星から来たあなた
第16話

キスの代償。

ソンイ「これはまだ知らないようで確実に話すわよ。わたしももうト・ミンジュンさん嫌いよ。こんなだからもっと嫌い!だからわたしの目の前からいや、わたしの人生から消えてよ。どうか。そして本人がどんなに利己的なのかわかればいいわね」

去ろうとするソンイ。

ミンジュンが周りの建物の明かりをつける。

振り返るソンイ。

そしてソンイを宙に浮かせて自分のもとに引き寄せる。

ソンイ「いまこれは、何をするつもりなの?」

ミンジュン「わたしがおまえにすることのできる、もっとも利己的なこと・・・」

ソンイにキスをするミンジュン。

ミンジュンを振りほどく。

ソンイ「ト・ミンジュン、あなたホントにできないことがないわね。ホントにすごいわ」

再び去ろうとする。

そんなソンイを引き止めるミンジュン。

ソンイ「どうして?あなたわたしを好きなの?好きなの?」

なにか言い出しそうだが言わないミンジュン。

ソンイ「ト・ミンジュンさん、ほんとに嘘がつけないのね。この雰囲気ただ好きだと言うこともできるのに」

背を向けるソンイ。

続けて。

ソンイ「あなたの星ではそうなの?好きでもない女にキスしてまさにそうなの?わたしたちの星ではこれはダメなのよ!わたしたちの星の男は自分が好きな女にだけそうするのよ。これはダメよ。ト・ミンジュンさんそうじゃない?」

反応がないので振り返ってみるとミンジュンは苦しそうに地べたに這いつくばっていた。

ソンイ「あ〜、こんな、くそホントに。ト・ミンジュンさんしっかりしてよ!あ〜、わたしもどうしてよ!あ〜」

文句を言いながら階段を登り車がある場所までミンジュンを引きずって行くソンイ。

そして車の助手席に乗せる。

ソンイ「いや、なんの男が超能力があれば何するって?どんな男がキスだけしたら気絶なのよ!!!(運転席に乗り)キー、キーはどこにあるの?」

ミンジュン「ポケット」

消え入るような声で答えるミンジュン。

ソンイ「ポケット?」

キーを取り出しエンジンを掛けるソンイ。

ミンジュンのシートベルトをしようとするとミンジュンの頭がソンイの方に倒れてくる。

額に手を当てる。

ソンイ「あんた、ほんとにどの星から来たの?」

ミンジュンはソンイの肩に突っ伏してしまう。

無謀運転。

ソンイ「おい、これどけ!いまわたしたち急いでるのが見えないの?どかないの!クソ人が死にそうなのに」

クラクションを鳴らしまくり無謀な運転をするソンイ。

パッシングもしながら。

ソンイ「そこの白い太っちょ、わたしたち今急いでるのが見えない?」

暴言を吐く。

ミンジュン「ゆっくり行け。こんなのホントに死にそうだ」

ソンイ「わたしが今そちらを生かそうと最善をすべて尽くしてるのが見えないの?大丈夫ト・ミンジュンさん?大丈夫?」

ミンジュンの方を見るソンイ。

ミンジュン「・・・」

ソンイ「えっ?なんだって?言ってよト・ミンジュンさん!え?」

ミンジュン「前、お願いだから前を見ろって」

前を指さすミンジュン。

目の前には信号待ちの車。

急ブレーキをかけるソンイ。

ソンイ「あ〜、クソ。ぶつかりそうだったわ」

スキンシップの限界は?

ミンジュンの家に彼を担ぎ込む途中、共に倒れながらもなんとかベッドに寝かせるソンイ。

ミンジュンの胸をさする。

ソンイ「言いなさいよ、これは偶然じゃないわよね?」

ミンジュン「何が?」

ソンイ「あの時もキス、それするやいなや気絶。今回もするやいなや気絶。何よ?なんのせいなのよ?(ミンジュンの顎を掴み顔をこちらに向け)聞いてないふりしないで話しなさいよ!何なのよ?どんな秘密があるのよ?外界人(宇宙人)よりもっとショッキングなことなの?どう見てもスキンシップに何か問題があるようだけど。ああでも手をつないだ時には別に問題はなかったじゃない?だけどキスはダメだってことなの?そうなの?あってる?」

ミンジュン「うるさい」

ソンイ「いや、ホントにそちらの言うとおりならそちらが外界人ならわたしとは別の種族なんじゃない。そちらは外界男、わたしは地球女。はぁ、なんなのよホント!あ、とにかく何がよくて何がダメなのか知らなきゃまあ注意事項など。どこまでがよくて、どこまでがダメなのか。だから・・・キスから全てダメなの?それ以上は全てダメ?」

ミンジュン「ちょっと・・・」

ソンイ「あ〜、どちらにしろ外界人ということをカミングアウトしたのに何を言えないって?まあ何はよくて?まあ何はダメなのか?」

ソンイを引き寄せ抱くミンジュン。

ミンジュン「これはいい」

ちらっと自分の方に回るミンジュンの手を見て笑みを浮かべるソンイ。

ソンイ「いいのはわかったからこれちょっと離し・・・」

更に手に力を込め引き寄せるミンジュン。

ソンイ「あ〜、離してって。人の話を少しも聞かない・・・しかたないわ・・・」

その状況に甘んじるソンイ。

歴史を超えた三角関係。

ソンイ「だけどわたしたち、整理ということをちょっとしましょう。わたしが最近ト・ミンジュンさんに『わたしはどう?わたしは女としてどう?』って聞いてみたでしょ。その後にト・ミンジュンさんわたしをガン無視したことは言うのさえ口が痛くて。それとともにト・ミンジュンさんは簪の主人の女性を取り上げながらわたしがその女性に似ていてわたしに関心があっただけ、わたしがあの女性じゃないなら関心がないって言った?言わなかった?あ、まあとにかくそれでわたしが心を折ったんじゃない?だけど今日、ト・ミンジュンさんはいきなり来てわたしに同意しなかったキスをしたって話よ。あ、わたしの立場では気にしないなんてできないじゃない。そのキス、誰に対してしたの?わたしに対してしたの?それともわたしに似たその女性にしたの?世界で一番頭の痛い三角関係が何か知ってる?思い出の中の女との三角関係よ。現実にいる女ならわたしがどんな女なのか知ることもできる。タイマンでも涼しく張ってみることができるのに。これは思い出の中に剥製されて美しく残っている女にどうやって勝てるのよ?ところでわたし、それは知りたいわ。さっきのそのキス、誰に対してしたの?わたしにしたの?それともその女性にしたの?ん?え?」

