鮫〜愛の黙示録〜
第20話

スヒョン車中。

スヒョン「金の用意はできましたか?」

スヒョンがチョ会長に金の受け渡しの場所と時間を指定する。

バー。

ヨシムラ会長にイスが死んだという知らせが入る。

河川敷。

進まない捜索に苛立つピョン刑事。

ヘウの携帯に電話が入る。

検察。

チョ社長の接待を受けて帰って来た検事たち。

ジュニョンがキム検事に声をかける。

ジュニョン「秘密資産に関する資料です。きちんと捜査を受けることがカヤホテルの未来のためには必要だと思います」

資料を渡す。

埠頭。

待っているスヒョン。

チェ・ビョンギが金を持ってくる。

スヒョン「ところでひとつ気になることが。どうしてハン・ヨンマンが父を殺すところを目撃したんだ?ヨンマンに殺されなくても結局はお前に殺されたんだろう?」

ビョンギ「望むものを受け取ったらさっさと行けばいいだろう」

スヒョン「オレの望むものは・・・お前だ」

隠れていたピョン刑事がチェ・ビョンギを逮捕する。

スヒョン、ピョン刑事の計画だったのだ。

ピョン刑事「イスはどこだ?」

スヒョン「知りません」

ピョン刑事「おまえが知らないわけがないだろう。署に来い」

------------------------------------------------------------------------------
回想:昼のビルの屋上。

真実を知ったスヒョンはイスをビルの屋上に呼び出す。

スヒョン「言うことがあるなら言ってみろよ」

イス「わかってる。赦すことができないこと。それにお前に赦しを請う資格がないことも」

スヒョン「それで?」

イス「お前には何の意味もない話だろうが俺の父親は後悔に後悔を重ねながら一生を罪悪感の中で苦しみながら生きたということだけは赦しを受けることはできないだろうか。ただそのことだけは分かってほしい」

スヒョン「真実がわかったときは本当に兄貴を殺したいほど悔しくて憎んだよ。でも兄貴は今まで十分に苦しんで来たじゃないか。それに兄貴はオレにとって残された唯一人の家族なんだ。だからって兄貴のお父さんを赦したんじゃない。オレに罪滅ぼしがしたければチョ会長をきちんと断罪しなきゃならない。そうすれば兄貴もオレもちょっとは悔しさが減るだろう」
------------------------------------------------------------------------------
ドンスの家の前。

