンイ「あ〜、だからわたしは〜、今日いくつかの苦労をしたりしてぐっすり寝ないといけないんだけどこの前話したようにわたしはちょっと不眠症があって本一冊だけ見せて!眠ることができるように」 しおらしく言うソンイ。 ミンジュン「本を眠ろうとして読むって?」 ソンイ「書庫よ」 書庫へ。 本をピックアップするミンジュン。 ミンジュン「何も触るな」 ソンイ「触らない。ところでこの本は全部読んだのだろうか?だからわたしが言うのは、読んだのか?読むのか?」 ミンジュン「読んだんだ」 ソンイ「けれどどうして積んでるの?虚勢?とんでもない量でここに入ってきた人たちを生意気さを殺す。そんなの?わたしは教授だ!それ?わたしは一番理解できない。全部読み終わったものなら人にあげたり中古で売ったりするでしょ。どうして積んでるの?」 ミンジュン「うるさいぞ・・・選べ」 本を差し出すミンジュン。 ソンイ「何よ?外界語なの?」 ミンジュン「外界語じゃなくて漢字じゃないか!この前話した明心宝艦(ミョンシムボガム)だ」 ソンイ「いたずらするわね。眠りたいのよ」 明心宝艦をどける。 ソンイ「読まなきゃいけないし!あ〜、これは何?絵があるわね。うん、わたし絵があるのは好き。いいわ、いいわ」 陶磁器の人形の心。 選んだのは先日何度もミンジュンが読んでいた本だった。 ソンイ「エドワードは『どしん』という音とともに地に落ちて長くて汚い丘を転げに転げ落ちました。そしてついに止まると背中をつけて寝そべったまま夜空を眺めました。そして星座の名前を言い始めました。そうするうちにやめました。エドワードは考えました」 本を読むソンイ。 ミンジュンの声『別れのあいさつをする間もなく別れなければならないことを、どれくらいさらに継続しなければならないのだろうか?エドワードは心の深いところのどこかが痛かったです。エドワードは泣きたかったのです』 ソンイの声『心を開いて誰かが来るわ。誰かがあなたのために来るって。けれど先にあなたが心を開なかなければ』 ミンジュン「いや、違う、信じるな。信じてはダメだ」 寝室に行き読みかけの本を手に取りブランケットをソンイの肩まで掛けるミンジュン。 ミンジュン「けれど遅すぎました。陶磁器の人形の心はまた開き始めたのです」 時を止めソンイを眺める。 市場で買い物をするミンジュン。 ユムシだ。 リビングに出たソンイはミンジュンがいないので電話をかける。 けれどスマホは置いたままだ。 ソンイ「なによ、一言もなく消えて、一人は怖いわ」 外は雪だ。 傘を探すソンイ。 自分のヒールを見つけ自分じゃないと言いはってたミンジュンをのことを思い出す。 ソンイ「あ〜、ト・ミンジュンさん、あきれちゃうわ。明け方からどこに行ってらしたの?」 ミンジュン「ただ、あれこれ買いに」 行こうとするミンジュンの前に踊り出るソンイ。 ソンイ「ほれほれ、説明が必要な状況のようだけど?」 ヒールを見せる。 ソンイ「本人がしたことじゃないかって?人をどんな目で見るんだって?それで頭の黒い獣は収めたのではないって、女性の靴を持ってきてどう使おうとしたのよ?わたしのト・ミンジュン教授さまがそうされたようですけど」 ミンジュン「わたしが?」 ソンイ「ええ、あなたが」 ミンジュン「ユムシ、買ってきた」 ソンイ「チッ」 ユムシをつかみとるソンイ。 ソンイ「とにかく慎ましい子猫が・・・どこにあがるんだっけ?」 ミンジュン「カマド?」 ソンイ「はい、はい、はい、カマド、そうよ、カマド、そこに上がっていく。そんなことわざもあるじゃない。いや、女の靴が恋しいなら恋しい、正直に話せばいいじゃない!わたしがイメルダにも劣らず靴が多い女なのに。その何個かをあげることもできたのに」 ミンジュン「わたしはそんなんじゃ・・・」 ソンイ「あ〜大丈夫。人ごとに好みが違うこともあるじゃない。それを誰が罰する?あまり恥ずかしがらずに好む色やデザインあれば言ってよ。わたしがプレゼントするから」 言葉を返せないミンジュン。 ※ことわざ おとなしい犬がかまどに上がる 表面では礼儀正しいふりをする人が意外に正しくないことをするという意。 ユンジェは偶然にも父と会う。 けれど父のことは覚えていない。 父もまた名乗りはしない。 別れの時『行かないで』と自分にすがっていたユンジェを思い出し涙する父。 