ミンジュン「チョン・ソンイにしたんだ」

ソンイ「誰?」

ミンジュン「チョン・ソンイ」

ソンイ「なんだって?誰?」

ミンジュン「チッ、チョン・ソンイ」

ソンイ「わたし?」

ミンジュン「そうだ、おまえ」

抱きあう二人。

説教。

ユンジェが階下に降りてくる。

7時になってもいない姉。

『なんだ?』と言いソンイに電話する。

ユンジェ「おまえ、今時間は何時だ!」

ソンイ「ああ、夜中に撮影して今まさに地下駐車場に到着したの。今入って行くわ」

ミンジュンの家の玄関を後ろ向きに出るソンイ。

そしてパッと自分の家の方を見て驚く。

そこにユンジェが立っていたのだ。

ミンジュンの家のドアを目線で舐めるユンジェ。

ソンイ「ああ、そうね、あんたがどんな考えなのか分かるわ。だけどそんなんじゃないわ」

ユンジェ「夜中に撮影してただ?」

ソンイ「ええ、誤解さえもするわよね。だけどそんなんじゃないわ」

ユンジェ「ついて入って来い!!」

兄のような調子のユンジェ。

憤りまくっているユンジェ。

ユンジェ「一晩中、その男の家にいたのか?おまえ正気が失せたのか?」

ソンイ「言ったじゃない。あんたが考えてるそんなんじゃないわ。あの人の状態がそんな状態じゃなかったんだから」

ユンジェ「状態の何が重要なんだ?男はみんな同じバカなんだ」

ソンイ「いや〜」

ユンジェ「日が落ちて、屋根があって、壁で仕切られていて、それで終わりだ!」

ソンイ「なにが?」

しおらしいソンイ。

ユンジェ「男たちが必要十分と望む条件のようなのものは、え、真っ暗で、四方が壁だ、屋根もある。そうして思いつく考えはまさに!一つだって」

ソンイ「あいつ、そんな人じゃないって。あの人が病気なの」

ユンジェ「病気の男は男じゃないのか?え?おい病気なら布団もかけてたんだろうな?おいおまえ、布団までかけてあったならホントにゲームは終わりだ!」

ソンイ「あ〜考えてみたらムカつくわ。おいおまえ。なんにもできなかったってなんにも。陽も落ちてて真っ暗で屋根あって壁もあって布団もあったのに、あんたが考えるそんなのな〜んにもできなかったって!何にも!!ハァ〜」

