〜個人の趣向〜
第4話〜頼れるルームメイト〜

部屋に戻るなり独り言。

チノ『どうかしてるぞ。なぜあいつの世話を・・・関わるな。それが一番だ』

翌朝。

ソファから落ちて目が覚めるケイン。

ケイン「なんでここで寝てるんだろ?ゆうべは・・・」

ゆうべのことを思い出す。

ケイン「また怒られる・・・おなかが・・・」

腹を壊したケインはトイレに急ぐ。

仕事の電話をしながら部屋から出てきたチノに驚き、ケインはその場に倒れ込む。

チノ「ソファにいたのに・・・おい、ケインさん。部屋で寝ろって。ひどい寝相だな」

出ていくチノ。

チノが出て行ったことを確認したケインはトイレに急ぐ。

ドアが開き驚くケイン。

チノ「眠れたか?」

ケイン「まぁね。あなたは?」

チノ「何か言うことは?」

ケイン「言うこと?別に・・・ゆうべ私が何かした?酔っちゃうと記憶が飛んじゃうのよね。酒癖は悪くない方だけど」

チノ「なるほどね」

ケイン「イタタ・・・お腹が痛くて・・・じゃ、お気をつけて」

ドアを閉める。

ケイン『店の中でゲイだと叫ぶなんて私ってば!この口め!イタタ・・・』

タム美術館建設予定地に視察にきたチノ達。

サンジュン「東にギャラリー、西にはテーマパーク、向こうには芸術院の本館を、ここに別館を配置、野外展示場、駐車場に付随施設、館長に会って印象づけとこう」

昨日の焼肉屋でのことを思い出すチノ。

チノ「その必要はなさそうだ」

サンジュン「なぁ、ケインって子お前に本気だな」

チノ「よせよ。男同士みたいなもんだ」

サンジュン「何だそれ?いくらなんでも男は失礼だ」

そこへハン会長がやってくる。

チノ「先に失礼します」

ハン会長「父親と同じ失敗をするなよ。チノ。私が死なせたと思ってるようだが実のところお前の親父は自滅したのさ。事業における無理な決定は失敗に繋がる」

チノ「いいえ。部下の本性を見抜けなかったこと、それが父の過ちです」

チノの事務所に同時にやってきたイニとヘミ。

そこへ帰ってくるチノ達。

チノ「どんな御用で?」

ヘミを無視してイニを奥に案内する。

チノ「それで?」

イニ「MSグループ主催の集まりがありまして美術館の関係者も大勢出席予定です」

チノ「ありがたい。郵送でもいいのに悪いですね」

イニ「先日嫌な思いさせたお詫びです」

チノ「気にしてません」

イニ「見送りは結構です。午後の予定は?タム美術館の新作をご覧になりませんか?館長は午後予定が入ってません。そんな時は館内を見て回るんです」

道中の車で。

イニ「サンゴジェの居心地は?あれこれ不便でしょう?」

チノ「そうでもありません」

イニ「ケインとの共同生活で苦労はない?」

チノ「お礼をしないと。館長に会える機会を頂きました」

イニ「今度食事でも」

チノ「はい」

携帯の番号を教えるチノ。

チノ「いつでも連絡を」

イニ「入選したら食事ぐらいでは済みませんよ」

チノ「ええ」

イニ「では」

その様子をじっと見ていたチャンニョル。

チャンニョル「奴の動きを調べあげて事細かに報告しろ」