ありがた迷惑。 ユムシを完食しいいところで買ったわねとご満悦のソンイ。 ミンジュンが皿を片付けようとすると怪我してる人にさせられない、世話になってるからこのくらいはしないとと自分が片付けようとする。 言うやいなや床に落とし皿を割るソンイ。 ミンジュン「ふ〜、1693年に全羅南道長興(チョルラナムドチョンフン)の李朝白磁陶窯址で直接受けてきたのです。当代最高の職人からです。その価値は・・・お金に換算ができないでしょ・・・」 割った皿の価値だ。 ソンイは悪びれもせず食器棚に食器がいっぱいだからわたしが整理してあげようかという。 ミンジュン「するな!」 即答するミンジュン。 ミンジュン「皿洗いはわたしがするからどけ!」 ソンイ「ほんともう、わたしがするって。悪いと思わないで、大丈夫」 次は掃除だ。 ソンイ「ほんとにもう、わたしがするんだって。わたし掃除が上手なの。見る?」 振り向いた瞬間、掃除機の柄で壺を割るソンイ。 ミンジュン「ホ・ギュン先生の直筆が入った李朝白磁・・・はぁ〜」 青い顔のミンジュン。 ※ホ・ギュン 第15代光海君(クァンヘグン)代に活躍した有名な政治家。 ソンイ「Oops Sorry!あ〜、わかったわ。わたしが同じようなのを買ってあげるわ。いや、もっと高いのを買ってあげるわ。いっぱいあるわ、散らばって。イチョン休憩所のようなところに行くと。一旦わたしが掃除して」 ミンジュン「じっとしていろ何もせずに。叩きだすぞ」 バックハグではなくほとんど羽交い締めにするミンジュン。 ソンイ「I got it! だからこれ、ちょっと離して」 ぱっと離すミンジュン。 割れたツボを残念がる。 臨終体験館。 ユ検事とパク刑事がソンイに危害を加えようとした犯人のことで当該警察署を訪れている。 その犯人は接近禁止命令も受けるほどの筋金入りのストーカーだと担当刑事。 資料の中に『臨終体験館』と言う文字があり問いただすユ検事。 ある男とハン・ユラが臨終体験館に行ったのをそのストーカーが供述したというのだ。 これで遺書が直筆ではありながら本物ではないことがわかる。 けれど刑事はバカの言うことは信じられないからとそこに電話してハン・ユラの影も見たことはないとの証言を得ているという。 CCTVは?とユ検事が問うとCCTVは壊れていて確認できなかったと答える。 完全に他殺を疑い始めるユ検事とパク刑事。 ハン・ユラの死で何かを得る人物で臨終体験館に一緒に行った人物が怪しいと睨む二人。 ストーカーは顔を見ているので人相着衣から調べようという。 どんな奴だろう?とパク刑事。 ジェギョンが再びくまのぬいぐるみに仕込んだカメラで撮影した映像を見ている。 部下はUSBを回収できなかったことを詫びる。 ミンジュンがそのUSBを持っていた。 そしてそのUSBを触った時に浮かんだ映像を思い出す。 誰かが血を流し倒れそのUSBを握っておりそれを奪い取る映像だ。 セミのところにフィギョンがやってくる。 公園を歩く二人。 セミ「気になって来たの?」 フィギョン「もちろん気になる。けれどそれで来たんじゃなくて。お願いしようとやって来たんだ」 セミ「どんなお願い?」 フィギョン「オレにもソンイにも話すなよ。その男が誰なのか。お願いだ。おい、おまえもオレの気持ちがわかるんじゃないか?オレはおまえが不便だろうと話さないようにしといたけど、オレはおまえのインタビュー記事を見たんだ。すごく長い片思いをしてるって。寂しいな。おまえどうしてオレにそんな話をしないで。どんなやつなんだ?オレのセミ、そんなに長く苦労させる奴は。このオッパが一度会ってみるぞ!」 セミ「結構よ」 フィギョン「そう言わずにただサクッと告白しろよ。オレを見ろよ。受け入れられないようだったチョン・ソンイもずっと告白していたからちょっと揺れているようだぞ。おまえもただ、両目をつぶって告白しろ」 セミ「どうやって?」 フィギョン「何が難しいんだ?顔を見てするのが難しいようなら電話で。して『ちょっとあなたわたしはあなたを好き』とサクッとおまえの言葉だけ言って電話を切れ。正直、男ならおまえほどの女性が好きだと出てきたら揺れないことはない。とにかくガンバレ。オレのお願いも忘れずに」 昼にでてきたので戻ると言い去るフィギョン。 