イスはドンスに封筒を渡してチャン秘書に届けてほしいと頼む。

ドンス「代表、実はチャン秘書は・・・」

イス「盗聴のことは知っています。大丈夫だからチャン秘書に渡してください」

驚くドンス。

イス「また会おう、ドンス」

立ち去るイス。

ドンス「はい、また会お・・・タメ口だ」

とキョトンとするドンス。

警察署。

チェ・ビョンギが取り調べを受けているが全く口を開こうとしない。

カバンの中の金も小切手も全部偽物だった。

ピョン刑事「スヒョンも殺すつもりだったようだな。チョ会長を起訴するにはチェ・ビョンギの証言か証拠が必要なんだが」

ヘウ「私が説得してみます」

ヘウが取調室に向かう途中イスから電話。

イス「チェ・ビョンギが口を開かないのは妻やアメリカの家族をチョ会長に握られているのかもしれない。家族の安全を保障すれば口を開く可能性が高い」

ヘウ「わかったわ。それからチャン秘書からUSBを受け取ったわ」

イス「それは手を付けるな。俺に考えがある」

ヘウ「もう記者に渡してしまったわ」

ヨシムラ会長の部屋。

イスは会長の留守中にパソコンのデータを全部コピーしている。

取り調べ室。

説得をするヘウにチェ・ビョンギが尋ねる。

ビョンギ「家族を犠牲にしてもいいくらいハン・イスは君にとって大切な存在なのか?」

ヘウ「始まりはイスのためだったけど今は違います。許しを乞うためです。おじさんも許しを乞う機会を逃さないでください」

するとチェ・ビョンギはイスと電話がしたいと言い出す。

2日後の妻の誕生日に首飾りを買ってプレゼントするようにというビョンギ。

イス「そうすると約束すれば口を開くのか?でなければ不公平だ」

ビョンギ「取り引きとはそういうものだ。必ず首飾りを買って行け。古いのは捨てさせて。話は終わりだ」

電話を切るとまた口を堅く閉ざすビョンギ。

チャン秘書の部屋。

ドンスがUSBをチャン秘書に渡す。

ドンス「代表は盗聴のことを知ってました。それでもチャン秘書を信じているそうです」

イスはホテルのグランドオープンの前日にこの内容を新聞発表するようにと電話で指示する。

チャン秘書「代表、私は今まで・・・」

イス「謝罪ならあとで直接聞くことにします。じゃあ頼みましたよ」

警察署。

もう遅いので続きは明日にすることに。

ヘウが帰ると入れ替わりにオ刑事殺害事件担当のクォン刑事が入ってくる。

チョ会長の手下だが本当の刑事でナ刑事の先輩だった。

クォンは取調室に入るとビョンギの前に1粒のカプセルを置く。

クォン「糖尿の特効薬です。家族のことを考えたら糖尿は早く治さなくては、そうでしょう?」

ビョンギ「こうなることはわかっていた」

ビョンギは黙って薬を飲んで自害してしまう。

知らせを受けたヘウはイスにもチェ・ビョンギの死を伝える。

屋台。

ヘウから情報を得て記事を書くように頼まれたコ記者だったが証拠が弱くて記事にできないと言われる。

ヘウは電話でもう一人の知り合いを呼び出す。

カフェ。

ヘウが呼んだのは銀行不正事件の時に検察に協力して銀行のコンピュータをハッキングして内部資料を取り出したハッカーだった。

ハッカー「資料読みました。面白いですね。これを多くの人が見るようにすればいいんですね」

ヘウ「できますか?危険じゃありませんか?」

ハッカー「私にかかればIP追跡は絶対にできません。それに検事が共犯なら心配ないでしょう」

二人と別れたところにジュニュンがやってくる。

ヘウ「これでいいのかしら。文書を公開したところで世の中が変わるかしら。みんなが信じてくれるかしら」

ジュニョン「君は最善を尽くした。それで充分だ」

ビルの屋上。

屋上から街を見下ろすイス。

北極星がきれいに見えている。

街の人々。

メールで届いた“チョン・ヨンボの真実”を街中の人々が読んでいる。

メールを読んで驚くイヒョン、パク女史。

チョ会長の書斎。

心配してチョ会長を訪ねてきた主席。

チョ会長は政界にも大きな影響力を持っている。

文書の内容は真実ではないが国民に不信感を与えるもの。

その不信は現政権に向かうかもしれないというチョ会長。

チョ会長「今回の問題は私の個人の問題でなく国全体の規律問題だと考えている。再び私のような被害者が出ないように現政権で立ち向かうのが国民のための道理だと思うのだが・・・」

主席「会長のお考えを上部に伝えます」

ヘウの部屋。

出勤準備をするヘウ。

ジュニョンに買ってもらった服に着替える。

ジュニョン「外に記者たちが来ている。今日はひとまず会わないほうがいいと思う」

チョ会長の書斎。

機嫌が悪そうなチョ会長。

「ハン・イスはまだ見つからないのか?何としても探し出せ。見つけて必ず始末しろ」

レストラン。

以前イヒョンと来た高そうなイタリアンレストラン。

イスが先に来てイヒョンとスヒョンを待っている。

イヒョン「兄さん!」

イス「わぁ、今日のイヒョンはとても綺麗だ」

イヒョン「私はいつも綺麗でしょ。フフ」

イス「そうだった。先に注文しておいたけど、いいだろう?」

イヒョン「うん、いいよ。あ、ところで兄さんにはおかしなメールみたいなの来なかった?おじいさんの話みたいなんだけど。とても恐ろしい話なの・・・本当のことじゃないでしょ?スパムよね?そうでしょ?」