フィギョンの目覚め。

エレベーター内のジェギョン。

部下『その日、自己現場に弟さんが来られるとは思いませんでした。万が一にもそこでわたしを見ていたら・・・』と言っていた部下の言葉を思い出し指輪を触っている。

ジェギョンが病室に入るとフィギョンが目覚めていた。

フィギョン「お。兄さん久しぶり!」

手を振るフィギョン。

ジェギョン「フィギョンいつ起きたのですか?」

母「さっき午前に。簡単な検査も受けたわ」

ジェギョン「大丈夫なのですか?」

麻痺の状況もなく運動神経も問題なく数日で日常復帰ができるだろうと医師。

会長「わたしがなんと言った?何事もないといっただろ?このなんでもないようなのをちょっと見てみろ、ハハハハ」

ジェギョン「おまえ、大丈夫か?」

フィギョン「ちょっとくらくらするけど、あ、それはそうと博士わたしの髪を剃らずに頭蓋・・・」

医師「頭蓋穿孔術だよ」

フィギョン「あ、はい、とにかくそれできれいに手術してくれてありがとうございます」

ジェギョン以外の皆で笑い合う。

母「けれどこの子が事故にあったその日の記憶がダメだって?」

フィギョン「ああ、オレがソンイの撮影現場に食事を届けようと予約したのは思い出したんだけど。けれど事故にあったその日は思い出せないんだ」

フィギョンのお芝居。

ジェギョン「そうか?」

安堵しているかのように見えるジェギョン。

そんなこともあるという医師。

会長「あ〜その日だけ思い出せなくてもなんの関係もない。そんなこともある」

フィギョン「あ、ところで兄さん、オレのソンイはもう大丈夫だから退院したんだろ?」

母「まったく、この渦中にあの女が心配なの?あなたの体でも心配しなさい!」

フィギョン「母さん!オレのソンイにあの女なんて言わないでくれよ!」

息を吹き返して口を開けたからもう憎たらしい言葉だけ言うわねと口をつねろうとする母。

ソンイに電話するといいスマホを探すフィギョン。

不気味なジェギョン。

捜査への圧力。

ジェギョンの取り調べの際の動画を見るパク刑事とユ検事。

パク刑事「表情に変化が無いです」

ユ検事「心のなかを知り得ない顔です」

ハン・ユラはそう思っていたかもしれないが恋愛関係ではなかったと言うジェギョン。

仕事の関係で何度か会って食事も何度かしたけれどすでにご存知だと思うが、離婚して以来一人の女性と継続して付き合ってはいないとジェギョン。

前妻のことを問われ別れた仲だ、イギリスに行っていると聞いたがと答えるジェギョン。

事件となんの関係があるのかと問うジェギョン。

パク刑事は、調べたところハン・ユラさんが前妻に会っていたようですと言う。

ジェギョン「そうですか?それなら前妻が国内にいるという話ですか?それともハン・ユラさんがイギリスに行ったという話ですか?」

目つきを見ると本当に気になっているようでウソをついているようには見えないとパク刑事。

なにか知っていそうだから一旦前妻を見つけようとユ検事。

精神病院のようだが探しても見つからないとパク刑事。

カンナムに家を持っているが人気もないと。

次長検事に呼ばれるユ検事。

この次長はイ会長のラインなのだろう。

公判を終わらせるようにとユ検事に圧力をかける。

すべてを持っているS&Cの後継者が飲んなことをするはずがないからハン・ユラの自殺ということで集結しろという。

拳を握りしめるユ検事。

イ会長とジェギョン。

検察に呼ばれたのかと問うイ会長にありのままを話したが何もなかったと答えるジェギョン。

会長「おまえが失敗のようなことをする子ではないな。ハハ。忘れるな。おまえの兄が急にそのようになってしまって今やわたしの希望はおまえだ。一寸の失敗もなく、一寸の傷もなく。おまえはわたしの後継者じゃないか!」

ユンジェV.S.ミンジュン

ミンジュンが玄関を開けるとユンジェが立っていた。

ミンジュン「なんですか?」

ユンジェ「昨日、ウチの姉がここで寝たでしょ?」

ミンジュン「寝たのではなく・・・」

ユンジェ「ちょっとの間失礼します」

中にずかずかと入り込むユンジェ。

ミンジュン「なんの姉弟が人の家を自分の家のように・・・」

ソファーに座り足を汲んでいるユンジェ。

ユンジェ「楽に座りな」

顎で指示する。

ミンジュン「楽だ。ここは私の家なんだし」

ユンジェ「オレがキムチ桶からなんかあると見守ってきたんですよ。だけど結局は事がこうなりましたね?」

ミンジュン「フッ」

笑うミンジュン。

ユンジェ「ハッ、男対男として尋ねます。ウチの姉を好きですか?」

ミンジュン「名前はなんだって?」

ユンジェ「チョン・ユンジェです」

即反応してやっちまったという顔をする。

ユンジェ「今はそれが重要じゃなくウチの姉を好きなのかって!」

ミンジュン「フフフ」

含み笑いをするミンジュン。

ユンジェ「笑います?人を前に座らせておいて笑います?」

ミンジュン「わたしが座らせたのではなくてユンジェくんが勝手に入って座ったんじゃないか?」

ユンジェ「もちろんそうでしょう。男対男、オス対オスとして尋ねに来たのです。ウチの姉好きなのかって」

ミンジュン「チョコ牛乳飲むか?」

ユンジェ「あるんですか?・・・クソッ!」

即反応して再びやっちまったという顔をする。

完全にミンジュンペースだ。

ユンジェ「うちの姉が学校の時からあまりにも追い回すやつらが多くてオレが整理するのに忙しかったけど、あいつが好きだという男性は初めてだという話です。一体どうなってるのかわからないけど・・・」

顔を上げた瞬間何かが目に入り言葉を止める。

反転。

せっかくもらったチョコ牛乳もテーブルに放り出して立ち上がりフラフラ歩き出す。

ユンジェ「はぁ〜」

息を呑む。

ユンジェ「これは屈折望遠鏡でしょ?」

ミンジュン「うん」

ユンジェ「これはどこまで見ることができるのですか?」

ミンジュン「木星、土星まで見ることができるな」

ユンジェ「すっげ〜!」

更にまた何かを見つけ息をのみつつ指を指す。

ユンジェ「これは・・・」

極限等級などのスペックを言いアンドロメダ銀河や星団・星雲まで見える反射望遠鏡だと説明するミンジュン。

ユンジェ「これすべてヒョン(兄さん)のものですか?」

完全にさっきと態度が変わっているユンジェ。

ミンジュン「うん」

ユンジェ「お願いをひとつだけしてもいいですか?」

ミンジュン「しな」

ユンジェ「自撮りを一枚とってもいいですか?こいつのそばで!」

ミンジュン「撮りな!」

ユンジェ「星が好きなら写真を持っていくか?」

再び息を呑む。

ユンジェ「これ!」

ミンジュン「そうだ、アタカマ砂漠」

ユンジェ「チリのアタカマ砂漠。オレは金を稼いでここに行くのが願いなのに」

ミンジュン「わたしが地球上で最も好きなところだ。日照量が多く乾燥していて空も晴れていて夜になると砂漠に星が降り注ぐという気分になるんだ」

遠い目をするミンジュン。

そんなミンジュンに羨望の眼差しを捧げるユンジェ。

さらにミンジュンのレクチャーは続く。

ミンジュン「さっき話した意味は2014年3月に2003QQ47という小惑星が地球に衝突して、地球が滅亡するという話は信じるな。そのために勉強を諦めるなんてそんなことも言うことはせずに」

ユンジェ「NASAが話してそれで本当だと思ってたのに本当に違うのですか?」

ミンジュン「発見当時、NASAから衝突の可能性は25万分の1だと予報したんだがまた衝突の可能性は完全に廃したと発表したんだ」

ユンジェ「あ〜、そうなんだ。ヒョン(兄さん)の言うとおり小惑星を言い訳に勉強をしないなんてことはないようにします。久々にソウルが通じるヒョンに会ってオレはすっごく気分がイイです」