そんなフィギョンに電話をするセミ。 フィギョン「おい、このじれったいやつ。どうしてオレに電話するんだ?そいつにしろ。おまえが好きなそいつに電話しろって」 涙を流すセミの様子を見てフィギョンはセミの気持ちをやっと感じ取ったようだ。 セミの母がミンジュンを訪ねてきている。 お茶を出すミンジュン。 この前は挨拶ができなくてとミヨン。 そしてこの家は賃貸なのか両親が譲ってくれたのかなどと問い始める。 ソンイのマネージャーなら自分との緊密な関係を維持すべきだからわたしが気に入らなければということよとミヨン。 ハーバードを出たって?独身?カノジョは?お父様は何を?とミヨン。 ミンジュン「わたしが答えなければなりませんか?」 ミヨン「合格」 マネージャーは口の堅さが無くてはならないわとあれこれと言い気に入ったとミヨン。 そして連絡先を渡し24時間待機しておいてくれ、ソンイに何かあったら直接報告してくれと言いたいことだけ言って帰る。 漫画喫茶。 相変わらずの赤ジャージと青ジャージに呆れるホン社長。 そこにソンイが漫画を返しにやってくる。 ホン社長「わたしのト・ミンジュンさまにお貸ししたのにどうしてあんたが?」 ソンイ「わたしのト・ミンジュンさまだって・・・わたしが借りてこさせたのよ!」 そうとは知らずに長期延滞者だと恨み節を述べたじゃないのとホン社長。 ソンイ「いいから、わたしちょっと聞きたいことがあるの」 ミンジュンが消えたり現れたりしたことを聞いたホン社長は少し涙ぐみつつソンイの手を握り必ず病院へ行きなさいと言う。 精神科へ。 その後病院へ行き来たことは秘密にしてくれと言い今までのことを話しだすソンイ。 ソンイ「わたしを狂ってると思ってらっしゃるでしょ?」 思ってないから続けてくれという医師。 決定的事件があったんだけどと崖の事故の件を話しだすソンイ。 サンダーマンでもないのに車から出たら消えたんですと。 カルテに診断を記述する医師。 ソンイ「今わたしが狂ってると書かれているんでしょ?」 いいえと断りこれは幻影症だという医師。 短期間に受けたストレスのせいで急性ストレス反応の一種だと思えばいいとも言う。 特定の一人が見えるというソンイに依存したい心であり人だという。 けれどその一人に依存しすぎた場合互いに疲れる関係になるので他の人と話したり趣味に興じたりするのもいいと医師。 タクシーから降りるソンイ。 ミンジュンが自転車でやって来る。 医師の言葉を思い出しながらちょうど戻ってきたミンジュンを凝視してしまう。 ミンジュン「何を見てるんだ?」 ソンイ「わたしが何を?何をしようとここまで来たの?わたし一人でできるのに」 目をそらすソンイ。 ミンジュン「来てくれと・・・」 ソンイ「そう?わたしが?わたしが独りでできることまで他人に依存する、そんな性格じゃないんだけど。あ、だからわたしの話はそちらに依存して人をすっかり疲れさせて・・・わたしはそんな女じゃないから、万が一にも負担は持たないでよね」 ミンジュン「何を言ってるんだか」 先に行くミンジュン。 ソンイ「わたし、一人でできるって!」 工場にあるソンイの車。 誰かがブレーキマスターシリンダーを抜いたからブレーキが効かなかったんだと説明するスタッフ。 ソンイ「一体誰が?」 スタッフ「けれど幸いでした。前に岩のようなものがあったようですね」 ソンイ「いいえ、そんなのはありませんでした」 それならここは?もともとそうだったのですか?とボンネットの凹みを指さすスタッフ。 ソンイ「いいえ、そうじゃないけど」 どこかにぶつかったんでしょ?ブレーキがダメなのにひとりでに自然に止まりませんからとスタッフ。 崖の上にミンジュンが現れた時の様子を思い出すソンイ。 ソンイ「いいや、とんでもない」 首を横に振る。 ミンジュン「なにが?」 ソンイ「いいえ・・・わたしフィギョンと夕食の約束があるから行かないと」 ミンジュン「遅くなる?」 ソンイ「遅くなろうがどうなろうが神経を使わないでくれたらいいわね。わたしが言ったでしょ?わたしは誰かにすっかり依存して負担をかけさせて人をすっかり疲れてしまう、そんな女じゃないわ」 ミンジュン「誰がなんだって?どうしてさっきからそんなことを言うんだ?」 ソンイ「べつに、そうなんだって」 医者の言葉をまだ引きずっている。 