何と言っていいのか困った様子のイスとスヒョン。

店員「ご注文の品をお持ちしました」

イス「こっちに置いてください」

美味しそうにスパゲティを頬張るイヒョン。

イス「おいしい?」

イヒョン「うん、おいしい」

スヒョン「スパゲティが大好物みたいだね」

イヒョン「兄さんと一緒に食べるスパゲティだけすきなの。へへ。あ、ちょっと待って。ジャジャーン!兄さんと一緒に写真撮ろうよ」

スヒョンにカメラを渡すイヒョン。

イヒョン「上手く撮ってね」

スヒョン「え?じゃあオレは?」

イヒョン「写真を撮ればいいのよ」

スヒョン「ちゃんとポーズ取ってみて」

イヒョン「兄さん、ピースしようか」

イス「ピース?」

いきなりシャッターを切るスヒョン。

イヒョン「いちにのさんってしないの?」

スヒョン「上手く撮れたみたいだけど?」

イヒョン「ちゃんと撮れてる!」

カメラを操作するイヒョン。

スヒョン「何してるんだ?」

イヒョン「秘密」

チョ検事室。

携帯に送られてきた写真を見るヘウ。

ピョン刑事から電話が入る。

ヘウ「解剖の結果が出ましたか?」

ピョン刑事「ハン・ヨンマンとオ刑事の時と同じ毒が検出された」

ヘウ「もしかしてこのことでおじさんも懲戒処分を受けるんじゃ?」

ピョン刑事「懲戒は何百回受けてもかまわないが、唯一の証人を失ったことが問題だ」

ヘウ「他の証拠を見つけなくてはいけませんね」

ピョン刑事「書店中探し回ったが証拠になるようなものは何もなかったよ。とにかくこっちは蜂の巣をつついたような大騒ぎだがそっちはどうだ?」

ヘウ「こちらは表面上は静かです。世論を見守るようです」

コチャンからの宅配が届く。

チョ家、玄関前。

祖母の遺品を取り出すヘウ。

沢山の記者たちの前にチョ会長・チョ社長が姿を現す。

記者「あ、出てきた。何か一言お願いします。“チョン・ヨンボの真実”というメールは本当のことなんですか?」

チョ会長「えー・・・何、対応する価値もないことです。私が記者の方々に会おうと出てきたのは、折角ここまでいらっしゃっているんですからカヤホテルの全財産を社会に還元するという所信を明らかにするためにです」

コチャンからの荷物を開けるヘウ。

記者「全財産を社会に還元されるという発表が今出回っているうわさを鎮めるための窮余の策とも受け取ることができますがそのように考えてはみませんでしたか?」

チョ会長「全財産を社会に還元する件はすでにかなり以前に決心をし推進中だったことです」

記者「メールの内容が非常に具体的だったのにその内容を反論するほどの根拠資料を公開する意向はないのですか?」

チョ会長「ありません」

記者「積極的に解明しなければならない問題だと思われますが、いかがですか?」

チョ会長「私は全ては私の不徳の致すところから始まったことだと考えています」

ヘウが開けた小包。

一対の結婚指輪。

ウィソン満1歳の記念写真。

産着。

チョ会長「今まで生きてきた中で私も知らない間に誰かを傷つけたかもしれません。また、知らず知らず罪も作りながら生きてきたことでしょう。今回怪文書を作って不法配布した人もやはり、私に何か恨みがあったのでしょうから。かえって今回のことで今まで生きてきた人生を振り返ってみる良い機会になりました」