微笑むミンジュン。

ユンジェ「ウチの姉、何かと足りなくてヒョン(兄さん)にはほんとに無用の女だけどちょっと良くしてやってください。そんな意味でも言いたいことがあるのですが・・・」

ミンジュン「ん?」

ユンジェ「また遊びに来てもいいですか?」

ミンジュンに完全にノックダウンされるユンジェ。

事故のニュースをスマホで見ているフィギョン。

そこにノックをしてソンイが入ってくる。

フィギョン「オレのソンイが来たんだな。こっちに来いよ」

ベッドを叩く。

涙ぐみながらフィギョンにハグするソンイ。

フィギョン「どうした?オレの心臓が震えてまた気絶するぞ」

ソンイ「バカね。あんたが死んだらどうするところだったのよ?どうしてそうしたのよ?」

フィギョン「オレがどうして死ぬんだ?おまえを置いて」

フィギョンに向き直る。

ソンイ「あんたがどうにかなってたらわたしも生きてられなかったわ。わたしがどうやって生きるの?わたしのせいであんたが。わたしはしてあげらることもないのに」

フィギョン「おいチョン・ソンイ。おまえはオレがおまえを愛させてくれたじゃないか。こうしてみて(顔を傾けさせ)どこにも傷跡の残るような怪我はしてないか?」

ソンイ「フィギョン、ゴメン」

フィギョン「泣くなよ」

ソンイ「あんたがこうしてくれてもわたしは相変わらずあなたにしてあげられることがないってことよ。わたしがあなたを不幸にしたようね。わたしはト・ミンジュンさんが好きなの。それはわたしがどうすることもできないの」

少し残念な笑みを浮かべる。

フィギョン「わかるよ。オレもオレをどうすることもできないし」

ソンイの泣き顔を見る。

フィギョン「あ〜、そうするなって。オレ、ホントに惨めになりそうなんだけど」

ソンイ「わたしが友達のイ・フィギョンがいなくて生きていけるかはわからないけどそれでもこれはダメなようよ。わたしたち・・・」

フィギョン「チャンス!」

手を挙げるフィギョン。

12年前。

二人組に殴られるフィギョン。

ソンイ「フィギョン大丈夫?」

フィギョン「チャンス!」

ソンイ「ちょっと、こんな中でなんのチャンスなのよ!?」

フィギョン「どうして?ありがとうって!オレ、のちにチャンスを一度使わせてくれ」

ソンイ「誰が割り込めって? 男の子たちがわたしを苦しめようがどうしようがあんたがどうして割り込んでこんな目にあって」

フィギョン「ダメだろ?おまえを苦しめる子たちはオレで全部死ぬんだ。今後も同じだぞ」

ソンイ「笑わせるわホント。大丈夫?」

ハンカチでフィギョンの顔を拭くソンイ。

フィギョン「あああ(痛がる)申し訳なければ代わりにチャンス一度だけ使わせてくれって」

ソンイ「チャンスって何よ?」

フィギョン「あとでオレが願いをたった一度聞いてくれと言ったら聞いてくれ」

ソンイ「わかったわ」

フィギョン「ホントに?」

手のひらにサインを要求するフィギョン。

そしてソンイのおでこに手を当ててハンコを押し笑う。

(回想終わり)

フィギョン「思い出したろ?ハンコ押したの」

ソンイ「うん、思い出した」

フィギョン「おれ、その願いホントに使いたかったのをぐっと我慢して惜しんでたこと知ってるだろ?」

ソンイ「願いは何よ?」

フィギョン「今おまえが言おうとする言葉、言うな。もちろんオレが愛するおまえがオレを愛することがなくてオレは少し不幸だけどそんなおまえでもオレのそばにいなかったらオレは本当に不幸だろ?はぁ〜。だから、言うな。いま言おうとするその言葉」

そしてソンイの涙を拭う。

記憶の確認

夜。

ジェギョンがやって来ている。

ジェギョン「看病人が言っていてがソンイが来ていたって?」

先日ユラがジェギョンの彼女だということを刑事とフィギョンに話したとソンイが言っていたことを思い出す。

ジェギョン「そうだ、ソンイが死んだハン・ユラに関連しておまえになにか言ったのだと」

フィギョン「ああ、言ったぞ」

ジェギョン「なんだって?」

フィギョン「二人仲が良くないからハン・ユラのせいですごく疲れるって。自分を後ろですごく噛んで通ったって(陰口をたたいた)」

ジェギョン「それで、ほかには?」

フィギョン「ほかに?何?」

ジェギョン「ハン・ユラ事件に関連して別の話はなかったか?」

フィギョン「う〜ん、何か言ってたかな?何、どんなこと?・・・ただ、ハン・ユラの自殺は自分のせいじゃないのに悔しいと、まあそんな話をしたんだけど。他のことはよく・・・(目眩を覚え)オレほんとに落ちるときにどこか間違って当たったみたいだ。最近の記憶が粉々に割れたようだ。思い出そうとしたらクラクラして」

ジェギョン「そうだな。わざわざしようとすることはない。休めよ」

ジェギョンが去ったあと真顔になるフィギョン。

ユンジェはミンジュンから貰った写真を熱心に眺めている。

ソンイが病院から帰ってくる。

ユンジェ「お隣のヒョン(兄さん)人柄がいいな」

ソンイ「何?」

ユンジェ「星を愛する人に悪い人はいないんだよ。家に天体望遠鏡まで持っておいて星を見る人なら話はすべてついたよ」

ソンイ「はぁ〜、彼は星を見ているんじゃなくてそこから来たのよ」

ユンジェ「何?」

ソンイ「そんなのがあるのよ。あんた外界人(宇宙人)がいると見る?」

ユンジェ「いるさそりゃあ。いないのか?オレは言わせてもらえば、お隣にも外界人が住んでることもあり得る。このように見る人なんだ」

ソンイ「天才なんだけど」

ベランダに出るソンイ。

体操をしながら鼻歌風に『ト・ミンジュン』と言ってみる。

するとミンジュンが出てくる。

ミンジュン「どうした?」

ソンイ「大変!」

ミンジュン「どうして呼んだんだ?」

ソンイ「本当に聞こえるのか聞こえないのか呼んだの」

ミンジュン「ふざけてるのか?」

引っ込むミンジュン。

ソンイ「あ、ト・ミンジュン、ト・ミンジュンさん!そうだからってただ戻ってくの?聞こえるのか聞こえないのか呼んだんじゃなくて会いたくて、会いたくて呼んだんだって。ねえ会いたくて呼んだんだって!」