ストーカーの死。 ユ検事のところに悲壮な顔でやってくるパク刑事。 そしてヘルメットのストーカーが死んだと伝える。 自動車専用道路で道も滑りやすいとわかっているはずのオリンピック大橋にどうしていくのか、遺書が他の用途に使われたことを証明する唯一の証人なのにとパク刑事とユ 検事。 レストランへ。 ソンイの目の前に急にジェギョンが現れる。 すごく驚くソンイ。 最近色々あったから過剰反応してしまったのだ。 フィギョンは先に着いているとのことで二人で一緒にエレベーターに乗りレストランへと行く。 ジェギョン「フィギョンに聞いたよ。事故があったって?気をつけろよ」 ソンイ「うん、ほんとに世の中には狂った奴が多いわ。わたしを拉致した奴がおそらくウチにくまのぬいぐるみを送って監視カメラを設置した奴と同じ奴なようなの。その人じゃなければまんまとやられるところだったわ本当に」 ジェギョン「その人って誰だ?くまのぬいぐるみの監視カメラ、発見したその人はだれなんだ?」 ソンイ「オッパ、どうして分かったの?わたしその人が発見したということは言ってないのに」 エレベーターが到着する。 笑みを浮かべ『わかりきったことだから』と言うジェギョン。 釈然としないソンイ。 食欲がなさそうだ。 フィギョンはセミからなにか聞かなかったかとソンイに問う。 何の話を?とソンイ。 唐突にソンイが話し始める。 ソンイ「ジェギョンオッパ、わたしはどうしてしきりにユラ姉さんが自殺じゃないって気がするんだろう?」 フィギョン「どういうことだ?急に?」 ソンイ「わたしが何かを見たのよ。ユラ姉さんがとある女性に会う動画のようなものなんだけどとても変だったのよ。そのある女性がユラ姉さんに言ったの。その人から離れろと、そうしなければあなたも死ぬって」 フィギョン「なんだって?その人は誰なんだ?」 ソンイ「わからないわ、それは」 フィギョン「その動画はどこにある?それをすぐに持って警察署に行こう・ハン・ユラが死んだのがもしかして他殺ならおまえの濡れ衣は全て剥がされるじゃないか」 ジェギョン「生半可なことを言うな。ようやく少し鎮まり始めたのに事件を育てる格好になるかもしれない。それでその動画はどこにある?オッパがちょっと見ようか?」 ソンイ「なくなったの」 ジェギョン「なくなった?」 ソンイ「なくなったの」 心の整理。 いつもの喫茶店で将棋を打つミンジュンとチャン弁護士。 ミンジュン「またわたしが勝ちましたね」 チャン弁護士「もう家に帰りますか?」 ミンジュン「えっ?もう?」 チャン弁護士「もうですって?今外には雪も降って車も滞ってるのに早く帰らないと」 ミンジュン「もう一局打ちましょう。家に帰っても待つ人もいないし」 チャン弁護士「いついましたか?待つ人」 ミンジュン「そうでしょ。いつもいなかったでしょ」 チャン弁護士「その、チョン・ソンイさんが家に来ているということでしたが自分の家に戻りましたか?」 ミンジュン「いいえ、まあ夕食の約束があるとかなんとか。雪も降り気温も寒くまさに昨日あのような大きな事件を経験した女性がまあ、自分の足でほっつき歩いてるのにわたしが何だと言うでしょう?なんの関係が?」 チャン弁護士「チョン・ソンイさんを好きだという、あの男性に会いに行ったんでしょ?」 ミンジュン「どうして?」 チャン弁護士「先生も嫉妬をなさるようで」 笑みを浮かべるチャン弁護士。 ミンジュン「はい?思い間違いです」 チャン弁護士「もう残り二ヶ月ですね。おおよそ先生の身辺整理は出来ましたが心の整理はわたしが代わりにして差し上げることもできず」 ミンジュンが家に帰ると玄関にショートブーツが脱ぎ捨ててあった。 ビール&チキンを用意するソンイ。 ミンジュン「遅くなるって?」 ソンイ「なんとなく疲れたりしてて・・・来て座って」 ミンジュン「これは全部なんだ?」 ソンイ「見てわからない?チキンとビールよ」 ミンジュン「夕食を食べて来るといったのにご馳走にならなかったのか?」 ソンイ「わからないわ。変に食欲がなくて何も食べなかったんだけど家に帰るやいなやお腹が空いたのよ。なのでデリバリーしたの」 ミンジュン「たべろ、それじゃあ」 去ろうとするミンジュン。 ソンイ「ちょっとどこいくの?