記者「それでは今回の問題はそのまま伏せておかれるつもりですか?」

チョ会長「不法配布をしたのですからそのことは検察が明らかにすることでしょう。しかし自ら反省をして真心に充ちた謝罪をするならば綺麗さっぱり容赦をするつもりです」

細い筒の中から出てきた1枚の写真。

沢山の死体を背景に自慢そうに竹槍をもって立つチョン・ヨンボ。

チョ会長「人を愛しながら生きるにも短い人生です。憎みながら過ごすには私に残った人生がそんなに長くもありません」

イス/スヒョン車中。

運転しながらラジオでチョ会長のニュースを聞いているイス。

スヒョンから電話。

イス「順調に走ってるのか?」

スヒョン「イヒョンがとても疲れたようです。映画を見て出た途端に疲れたと言うといびきをかいて寝てしまいました」

イス「そんな様子は見せなかったがどうしても俺のことで心配が多いんだ」

スヒョン「そのようです。ところで療養院にはなぜ行くんですか?」

イス「チェ・ビョンギの言葉がどうしても気にかかるんだ。何かは分からないがひとまず行ってみなければならないと思って。イヒョンが家に入ったらもう一度連絡してくれ」

スヒョン「そうしますね」

療養院。

チェ・ビョンギの妻に首飾りを渡すイス。

イス「こんにちは。ご主人から誕生日のプレゼントを渡すように言われて来ました。首飾りです」

嬉しそうに受け取った妻。

今まで身に着けていたのは鍵を首飾りにしたものだった。

鍵の首飾りを持って帰るイス。

イヒョンの家の前。

スヒョン「おちびちゃん、もう起きろ。家に着いたぞ。中に入って寝よう、な?おい、ちび…?イヒョン?イヒョン!」

イヒョンの異変に気付く。

そして急いで病院に向かう。

病院。

イスも病院に駆けつける。

医者の話。

医師「自己免疫性肝炎です。免疫体系に異常が生じて自身の肝細胞を自分が攻撃してできる慢性疾患です」

ピョン刑事「治療をすれば良くなるんでしょう?」

医師「先ずは薬物治療をしてみますがそれは応急措置です。助かる方法としては肝移植が最善です」

養母「私がします。先生、私、健康でしょう? 私がします。ね、先生」

医師「家族の中に合う方がいなければ脳死者のドナーを待つしかありません」

養母「どうして?どうして?うちのイヒョンが。どうして? ねぇ、どうして? あなた!」

イスが到着する。

イス「どうなってるんですか?」

イヒョンの病室。

ヘウがやってくる。

養母「たった今寝つきました。イヒョンのお兄さんに会いました」

病院の外。

ピョン刑事「ありがとう、イス」

イス「イヒョンは私の妹です。当然のことです」

ピョン刑事「本当に面目ない。もっと前に病院に連れてこなければならなかったのに」

イスはピョン刑事に鍵を渡す。

イス「チェ・ビョンギの妻が持っていたものです。もしかしたら証拠を残したところの鍵かも知れません」

立ち上がるイス。

イス「しなければならないことがあります」

ピョン刑事「危険なことなのか?」

イス「私のからだ、もう貴重なものになりました。大切にしなければなりませんね。それからイヒョンが退院する日警察署に出頭します。チョン・マンチョル事件は全部私がしたことです。スヒョンは関係ありません」

ヨシムラ会長の部屋。

ヨシムラ「生きていて本当によかった、ジュン」

イス「私もそう思います」

ヨシムラ「文書は世の中に明らかになったがチョ会長は結局生き残った。ジュン、お前の復讐が失敗したと見なければならないか?」

イス「会長の復讐が失敗するのです」

ヨシムラ「どういう意味だ?」

イスは書類封筒を渡す。

イス「ジャイアントホテル:ソウルで発生する収益金全部を拷問被害者のために寄託するという内容の報道資料です」

ヨシムラ「収益金全部?」

イス「ジャイアントホテル:ソウルは私が責任を負います。もちろん署名も私がしました。この資金の運営、責任はチャン秘書に任せました」

ヨシムラ「ハハ!」

イス「報道資料はすでに各報道機関に配布済みです」

ヨシムラ「私がお前たちの好きなようにさせておくと思うのか?」

イス「参考までに、ジャイアントホテル秘密資金内訳と日本政官界ロビー資金、そして会長が関与された何件かの好ましくない事件についての資料を日本にいる知人に託しました」

ヨシムラ「私を脅迫しているのか?」

イス「全部会長に教わったことです。もしチャン秘書と私に何かことが起こればその資料は直ちに日本の検察に渡ることになるでしょう」

立ち上がる。

イス「長い間お世話になりました。そして命を助けて下さってありがとうございます」

礼をして立ち去るイス。

ヨシムラ「ハッハッハッ!」

古本屋。

ピョン刑事とナ刑事がもう一度捜査に来る。

ナ刑事「もう全部探し尽くしましたから、証拠なんて出てきませんよ」

いつも自転車の荷台にあった箱が壊されて落ちている。

その錠前にイスから受け取った鍵がピッタリ合う。

箱の底を調べるピョン刑事。

二重底に隠されていたノートとオーディオプレーヤー。

ナ刑事「おっ!これ取り引き帳簿ですね!ワハハ!これ小切手番号まで全部記録されてて。確認すればウラが取れますね」

プレーヤーを再生するピョン刑事。

チョ会長とビョンギのやり取りだ。

“私が気になることはその写真を送った人がいったい誰かということだ。いくら考えても分からんのだ”

“オ・ドンジン刑事は交通事故で始末します”

“いや。そんなに単純に処理する問題ではなかろう。チョン・マンチョルがどのように死んだといったかな?”