けれど反応がない。

ソンイ「あ〜、密かに心が狭い、あさはか、すごく了見が狭い、完全に」

振り返るソンイ。

するとミンジュンが空間移動でソンイの家のベランダに来ていた。

ソンイ「あ〜、急に!はっ一体どうやって?見ても見ても慣れないわホント」

ソンイのほっぺたを両手でつねるミンジュン。

ソンイ「ん!」

ミンジュン「あさはか?すごく了見が狭い?」

ソンイ「それはそうじゃなくて・・・」

更に指に力を入れるミンジュン。

ソンイ「離してよ、これ離さない!?あ、あ、離して〜あ〜、ホントに!離して離して!」

その後コーヒーを2杯入れる。

テーブルにいたユンジェ。

ユンジェ「オレに入れてくれたんじゃないのか?」

手を差し出す。

ソンイ「幼いのがコーヒーとは」

ユンジェ「けど、どうして2杯なんだ?」

ソンイ「わたしが全部飲むの。台本を覚えなきゃならないのに眠たくてどうして?」

もちろん、もう一杯はミンジュンのコーヒーだ。

ベランダでコーヒーを飲む二人。

ソンイ「ところでお父様もト・ミンジュンさんの様に別の星から来たの?」

ミンジュン「お父さま?あ〜、実は父ではなくて父のような方だ」

ソンイ「本当のお父さんじゃなくて?」

ミンジュン「うん」

ソンイ「それならここに家族は一人もいないの?」

ミンジュン「いるはずがないじゃないか」

ソンイ「そうなんだ・・・それなら家族もなく長い時間一人で?」

何も言わないミンジュン。

ソンイ「わたし嬉しい話があるの。わたし今回わたしのパパに会ったの。事故のせいで驚いて大変だったけどおかげでうちのパパにまた会えたじゃない。いますぐに一緒に住むことができるのではないけれどいつでも電話すれば再び会うことができるという思いに変に安心するの。何か心の片隅で重かったものが消えたようで」

ミンジュン「よかったな」

エレベータでのソンイ父との会話は知らないソンイ。

手すりに置くミンジュンの手の上に自分の手を重ねる。

ソンイ「ト・ミンジュンさんもうわたしがいるじゃない。わたしがト・ミンジュンさんのそばでずっとずっと逃げること無く・・・ハッ」

老化?

ミンジュン「なぜ?どうした?」

ソンイ「ところでト・ミンジュンさん、顔今後もずっとこのままなの?」

ミンジュン「えっ?」

ソンイ「そうなのね。100周年お写真を見た時もヘアースタイルだけ違って顔は今のようだったのに。どうなってるのよ?え?」

ミンジュン「わたしの星での時間とここでの時間の概念はとても違う。老化速度も同様で」

ソンイ「それならわたしはどうなのよ?わたしは皮膚も垂れて、シワもできて、白髪もできて、腰もだんだん曲がって、だんだんホホ(と笑う)おばあさんになるのに」

ミンジュン「おちつけ、おまえは老いてもきれいなはずだ」

ソンイ「結構よ!これでヴァンパイア映画を見れば女も首をさっと噛まれてヴァンパイアになるのよ。 男は老いないでずっとカッコイイけど女は続けて老いて行けばそれは一緒にいてもハッピーエンディングではないから!!」

ミンジュン「チョン・ソンイ!」

ソンイ「わたし今どんな言葉も聞きたくないの。わたし先に入って行くから。冷たい風当たれば皮膚の老化がはやくなるかもしれないじゃない」

ミンジュンを置き去りにして部屋に戻るソンイ。

ソンイ「あ〜、は〜、これでいいの?あ〜、滅んだわ」

パックに励むソンイ。

翌日はフラフープだ。

ソンイ「ダメよダメよ。明後日には30歳なのに。あ〜、あ〜」

嘆きながらフラフープを回す。

さらにテレビを見ていて童顔の秘訣にゴム手袋を吹く様子を見てミヨンがはめていた手袋を奪いおもむろに膨らまし始める。

盗聴

チャン弁護士「チョン・ソンイさんの入場でそう考えることもあるでしょう。けれど重要なのはそんなことじゃないのでは?先生は1ヶ月後が来れば必ず・・・」

ミンジュン「し〜っ!」

チャン弁護士のかばんについている盗聴器を見つける。

驚くチャン弁護士。

ミンジュンはスマホを取り出す。

『かばんに盗聴装置があるようです』と書くミンジュン。

思わず咳き込むチャン弁護士。

『ただ自然にお話しください』と続けて書くミンジュン。

ミンジュン「あ、そうイ・ジェギョン常務に会いました」

チャン弁護士「あ〜、そうですか」

(盗聴中のジェギョンの部下)