サンゴジェに来たヨンソン。

ケイン「なにこれ?」

ヨンソン「カキよ。母さんが送ってくれたの」

ケイン「うわ!おいしそう!すごく新鮮!」

ヨンソン「返品された家具、うちの通販サイトに載せたわ」

ケイン「ヨンソン、あんたって最高よ」

ヨンソン「まあね。それはなに?」

ケイン「履歴書よ。求人サイトに登録したら連絡がきたの」

ヨンソン「あんたが就職?」

ケイン「何とか生活費を稼がなきゃ」

ヨンソン「ウォノを探さないの?」

ケイン「それどころじゃない」

ヨンソン「また何かしたの?」

美術館の絵の前に立つチノ。

後ろから館長がやってくる。

館長「急にどうしました?」

チノ「こんにちは。コンペに勝つためにはどんな絵があるのか知っておくべきでしょう?」

館長「これは偶然かな。車の一件といいどうも偶然とは思えない」

チノ「どうかお許し下さい」

館長「若気の至りか。羨ましい。ゆうべの彼女も元気がよかった。明るいご友人ですね」

チノ「ゆうべの件を説明させて下さい」

館長「他人の私生活に興味はありません。心配なさらずコンペの準備に集中して下さい。また偶然会えそうですな」

チノ「カンディンスキーはいかがですか?ロビーに飾る絵です。クリムトより雰囲気に合うかと」

館長「悪くない」

チノ「また偶然お会いしましょう」

サンゴジェの二人。

ヨンソン「本当に感心するわ。あれだけ忠告したのに。また叫んだわけ?しかも店の中で?」

ケイン「酔ってて・・・許してくれないよね」

ヨンソン「だろうね。よし、行こう」

ケイン「どこへ?」

無理矢理ケインを引っ張っていくヨンソン。

二人はスーパーに。

ヨンソン「旦那が帰ってこない時は『今夜はごちそう』の一言が効くの」

ケイン「食べたあとはもちろん?」

ヨンソン「もちろん・・・(二人でニヤリ)また現場に戻っちゃう」

ケイン「チノさんも食べたらバイバイかも」

ヨンソン「そんなことないわよ。食事で手なずけてから甘えた声を出す」

ケイン「女は石ころも同然なのにその手が効く?」

ヨンソン「私が彼でも石ころに見える」

ケイン「お黙り」

ヨンソン「当たって砕けろ」

ケイン「無理よ。あいつの舌に合う料理を作るなんて。出ていかれてもいい」

ヨンソン「諦めちゃダメ!ガッチリ捕まえるの」

事務所にいるチノに、イニから電話が入る。

チノ「イニさん?はい、そうですか。ええ、解りました」

それを聞いていたサンジュン。

サンジュン「でかしたぞ」

チノ「何のことだ?」

サンジュン「味方につけたか?」

チノ「変な言い方するなよ」

サンジュン「彼女もお前の虜だな。それで、電話の内容は?」

チノ「館長から食事の誘いが」

サンジュン「素晴らしい!ブラボー!優秀なボスに恵まれて幸せだ」

一方サンゴジェではヨンソンからあれこれ知恵を伝授されるケイン。

ヨンソン「口は軽いけどいい奴だと思わせるのよ。ゲイには女友達が多い。なぜなら恋の相談がしやすいからよ。腹ごしらえしたら二人で映画を見る。これとか。いわばゲイとの 共同生活マニュアルね。あんたにとってはいい機会よ」