一人で食べてどんな楽しみが?一緒に食べましょ」 ミンジュン「わたしは酒を飲まない」 ソンイ「そんなのがどこにいるの?飲みつけてないからそうなんでしょ?お酒も飲めばイケるわよ」 ミンジュン「飲んだことがないんじゃないからそうだろう」 昔の失敗を思い出す。 朝鮮時代。 妓房(キバン)で燕山君(ヨンサングン)にいわれを持つ『混沌酒』を飲まされた時のことだ。 混沌酒はマッコリと焼酎を混ぜた、現代で言えば爆弾酒のようなものだ。 混沌酒は一度飲めば霊と通じて再び飲むと自然と一つになるととある両班。 一気に飲み干そうとみんなで飲む。 けれどミンジュンは飲まないのでその両班がどうしてだと問う。 自分は馬で来たからと言うミンジュン。 最近酒によって馬に乗って落馬で死んだ事故があり殿下(王)も飲酒乗馬を禁止したではないかというミンジュン。 馬を置いて輿を呼べばいいという両班。 しかたなく一気に飲むミンジュン。 盛り上がる両班たち。 ほろ酔い気分になったミンジュンは手あたりしだいに超能力で物を浮かべ始める。 何をしてるんだタモン(ミンジュン)と問う両班も浮かして気絶させる。 そして『おばけだ!』と周りをパニックに陥れる。 さらに月をバックに馬で天駆ける始末。 そんなことがあったから酒を控えていたのだ。 陶磁器・子犬・木。 ソンイ「ほんとに飲まないの?」 ミンジュン「飲まないって何度も言っている」 ソンイ「どうして?陶磁器とは酒は飲まない?子犬とは飲まないってことなの?木とは?酒を飲むはずもないわね。もう酔ったのか?いいえ、全然・・・わたしの話をよく聞いて。人と人との仲はケミというのが存在するの。ケミ・・・って何かを略した言葉のようなんだけど、あ〜、まあとにかく『科学作用』とまあ、そんなもの。それでわたしはケミの塊よ。すべての男たちがわたしを見ればすごく自然に大騷ぎが起こってめらめらと燃え上がるの。女性ではケミがないの?違うでしょ。すべての女がわたしを見ればすごく自然に嫉妬に燃え上がるの。一言で言えばわたしは魅力の塊、嫉妬の塊、ファム・ファタール、ね?」 ミンジュン「酔わずにそういうのなら病院に行かなければならないようだが」 ソンイ「行ったの。わたしが病院に行ったの。わたしがおかしくなって頭にくる点はこの点よ。わたしはあなたのせいで病院に行って診断まで受けてあなたへの依存症が強いと診断まで受けたのにどうしてあなたはわたしを見て陶磁器・子犬・木、このような例を思い浮かべることができるの?チョン・ソンイの人生にこんなことはなかったの。あなたが人間ならどうしてわたしを見て何でもないように居られるの?これは単純な問題じゃないわ。わたしが今後再起しなければならないという話しよ。このありさまで、どうやって大衆の面前に自信を持って再びトップスターの座に上がることができる?だめだわ。わたしに15秒ちょうだい」 ミンジュン「どんな15秒?」 ソンイ「わたしの別名は15秒の妖精よ。15秒広告だけで人々をサクッとみな惹きつけるのよ。だからわたしに15秒ちょうだい。15秒後にもまだわたしが陶磁器・子犬・木なら認めるわ。わたしが無魅力だということ」 ミンジュン「チッ」 立ち去ろうとするミンジュン。 そんなミンジュンを引き止めてスマホでタイマーをセットし『始め!』と言いミンジュンを見つめるソンイ。 色んな表情でミンジュンを見ていたが目をそらし始めるソンイ。 15秒が経ちソンイが諦めた瞬間ミンジュンはソンイを引き寄せキスをする。 驚いたソンイだったがそのまま目を閉じる。 第8話エピローグ。 チャン弁護士『おおよそ先生の身辺整理は出来ましたが心の整理はわたしが代わりにして差し上げることもできず』 ミンジュン『心の整理がつきません。しきりに振り返ってしまいます。 そしてしきりに後悔します。一度も他の人と同じ日常を過ごしてみなかったこと。わずかな朝食と夕食を誰かとともに分けて誰かが待っている家へ帰って、一人の人が好きだという真心を表現してみて、そんなの・・・。百年も生きることができない人間がすべてして生きる、それで些細だとあざ笑っていた・・・そのようなものなど・・・。その小さくて、温かくて、美しい日常の全てのものが今になってやってみたくなりました。わたし、どうすればいいのでしょう・・・。』 第9話へ |