ミンジュン「自分を助けてくれと言ってるんです。わたしの後ろを見てくれると(後見してくれる)」

チャン弁護士「それでなんとおっしゃったのですか?」

ミンジュン「考えてみると言いました。悪くない提案のようで。わたしはどうせチョン・ソンイだけ守れればいいので」

チャン弁護士「だけど!」

言いかけて口を抑えるチャン弁護士。

ミンジュン「ただイ・ジェギョン側に当分の間だれも触らずに静かにしていてくれという前置きをしました。その約束さえ守るなら協力する考えもあります」

チャン弁護士『(スマホ)本当ですか?』

スマホに書いてみせるチャン弁護士。

笑顔で首を横に振るミンジュン。

チャン弁護士「あ〜、まあ。そうされるならそのこともまあ考えてみます」

事故の謎解き

ユンジェ「連絡を受けてすごく驚いたじゃない、契約を破棄したって。ト・ミンジュンが契約金の3倍入金したって」

ユンジェ「ミンジュンヒョン(兄さん)が!」

ミヨン「ミンジュンヒョン(兄さん)?」

ユンジェ「ほんとにカッコイイヒョンだろ!オレは姉さんがそのヒョンとつきあうなら無条件賛成!」

ミヨン「ちょっと、わたしはイヤよ。フィギョンがいるのに。それにト・マネージャーは、あの父親が墓穴よ。あそう、フィギョンが明日退院するでしょ?」

フィギョンが退院する。

フィギョン「オレ、兄さんのクルマに乗るよ。ソンイの家に寄ろうと」

母「夕食は?」

フィギョン「(母に)ソンイと一緒に食べようって言ったんだ」

フィギョン「(ジェギョンに)オレをその前に落としていってよ」

ジェギョン「そうしよう」

呆れて去っていく両親。

ジェギョンの運転手が変わっていた。

ここでも一芝居打つフィギョン。

フィギョン「久しぶりですね。前に兄さんの部屋に遊びに行った時に会ったようですが」

運転手「はい?わたしは数日前に新しく来たのですが」

フィギョン「ああ、そうですか?よろしくお願いします。ああ人の顔が思い出せない。毎日失敗だチッ」

ソンイの家の前で降りるフィギョン。

ジェギョン「おまえはまだ正常なコンディションじゃないぞ。気をつけて。ソンイに安否を知らせて(よろしく言っといて)」

フィギョン「そうするよ、行って」

すぐにタクシーに乗ってワイヤースタントの現場に赴く。

クレーンのレンタルや滑車の準備状況を尋ねるフィギョン。

用意したのは自分たちのチームだという担当。

担当「それはそうと大丈夫ですか?は〜、心配をすごくしました」

フィギョン「もう大丈夫です」

担当「こんな事故は起きないんですが。これがその時使っていたものなのですがこの滑車のボルトが摩耗していたんですよ。は〜、気をつけてチェックしなければならないのに。わたしたちの過失です。本当に申し訳ありません」

フィギョン「いいえ、責任を問うのではなく気になって。特殊効果チームはずっと一緒に仕事しているチーム員だけなんですか?」

この問の答えがキーとなる。

人が足りない時には他のチームに頼んで人を補うしアルバイトを雇うこともあるというのだ。

フィギョン「その日は?」

担当「その日は・・・アルバイトが数人いたでしょう」

フィギョン「名簿ありますか?」

担当「ちょっと待ってください」

名簿を取りに行く担当。

マンション。

ユンジェ「あ、ヒョン(兄さん)いらっしゃい」

ミンジュン「姉さん、まだ準備はダメなのか?」

ユンジェ「おいチョン・ソンイ!早く出てこい!ミンジュンヒョンが待たれてるじゃないか!あ〜、ホント」

もうミンジュンを崇拝している。

ミンジュン「ところで姉さんに若干礼儀がないのではないかと思うんだが」

ユンジェ『あ、ぼくがそうしましたか?直します。ヒョン(兄さん)」

超若作りで出てきて唖然とする二人。

ソンイ「どうして?」

ユンジェ「何だ?高校生か?」

ソンイ「わたし、変?」

ミンジュン「ああ」

ソンイ「あ〜、クソ」

踵を返し再びドレスルームへ。

ユンジェ「ぼくの姉がなにかと不足してますね」

代役使え!

移動中のミンジュンの車の中。

ソンイ「滑稽なのがなんだか分かる?この前一日中待機したシーンそのまま飛んでいったって。あ〜、それならどうして一日中待機させたのよ」

ミンジュン「今日の撮影はどんなシーンなんだ?」

ソンイ「アクションシーンとキスシーン」

ミンジュン「なに?」

ソンイ「アクションシーンとキスシーンよ」

再び言うソンイ。

ミンジュン「代役使え!」

ソンイ「アクションシーン?」

ミンジュン「いや、キスシーン」

ソンイ「話になる?キスシーンに代役を使う俳優がどこにいるのよ?」

ミンジュン「だから一度使えって。どうして必ず他人が言うとおりに生きなければならないんだ?独創的な、より創造的な俳優にならなきゃいけないんじゃないか?」

ソンイ「キスシーンに代役を使うのが独創的なの?ト・ミンジュンさん本当に保守的ね〜」

ミンジュン「わたしが保守的だからそう言うんじゃなくて事情がそうなんじゃないか」

ソンイ「ウソよ。ことごとくアクションシーンしかないわ。走ってスライディング、吊られて転がって」

ミンジュン「それも代役使え」

ソンイ「どうしてまた?」

ミンジュン「医師に話を聞かなかったか?脾臓破裂に肺浮腫まで起きたならこんなに無理をしてしまっては再出血や2次感染まで起きることもある」

ソンイ「それじゃあそのままキスシーンに修正して欲しいって言おうか?」

ミンジュン「おい!!!」

笑うソンイ。

ソンイ「ト・ミンジュンさん、わたしを見守っててね。主演でなければ見向きもしなかったチョン・ソンイ。『様が良い(ザマアミロ)』そのような人々が多いこと分かるわ。そうだけど主演する時よりわたし今がさらに幸せなよう。わたしを見守るト・ミンジュンさんがわたしのそばにいるから。今後もずっと見守ってね。ちょっと長くかかるだろうけどわたしがまたわたしの座に戻る姿」