ケイン「どうして?」

ヨンソン「イニのせいでボロボロでしょ。いい男で心の傷を癒せる。無理?だったら彼を私だと思って、簡単でしょ?」

ケイン「どれ・・・彼の苦しみを理解するためよ。よき友人になるには悩みを分かち合わなきゃ」

チノの事務所。

帰ろうとしていたチノだが、従業員がゲイの話をしているのをたまたま聞いてしまう。

従業員「ゲイが女性に好まれる理由。女心を理解していて話が合うから。男の立場からもアドバイスが出来る」

サンジュン「そうだな」

それだけ聞いて車を発進させるチノ。

ヘミの頼みでチノの後をつけてきたテフン。

サンゴジェに住んでいることがバレてしまう。

チノ『僕がゲイでもあいつとは友達にはなれない』

ヨンソンの指導でカキのグラタンを作ろうとしているケイン。

ケイン「オーブンを使うなんて無理よ。代わりに作って」

ヨンソン「あんたね。今日限りで友達やめる?」

ケイン「3人で食事しようよ」

ヨンソン「息子が待ってるもん」

チノが帰ってくる。

ケイン「どうしよう、きっと怒られる」

ヨンソン「大丈夫」

話そうと努力はするが『部屋へ行く』と逃げられる。

そして『子供が待ってるから』とヨンソンも帰ってしまう。

チノ「話がある。ゆうべのことは記憶にないと?」

ケイン「その・・・酔っていて覚えてなくて・・・」

チノ「僕が代金を払ったことも?」

ケイン「やだ!私が払わせた?必ず返します」

チノ「僕が貸した100万ウォンはどうする?」

ケイン「それも必ず・・・私がいつお金を?この詐欺師!そんなの借りてない!」

チノ「記憶があるようだね」

ゲッっという顔をするケイン。

チノ「嘘をつく人間が一番嫌いだ」

ケイン「あの・・・どうか許して」

念書を書かされるケイン。

チノ「私パク・ケインはチョン・チノの私生活について触れた場合・・・」

ケイン「どうするの?」

チノ「それは君が決めるんだ」

ケイン「舌をかんで死ぬ!」

チノ「僕には何の得にもならない」

ケイン「私パク・ケインはチョン・チノの私生活について触れた場合、何でも言うとおりにします。これで満足?」

チノ「異議は?」

ケイン「これでチャラ?」

チノ「ひとまずはね」

ケイン「じゃ夕飯を作るわ。焼肉のお礼よ」

指を切りながら悪戦苦闘するケイン。

でも出来上がったのは焦げたカキグラタン。

必死で作ったのに、グラタンだけ無視して自分のご飯を食べるチノ。

ケイン「誰かさんのために作ったのに・・・やだ火傷してる。ここは包丁で切った傷だ」

仕方なくグラタンらしきものに手を出すチノ。

ケイン「どう?」

チノ「思ったより悪くない」

チノ「君は?」

ケイン「さっき食べたわ・・・おいしい?」

チノ「さっき食べたんだろ?」

ケイン「食事を分け合えばもっと仲良くなれるのに」

チノ「君と仲良くなるつもりはない。ごちそうさま」

全部食べてしまう。

ケイン「チノさん、どうぞよろしく!」

手を差し出すケイン。

チノ「君の行動次第だ」

手を無視して歩き出すチノ。

ケイン「一緒にDVDを観ない?」

チノ「そんな暇はない」

ケイン『本当に1人で全部平らげるなんて。冷血人間』

諦めたケインは一人でDVDを見ている。

チノ「どういう頭してんだ。恋人と友達に裏切られたのに。よく笑えるな」

ケイン「イニ、私にも水・・・」

言ってしまってから気づく。

チノ「ほら水」

ケイン「食べる?」

ポップコーンを差し出すケイン。

チノ「遠慮する。食べすぎだ」

ケイン「太らない体質よ」

チノ「30近いと贅肉がつく。イニさんとは長く同居を?男を奪われても名前が口から出るとはな」

ケイン「10年よ。いくら食べても減らない」

隣に座るチノ。

そしてポップコーンを食べる。

チノ「うまいな」

ケイン「贅肉がつくわよ」

チノ「太らない体質だ」

ケイン「本当に口が達者ね」

黙って観ていたが気まずくなる。

ケイン「ところで、いつ気づいたの?」

チノ「何に?」

ケイン「ゲイ・・・つまり人と違うってことに。私は7歳の時よ」

チノ「レズビアンなのか?」

ケイン「母親がいないのは私だけだってこと。7歳で気づいた。幼稚園のおゆうぎ会でチョゴリを着たの。みんなはママに着せて貰ってたわ。リボンが結べずにいる私を見て友達のママが助けてくれた。その時『ああ私だけママがいない』って初めて気づいたの。人と違うことであなたも同じ思いをした?」