ピョン刑事「とうとう掴んだぞ」

街頭ニュースを見て驚く人々。

(街頭画面の字幕)

『緊急速報 トップニュース<チョン・ヨンボの真実>』

『事実と判明 国民に衝撃と驚き』

『批判世論が激しくなるや政界超緊張』

『殺人教唆疑惑に対する明白な証拠物を』

『確保した検察はチョ・サングク会長に対して』

『逮捕状発付。拘束捜査の方針を』

イヒョンの病室。

イヒョンの手を握って祈るイス。

チョ家。

警察がウィソンに逮捕令状を見せる。

警察「チョ・サングク氏!あなたを殺人教唆疑惑で逮捕します。ドアを開けなければ強制的に入ります」

チョ会長の書斎。

覚悟したチョ会長は拳銃を取り出し自分の頭を打つが・・・。

チョ家、キッチン。

パク女史が拳銃の弾をティーポットに入れ蓋をしている。

いつも手回しのいいパク女史。

チョ家、玄関前。

チョ会長が逮捕されて記者たちの前に出てくる。

連行されるチョ会長を取り囲む記者たち。

記者「殺人教唆よりも国民はあなたが犯した途方もない蛮行に驚いています。何か言うことはありませんか?」

チョ会長「私は祖国のために生きてきました。私が言いたいことはただそれだけです」

チョ家、リビング。

パク女史がウィソンに母親の遺品が入った箱を渡す。

パク女史「ヘウが社長に渡すようにといって置いて行きました。社長の本当お母様の遺品だそうです」

箱から遺品を取り出すウィソン。

遺影を抱いて泣き出す。

チョ検事室。

荷物の整理をするヘウ。

済州(チェジュ)への異動のために。

木箱から取り出したサメのペンダントをじっと見つめる。

イスの執務室。

寂しい表情で“キム・ジュン”のネームプレートを撫でるチャン秘書。

カヤホテル社長室。

家宅捜索を見守るジュニョン。

病院。

イスとイヒョンは笑いながら手をつないで散歩している。

留置場。

悔しい表情で座っているチョ会長。

検察入り口。

車に荷物を詰め終わったヘウが星空を見上げる。

イスから電話。

ヘウ「私よ、イス」

イス「あさって、イヒョンの手術だ」

ヘウ「うん、 分かってる」

イス「ちょっとだけ会えないか?君に必ずしておきたい話があるんだ。今日でなければ永遠に言えそうにないから」

ヘウ「私もあなたに話すことがあるの。私も今日でなければ言えそうにないわ」

イス「じゃあ、あそこで会おう。今出るから」

星を見上げてほほ笑むイス。

公園。

落ち着かない様子でヘウを待っているイス。

ヘウの姿を見つけて嬉しそうに迎えに行こうとする。

突然首の後ろに拳銃を突き付けられイスが振り返ろうとした瞬間、引き金が引かれる。

倒れたイスに駆け寄るヘウ。

ヘウ「イス!」

イス「俺は・・・生きなくちゃ・・・」

ヘウ「話さないで!じっとしてて」

イス「イヒョンが・・・」

ヘウ「イス、イス!起きて!」

留置場。

声を上げて笑うチョ会長。

チョ会長の書斎。

書斎から出てドアを閉めるヘウ。

主のいなくなった書斎。

病院廊下。

ストレッチャーで手術室に向かうイヒョンを養父母が見送る。

イヒョン「ところで兄さんはなぜ見えないの?」

ピョン刑事「兄さんは手術が終わって目が覚めたらその時来るって」

イヒョン「寂しいな〜」

ピョン刑事「そんなふうに考えるな。兄さんはお前を誰より心配して・・・すぐ兄さんに会えるから」

イヒョン「ウン」

泣く養母。

ピョン刑事「そんなに心配しないで、ママ」

イスの病室。

ただ眠っているようにベッドに横たわるイスを見つめるヘウ。
------------------------------------------------------------------------------
医師はイスが生きているのは奇跡だと言った。

だが、私は分かる。

それは奇跡ではなくイスの強い意志の力だということを。

イスは持っている力すべてを使って命の綱を握りしめて私に言っている。

自分を生かしてほしいと。

自分を自由にしてほしいと。

そして今私ができる事をしろと。
------------------------------------------------------------------------------
ヘウは眠るイスにキスをする。

ヘウ「愛してるわ、イス」

病院廊下。

手術室に運ばれるイスの手を握って泣くドンス。

閉まった手術室の扉の前で涙するドンス、ジュニョン、スヒョン。

イスの病室。

手術中、病室に残ったヘウ。

止まっている時計。

日差しが時間の経過を示している。

時計が再び時を刻み始める。

ヘウは込み上げる悲しみに涙を流す。

海。

黒い喪服姿のヘウ。

昔自分が作ったサメのペンダントを持って海に入っていく。

ヘウ「やっと、楽に息ができるわ、イス」

ヘウはペンダントをそっと海に流す。


<エンディングの最後のメッセージ>

“終わりは即ち始まりです。持てる力の限り幸せでいてください”

THE END