インタビュー

現場に到着する。

ちょうどセミも車から出てくる。

セミ「お久しぶりです教授」

ミンジュン「はい、お久しぶりです」

ポムとミナも会釈をする。

セミ「どうしていらしたのですか?」

ソンイ「何をどうしてきたのよって?わたしについて来たんじゃない」

セミ「どうしてついてこられたのですか?」

ミンジュン「チョン・ソンイさんのマネージャーとして来ました」

セミ「あ〜はい。ソンイよかったわね。そうでなくてもあなた所属社もなく辛いって言ってたのに。ウチの母さんが言ってたんだけどS&Cと契約したとかそうじゃなくて?」

ソンイ「ええ、そうじゃなくて」

セミ「あ、そう『真夜中』からインタビューでやって来てるって。撮影する前にインタビューをチョットしようって。あなたとわたし親友インタビュー」

ソンイ「あ〜?ナニ友?」

※真夜中とは実在するSBSの「真夜中のTV芸能」という番組

インタビュアーのチョ・ヨング。

ヨング「こんにちはユ・セミさん、チョン・ソンイさん。今回の映画『目撃者』を一緒に撮られているお二人、幾年も親友なのだとか。あそう、ちょっと前にチョン・ソンイさんと財閥2世のスキャンダルが出てたのですがあの話を手短に少し」

ソンイ「あ〜、ただの友達です」

頷くミンジュン。

ソンイ「もちろんわたしがすごく好きで愛おしい友達ですよ」

反応するミンジュン。

セミも牽制されていることを自覚しているようだ。

ヨング「いや、だけどチョン・ソンイさんは留まること無くピンクのスキャンダルが出るのにわたしたちのユ・セミさんはどうしてこうも静かなのですか?彼氏の消息はありませんか?」

セミ「アハ、そうですね。ソンイは幼い頃からいつも好きな男性たちがいました。それで二股三股・・・」

ソンイ「ちょっと!わたしがいつ!!」

セミ「ちょっと冗談よ!フフフ」

呆れるソンイ。

ヨング「チョン・ソンイさんこの機会にユ・セミさんの人気の秘訣を教えて下さい」

ソンイ「綺麗ならいいんです」

足をおもむろに組み替えてワンフレーズだけで答えるソンイ。

『あ〜、はい』と言うしかないチョ・ヨング。

話を変える。

ヨング「ユ・セミさん、今回は主演を堂々と努められてますね。気分はいかがですか?」

セミ「あ〜、正直負担になります。そうですがソンイと一緒にして安心します」

ヨング「どうしてそうなのでしょう?チョン・ソンイさん!」

ソンイ「そうですね」

相変わらずぶっきらぼうなソンイ。

セミ「ソンイが主人公でわたしがサブの役をする時いつもソンイがわたしを世話してくれたんです。今回はわたしがその番ではないですか?」

ヨング「か〜、いつ見ても天使印のユ・セミさんですね〜。チョン・ソンイさんいいですね!こんな友人が居て持って。さあそれなら、お互いにしたい話を一言してください。ユ・セミさん」