チノ「おゆうぎ会には出てない」

ケイン「なぜ?」

チノ「衣装を着て踊るのが嫌いだったから」

笑うケイン。

チノ「何か?」

ケイン「冷めた態度をとって男の子が好きなのを隠してた?」

チノ「いいから食え」

ケイン「いつ目覚めたのかこっそり教えて」

チノ「黙って食べろよ」

ケイン「教えてってば。私にだけ」

チノ「しつこいな」

翌朝、チノの事務所。

遅れてきたサンジュンが駆け込むとチノの姿が見えない。

来てるはずなのにコーヒーの香りもCDの音も聞こえない。

サンジュン「チノは?」

テフン「トイレ」

チノは昨日の夜ケインが作ったグラタンもどきに当たって腹を下していた。

どうにもならなくなったチノはサンジュンを無視し薬局に走る。

一方サンゴジェ。

ヨンソンから電話が入るケイン。

ヨンソン「大丈夫?」

ケイン「何が?」

ヨンソン「この前あげたカキ、痛んでたみたい」

ケイン「えっ!?」

ヨンソン「お腹壊してない?」

ケイン「私は大丈夫だけど、チノさんが今頃・・・」

なんとか薬を買ってトイレに籠るチノ。

チノ『あいつめ。覚えてろよ!』

チノに電話するケイン。

出ない。

ケイン『出ない。大丈夫かな?出て行く気ならそれでもいいわ。仕事さえ決まれば・・・』

面接に急ぐ。

その後チノは館長に会いに行く。

サンジュン「その身体で館長に会えるのか?」

チノ「(真っ青な顔で)もう大丈夫だよ。電話する」

面接。

ケイン「家具デザイナーのパクです」

職員「申請は受付へ」

隠れて見ているチヤンニョル。

ケイン「少々お待ちを!その・・・これは全部私がデザインしたものです。これは独身者用でパソコンに繋げて・・・」

職員「募集しているのは秘書だよ。手違いがあったようだ」

ケイン「失礼しました」

帰り道。

偶然ケインを見かけるチャンニョル。

チャンニョル「キム、降りろ。歩いて帰れ」

傘も差さずに歩いているケインがコンビニに避難するのを見ている。

館長との食事。

チノは遅れて到着する。

館長「どうぞ」

席に着く。

館長「カンディンスキーに替えましてね。助言を頂いたお礼をしたかった。その審美眼を今度のコンペにも生かして頂きたい。期待しています」

チノ「はい。最善を尽くします」

腹の調子が悪くなる。

館長「どこが具合でも?」

チノ「いえ」

館長「汗が出てますね。どうぞ」

ハンカチを渡される。

チノ「お借りします」

館長「無理せずまた日を改めましょう」

チノ「心配いりません」

館長「いえ、早く帰った方が。ハンカチは後日返して下さい。大事なものなので」

チノ「すみません」

サンゴジェに着いたケイン。

その後ろからチャンニョルの車がつけている。

そのまま走り去る。

入れ違うようにチノも帰宅。

怖い顔のチノ。

ケイン「チノさん、大丈夫?」

チノ「そう見えるか?」

ケイン「下痢ピーになっちゃった?」

チノ「下痢ピ・・・もうよそう」

ケイン「待って。よく効く薬があるの」

必死で探すケイン。

全身びしょ濡れのケインを呆れて見るチノ。

家中びしょびしょだ。

タオルをかけてあげる。

チノ「床にしずくが垂れるだろ」

ケイン「おかゆでも作ろうか?下痢で1日中苦しんで・・・」

チノ「下痢って言うな!いいから早く着替えろ」

何かが割れる音に驚くチノ。

チノ「どいて。面倒を起こすのが君の日課か?」

割れたカップを片付けるチノ。

ケイン「そっちこそ。私に嫌味を言うのが日課なわけ?」

チノ「誰のせいだ?」

ケイン「私がやるから。おかゆを食べて。作ったの」

おかゆを食べようとするチノだが、口に入れる手前で止まる。

チノ「食べて」

ケイン「え?」

チノ「毒見してもらう」

ケイン「何ですって?」

チノ「君の料理は信用出来ない」

一口食べるケイン。

恐る恐る食べるチノ。

ケイン「ねぇ、今のって間接キスよね?」

チノ「毒の方がマシだな」

ケイン「口の減らない・・・」

チノ「その傷は?」

ケイン「あなたのために料理してて切ったの。ゆうべの傷と今日の傷」

チノ「手当ては?」

ケイン「これしきの傷大丈夫よ」

ケインの電話が鳴る。

チャンニョルだ。

チノ「出ろよ。急用かもしれないぞ」