セミ「あ、ソンイ。わたしたちの友情、今後も変わることはないのよね?」

ソンイの手を握って言うセミ。

ソンイ「あ〜?」

しかもミンジュンに向かって『なに言ってんだこの女』的な表情を見せている。

思わずため息をつくミンジュン。

スタッフの不手際

ミンジュン「いや、一体再起をするのかしないのか?ユ・セミさんのように適当に猫かぶりも振りまき、虚飾も振りまき、そんなのダメなのか?」

ソンイ「しきりにこの前からセミの肩入れして!」

ミンジュン「肩入れするんじゃなくて・・・」

監督たちと出くわす。

監督「ああ、ソンイさん来たの」

ソンイ「あ、監督。この前はどうなってたのですか?人を待機させといて行くなら行くって言わないと。誰も話をしないでサクッと撤収して、どうしようと?」

監督「そうだった?おい、連絡しろよ!」

助監に言う監督。

助監は下っ端を怒る。

下っ端は電話するのをうっかりしてたと言う。

下っ端を『神経を使え!』と怒る監督。

監督「ソンイさんがちょっと理解して」

照明チームに用のある風で立ち去る監督。

他の二人もちゃんと詫びを入れないで立ち去る。

ソンイ「チッ、気が詰まるわホント。以前はわたしとしっかりと目を合わすことさえできなかった奴らが」

行こうとするソンイとミンジュン。

ミンジュンは立ち止まり監督たちの会話を聞く。

下っ端が誤っているのに監督はよくやったと言っている。

そして何度もシナリオを蹴られた復讐をする算段をつける。

次の最初のシーンはソンイからなのでシーンに撮影をわざと引き伸ばしてしまおうというのだ。

ソンイ「何してるの?ト・マネージャー」

立ち止まっていたミンジュンを呼ぶソンイ。

復讐の代役

ソンイのアクションシーンの撮影が始まる。

監督「カ〜ット、NG!ソンイさん、表情が生きてないよ。あるじゃない、もう少し切迫した感じ」

ソンイ「わたし、ホントに切迫しているわ、監督」

監督「違う違う、弱い弱い。もう一度行きますよ〜!」

くぼみから這い上がりミンジュンのそばへ行くソンイ。

ミンジュン「代役を使うと言え」

ソンイ「ダメよ。タイトシーンにどうやって代役を使うのよ」

ミンジュン「医師に話を聞かなかったのか?脾臓破裂に肺浮腫まで起きたならこんなに無理をしてしまっては再出血や2次感染まで起きることもあるって!」

ソンイ「すぐにするわ。子役の時からスト無くしてるのよ。あ〜、大丈夫なのに何が変だったのかね」

水を飲むソンイ。

それ以降はずっとNG続きで何度も同じことをやらされる。

『また行きましょう』と言いつつ助監督たちと喜んでいる監督。

監督「カット」

ソンイ「もういいでしょ?」

監督「う〜ん、ただ最初のが一番いい。それをキープしよう。移動!ん〜、そう」

呆れるソンイ。

鋭い目つきのミンジュン。

ひそかにキレていたミンジュンは立ち上がって歩き出した監督をくぼみに落とす。

監督「あ〜、痛い。これはなんだこれは、あぁ?」

監督に手を差し伸べた助監督もおもいっきりふっとばされる。

ソンイの方を見て無言で肩をすくめるミンジュン。

二人きりになるソンイとミンジュン。

ソンイ「さっきのそうでしょ?」

ミンジュン「なにが?」

ソンイ「さっき監督と助監督を転がしたのト・マネージャーであってるでしょ?」

ミンジュン「わたしが何を?」

ソンイ「え〜い、そうじゃない!」

ミンジュン「何の話だか・・・」

ミンジュンと腕を組むソンイ。

ミンジュン「どうした?」

ソンイ「どうして?見てる人も居ないのに。ところで外界人(宇宙人)をマネージャーに遣っているからすごくいいわ!なにかと。何ができない?」

ミンジュン「寒くないか?」

ソンイ「寒いわ。完全に寒い。はっもしかしてそんなこともできる?手からまさに火が出てくるの。そんなの。指でダ〜ンと弾いたら火が出てくるそんなの」

ミンジュン「山火事が出るぞ」

ソンイ「あ〜、そうよね。できるのはできて?」

ミンジュン「ペクトマンか?」

※ペクトマン 韓国の特撮戦隊モノ

ソンイ「あ〜できないのね。わたし寒いんだって。暖かくできないのね。暖かくすることのできる能力はないの?」

無言でソンイの肩を抱くミンジュン。

ソンイ「あ〜完全に温かいんだけど」

花札無双

下っ端ADが撮影が1時間遅れると連絡して回っている。

ソンイ「あ〜、1時間遅れると言ったら基本3時間よ。その間退屈なのに何しよう」

すると花札をしているスタッフたちが目に入る。

ソンイ「なんか何かがわたしの中に入ってきてるようだわ〜。わたしもわたしがこのようによく合うのが不思議だわ。わたしがこれをこうして投げたんだけどわたしはここでコドリまでしたらわたしほんとに神気があるのよ。あ〜〜い、どうしよう(札が合う)コドリよ、コドリ!」

続けて。

ソンイ「わかったわ、わかった。わたしがあまりにも取ったようだから墓穴を掘るわ」

けれどまわりから『まさか』と言う声が。

ニヤつくソンイ。

なんと最高の手札である五光だ。

スタッフ「チョン・ソンイさん、タチャ(いかさま師)なの?」

ソンイ「わたしをタチャと呼んでくださ〜い」

鼻歌を歌混じりに札を放とうとするソンイ。

すると時が止まりミンジュンが札を入れ替える。

どうやらずっとこうしていたようだ。
『あらまあ、これは何?あらあら』と次々と札が合う。

『どうしよう!取ったx5、出せx5』と集金するソンイ。

『あ〜らありがとう、あ〜らありがとう』と上機嫌だ。

ミンジュンも傍で笑っている。

記念日には・・・

二人だけで外のカウチに座っている。

目の前では薪をくべている。

ソンイ「生きて生きて待機するのがこんなに面白い日はまた初めてね。徹夜しても関係ないようよ。ところでわたしたちの100日(のお祝い)何するの?ん?100日の時は何をするのかって」

ミンジュン「100日?」

ソンイ「うん、ふふ、わたしはもともとそんなのちょっとあざ笑ってたのにいざわたしが状況がこのようになるから気持ちが変わるわね。ちょっと幼稚だけど段階的にいくつか踏まなければならないわ。100日、1年、1000日のようなもの、また準備したいのよ。ところでわたしたちはいつから始めの日にする?今までちょっと捉えどころがないからちょうど今日からにしようか?」

ミンジュン「記念日に何をしたいんだ?」

ソンイ「他の人がすることをすべてしないと。一旦100日はカップルリング、カップルTシャツ。それと南山タワーの頂上に行けばぐるぐるまわるレストランがあるじゃない?わたしそこで夕食を食べたい、夜景を見ながら。そしてその下に鍵を吊るしておくところがあるのよ。わたしはそこに撮影のために行ったことあるんだけどわたしも後で恋愛すれば彼氏と行って願いを込めて鍵を結ばないとと思ったの。そして1年経った時はアイスクリームを少し食べなくちゃ」

ミンジュン「アイスクリーム?」

ソンイ「どうして?そんなのがあるじゃない。アイスクリームの中に指輪があって。そして一周年記念旅行くらい。1000日の時は何をしようか?1000日なら回数で3年くらいになる?わたしたちその時ヨーロッパにバックパック旅行のようなのに行かない? 1ヶ月や1ヶ月半ほどきっちり取って。どう?」

ミンジュンの様子がおかしい。

ソンイ「どうしたの?」

ミンジュン「チョン・ソンイ」

ソンイ「どうしてまた?またどうして?はっわたしたち付き合ってるんじゃなかったの?わたし一人またオーバーなの?それでその時そうだったの?わたしにする利己的なことがどうだこうだと?」

ミンジュン「チョン・ソンイ、おまえがしたいこと、わたしたちあらかじめしよう」

ソンイ「あらかじめ?」

ミンジュン「うん、あらかじめ。一ヶ月以内にすべてしよう」

ソンイ「どうして?どうして一ヶ月以内に全てしなきゃなんないの?・・・ねえ?・・・どうして?どうしてそうするの?・・・ねえ?」

ミンジュン「わたしが去らなければならないんだ」

ソンイ「なんのことよ?何を去るの?・・・どこに?どこに行くのよ?」

ミンジュン「わたしがもともといたところ。一ヶ月後には、わたしが居たところに・・・戻らなければ」

ミンジュンの頬に一筋の涙が流れる。

第16話エピローグ

100日後。

南山タワー。

ソンイとミンジュンの名前の入った鍵が吊るされている。

一人ぐるぐるまわるレストランで誰かを待つソンイ。

人が入ってくるたびに反応するけど自分の知っている人ではない。

そして・・・。

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