ケイン「チャンニョルさんよ」

外で。

チャンニョル『ケイン。出てきてくれ。今家の前にいる。顔だけ見て帰るから。一目でいい。出てくるまで待ってるからな』

何も言わずに切ってしまうケイン。

チノ「会おうって?」

ケイン「うちの前に来てるって」

チノ「行くなよ」

ケイン「行かない」

チノ「会いたいって顔してる。やめた方がいい。『行く』に1票」

ケイン「絶対に行くもんですか」

部屋に戻ってからもなり続ける携帯。

それを見つめるケイン。

チノは部屋で救急箱を見る。

手当てしてやろうと部屋を出ると、走って出て行くケインが。

チノ『チョン・チノ、大当たりだ』

一人つぶやいて部屋に戻る。

門の外に出て見るとチャンニョルの姿は見えなかった。

戻ろうとしたその時半分酔いつぶれたチャンニョルが。

ケイン「こんなところで寝ないで」

チャンニョル「ケイン」

ケイン「なぜ来たの?イニはいないわ」

チャンニョル「お前に会いに来た」

ケイン「なぜ?雨に濡れた子犬をからかいに?」

チャンニョル「ケイン、すまない。直接会って謝りたかった」

ケイン「あなたはそれで気が済むでしょうね。最後まで勝手な人」

チャンニョル「解ってくれよ。殴ってくれ。お前に殴られたくて来たんだ」

ケイン「やめてよ。手が汚れる」

チャンニョル「汚れる?そうだな。俺は殴られる資格もない男だ」

ケイン「どうしてイニと?私の友達なのよ」

チャンニョル「イニは全てをささげてくれた」

ケイン「え?どういう意味?」

チャンニョル「お前は俺を拒んでいただろ。お前は俺と人生を共にする気がない。俺を信用してないのさ」

ケイン「私が?なぜそう思うのか解らない」

チャンニョル「ほらな。何も解っちゃいない。俺達は大人なんだ。思春期の子供とは違う。俺は大人の男としてつきあってたのにお前は何も知らない子供みたいにただ無邪気にはしゃいでただけだ」

ケイン「それが理由?だからイニと?私はあなたがキスしてくれるだけでときめいた。あなたのため息で胸がつぶれそうにもなった。女として失格だけど急に呼び出されたら着替える時間も惜しくてジャージで飛び出した。それじゃダメなの?全てをささげたとは言えない?」

チャンニョル「俺には無理だ。それだけじゃ足りない。俺は単純に出来てる。そういう関係になれば浮気なんかしない」

ケイン「結局私のせいか」

チャンニョル「そうじゃない。俺とお前は合わなかったんだ」

チャンニョルの携帯にイニから着信が。

ケイン「イニと一緒に住んでるの?」

信じられないという目のケイン。

ケイン「それなのにうちまで会いに来たわけ?そうやって人をバカにするのね。ひどすぎる。どこまで惨めな思いをさせるの?さっさと帰って」

家に入る。

チノ「だらしないな。バカだよ。相手のいいなりだ」

ケイン「やめて」

チノ「子犬か。捨てられても呼ばれれば尻尾を振る。うまく言ったもんだ」

近くにあったクッションを掴んでチノを殴るケイン。

ケイン「みんなで私のことをバカにして。私が何かした?どうして・・・人をここまで追い込むのよ。私が何を・・・」

チノ「自業自得だろ?いい加減気づいたらどうだ?」

ケイン「あなたは好きな人からの電話を待ち続けたことがある?見ているだけで胸いっぱいになる思いを味わったことがある?それくらい好きだったのよ。最低の奴でも話ぐらい聞いてあげたいじゃない。どうせバカでだらしないわ」

深夜、二人で酒を飲んでいる。

ケイン「イニは全てをささげてくれたんだって。私は彼を信用してないそうよ」

チノ「ふざけた男だ。今更そんな話を?」

ケイン「まるで子供だってさ。大人の女じゃないって」

チノ「忘れろよ」

ケイン「どうやって?生まれて初めて本気で恋した人の言葉なのに。お前は女じゃない。そう言われたのよ」

チノ「もう終わったことだろ」

ケイン「こうなったのはやっぱり私のせいなのかもしれない。チャンニョルさんやイニのせいじゃなくて全部私が悪いのかも」

チノ「もうよせ。ヤケ酒は見苦しいぞ。そんなに悔しいなら自分を磨けばいい。別れて損したと思わせてやるんだ」

ケイン「チノさん、私を・・・女にしてくれる?」

すがる目で訴えるケインを凝視するチノ。

第5話へ